貞操逆転世界の悪徳皇子になった俺、ひたすら魔石を食べて強くなり、破滅フラグを回避します 作:ナロウ・ケイ
…………。
……。
天文塔の内部は、何者かの手による異界化が進んでいた。
いわゆる
瘴気は満ち、空間は歪み、魔物たちがあちらこちらから湧いて出てくる。
成人向け戦略RPG【ナイツ オブ カルマ】の設定用語を借りるのであれば、"空間の位相がずれた状態"とのことらしい。
表現を変えると、
恐らく天文塔の内部は、従来と全く異なる構造物に成り果てているはずである。
「時間をかけても仕方がない、一気に登ろう!」
まごついていても仕方がない。意を決した俺は、仲間たちに声をかけた。
先ほど、天恵の儀で選ばれし天恵を授かった少女たち。
剣聖のイオリ。
近接戦闘に長け、アーツゲージを消費することで二撃、三撃、と連撃を繰り出せる。高いクリティカル率でダメージを稼ぐことができる攻撃要員。
聖者のアナスタシア。
治癒魔術に長ける他、様々な
賢者のキルケ。
攻撃魔術に長ける他、極めて広い
英雄のエイル。
近接戦闘に長け、いかなる攻撃をも引き受けて耐える屈指の頑強性を持つ。様々な
このうち、主人公が選んだ天恵と被る少女は、この場に居合わせないことになる。
序盤の迷宮【天文塔】の攻略は、この【剣聖】【聖者】【賢者】【英雄】で行われる。
……しかし、成人向け戦略RPG【ナイツ オブ カルマ】は非常に難易度が高いことで知られている。
この天文塔にも、数々の罠が張り巡らされているのだ。
踏むだけで床が抜ける罠。
移動する方向が前後左右逆になる罠。
滑ってしまい壁に当たるまで操作不能になる罠。
踏んでしまったが最後、入口まで一瞬で飛ばされてしまう罠。
魔物たちがたくさん待ち構える
──そういった数々の罠が、プレイヤーの行く手を阻む。
魔物自体はそこまで驚異的ではない。
よくいる
何度も何度も戦うことになれば当然消耗は大きくなるし、油断はできない相手なのだが、戦闘に慣れてくるとさほど怖くはない。
この【天文塔】の攻略において、警戒すべきはとにかく罠なのだ。
ようやくすべてを乗り越えて、何とか屋上の鐘楼台まで辿り着くと、そこには
その名も【妖樹アルラウネ】。
天文塔に巣食って、この周辺を迷宮化させた張本人である。
「く、なんて奴だ、強すぎるぞこいつ……!」
攻撃するたびに状態異常になる樹液をまき散らす。
木の蔦による範囲攻撃は当然のこと、
猛毒の鱗粉をもつ蝶たちを従えて、こちらの攻撃を防いだり、一気に集団で襲撃してきたりする。
挙句の果て、時間をかけすぎると「吸収」攻撃によって体力と魔力を回復する始末。
「もっと魂の
力尽きた俺は、ありったけの恨みを妖樹アルラウネへとぶつける。
だがそんなことで手を緩めてくれる甘い敵ではない。妖樹の操る蔦は、俺の首をぎりぎりと締め上げて、やがて俺の命を奪い取った。
成人向け戦略RPG【ナイツ オブ カルマ】において序盤の大きな壁。
それが、この【妖樹アルラウネ】なのである──。
…………。
……。
以上、俺が過去に【ナイツ オブ カルマ】を遊んだ時の回想である。
とにかくここは、ろくでもない場所なのだ。
確かに序盤の
しかし正直、難易度がかなり高いため、万難をなるべく排したい俺からすると、真正面から取り掛かりたくない迷宮でもあった。
(だから焼くんだ)
そうである。焼くのだ。
大聖堂構外へと飛び出した俺とロナと四人、合わせて六名は、かの天文塔が業火に包まれていることを目撃した。作戦成功である。
これでもう、今日の脅威はどこかに去っていったと言えるだろう。
四人はぽかんとしていた。
目の前の光景が信じられないといった様子であった。
外に出たらいきなり天文塔が燃え盛っているなんて、一体誰が想像できるだろうか。
炎に目を奪われている四人をよそに、俺は今回の最大の功労者であるロナをこっそりねぎらった。
なるべく声を潜めて聞かれないように。
「(ロナ、ありがとう)」
「(はい。
「(呪文は?)」
「(刻み終わっております。黒アールヴにおける
全ては準備。
準備こそ全て。
数日前からすべては手筈通りに進んでいた。
この塔が迷宮化すると予め分かっていたなら、焼く準備を最初から進めておけばいいのだ。
植物系の魔物の最大の弱点は、やはり簡単には動けないという点だろう。
黒アールヴにおける
「え、え、え? ど、どういうことにござるか……?」
「あらあらこれは……どうしましょう」
「おー……燃えてんなあ……」
「なんてことかしら……燃えてますわね……」
当惑する四人の少女たち。
剣聖のイオリ。聖者のアナスタシア。賢者のキルケ。英雄のエイル。
それぞれがみんな、言葉を失っている。
燃え盛る塔からは怨嗟の絶叫が聞こえる。断末魔と言ってもいい。
悶えるような、暴れるような、恐ろしい音が絶え間なく続く。
今のうちに、俺は叫んだ。
「くそ! 天文塔に炎が放たれている……! これも、これも魔物の仕業だというのか!」
そう。全ては魔物が悪いのだ。
魔物「解せぬ」