貞操逆転世界の悪徳皇子になった俺、ひたすら魔石を食べて強くなり、破滅フラグを回避します 作:ナロウ・ケイ
植物と共生する、脈動する機巧細工の塔。
その塔は、全てが魔道具と言い換えてもよいほどの巨大建造物であった。
名を『天まで届く時計塔』というその塔は、今でも決まった時間になると鐘を鳴らして讃美歌を歌う。
その内部には魔物たちが数多く蔓延っており、そして独自の生態系を構築している。
そんな塔の内部で、
並大抵の探索者よりも遥かに手荒く、手際よく、とにかく数を多く刈り取ることに特化したような戦いを繰り広げて。あたかも「罠がないことを知っている」「階層の構造は知り尽くしている」「弱点部位を知っている」「精霊たちに魔物の接近を教えてもらっている」と言わんばかりの踏破速度で。
その皇子と侍女は、いかにも古アールヴ流の狩人のような戦い方で、魔物を次々と仕留めながら進んでいた。
それはまだ、帝国探索者大学に来て数日の出来事であった。
◇◇◇
「なるほど、どこの組に入るか《組分けの儀式》を受けてほしいと」
「おっしゃる通りです、ルーク殿」
そんなお願いが舞い込んできたのは、入学してしばらくのことだった。
今日も今日とて
組分けの儀式とは、《勇猛の獅子》《節制の羆》《知恵の大鷲》《正義の双蛇》の四つの学寮に分けられる儀式である。
それぞれどの学寮に属するかでミニゲーム、イベント、入手できるアイテムと称号、そして対立する敵キャラが違ってくる。成人向け戦略RPG【ナイツ オブ カルマ】において全アイテムコンプリートを狙うのであれば、全ての学寮に所属する必要がある。
とはいえ学寮が違っていても、特定のキャラクターと会話できなくなるわけではない。学寮が違っているキャラにも話しかけることはできるし、重要な会話イベントは問題なく進行できる。同じ授業を履修していたら、同じ教室内で合同授業を受けられるので、これを利用して同級生、先輩、後輩の好感度上げを進めることもできる。
要するに《組分けの儀式》は、ちょっとしたおまけ要素のようなものなのだ。
(まあ、その学寮じゃないと入手できない
とはいえ【英雄】【剣聖】【賢者】【聖人】いずれでもない俺にとってはどうでもいい話だった。例えば【英雄】の
それ以外にも色々あるのだが、諸々引っくるめて些事と言って良い。
そう言った訳で俺は、どの学寮に所属することになろうがあまり関係ないと考えていた。
(所属する寮は関係なくて、どちらかというと、
この学園に主人公はいますか、と聞いてもいいのだが、そんなことを聞いたら怪しまれるかもしれない。こっそり名簿を見せてもらってもいいのだが。
正直に言うと、主人公と同じ学寮だったら、喧嘩イベントが発生するかもしれないから別々の寮がいいなと思っているぐらいだった。
などと考えていると。
「実は、どの学寮の寮生たちもルーク殿と同じになることを熱望しておりましてな……」
「え? なんで?」
教員の言葉に、俺は思わず耳を疑った。
まだ入学して数日、しかも入学直後の晩餐会を欠席したような俺が、どうして熱望されるようなことがあるだろうか。
確かに俺は帝国皇家の血を引いている。だがそれだけである。俺がいかにも大したことのない天恵を授かっていることは、周知の事実である。社交界における俺の威光なんて落ちぶれ切っているようなものであり、せいぜい俺に良い所があるとすれば「ちょっと見てくれがいい」ぐらいのもの。もし俺と顔繋ぎできることを人脈形成になると勘違いしている奴がいるなら、それは思い違いというものだ。
「ルーク殿は歴代でも稀に見るほど優秀な成績で試験を合格しております。そんな優秀なルーク殿に少しでもあやかりたいと思う学生たちは、たくさんいるのですよ」
「……そういうものかな。私には分からないが」
正直、そのあたりの機微はよく分からない。
俺はあくまで一介の悪役貴族、ルーク・マギデリックに他ならない。確かに横暴な振る舞いを極めた正史よりは、まだ周囲に好かれている気はするものの、それでもたくさん我儘を言っているし、たくさん敵を作っているし、天恵も大したことがないし、継承権もかなり低い。総じて、好かれる要素があまりない。
確かにここ数年、妙に女の子たちに声をかけられるようになったが、それは多分周囲の人達に愛想よく振る舞うことを頑張っているからであって、
「あ、でも確か劣等生の寄せ集めと言われている学寮があるらしいな」
「……それは」
教員が言い淀んだ。俺の記憶が正しければ、確かそこは《勇猛の獅子》だったはずである。劣等生とは言いすぎだが、確かにここ数年は不真面目な問題児が目立っており、学業面で見てもあまりよろしくない。
きっと教員は、その情報を与えたくなかったのだろう。そうしたら俺が公平な判断を出来ないと考えたに違いない。
となれば俺の答えは自ずと決まってくる。
「その《勇猛の獅子》に入れてくれないだろうか? 私がその学寮を立て直してみせよう」
「──!」
目を丸くした教員に、俺はきちんと告げなおした。
「不真面目な劣等生が集まる学寮なんて、そんな不名誉極まりない評判は、この私が覆してみせよう」
週二回程度しか授業に出ないような俺が、一体何を言い出すのかと鼻で笑われそうな宣言ではあるが。とはいえ俺の知識をもってすれば、同級生たちに勉強を教えることぐらいは造作もないことである。
――白状すると、このとき俺は、自分が何を口走っているかを正しく理解していなかった。
探索者学校という、荒くれ連中であれば際限なく荒れることができるような学校で、「不良が集まる学寮」なんて先入観を持たれている場所がどうなっているか。そしてどんな奴らがそこに蔓延っているか。
いくら学校そのものが貴族学校なんてお上品なものになっていようとも、その最下層の連中はどうなっているのか。
それを軽く見ていたのだ。
不良女どもが裏番長をはっています。
主人公はそれを「まあそういうキャラもいるよね」ぐらいにしか考えてません。
なお、主人公は容赦ないものとする。