貞操逆転世界の悪徳皇子になった俺、ひたすら魔石を食べて強くなり、破滅フラグを回避します   作:ナロウ・ケイ

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貞操逆転世界の悪徳皇子と、新たなる英傑たち⑤

 

 

 迷宮化(ダンジョン化)してしまった【鐘の塔】がごっそり丸焼けになったとはいえど、それでも魔物が外に脱出できなかったわけではない。

 一部の魔物たちは、この燃え盛る塔の内部からの脱出に成功してしまっていた。

 

 (おおかみ)の魔物、蝙蝠(こうもり)の魔物、百足(むかで)の魔物──そういった魔物たちを一匹一匹丁寧に狩ること。

 それが、今俺たちがやらねばならない作業である。

 

 

 

 俺とロナはもちろんのこと、今日天恵(ジョブクラス)を授かったばかりの四人の少女たちも、文句を言わずに黙々と魔物狩りに従事してくれている。今日いきなりの出来事だったというのに、本当に偉い子たちである。後でしっかりとお礼を言わないといけない。

 この分であれば、もうしばらくすれば、この周辺一帯の安全は確保されるであろう。

 

 魔物の襲撃という一波乱はあったものの、天恵を四つも得てしまった皇子と、偉大なる天恵を授かった四人が、率先して魔物を掃討したのだ。当時の帝国の一般常識である、祈る人(聖職者)、戦う人(騎士)、耕す人(農民)の身分の三つの考え方に照らし合わせても、貴族の責務(ノーブレス・オブリージュ)を十分に果たしたと胸を張って言えるだろう。

 天恵を授かれなかった人たちの嫉妬は、これで帳消しとまではいかなくとも、溜飲が下がるぐらいにはなるのではないか――と思われた。

 

(魔物を狩ると、その魔物の魂の一部が流れ込んでくる。魂を吸収すればするほど、その人の位階(レベル)が成長する)

 

 周囲を索敵しては、まだ生きている魔物に奇襲をかけて仕留めつつ。

 黙々と作業を続けながら、俺は自分の魂の成長を実感していた。

 

 魔物を狩れば狩るだけ、その魔物が経験した知識が、魂の欠片が流れ込んでくる。

 魂の欠片を蓄積することで、人の位階(レベル)は成長する。

 それが成人向け戦略RPG【ナイツ オブ カルマ】の設定である。

 

 こう言ってはあまりにもゲーム的な気がするが、整理すると下記のようになる。

 

 ◇本人の魂の位階(レベル)が関係するもの:

 ・体力:HP  ・魔力:MP

 ・膂力:STR ・頑強:VIT ・敏捷:SPD

 ・魔術:INT ・器用:DEX ・魅力:CHR

 

 ◇天恵(ジョブクラス)位階(レベル)が関係するもの:

 ・技能(スキル)

 ・膂力:STR ・頑強:VIT ・敏捷:SPD

 ・魔術:INT ・器用:DEX ・魅力:CHR

 

 特に考慮が必要なのは後者。

 実は、膂力、頑強、敏捷、魔術、器用、魅力、そのいずれも、天恵(ジョブクラス)を成長させても伸びるものなのだ。

 天恵(ジョブクラス)を複数手に入れた俺がいかに反則的なのか──それは時間が経てば経つほど明るみになるであろう。

 

(あーあ、これでステータスオープンとかできればいいんだけどな。一体自分がどれほど成長しているのか、それを数値化できるだけでも随分便利だよな)

 

 今の俺は、どれだけ成長したのだろうか。

 そういったことを考えるだけでも、俺は心躍るような人間である。

 淡々と育成ゲームに打ち込むことができる人種とでも言うのだろうか。数字が徐々に大きくなっていくのを眺めるのが、何となく好きなのだ。

 それだけに、この世界に来てステータスのようなものを見ることができないのは、非常に残念なことであった。

 

 何せ今回俺は、()()()()()()()()()()()()()。きっと数値の成長の推移を見ていたら、面白くて仕方がなかっただろう。

 

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 

 

 ルーク・マギデリックは皇子である──。

 そのように明かされたとき、少女は純粋に驚きを隠せなかった。

 

(そんな、どうしましょう……。私、まさか、皇子様とお話できてしまうなんて!)

 

 英雄の天恵を授かった少女、エイルは、運命としか言いようがない出会いに舞い上がっていた。

 眉目秀麗。才色兼備。まさしくそんな言葉が似合うような、美しい少年。

 

 彼は確か、自分が【英雄】の天恵を与えられたときにも真っ直ぐ祝福してくれた少年だったはずである。

 

(何てことかしら……私、今、どんな顔をしてますことでしょう!)

