93:命のSDGs
世界の転換期。世界政府が王下七武海制度の廃止を決定した。つまり、今まで犯罪行為が全て合法化されていた王下七武海達が罪人になった瞬間だ。しかも、この時、過去の罪状に加え合法化として免責されていた事まで全て加算された懸賞金額になる。
これも全て、王下七武海達が制度維持をさせる為の努力を怠った結果だ。いわば、自業自得、身から出た錆。権利だけを求め義務を怠った。同情の余地など何処にもない。
その記事が掲載されている世界経済新聞を確認しているガープ中将。彼の手元には、本日世界にバラまかれた最新の新聞もあった。その新聞のトップページを飾るのは、『ネフェルタリ・ビビ王女結婚!? お相手は、ネロナ・ソラ聖とネロナ・ホタル宮のお二人』だった。海軍本部代表でサカズキ元帥が結婚式に参加していた。
「はっはっはっは!! まったく、天竜人みたいなクソになりおって。それに、なんじゃ、サカズキと縁でもあったのか~。なになに、海軍元帥サカズキからの祝いの言葉で号泣するソラ聖とホタル聖。マダオ元帥と泣きながら二人が抱き着く大惨事に会場は騒然とした。双子の兄であるソラ聖と結婚し、同日に双子の妹であるホタル宮と結婚し、両名をサカズキ元帥という男にもNTRされる悲劇の王女・・・くっそ、これなら儂も現地で見たかったわい」
ソラとホタルの恩人である故人ハセガワ船長と声がそっくりであったサカズキ元帥。その彼からの言葉に歓喜して、泣きながら抱き着いてしまった。当然、ビビはこれに激怒し初夜で二人を染め上げた結果、ウエディングドレスをクリーニングに出す結果になったのである。
ガープが大笑いしている事をコビー大佐が心配してみていた。
「ガープ中将。あまり大きな声で批判すると大変ですよ。相手は天竜人なんですから。でも、すごいですよね。ソラ聖とホタル宮のシンデレラストーリー・・・天竜人の子供として生を受け、幼少期に捨てられて天竜人に返り咲くだけでなく、王女とも結婚しちゃうなんて。来月には本も出版されるみたいですよ」
「完全にイメージ戦略を取ってきたな。天竜人の連中は、対外的にも嫌われておるが・・・アラバスタの王女と結婚した元・一般人の天竜人なら話は別だろう。革命軍の活動の件もあるし、ここらへんで流れを変えたいと言うのが見え見えじゃな」
ソラ達とガープ中将は、知らない仲ではない。手ほどきなどをした記憶も新しい。若いながら海賊に対して殺意マシマシであり、期待できる新人で海兵にぜひ欲しいとまで思っていた人物達だ。
だが、彼等も結婚し子供を持つ年になった事を実感したガープ中将は、しみじみ思う。
「しかし、子供の事が何処にも載っておらんな」
「えっ!? ソラ聖とホタル宮ってお子さんが既にいるんですか!? デキ婚って事なんだ。へぇ~王族や天竜人ってそういうのが一般的なんですね。あれ?でも、ビビ様とホタル宮って女性同士ですよね?」
女同士で子供が作れないなど、古い考えだ。
「コビー、愛の形は自由じゃ。・・・それに世の中、公然の秘密というやつがある。藪をつついて蛇を出す事はするな。アラバスタ王家の公式発表が、全てだ。それを疑問に思う事はお勧めせんが、コビーは知っておくべきだな。誰とは言わないがチ〇チ〇の実という悪魔の実がある。他者に男性のアレを生やせる力があり、女同士でも子供を作れるというカラクリじゃ」
「あれ?それって、王家どころか天竜人達も囲うレベルの能力じゃありませんか?後継者問題を一気に解決できるし。実績まであれば、権力者にとっては最高ですね」
その能力は、軍事同盟だけでなく天竜人達も当てにしている節がある。ピーター聖が居なければ、大変な事になっていただろう。
海軍は、そんな愉快な話とは裏腹にクソ忙しい。聖地マリージョアの復興に加え、王下七武海制度の廃止が正式に決まった。その権限はく奪が通知されており、本日正午をもって海賊へとなり下がる。
つまり、海軍は全力をもって元・王下七武海達を捕らえて、インペルダウン送りにしなければならない。革命軍への対応もあるなか、本当に忙しい限りだ。
