貞操逆転世界の悪徳皇子になった俺、ひたすら魔石を食べて強くなり、破滅フラグを回避します   作:ナロウ・ケイ

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貞操逆転世界の悪徳皇子と、迷宮探索学園の狂騒曲③

 

 

(学園生活どうしようかなあ。〇〇歳までに手を打たないと破滅する! ……みたいなことは半分やっちゃったしなあ)

 

 入学式が終わって、各々が学寮に戻っていくさなか、俺はロナと合流して昼食を食べることにした。

 やけに嬉しそうなロナをよそに、俺は今までのことを振り返った。

 

 ──母上の毒殺未遂事件の阻止。

 ──軍拡に伴う強引な魔物討滅遠征案の阻止。

 ──帝国財政を逼迫する無駄な出費の見直し案の提出。

 

 言葉で言うのはあまりにも簡単だが、いずれも敵を作りかねない大掛かりな仕事であった。

 

 特に後者二つは陸軍派閥へ大きなナタを振るうことになったので、かなりの貴族たちに恨まれていてもおかしくはなかった。

 常備軍ならび諸侯らには、属州の警察業務、土建事業の担い手、護衛役、それらの業務を協力してあたること、ならび農閑期である夏に兵科訓練を行うようにすること、屯田制の導入や予備役の活用案などを申し付けた。また参謀業務の概念が薄く指揮官頼みになっていたので、平時より軍事研究ならび民政・占領行政・庶務などを行う参謀部を立ち上げた。

 

 結論から言うと、軍閥の弱体化ではなく、贅肉の削ぎ落としとして理解された本施策は、かなり大揉めしたものの、

「大失敗に終わる公算が高かった魔物討滅遠征を、検討の解像度を上げることで事前に防げた」

「無闇に肥大化した軍閥の組織整理を進められた意味で国家運営を健全化できた」

 ……という意味で一定の理解を得られた。

 

 表立った敵を作らなかったのは、本当に奇跡といってもよかった。貴族派閥というのは強烈なトップダウン型組織なので、大貴族同士の利害を調整することに腐心し続けることで、何とか収拾をつけたのだ。

 

 …………。

 ……。

 

 以上、俺が五歳から十三歳にかけて整理を図ったというだけの、どうでもいい話である。

 

 つまり俺は今、暇なのだった。

 

(人並みに恋とか青春とかしてもいいよなー)

 

 日頃のことを考えたら、学園生活なんて楽勝極まりない。

 公儀を忘れてハクスラに打ち込める最後の機会なのだ。本気で遊ばないと勿体ない。

 

「……ルーク殿下、その、初日の予定ですが……」

「そうだな、迷宮探索に出かけようじゃないか」

 

 その辺にふよふよと浮いていた精霊を一匹捕まえる。

 魔力で揉んでくすぐると、きゃーきゃーと笑っていた。魔力が成長したおかげなのか、最近ごくたまに精霊が感知できるようになった。恐らくは油断している精霊。もしくは気を許している精霊と言うべきか。普段は全く人の感知するところから外れた世界を生きる精霊たちだが、精霊の密度の高い場所に行くと、気まぐれで声をかけてきたり、からかってきたり、遊んでくれたり、何かを教えてくれたりする。殆どの精霊は《孵化》を迎えておらずちっちゃいので、妖精さんと呼んだほうがイメージしやすいかも知れない。

 こうした精霊たちは、魔力を与えるとよく懐くので、こうして暇を見て魔力を分け与えている。

 感知できてないので断言できないが、恐らく今、俺のそばには十匹以上の精霊が漂っているはずである。

 

 ロナが俺の指先をじっと見ていた。ちょっとくすぐり過ぎたのか、精霊は、はぁはぁと息を荒くして震えていた。

 

 少し気まずい。

 俺は誤魔化すように説明を続けた。

 

迷宮(ダンジョン)化した場所のうち、俺が行きたいと思ってる場所は三つある。旧音楽室、旧図書館、旧天文台だ。理由は分かるか?」

「……はい、失われた古アールヴの詠唱術の楽譜(スコア)の入手、失われた古代基層言語の解読、そして星占術関係の迷宮遺骸物(アーティファクト)の入手……が目的でしたね」

 

 その通り、と俺は頷いた。

 

「旧倉庫の地下の隠し迷宮を調べるのもいいし、呪われた学寮の一室で眠って悪夢の迷宮に挑戦するのもいいんだけど、それらはあくまで寄り道で、さっき言った三つはなるべく早いうちに潜りたい」

「学園中央の『天まで届く時計塔』はどうされますか?」

「ああ……」

 

 ロナの質問に俺は、そういえば言ってなかったなと思い出した。

 迷宮『天まで届く時計塔』は、原作におけるやり込み要素の迷宮(ダンジョン)である。

 登っても登っても終わりがない、未だに不明点が多い迷宮。あちこちに機械仕掛けの謎解き(リドル)要素が施されており、全容を知るものは誰もいない。遥か古代の失われた文明の遺構。

 

 しかし、である。

 

「そこが俺達の住処だよ」

「なるほど……。なるほど?」

 

 大抵のことを全肯定してくれるロナでも、俺の言葉は難しかったらしい。

 

「俺たちはこの学園生活、()()()()()()()()()

「迷宮内に住む……?」

 

 目を丸くして鸚鵡返しするロナは、何だか新鮮だった。可愛い。

 迷宮内に住む、言葉通りである。()()()()()()()()()()()()()()()、迷宮内のほうが安全であろう。今までのことを思ったらそちらのほうがまだまし、と俺は思っているが、ロナは明らかに当惑を隠せないようであった。

 

「学校に来て初日にやることがそれでよいのでしょうか……?」  

 

 普通、貴族学校に来てやることといえば、新入生歓迎会などの懇親会を経ての人脈づくりなのでは、というロナの呟きが聞こえた気がしたが、俺はあえて無視を決め込んだ。

 




 精霊は、魔力をたくさん得て、《孵化》《脱皮》を進め、固有名を授かり、人にその名を認知され、多数の信仰を得ることで、大精霊と呼ばれる存在に至ります。
 宿主を見つけて寄生しようとする個体もいますが、宿主が嫌がったら精霊は長居できずどこかに離れていきます。適合に成功した人間は、《精霊術士》とか《召喚士:精霊》と呼ばれます。

 主人公は既に四十匹ぐらいに寄生されています。全然嫌がらないどころか積極的に集めています。
 精霊に愛されると、危機を教えてくれたり、ちょっと幸運になったり、病気を食べてくれたり、ささやかな願いを叶えてくれたり、色んないいことがありますが、日頃から魔力をつまみ食いされて消費するので、たくさん引き連れすぎるとそれはそれで大変です。


※作者コメント:資格勉強のため一週間ほど更新が滞ります。悪しからずご了承ください。
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