UND第十三番艦隊司令のアッチコッチ・ドッチソッチと申します 作:スカウトマニア
火星に広がる都市群を自社ビルの最上階から見下ろしながら、私は自分の仕事の区切りを実感し、この火星で造られるようになったテキーラというお酒を飲み干しました。
喉を焼くのど越しと豊潤な香りに、思わず口元に笑みが浮かび上がります。
この私、地球の言語では「第13・24・32銀河および汎星団間共同体同盟下における軍事協賛組織連合」=UNDの第十三番艦隊司令アッチコッチ・ドッチソッチは、この太陽系での仕事の余韻に浸っているのです。
我々UNDは複数の銀河を跨いで活動する企業です。
この太陽系は自力でのワープ技術を持たない未開の文明ではありましたが、第三惑星地球に誕生した地球人類の戦争に対する高い適応能力に目を付けて、人材のスカウトや有益な技術の入手を目論み、我が艦隊が派遣されたのです。
とはいえ我々はあくまでも企業。間違っても国家や政体ではありません。侵略戦争を仕掛けに来たのではなく、お互いに利益のあるビジネスの為にやってきました。
この三百年前に勃発した“厄災戦”によって一度は滅びかけた地球において、私が来た当初、アーブラウ、SAU、アフリカユニオン、オセアニア連邦と呼ばれる四大勢力が事実上の支配者となり、この他に火星、木星、金星にも住人が居ました。
そして地球圏の治安維持組織であるギャラルホルンが、三百年間、曲がりなりにも地球圏の平穏を保ってきた歴史を持ちます。
ギャラルホルンと四大勢力の支配を維持する為には、多くの死傷者を伴うマッチポンプも厭わず、植民地である火星やスペースコロニーから徹底的に搾取を続ける。
それがこの太陽系と地球人類が三百年間積み上げてきた歴史でした。銀河を見渡せば珍しくもなんともない、ありふれた歴史です。
むしろ厄災戦で滅びず、ここまで復興した底力と努力を私は評価しています。
それに闘争の歴史によって培われた戦闘技術や機動兵器は、賞賛に値します。アストラギウス銀河での戦いでも、実に役に立ってくれることでしょうね。少し前と比べるとあの銀河の情勢も様変わりしましたが、まだまだ優秀な兵士と兵器の需要は盛りだくさんです。
「ふっふっふっふ」
「司令、どうしたんです、急に笑い出して」
思わず私の零した笑みに、オフィスに呼び寄せていた現地住民のオルガ・イツカ君が訝しそうに尋ねてきました。
来客用のソファに腰かけたオルガ君の隣には、彼の幼馴染であり右腕でもある三日月・オーガス君と知恵袋であるビスケット・グリフォン君の姿があります。
「これは失礼。この太陽系での私の仕事もひと段落が着きましたし、三日月君の作ったこのテキーラというお酒もなかなかオツな味で、つい気分が乗ってしまいました」
謝罪の言葉を入れてから、私は彼らの対面に腰かけます。
机の上には、三日月君を中心に手掛けたテキーラやトウモロコシから醸造したウイスキーというお酒のボトルが並んでいます。
ハーフメタルという鉱物以外にはこれといった産物の無い火星で、我々のテラフォーミング技術の後押しも受けて作られたこれらのお酒は、火星の新たな産業、そしてオルガ君が代表を務める“鉄華団”の新たな収入源として期待されているのです。
身長が三メートルある私からすると、どのボトルも物足りない量ですし、これくらいのアルコールならボトル分を一気飲みしても苦ではないのですが、地球人類向けには適量でしょう。
オマケにこの灰色の肌はアルコールをいくら摂取しても赤らむことはありませんし、地球人と同じ位置にある二つの目と額にある第三の目が、とろんと蕩けたりもしません。
「思えばこれらのお酒が出来上がるまで、長い道のりを辿って来たものです。クーデリア・バーンスタイン嬢の護衛をしていた君達との接触から、四大勢力にギャラルホルンとの交渉、地球圏各地に眠っていたモビルアーマーの破壊と回収……」
