お前のONE PIECEは、預かった!   作:新グロモント

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95:黒ひげ

 四皇”黒ひげ”マーシャル・D・ティーチ。今は、知らない者は居ないレベルで有名となった海賊。だが、彼には一点だけ悩みがある。それは、仲間が少ないという事だ。

 

 彼の現在の仲間と呼べるのは、ヴァン・オーガー、ラフィット、ドクQ、そして元海軍本部大将クザンの四人だけだ。本当はもう一人いたがドレスローザで殉職してしまった。四皇ともなれば有象無象の海賊や船員は居るが、主力を張れるのは、たったの四人。

 

 全ての計画が狂いだしたのが、頂上戦争の時だ。

 

 かつて黒ひげは、頂上戦争の裏でインペルダウンに収容されている凶悪な犯罪者達を仲間にしようと計画していた。特にLEVEL6の囚人となれば、一国を揺るがすレベルの者が数多い。解放する事を条件に仲間にしたかったが・・・頂上戦争の数日前に謎の疫病が発生して、全滅する。

 

 だが、その中でなぜか”火拳のエース”は無事であり、マリンフォードで処刑された。

 

「俺は、この事が疑問だった。なぜ、エースだけが・・・いいや、違うな。エースと同じ牢屋に居たジンベエまでも無事だったのかを考えた。当時の記録を手に入れるのには苦労したぜ」

 

「何があったんだ、ティーチ。俺は当時海軍大将だったが、マリンフォードから出られなくてな。あまり知らない」

 

 クザンは、黒ひげが手に入れたという情報が気になっていた。

 

 他の船員達も同じだ。黒ひげは、なぜかいろいろな方面に伝手がある。嘗ての白ひげ海賊団として長年航海を共にした結果、独自の情報網を持つに至ったのだ。今ではそこに四皇の肩書もある為、相手から情報を売りに近寄ってくる事も多々ある。

 

「疫病事件とインペルダウンの脱獄事件は絶対に関係性があると睨んだ。そもそもおかしいだろう。時期的に考えても、ありえねーよ。だから、俺は事件が起きる前後のインペルダウンへの入場記録を手に入れた。そこで、見つけたんだよ。脱獄事件の当日・・・ハンコックがエースと面会していた。更に、当日のボディチェックをする時間帯だけ不自然に映像電伝虫が途切れたという証言もある。どう思うよ、クザン」

 

「頂上戦争では、ハンコックは”麦わらのルフィ”に対して好意的な発言や味方のような振舞をしていたと海兵からの報告もあった。この時点で確実に裏切っていただろうな。つまり、インペルダウンの脱獄事件はハンコックが手引きしていた。事前に疫病事件を起こして”火拳のエース”をLEVEL3にまで移動させたと・・・本命を脱獄させるのには失敗したみたいだがな」

 

 残っていた資料や映像データ、証言。更には状況証拠から考えて、全ての点が繋がる。だが、それが今さら分かったとして黒ひげが何をしたいかクザンには理解できなかった。既に、四皇と言う海賊の最上位に位置する男が、今さら過去の事を蒸し返してどうする。

 

 一般海賊時代なら、その情報を海軍に売ってハンコックと入れ替わりで王下七武海の座にも就けただろう。

 

「今さら、そんな情報を気にして何になるかって顔をしているな、クザン。ハンコックを仲間にする為に決まっているだろう。王下七武海制度廃止で一番最初に狙われるのは、間違いなく奴だ。地理的にもそうだが、ここまでの大犯罪が露見したら大将だけでなく軍事同盟の連中まで狙う。そうなったら、まず助からない」

 

「まぁ、そうだな。ハンコックは、強いな。一国の女王だし、性格的にも強気だ。戦う道を選ぶだろう。しかし、ハンコックが勝つ事は無い。海軍大将や海軍、軍事同盟はそんなに甘くない」

 

 黒ひげは、話が分かるクザンがいて内心喜んでいた。

 

 ハンコックは、制度廃止で瀬戸際に立たされている。王下七武海に変わり、女ヶ島を守る後ろ盾が必要になる。そこで名乗りを上げて恩を売ろうとしているのが、四皇という肩書を持つ黒ひげだ。

 

 四皇が相手となれば、海軍とて簡単には手を出せない。それこそ、元帥の承認も必要になるレベル。手を出せば火傷で済まないからだ。

 

「俺の配下に加わって、大人しくなるのもよし。でなければ、能力だけ奪って殺せばいい。放置していても自滅するだろうがな」

 

「あ~、うん。そうだな。海軍だけだったら、そうかもな。でもよ~、ティーチ。それなら、もう少し早く出港すべきだったな」

 

