世界が揺れ動く最中、”麦わらの一味”はワノ国の近くまで来ていた。だが、その道中に補給もかねて、
この時になって初めて、理解する事になる。
海賊相手に定価で物資をいつでもどこでも売ってくれるという商船、海賊の首を
これは、”麦わらの一味”の航海と金庫を預かるナミにとって、なかなか厳しい現実になる。何がつらいかと言えば、海賊の首をとっても換金してくれる人がいない。一般人を装って海軍に換金するにしても無理がある。数千万を越える懸賞金を貰うのに身分照会がない事はあり得ない。今や、新世界で”麦わらの一味”を知らない者が居ない位に有名になってしまっている。
”麦わらの一味”の航海に使う費用は、他海賊から略奪するか。お宝を見つけるか位になる。
そして、今、ルフィはその現実の一部を見せつけられたところだった。
「ルフィ・・・気を落とさないで。これが現実なのよ」
「あぁ、すまね~。ちょっと、休んでくる」
四皇と言われる海賊達が、どうして縄張りを持っているのか。どうして上陸している海賊を見る事が少ないのか、ルフィは少し理解してしまった。一般人にとって、海賊などは災害より最悪な存在だ。
そして、嘗てインペルダウンでインペルダウン副所長のハンニャバルが言っていたセリフが身に染みていた。
『貴様らシャバで悪名揚げただけの・・・”海賊”に”謀反人”・・・!!! 何が兄貴を助けるだ!! 社会のゴミが奇麗事ぬかすな!!! 貴様らが海へ出て存在するだけで・・・!!! 庶民は愛する者を失う恐怖で夜も眠れない!!!』
そして、ルフィは「その通りだな」と思ってしまった。
・・・
・・
・
数十分前の事だ。
”麦わらの一味”が有人島に上陸してしまった。それが何よりの問題だった。最新の世界経済新聞の情報で、”麦わらのルフィ”がどれほどヤバい存在なのかがよくわかるようになっている。
”麦わらのルフィ”・・・その華々しい事実だけを陳列するとこうなる。
(01)”世界最悪の犯罪者”革命家ドラゴンの実子
(02)四皇”赤髪のシャンクス”との密接な関係あり
(03)元・王下七武海クロコダイルが海軍に逮捕される事件に関与した疑いあり
(04)エニエス・ロビーで世界政府の旗を打ち抜いて戦争を申し込んだ実績あり
(05)天竜人を殴り殺しそうになった実績あり
(06)インペルダウンの囚人解放した実績あり
(07)頂上戦争で海軍と敵対した実績あり
(08)王下七武海の女帝ハンコックと親密になり海軍を裏切らせた実績あり
(09)頂上戦争後に冥王レイリーを連れて再度マリンフォードを襲撃した実績あり
(10)四皇”千両道化のバギー”と嘗て戦って勝利した実績あり
(11)政府が立ち入り禁止にしたパンクハザードに侵入して、島を吹き飛ばした疑いあり
(12)パンクハザードで王下七武海ローと海賊同盟を結成した事実あり
(13)ドレスローザで王下七武海ドフラミンゴを倒した実績あり
これだけの実績がわずか数年だ。細かい戦歴などを追加すると、分厚い本が一冊出来るレベルになるだろう。それに加え、彼の義兄弟は”火拳のエース”と”炎帝サボ”というビッグネーム。一人は既に故人だが、”炎帝サボ”は健在しており、ルフィに何かあれば駆け付けるくらいはするだろう。
つまり、本当に手も足も出せない。”麦わらの一味”に手を出せば、革命軍もセットで来る。これをどうしろと言う。
町の住人は、命を守るために全てを投げ捨てて逃げた。ルフィがどのような人物であるなど関係はない。関わってしまえば、海軍に疑われて生きにくい人生を送る事になる。ルフィ達は、町にある飯屋でちょっと食事をしようと思っただけなのに、全員が全てを投げ捨てて逃げ出した。
”麦わらの一味”は、その誤解を解こうと逃げ出した住民たちを追いかけ避難所まで行ってしまった。
「待てよ~、金ならあるんだ。飯、作ってくれよ!! めし!!」
「落ち着いて、私達は食事と買い物に来ただけなのよ。ねぇ、安心して
ルフィとナミが何とか説得しようとする。