UNDの保有する機動兵器はこの太陽系の技術水準を超えるものですが、それを運用する兵士達のレベルは地球側の方が上回っており、予想を超える被害をこちらに齎したものです。
幸いだったのは宇宙海賊が跋扈し、ギャラルホルンの暗躍によって地球圏各地に火種が残っていた為、我々UNDの側に引き込める人材が多かったことです。
目の前のオルガ君、三日月君、グリフォン君達の鉄華団ーもそうですし、今は火星独立政府の初代大統領になったクーデリア嬢、経済圏外の一大企業テイワズ、金星圏、四大勢力からの独立を目論むスペースコロニー群……
我々の介入によって四大勢力とギャラルホルンの支配は崩壊し、今やこの太陽系は多くの混沌と波乱、そして活力と野心に満ちています。
散発的な戦闘こそ発生していますが、大きな紛争や戦争には至っておらず、三百年の停滞が良くも悪くも終わったと言えるでしょう。非道を働いていた宇宙海賊の類は、積極的に狩りとって、ほぼ絶滅しましたね。
現状、私と艦隊の一部がここを離れても大きな変化を起きないでしょうし、各勢力からの人材スカウトや技術協力に問題はありません。
ここの人類を滅亡寸前に追いやった無人の殺戮兵器モビルアーマー、それを打ち破ったガンダム・フレームとそれを操る為の人機一体を成す阿頼耶識システム、永久機関の一種であるエイハブ・リアクター、ナノラミネートアーマー……
そして鉄華団の皆さんを筆頭とする優れた人材! ふふふふ、私のこれまでの仕事を振り返ってみても、なかなかのなかなかですよ。
ついつい微笑んでしまう私に、三日月君がいつものじとっとした目を向けてきます。
敵対者には容赦のない彼ですが、敵対していない相手に対しては結構、気を遣ってくれる良い子です、うん。
「それで俺達を呼んだ理由はなんなの? また新しい仕事?」
「ええ。私の次の任地が決まりましてね。ぜひとも、君達、鉄華団に協力をお願いしたい。長期の仕事になりますが、定期的にこちらへ休暇を兼ねて帰還していただいて構いませんし、十分な報酬は用意します」
「そこは今更疑わないよ。契約について、嘘を吐いたことないし」
「ふふふふ、誠実な仕事による信頼の積み重ねこそ、成功の秘訣ですよ」
私はタブレット端末を操作して、机の上に置きました。画面をオルガ君、三日月君、グリフォン君が覗き込み、グリフォン君がふくよかな顔を上げて疑問を口にします。
彼のおばあ様が営んでいた農園には、私もお世話になっています。
元はバイオマス燃料用のトウモロコシを搾取もいいところの安値で買い叩かれていたのを、こちらから太陽系特産の食物として売り出す為に品種を取り換えて欲しい、とお願いして公平な対価をお支払いしています。
下世話な話ですが、祖母君の収入は桁がいくつか増えたはずです。
「あの、ドッチソッチ司令、この地球っていうのは? 現地の年号がコズミック・イラ(CE)とありますが? 翻訳の間違いですか?」
「いえいえ、グリフォン君の疑問はもっともですが、この太陽系とそっくりそのままの環境の、別の銀河にある太陽系と地球ですよ。辿った歴史はずいぶんと違いますが、ま、星系単位のそっくりさんと思ってください」
「星系単位、ですか。そうなると銀河間を移動するんですか? 流石にイサリビでもそれは……」
「その点もご心配なく。イサリビに外付けのワープブースターを用意しますし、それかアーピエス級でもよその星系で手に入れたゼラニオ級でもゼントラーディから鹵獲したスヴァール・サランでも、君達の協力を得られるのなら用立てましょう。安いものですよ」
我々UNDが別の銀河で接触したゾヴォークという勢力や、銀河のあちこちで暴れ回っている宇宙蛮族ゼントラーディの自動軍事工廠から手に入れた戦艦まで、私の権限で用意してみせますとも。
