貞操逆転世界の悪徳皇子になった俺、ひたすら魔石を食べて強くなり、破滅フラグを回避します   作:ナロウ・ケイ

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貞操逆転世界の悪徳皇子と、新たなる英傑たち⑥

 

 

 ──事態の収束は想定以上に早かった。

 これは、人々をあらかじめ大聖堂構内にかくまうことができたのと、周囲に逃げた魔物たちの掃討が速やかに終わったのと、その二つが理由であった。

 

 原作では、主人公一行はもっと【鐘の塔】の攻略に難航するはずであり、その長引いた時間だけ、魔物が都市部に逃げだしたり死人が出たりして大騒動になったはずなのだが。

 どうやら思った以上に、事は上手く運んだようであった。

 

 

 

『心から感謝申し上げます、ルーク皇子。あなたのおかげで、人々は乱心に至ることなく、この大聖堂構内で安全に待機することができ、事態の速やかな収拾に繋がったのです』

 

 エレオノーラ司教からはしきりに頭を下げられ、握手を求められ、そして手の甲に口づけまでされてしまった。

 

 聖職者からの口づけは、確か"精霊に代わってあなたに加護を"という意味だったはずである。いうなれば、司教様から直々に簡易な洗礼を与えていただいたようなものである。

 これがもしゲーム通りであれば【称号:洗礼者】を取得したり、『カルマ値が+5回復しました』などのメッセージログが出ていたのだろうが、残念ながらこの世界ではそんな情報は見ることができない。

 まあ、そんなものだ。

 

 

 

『え、ええと、えへ、ルーク様も、その、探索者学校に、か、通われる予定なのですわね。へ、へへ。ど、同級生ですわね……』

 

 選ばれた四人の少女たちとも、軽く挨拶をして、また会おうと約束を取り付けた。

 彼女らはとても喜んでいた。多分尻尾があったらぶんぶんと振られていたことだろう。

 どうも四人とも全然、貴族慣れしていないようで、ただの皇子と【偉大なる天恵(アイコニック)】が個人的に友誼を結ぶということの影響を分かっていないように見える。

 

 今後この純朴な子たちが政治利用されないよう、守ってあげないといけないだろう。こういう分不相応な力を突然持ってしまったものは、政治宣伝(プロパガンダ)に転がされてしまうというのが、世の常である。

 いいように利用されるだけ利用されて、後で濡れ衣を着せられるかもしれない。貴族は平気でそういうことをする。

 だからこそ俺が守ってやらないといけないだろう。

 

 

 

 ──全ては驚くほど円満に終わった。

 

 司教とも話を上手に付けて、割れた精霊石を持ち帰ることができた。

 迷宮化(ダンジョン化)した【鐘の塔】の内部から、迷宮核(ダンジョンコア)も手に入れることができた。

 今まで無駄遣いを控えてきた俺個人のお金を工面して、「災害復興の義援金」という扱いで、大火にさらされた鐘の塔の復興整備を取り付けることもできた。

 

 まあ金主になったら感謝されるよね、という当たり前すぎる話である。

 一応、皇室から俺一人だけが名前を出すのは他の皇族への嫌味にあたるかもしれないという理由で、皇女皇子複数名からの義援金という形にしたのだが。

 そのおかげで、俺の懐もさほど痛まない形になり、皇室の連中たちからも「ちょっとは使える奴」と思われるようになり、司教からも感謝してもらえたので、文句はなにもなかった。三方よしとは正にこのことである。

 

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 

 

 この快挙と言ってもいい成果は、他ならないロナの尽力のおかげであった。

 

「君のおかげだよ、ロナ。ほら、見てくれ。精霊石に迷宮核だ。こんな上等な代物、今まで見たことがない」

「ひ、ひ、ひぃ、ふ、ふぅーっ、あっああっ」

 

 ぶじゅ、ぶじゅうっ、と明らかに我慢に失敗しながら、無理矢理魔力を抑え込んでいる音が聞こえた。

 がくがくと下半身を震わせつつ、熱い息を吐きながらも、彼女はどうみても手遅れとしか言いようがない有様の崩壊しかかっている魔力を、強引に絞っていた。

 俺が言う台詞ではないのだが、少々みっともないと思う。

 

