貞操逆転世界の悪徳皇子になった俺、ひたすら魔石を食べて強くなり、破滅フラグを回避します   作:ナロウ・ケイ

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 お待たせしました。更新再開します。




幕間:天恵の儀から学園入学まで
閑話:貞操逆転世界の悪徳皇子と、《花園》の暗殺者


 

 

 ルーク皇子が十一歳の頃に、その事件は起きた。

 後に、皇子暗殺未遂事件と噂される事件。

 

『まさか一国の皇子に暗殺者が差し向けられるなんて、その国の威信が疑われると思わないのか?』

 

 ……とは、助かった皇子が思わずこぼした言葉である。

 もちろん、末席の皇子なんて所詮いくらでも代わりがいるのだが、彼の言葉もまた真理を突いていた。

 本件は帝国の醜聞といってもいいぐらいの大事件となった。

 

 助かったのは奇跡としか言いようがなかった。

 

 偶然、五歳の頃から毒素を排出するための訓練を恒常的に続けており。

 偶然、日夜共に過ごす、戦闘の心得もある侍女がいて。

 偶然、その皇子が暗殺者を手籠めにした。

 

 どれ一つとっても眉唾物の話なのだが、本当にその通りなのだから始末に負えない。事実は小説より奇なりとはこのことであろう。

 

 当然、公式には『何もなかった』ことになっている。

 こんな醜聞を帝国が認めるはずがないし、認めてはならないことであった。

 

 つまり、暗殺者は『いなかった』。

 たとえそれが、帝国歴代の暗部組織である《花園(ガーデン)》の精鋭、《蜘蛛》と《蝙蝠》の二人であったとしても。

 いなかったことにならざるを得なかったのだ。

 

 

 

 

《蜘蛛》と《蝙蝠》は幾度となく失敗した。

 

 毒を仕込んでも効かなかった。

 何故かは分からぬが、この皇子は解毒術に優れていた。生物由来の毒は免疫で克服し、体内酵素で分解するという、生体活性の治癒術をほぼ無意識で常に使い続けているらしかった。

 それでも処理しきれないような劇毒は、髪の毛や爪から排出する生理作用を活性化して補っていた。

 化物のような皇子であった。

 

 寝首を掻こうとして失敗した。

 よもや首筋に常に頑強な障壁を張り巡らせているとは想定外であり、しかも精神汚染術式をそこに仕込んでいるとは思わなかった。

 最悪なことに、皇子は感染呪術に極めて深い造詣があるようで、強靭な精神を持つ《蜘蛛》や《蝙蝠》でさえも抵抗はできなかった。

 

 その凄まじさたるや、半殺しにされようが口を割らない、一流の暗殺者である《蜘蛛》と《蝙蝠》が、あらゆる尊厳を破壊し尽くされ、心を折る羽目になったという。

 

 

 

 

 少しだけその様子を詳らかにすると。

 

『あ゛っあ゛っあ゛っあ゛っあ゛っあ゛っあ゛っあ゛っあ゛っあ゛っあ゛っあ゛っ』

『そうじゃないよね、これ以上お腹の中をぐちゅぐちゅにかき混ぜられたくなかったら、ちゃんと知ってることを言わなきゃ』

『あ゛っあ゛っあ゛っあ゛っあ゛っあ゛っあ゛っあ゛っあ゛っあ゛っあ゛っあ゛っ』

『ほら喋らないとずっとかき混ぜるよ。朝が来るまであと五時間あるけど大丈夫? 無理だよね?』

 

 ──自害さえ許さぬ責め苦。

 付け加えるならば、圧倒的な魔力で、暗殺者らの身体に刻まれていた奴隷紋が全部焼かれていた。代わりに『()()契約を刻み込んで上書きしておくよ』と、無邪気にも所有者を上書きされてしまう始末。

 世にも信じられない所業であった。

 

 常人の百倍ほどの冒涜的な魔力の持ち主でもないと出来ない、理屈上ほぼ不可能とされる芸当を、()()()()()()()()()()()()()()()やってのけられてしまった。

 

 わかりやすく言えば、

『透明な水に墨を垂らして、墨により支配されていたグラス』

 ……から、

『百倍以上の果実酒を、どぼどぼどぼどぼどぼ──と溢れんばかりに流し込んで一切合切を洗い流し、さらに口を途中で塞がれてぱんぱんにされて中をぐちゅぐちゅに撹拌されて形状まで変えられて、果実酒専用にされたグラス』

 ……になったとでも言うべきか。

 

 支配権の上書きとは、かくも強引なものであった。要するに『この女は俺のもの』と魂に刻み込むような力任せなやり方であった。

 