 新世界の奥地にある海賊島ハチノスを根城にしている黒ひげは、これでも最速で目的地に向かっていた。

 

「海軍は、腰が重たいからな・・・となれば、軍事同盟の事を懸念しているのか、クザン。流石にそれはねーだろう。性癖以外完璧な女だったか? その馬鹿な女の結婚式に加え、あいつ等の主力は復興支援の最中だぞ。そんな暇なんて、あるはずないだろう。片手間で王下七武海が倒せるなら誰も苦労しねーよ」

 

「お前がそう思うんならそうなんだろう、お前ん中ではな。そう言えば、俺・・・あいつ等への直通電話が可能だが、聞いてやろうか?今どこにいるか」

 

 黒ひげは、何の冗談だと思った。いくら元海軍本部大将だからといって、完全に別組織である軍事同盟のトップ連中への直通電話などおかしい。裏切り者じゃないかという疑惑すら感じてしまう。

 

 しかも、今ではそのトップの身内は、最も新しい天竜人だ。

 

「そういう冗談は、好きじゃないぜ・・・冗談じゃないのか!? なんで直通電話の番号なんて知ってやがる」

 

「パンクハザードで会った時に貰ったんだよ。勧誘ついでに何かあれば物を売ってくれるってな。まぁ、海賊になった俺と話してくれるかはわからんが」

 

 クザンは、黒ひげの指示でソラに電話した。暫くコールを鳴らすと、相手が出る。

『残念ですよ、クザンさん。海賊になってしまうとは・・・貴方とは、仲良く海賊狩りをしたかったのですがね。秘匿回線でもない電話で何の用事ですか?』

 

『俺だって色々あるんだ。で、お前さんたち今どこに居る? 俺たちは、ハンコックを仲間にする為、現地に向かっている途中だ』

 

 天竜人相手に軽いノリで電話をかけるクザンに黒ひげは若干ハラハラしていた。これがきっかけで海軍大将を呼び出されバスターコール案件になっては、面倒だからだ。数少ない戦える船員をこれ以上減らすのは悪手。

 

『どちらに居るか存じ上げませんが・・・貴方達が来る頃には島ごとなくなっていますよ。既に、島の表層を消し飛ばしました。一時間以内に生存者を0にして、島を地図から消します。近くに居るなら、ゴミ掃除が終わったらお迎えに行くから場所を教えてください』

 

 クザンは、その言葉を聞いて嘘偽りではないと感じる。当然、その場で声を聴いていた黒ひげも同じだ。どう考えても間に合わないと察した黒ひげ。ここまでフットワークが軽い軍事同盟のトップ集団など最悪だと思っていた。

 

『クザン、代われ。聞こえているか、軍事同盟の野郎ども。俺は、四皇”黒ひげ”だ。今この瞬間から女ヶ島は、俺の縄張りになった。これ以上手出しするなら、俺と戦争する事になるがいいのか?』

 

『では、四皇”黒ひげ”は、縄張りの海賊を見捨てる仁義もない海賊になるんですね。既に、試合は終盤です。ここに居る海賊を殺しつくしたら、そちらに向かいます。・・・あぁ、そちらの位置は、北緯〇〇度、東経XXX度みたいですね。ココから3時間くらいの距離みたいです』

 

 ソラは、海王類達から情報を貰っている。海の中で彼らの鳴き声が音波となり、敵対勢力の座標を正確に把握できる。しらほし姫の恐ろしさは、こういう風にも使える。海の覇権種族は最強だ。

 

 黒ひげは、電伝虫経由でこちらの座標がばれた事に驚いた。この短時間で、逆探知されたのか。されたにしても海上でここまで正確に位置がばれるなどあり得ない。得体のしれない奴に前情報なしで挑むほど黒ひげは馬鹿じゃない。

 

 リスクとリターンがあわないなら、素直に引き下がる。

 

『少し言葉を間違った。俺たちは、ハンコックが海賊の仁義も分からない酷い奴だから、先輩として色々と教えてやろうとする所だった。なんせ、インペルダウンの脱獄を手引きした犯人だからな。お互い、身分を見ない事にするなら加勢してやるぜ』

 

『来たら殺す。来なくても、そのうち殺しに行く。海賊なんて死んで初めて人の為になれる』

 

 黒ひげは、電伝虫を切った。

 

「ゼハハハハハ!! イかれてやがる。四皇の俺相手にそこまで啖呵を切れる天竜人がいるとは思わなかったぜ。だが、あれは強いな。言葉だけでわかる。信念と自信を持った言葉だ。・・・帰るぞ。あの手合と戦うには準備が足りない。戦略的撤退だ」

 

 ハンコックの唯一の生存ルートとなる黒ひげ傘下という希望の光がここで途絶える。

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