UND最強の第零番艦隊を撃退した“地球”のエクセリオン級なんかは、まだ交渉を持ち始めたばかりで、流石に無理ですけど。
私からの仕事の依頼内容に目を通しながら、オルガ君が追加の質問を口にします。
鉄華団を荒事に頼らず、真っ当な仕事だけでやっていけるようにしたいと考えている彼にとっては、報酬は魅力的でも仕事内容の危険性が引っかかっているのでしょう。
「それでこのコズミック・イラってのは俺達の地球と比べてどうなんです? 単なる情報だけじゃなく、司令の所感を伺いてえ。
UNDの機動兵器は基本的にMSやMAより強い。ここでの戦いは勝手の分かる俺達を使うのは分かりますが、他所の地球となったら俺達の戦い方がどこまで通じるか分かったものじゃないでしょう?」
「そう自分達を過小評価するものではありませんよ。阿頼耶識を抜きにしても、君達の機動兵器への適性はUNDに参加している諸種族の中でもトップクラスです。ガンダム・フレームを始め、目を見張る技術も多い。
CE地球についても、我々だけではまた思わぬ被害を出してしまう、と私は踏んでいます。こちらのPD地球に負けず劣らずの種族単位で戦闘巧者ですからね。
そしてなによりあちらにもMSがあり、戦場の主役を担っているんですよ。偶然の一致とはいえ、実に奇妙でそして面白いでしょう。
それにMS以外にもオリュンポスの機械神の足跡があり、キャンベル星やボアザン星、ベガ星と宇宙の強豪勢力が目を付けているという情報もありますからね」
この太陽系しか知らないオルガ君達にとっては、未知の勢力の名前が出てきたことに意表を突かれた様子で、同時にそんな連中に目を付けられた別の地球に少なからず同情を寄せられたようです。
「そんな場所ですから、頼りになる戦力をなんとしても確保しておきたいんですよ。アストラギウス銀河のアーマードトルーパーや、黎明戦争で手に入れたMSやMAの性能評価試験も行いたいですし。
現地では地球連合とプラントと呼ばれる勢力が、情勢を二分しています。もう少し細かく勢力を区分することも出来ますが、これ以上の情報については依頼を受けてくれてからです」
「一度、持ち帰らせてもらっても構いませんか? この場で決めるには話のスケールが大きすぎる」
「もちろん。準備は入念に行うのが我が艦隊の流儀です。返事は三週間後までにいただければ結構です。今回、現地勢力以外の勢力が多く絡むことになりそうですから、私も気合を入れていきますよ」
鉄華団の三名が退出してから、私はタブレット端末を操作して、新たな情報を表示します。
CE地球に送り込んだ偵察部隊が入手した情報だけでも、目ぼしいものがいくつもあります。
ニュートロン・ジャマー並びにキャンセラー、フェイズシフト装甲、ミラージュ・コロイド技術、光子力エネルギーに超電磁エネルギー、ゲッター線、スーパーコーディネイター……黎明戦争の舞台となった地球でも見かけた単語がチラホラ。
第零番艦隊の壊滅によりその威信に小さくない傷を負った我々UNDが企業としての評価を取り戻す為にも、そして宇宙の災害である宇宙怪獣やインベーダー共に対抗する為にも、優秀な兵士と兵器、新しい顧客と市場はいくらあっても困りません。
CE地球の人々はいったい、どれだけ戦争に長けた種族であるのか、そしてどれだけ我が社のスカウトを受けてくださるのか。
この時の私は実際に何が待ち受けているかも知らず、不安よりも大きな期待を抱いていたのでした。まさか、あそこまでとは、ねえ?
鉄血世界のMSとMAやゾヴォークのゴライクンルから入手した機動兵器、イスルギ重工から購入したアーマードモジュール、ボトムズのAT、スパロボTの地球製兵器+UND製機動兵器が主人公の運用できる兵器となります。
追記
UMD → UNDへ修正しました。