 とにかくこの皇子の共感魔術は、悪辣極まりなかった。

 魂に直接手を突っ込まれて、下腹部あたりをぐちゅぐちゅにされ続けた結果、三日間は立つことさえ出来なかったぐらいであった。

 

 

 

 

 

 更に恐ろしいことに、《蜘蛛》と《蝙蝠》については既にこの皇子の知るところだったようで、

 

『この帝国に君たち《花園(ガーデン)》がいることは知っていた、だって君たちは、宮廷の庭園で毒の花を育てているからね』

 

 などと、国家の重要機密たる二人をあっさり知られていた有り様であった。

 それゆえ対策も簡単だと言われてしまった。どのような殺しの手口で来るのか分かっていれば対策もしやすいということだった。だからといって首筋に強固な罠術式を作って仕込んでおくというのは常軌を逸している行為だが。

 

 

 

 

 かくして、帝国の誇る《花園(ガーデン)》の精鋭、《蜘蛛》と《蝙蝠》の二人は、ルーク皇子の麾下に下ることになった。

 

 一方で、ルーク皇子に害意を持つ帝国貴族たちは、その光景を忸怩たる思いで眺めるしかなかった。《花園(ガーデン)》の中でも最高峰の傑作たる二人が失敗した以上、誰が彼を暗殺できようか。誰も出来ないのだ。

 

 それどころか、その二人を無事に生かしていることが不気味極まりない。自害さえ許さず手籠めにしたというのが空恐ろしい。

 

『よくも皇族に楯突いてくれた、単純な死だけで贖えると思うな』

『貴様らの不義の証拠は握っている、生殺与奪の権は全てこちらにある』

 

 そんな暗黙の示唆とも取れるような、あからさまな見せしめであった。

 

 大義はルーク皇子にあった。当たり前のことである。

 暗殺者を仕向けた側の貴族たちは、『皇帝の血筋のものに害をなそうとした』訳であり、『帝国の体面に泥を塗ろうとした』訳でもあり、『帝国の影の忠臣たる《花園(ガーデン)》の存在を私利私欲で使った』という目も当てられない次第であった。

 暗殺に成功していれば、後からいかようにでも情報工作できたであろうが、まさか失敗するなど想定外だったのだろう。

 

 そんな彼らが、今度は真正面からルーク皇子に頼み込まれて、

 

『帝国の常備軍と諸侯らの力関係を是正化するために、私に協力してくれ』

 

 と頭を下げられてしまっては、断る立場があるはずもない。

 派閥を巻き込んで大揉めした議論が、ルーク皇子主導の形で収拾したのは、そう言った背景があってのことだった。

 

 ──というより、帝国最高峰の暗殺者二人を籠絡してしまった皇子に、本気で歯向かおうとする貴族がそもそも少なかったとも言える。もし不興を買って、次にその二人が自分の枕元に訪れたとしたら、と嫌な想像をする貴族は少なくなかった。

 

 結論、ルーク皇子がやろうとしていることは帝国にとって益のあることだったので、反対する大義名分もなく、話は比較的綺麗に妥結した。

 大貴族同士の利害関係も、上手く調整されていたのが決め手であった。

 

 …………。

 ……。

 

 以上が、ルーク皇子が十三歳になるまでに起きた出来事の簡単な説明である。

 一部からは『悪虐非道の皇子』『血も涙もない男』『鬼』『悪魔』と罵られるも、公には聖人君子とされるルーク皇子の、その二面性を裏付ける逸話であった。

 

 なお、《蜘蛛》と《蝙蝠》の二人は、ルーク皇子の留守の間、皇子の母親を護衛する役目を仰せつかっている。

 そのおかげもあってか、ルーク皇子の母親は原作よりも長生きすることになるのだが――その事実を知るものは、ルーク皇子のみであった。

 

 




 Tips:

 ■【蜘蛛】ラネール
 アラクネの亜人娘。天井を伝って音もなく忍び寄り、強靭な糸で獲物の首を絞めて殺害することが得意。
 成人向け戦略RPG【ナイツ オブ カルマ】では強力な暗殺者ユニットとして加入する。
 性欲が凄い。

 ■【蝙蝠】カマソッソ
 蝙蝠の亜人娘。超音波の反響を聞くことで夜闇でも障害物を知覚できるため、自在に飛ぶことができる。獲物の首筋に飛びかかり吸血により殺害するのが得意。
 成人向け戦略RPG【ナイツ オブ カルマ】では強力な暗殺者ユニットとして加入する。
 性欲が凄い。



 ※自己採点は上出来でした。あとは結果発表を待つばかりです。ドキドキしますね。
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