今回の制度廃止で真っ先にターゲットにされるのが”女帝”ボアハンコックだ。マリンフォードからも近いし居場所も判明している。海軍としても留守を狙われる可能性もあるので、出来るだけ早く排除したい人物だった。
それに、”麦わらの一味”との関係性も判明している。よって、可及的速やかに排除すべしというのが海軍総意だ。
「なんじゃ、コビー。浮かない顔をして。不安でもあるのか」
「いえ、僕なんかの指揮で捕らえられるのかなと・・・相手は、王下七武海です」
ガープ中将の弟子であるコビー。その自信のなさだけが欠点だなと思っていた。だが、それがコビーの良さでもある。持ち味を活かせば、例え、ハンコック相手でも十分勝機はある。
だが、海軍は忘れていることがある。
マリンフォードから”女帝”ボア・ハンコックが居る島まで近いという事は、海賊絶対殺したいと考えているソラ達からも近いという事だ。それこそ日帰りできるほどの場所。
これからの作戦を詰めたいコビーとガープ中将の元に一人の海兵が駆け込んできた。
「た、大変です!! ガープ中将、コビー大佐。レッドポートに停泊していたソラ聖とホタル宮の船・・・ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング号が女ヶ島に向けて出港したとの情報が。現地到着時刻は、王下七武海制度廃止と同時刻です」
「天竜人なのにフットワーク軽すぎでしょ!? 今の彼等に何かあったら、それこそ大問題です。すぐに追いかけましょうガープ中将!!」
「今から出発しても間に合う保証はないぞ」
ガープ中将は、急ぎ仲間を連れて出港する。
・・・
・・
・
ソラ達は、久しぶりに航海を楽しんでいた。やはり、この晴れ晴れとした大海原の下を旅をする事は楽しいと実感していた。日中はガチ天竜人の相手をして、夜は頭天竜人の相手ばかりをしていては、身体がなまるというもの。
ターゲットとなる女ヶ島が遠くに見える位置を陣取っている、ソラ達。ソラの手には、海軍と繋がっている電伝虫があった。
『ソラ聖!! こちら、海軍のコビー大佐です。女ヶ島にいる”女帝”ボア・ハンコックは危険な相手です。我々、海軍に任せてください。それに、島には民間人もいるかもしれません』
『あぁ、それならば心配ない。先ほど、女ヶ島に対して捕らえている民間人を解放しろと最後通達をしたところだ。王下七武海制度の効力が切れる正午ちょうどに残っている者は海賊だけだ。国際法上は、そう定義されている』
コビー大佐の言う通り、万が一民間人が居た場合には申し訳がない。それについては、ソラ達も同意しており、一応警告を出していた。そもそも、女ヶ島に民間人などいない。全員が海賊か海賊予備軍だ。
『確かに、それなら法律上は・・・いいえ、そんな事ではないんです。ボア・ハンコックの能力は危険です。石にされてしまった場合、解除不能なんです』
『それも問題がないように反撃が届かない距離からの飽和攻撃だ。それに、メロメロの実だったかな。強いのは認める。だが、ボア・ハンコックに対して魅力を感じる事が前提だったはずだ。悪いがこちらにはメタを張れる能力がある。心配無用です』
ホタルのムラムラの実で常時賢者モードのバフを掛けられており、ボア・ハンコックに対して一ミリも心を動かされることはない。
『それだと被害が大きすぎる!! 命が勿体ないじゃないですか』
『コビー大佐は、海賊の命をリサイクルしたいのですか? SDGsの観点でいえば、賛同しますよ。ですが、海賊を生かして何の得があるんですか?あれらは、生きているより死んでいる方が感謝される存在です。海軍が本来守るべきは海賊のような加害者ではなく、民間人です。自分が何を口にしているかよく考えてください。・・・あぁ、正午になりました。今後も海軍のご活躍を期待しています』
ソラは、電伝虫を切った。
女ケ島の遥か上空から一つの爆弾が投下される。覚醒したペルの飛行能力は、直径5kmを吹き飛ばす爆弾を複数個運んで飛べる程だ。
女ケ島に急ぐコビー大佐は、遠くの海で何かが光るのを目撃した。