「精霊石は、吸い込まれるような虹瑪瑙(イリアスアゲート)だ。半透明の碧玉を思わせるこの精緻な構造が、深い色味を作っているんだ」

「あ、あっ、ああっ、で、出る、出る出るっ出るっ!」

 

 ぶじゅうっ、ぶじゅーっ、と、どんどん崩壊が大雑把になっている。へこへこと腰を浮かせて痴態を晒している。ロナはもう限界のようだった。

 この五年の研鑽の結果、俺だけでなくロナも魔力量は増えた。"魔力を出し切っては回復して"を繰り返しているからかもしれないし、俺と一緒に魔石をつまみ食いしているからかもしれない。

 だが、堪え性がないようでは結局同じである。

 

「この偏四角多面体(トラペゾヘドロン)の迷宮核、これも凄まじいな。確かに空間を歪ませそうな、物々しい瘴気を感じるよ」

「あっあっあっ、あ゛ーっ、あ゛あ゛ーっ!」

「こら駄目だろ」

 

 顔を赤くして、口を魚のようにぱくぱくさせながら。

 絞った弓のように身体をしならせ、その状態からびくん、びくんと身を何度も強く痙攣させて。

 

 辛うじて、本当に辛うじて、放出される魔力の量は堪えられているようだったが「ごめんなさい殿下、もう、もうっ」と言った瞬間に崩壊がきて、ぶじゅじゅじゅぶ──、と止められなくなったようだった。

 

 こうなっては仕方がない。

 全部漏らす前にかき混ぜるしかない。

 

「お゛お゛ぁ、お゛っ、お゛お゛っ──」

「ちょっと手荒でごめんね」

 

 魔力を浸潤させて攪拌すると、彼女の身体はがくがくがくと小刻みに跳ねた。

 

 とりあえず無茶苦茶にかき混ぜたわけじゃないので許してほしい。痛くはないはずである。

 嫌がっている場合、魂が拒絶反応を起こすのだが、そのような反応は見られなかった。

 

 ただ、多少強引になってしまったのは謝らないといけない。

 特にロナの魔力量は結構成長したので、ぐじゅぐじゅにかき混ぜる時間も長くなってしまった。負荷は大きかったはずである。

 

「すまないロナ。精霊石も迷宮核もだけど、こんな上等な魔石を得られるとは思わなくて、ついのめり込んでしまった。……いつもより大変だったと思う」

「……ぁ、ぅ」

 

 とろんとした瞳のロナに、俺は努めて優しく語りかけた。

 法悦と倦怠の混じった表情。あえて例えるなら、どっぷりと情感の沼の中に沈んでいるようであった。

 

 確かアールヴと言えば、もっと気位の高い生物だったと思うが、彼女の潤んだ瞳と緩んだ口元からはそういった角ばったものは感じられなかった。

 

「君のおかげで、素敵な【天恵の儀】になったよ。本当にありがとう。私が五歳の頃に天恵の儀を受けられなかったことを、君はずっと気に病んでいたかもしれないけど、今日全て塗り替えられたよ。全部いい方向に転がったんだ。感謝してるよ、ロナ」

 

 布団の上でロナの髪を柔らかく撫でた。連日の疲れが出たかもしれない。

 彼女の瞳はうとうとし始めていた。

 俺もいい加減、眠たかった。今日はきっと泥のように眠るだろう。

 

 かくして、俺なりの【天恵の儀】は無事に終わった。

 世間から見ればちょっとした小さな冒険に過ぎない一日かもしれないが――俺にとっては、非常に大きな収穫を得られた一日だった。

 

 

 





「あーあ! ドスケベ魔力まぜまぜ我慢崩壊限界無様おもらしトレーニング(追い打ちで魔力ぐちゅぐちゅするやつもあるよ)書きてぇーなァ!」と思ったので書きました。
 楽しかったです。

 次の章からは探索者学校編です。迷宮が学校と合体している「お前いつ授業してるんだよ」ってなる学校をやります。ハクスラ成分多めになると思います。新たな英雄ちゃん(チョロイン)たち四人も大活躍です。

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