ソラ達の目の前に並べられたワンピース・・・ただし、何時ものワンピースではなく、ローが王下七武海になる為、海軍に収めた心臓だ。海軍は、それらを大事に倉庫にしまい込んでいた。正直、海賊の心臓など即座に潰して被害を抑制すべきだ。海賊達にいつ死ぬか分からないプレッシャーでも与えたかったのだろうが、意味はない。
だからこそ、それを有効活用しようとソラは海軍から取り寄せていた。
ソラが集めているワンピース同様に・・・これらは、本体と悪魔の実の力でつながっている。これらの持ち主は海賊島ハチノスで”黒ひげ”の手下になっている事が確認されている。いつ死ぬかわからない部下まで使っているあたり人材不足は深刻なのだろう。
今は海賊業は流行らない。死に急ぐようなものであり、まっとうに仕事をした方が儲かる。
「ビビ。貴方の力には、無限の可能性がある。ワンピース経由で人間を依り代にして、”腐界降臨”からの”グリーン・ディ”での国土汚染。キノコ兵士は、質重視で構いません。クザンさんが居る以上、凍結に耐えれるだけの性能が求められます」
「一芸特化なら十分やれる範囲だわ。でも、ソラ・・・本気でこの一戦に全力投入するの?弾薬も予備まで使い切って構わないとか。他の四皇の分が足りなくなるわよ」
ソラ達は、”麦わらの一味”がワノ国に入国した情報を持っている。だが、カイドウの実力がビッグ・マムと同格だからこそ、”麦わらの一味”に勝機はないと誰もが思っている。ドレスローザでドフラミンゴを相手に苦戦していた程度では、難しい。それこそ、何度も死にかけて強くなるレベルじゃないと勝てない。
カイドウの所は、悪魔の実の能力者数が全海賊で断トツだ。それこそ、海軍でもそこまで能力者はいない。
「兄様の言う事に賛成です。出し惜しみして、取り逃す事こそ骨折り損です。我々が四皇の一角を落とせば、海軍も立場を守る為に動きますよ。そういう風に世論を操作する事は、ビビも得意でしょう?モルガンズには、しらほし姫の写真集でも出させると言えば二つ返事で味方してくれます」
ホタルの後押しもあり、軍事同盟は対”黒ひげ”に全てのリソースを投入する。現在、世界では四皇を潰すために出陣した軍事同盟に高い期待が寄せられている。当然、海軍は?世界政府は?となる。
ソラとホタルが天竜人だからある意味、海軍も世界政府も無関係ではないだろう。だが、そんな生ぬるい言い訳を世間は許さない。四皇”赤髪”シャンクスは、世界政府の大人の事情で見逃される。
「そうですね。しらほしの説得は、私がやりますけど。分からせるためにマジカルワンピースをお借りしますよ。じゃあ、イーロンとケイミーからの連絡を受け次第、始めますね」
イーロンとケイミーを筆頭に選ばれた魚人達が海中から海賊島ハチノスで破壊工作を遂行している。彼等のターゲットは、島にある海賊船だ。隠している海賊船もあるだろうが、脱出した所を確実に仕留める。その為、魚人部隊がイワシ一匹逃がさないレベルで見張っている。
プルプルプルと電伝虫が鳴る。イーロンからの通信と確認して、ソラが受話器を取った。
『こちら、イーロン。島にあった全ての船に爆弾を仕掛けた。念のため、一発3億ベリーのでかい花火も付けておいた。砲撃の目標にしてくれ。後10分で爆発するから我々は撤収する』
『あぁ、さすがですイーロン。ですが、爆発圏外から吹き飛んだのを目撃してから戻ってきてください。こういう場合、シュレディンガーの猫になる事が懸念されます。誰かが標的の海賊船が全て吹き飛んだ事を確認しないと、爆発でも無傷と言う理不尽が起こります』
この世界では、よくある話だ。絶対に死ぬ毒を浴びたのに、なぜか生存して現れる。誰かが確実に死亡を確認し、その首を分断しない限り海賊は何度でも蘇る。そういう世界だ。だからこそ、ソラ達は確実にその手で海賊を葬る事で死を世界に認識させていた。
この件は、実際にソラ達も海賊達を使って実験した事がある。
10人の海賊を用意して、時間経過で落ちるギロチンをセットした。確実に死ぬはずだったが、翌朝になっても数名が生きていた。その理由は、ギロチン台の整備不良や覇気に目覚めて首だけを強化していたりと・・・つまり、この世界における死とは、不確定要素が大きい。
『”死”の観測じゃったか。わかった、儂がその任を担当しよう。だが、海上からでは限界がある。上空からの観測にペルにも・・・』
『当然です、イーロン。既に、ペルには上空で着弾確認と逃げ出す船が居ないかも確認してもらっています。イーロンにも連絡がいくようにしておりますので、今から逃げ出す船があれば最優先で処分してください。それでは、四皇攻略の開始です』
ソラは、電伝虫を切った。