だが、大海賊時代において15億の懸賞金がついている大海賊から飯代を取る勇気がある店長など早々いない。ご指名された飯屋の店長は、真っ青な顔をして前に出た。まさか、追いかけてくるなど考えていなかった。
食料も金も全て店において大事な妻と子供だけを連れて逃げてきたのに、なぜここまでくるのかと誰もが疑問に思った。食事とは嘘で、本当は殺しに来たんだと誤解してしまう。逃げ出した事に怒りを買ってしまい、皆殺しになると。素直に飯を作って殺されるべきだったんだと勘違いしてしまう。
「お願いです、お願いします!! 大海賊の麦わらのルフィ様!! どうか、妻と子供にだけは手を出さないでやってください!! 私が逃げろと言ったんです!! どうか、私の命だけで穏便にお願いできないでしょうか!!」
「何言ってんだおめぇ?いいから、早く飯食わせろよ」
「やめんか、ルフィ!! アンタが言うと話がこじれる。お金ならちゃんと払うわよ。だから、食料と色々な必要物資を売ってほしいのよ」
海賊が言う必要物資・・・町の住人はそういう事かと理解した。そして、若くてきれいな女の何名かが自主的に立ち上がる。親兄弟に涙の別れをして、一歩前に出る。
「私達は、逃げも隠れもしません。何でもします。だから、どうかこの町の人たちには手を出さないでください」
「だ~か~ら、違うって言ってるでしょ!! お金を払うから、食料と木材と情報とか売ってほしいのよ」
だが、混乱は止まらない。
飯屋の店長は、ルフィの足に縋りついてこれから一生貴方の為に食事を作り続けるので妻と子供は見逃してくれと懇願し続けた。だが、その父親が海賊の足に縋りついて泣く様子を見た子供は、悪である海賊に石を投げつけてしまう。
「パパをいじめるな~」
「や、やめないかーーー!! ルフィ様、子供がやった事です。全ては、私に全責任があります。どうか、私を殺してください。お願いです!! 殺してください!! お願いします。どうか、どうか、私の命だけでお許しください」
藁にも縋る思いで必死に助命を懇願する店長にルフィですら、気圧される程だ。
「ノホホホホ、お困りのようですね。ナミさん。ココは私に任せてください。綺麗なお嬢さんたち・・・パンツ、見せていただいても良いですか?」
「「「はい、喜んで」」」
笑顔を崩さず涙を流しながら美女たちは、下着姿になった。
ブルックは、場を和ます冗談で言ったつもりだ。”麦わらの一味”の船では、よく聞く冗談だ。そしてブルックが殴られるまでがセオリーだが・・・そうはならなかった。大事な者達を助ける為、多くの者達を助ける為、犠牲になる事を厭わない心まで美しい女性たち。
ブルックの辞書には、パンツを見せられた場合の対応が書かれておらず、とりあえず凝視する事で満足していた。
「まったく、お前さんたちは船で待っていろと言っただろう。買い出しは、新人船員の儂に任せておけ。顔バレしている事を理解していないのか」
「う、嘘だろう。王下七武海ジンベエ!? “麦わらの一味”に加わっていたなんて・・・悪夢なら覚めてくれ。俺たちが何をしたって言うんだよ。あぁ、そうだ。これは夢なんだ。だったら、簡単じゃないか」
一人の男性が何を思ったのか、懐からナイフを取り出して躊躇なく首を刺した。海賊に惨殺されるより、自害した方が幾分かマシだ。死ねる状況ならば、先に死ぬのが正しい。
地獄を見なくて済むのだから。
「おぃ、馬鹿!! 放せよ、お前の仲間が死んだかもしれないんだぞ」
「いいえ、放しません。ルフィ様が私を殺して妻と子供を許してくれるまで絶対に離れません。殺してください。私の事を救いたいと言うなら、その手で殺してください」
ルフィは、覇王色の覇気を使う事を決意した。この状況、全員を気絶させて立ち去るほかないとルフィですら思った。
ワノ国ルートはルフィに任せて、黒ひげルートに行くかもしれない。
赤髪は、まぁ世界政府直轄の四皇みたいなものだし後回しでいいよね。
王下七武海制度が消えた今、こいつ等にも多額の懸賞金がかかっているはず。
聖地マリージョアの近くに居て、グランドライン前半の海?のあたりにも一人いたよね。