 

 火照った頬を冷ますように両手を添えながら、エイルは今日のことを思い返していた。

 

 

 

 実は今日、とても肩身の狭い思いをした瞬間があった。

 それは、精霊石が割れてしまった時である。

 

 真相は定かではない。

 儀式が止まってしまい、一体何事かとみんながざわめき始めたころ、誰かが「精霊石が割れている!」と叫んだのだ。

 遠くにいた彼女には、果たして本当に精霊石が割れてしまったのかどうなのか判別がつかなかった。

 だが、その場の空気にじんわりと、敵意のようなものが滲み出たことだけは覚えている。

 

 ──自分は天恵を貰えなかったのに。

 ──もしかしてこの子が【偉大なる天恵】を貰ってしまったせいではないか。

 

 あ、う、と息が詰まって何も言えなかった。

 だがすぐに、その空気もどこかに霞んで消えて行ってしまった。

 壇上に呼ばれたかと思うと、聖歌隊が自分たちのために聖歌を歌ってくれたからであった。

 

(私、あのままあの場に残っていたら、もしかしたら虐められていたかもしれませんわ……。今でも覚えてますもの)

 

 聖歌が流れている間は、誰も変な噂をしているようには見えなかった。

 

 実はもしかしたら、一部の子供たちは、ひそひそとあれこれ噂をしているのかもしれない。

 だが、精霊石が本当に割れたのかどうなのか、確かめる術もない以上、そんな話は長続きしなかったようにも見える。

 うとうとしている子、隣の子同士でふざけ合っている子、地面の蟻に夢中になっている子──そんな様々な子供たちの表情が見えたが、憤慨しているように見える子は全然いなかった。

 

(後で聞きましたけども、あれも、あの皇子様の計らいなんですってね。見た目が素敵なだけでなく、機転も利くなんて、何て素敵な殿方なのでしょう!)

 

 浮かれているのは自分でも分かり切っている。エイルは白馬の皇子様に夢を見る、ただの田舎の少女でしかなかった。

 

 

 

 …………。

 ……。

 

 

 

『どうか君たちの力を貸してほしい。魔物がこの大聖堂のそばに現れてしまったみたいなんだ』

 

 あの少年にそう頼み込まれた時、エイルは雷に打たれたようになって驚いた。

 続けて少年は、自分が実は皇子の身分であること、精霊石が割れてしまったこと、この場にいる皆を魔物から守りたいことを吐露してくれた。

 

 突然の話で戸惑ってしまったが、これほどの美少年からのお願いであれば断る道理がない。

 

 それに、自分は選ばれた【英雄】である。

 他の少女たちも同様の思いを抱いているようであった。

 

 今日この場で自分が【英雄】に選ばれた理由、それがまさに今の魔物の襲撃に重なっているような気がしたのだ。

 運命に導かれているような、そんな予感があったのだ。

 

 ──決して、あの妙に色気のある少年に頼まれたからではない。

 

『君たちには、後できちんと皇子としてお礼を伝えたい。……胸襟を開いた付き合いができる、個人的な友人としてもね』

 

 耳元で"胸襟を開いた付き合い"とか"個人的な友人"と囁かれた時に感じた、何とも言えないぞわぞわとする背徳的な響きに、年相応の下心を刺激されたわけではない。決して。

 ――決して。

 

 

 

 




 Tips:

 ■【剣聖】イオリ
 近接戦闘に長け、アーツゲージを消費することで二撃、三撃、と連撃を繰り出せる。高いクリティカル率でダメージを稼ぐことができる攻撃要員。
 性欲が凄い。

 ■【聖者】アナスタシア
 治癒魔術に長ける他、様々な支援魔術(バフ)を習得し、味方を保護する結界術まで覚えられる。長期戦や連戦の際には必ず起用される回復要員。
 性欲が凄い。

 ■【賢者】キルケ
 攻撃魔術に長ける他、極めて広い妨害呪文(デバフ)を習得し、特定の魔物を嵌め殺せる。非常に高い火力でダメージを稼ぐことができる攻撃要員。
 性欲が凄い。

 ■【英雄】エイル
 近接戦闘に長け、いかなる攻撃をも引き受けて耐える屈指の頑強性を持つ。様々な支援魔術(バフ)妨害魔術(デバフ)を持ち、反撃系の奥義も持ち合わせる、殴れる防御要員。
 性欲が凄い。
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