相手は四皇。だが、軍事同盟側は、攻略のために出来る限りの準備を整えてきた。ソラが開戦前にここまで付いてきてくれた軍事同盟の皆に声をかける。
「軍事同盟の皆さん。ここに来るまで色々ありました。海賊を根絶やしにしたいという志に同調して、厳しい訓練にも耐えてきた貴方達を私は尊敬しています。そして、天竜人である私やホタルがその軍事同盟のトップ陣の一人であるにも関わらず、付いてきてくれた事に感謝しています。海賊達に虐げられてきた者達の根深い恨みの強さを教えましょう」
海賊に家族を奪われ、殺したいほど憎い連中も多く参加している。よって、士気は最高潮だった。
遠くで爆発の光が輝く。夜の海では、よく目立つ・・・軍事同盟の軍艦10隻が20km以上離れた場所から砲撃を開始した。これぞ、海戦というのに相応しい。機能美を追求した美しい砲撃の恐ろしさを海賊島ハチノスにいる海賊達は知る事になる。
当然、それだけでは終わらない。ビビが能力を使うと、並べられた心臓が一瞬でカビで汚染される。遥か遠くにある本体にまでそのカビが伝染し、周囲に殺人カビを撒き散らし始めた。
島からの脱出に使う海賊船を潰し、超遠距離からの尽きる事がない砲撃、リモートでの殺人カビとキノコ兵の進軍・・・四皇”黒ひげ”は、海賊人生始まって以来の窮地に立たされた。
◇◆◇◆
一方、ソラ達が開戦の狼煙をあげる少し前。
四皇”黒ひげ”は、軍事同盟の動向を当然気にしていた。世界経済新聞の情報を鵜呑みにするほど彼は愚かではない。むしろ、虚偽の情報である可能性が高いと思っており、裏社会の情報屋から真実を仕入れる為に動いていた。
だが、それでは遅いと感じたクザンがティーチに提言する。
「ティーチ。今すぐ、ハチノスを出るべきだ。俺が言う事じゃねーが・・・あいつ等は頭のねじが数本外れている。海賊を殺す為なら採算なんて考えるような連中じゃねーぞ」
「おぃおぃ、クザン。お前ともあろう男が恐れてんのか? 確かに、ハンコックやレイリーを殺した実力は評価してやるよ。しかし、こちらには俺に、お前、他にも頼りになる仲間もいる。負ける要素なんてないな。むしろ、あいつ等の能力を奪い取って力にしてやる」
上陸戦で戦うならば、それも実現できたかもしれない。だが、ティーチ達は知らない事があった・・・軍事同盟のトップ陣営は軒並み覚醒者で構成されているが、正面から戦うような海軍らしい戦い方はしない。
「まぁ、お前がそれでいいってんなら俺は構わない。一応警告だけはしたぞ。後、もっと兵力はなんとかならねーのか」
「あぁ。戦力不足の懸念を解消する為、俺の方でも色々動いている。気に食わねーが、バギーの野郎との同盟も視野に入れている。あそこは大所帯だから、ちょうど俺たちに足りない物をもってやがる。生産力もあるから、同盟を足掛かりにして乗っ取るつもりよ」
その動きが一週間早ければ、これから起こる状況が変わったかもしれない。
だが、世界の運命は豪運を持つ者に味方した。死の運命から豪運を持つ者を遠ざけるように世界の修正力は働く。
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日が落ちると同時に、海賊島ハチノスは地獄と化す。
海賊船が停泊していた地帯で謎の大爆発。海賊達の状況把握は早かった。だが、海賊達も腑に落ちない点がある。この新世界で長く生きていたが、海賊船を狙われる事は今までなかった。
海軍も律義に停泊している海賊船を見逃し、上陸している海賊達と真面目に戦い正々堂々とした振舞を見せるのが常識となっている。だからこそ、停泊している海賊船を狙うなど卑劣な行為をされたことはなかった。船は海に生きる者の命だ、それを破壊されては彼らも激怒する。
「敵襲だぁぁぁぁ!! 敵襲だ!!」
「港の方で何かが爆発した!! 周辺には何も残っちゃいねーーー!!」
「ひでぇ事をしやがる!! 海軍のやろうか!? 海軍の風上にもおけない振舞!!」
だが、不幸の連鎖は止まらない。突如、周囲にいた海賊達が苦しみだし、全身が緑のカビで覆われて死んだ。地面にも緑のカビが広がり、徐々に侵食域を拡大していく。幾名かが気になり、カビに触れると、人体を汚染し物言わぬ死体に変えられてしまう。
「伝染病か!! この緑の奴に触れるなぁぁぁ!! 逃げろーーー!!」
「逃げろって言ってもどこにだよ!! 港にある海賊船は、爆発でないんだろう!!」
「馬鹿野郎!! こういう時こそ、ティーチ様の所に行くんだよ!! あの人ならきっと何とかしてくれる!!」
海賊島ハチノスの支配者にして、四皇に助けを求めに向かう海賊達。だが、その海賊達を蹂躙するかのように無数の艦砲射撃が彼等を粉砕し、海賊島ハチノスを文字通りハチノスの様に穴だらけにしていった。