貞操逆転世界の悪徳皇子になった俺、ひたすら魔石を食べて強くなり、破滅フラグを回避します   作:ナロウ・ケイ

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貞操逆転世界の悪徳皇子と、迷宮探索学園の狂騒曲⑨

 つい先日、《組み分けの儀式》で魔物が乱入した事件があった。

 黒幕は邪教徒たちである。

 彼ら邪教徒は偏四角多面体(トラペゾヘドロン)の魔石を多数有しており、それらを各地に埋め込んで迷宮化(ダンジョン化)現象を意図的に引き起こす活動を行っていた。

 

 あの日にしても、本来であればもっと多数の魔物が生徒たちを襲うはずであった。晩餐会の会場を脱出不可能な迷宮に変化させて、貴族の子供たちを、無数に湧き出る魔物たちの餌にする予定だったのだ。

 

 それを、どこぞの誰かが魔石に気づいて持ち去ってしまい、何らかの方法で処分してしまったのだが──真相は不明であった。

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 

「よお、元気だったかよルークくん?」

「ちょっと面貸しなよ、なあ」

「全然授業に来ねえから、お姉さんたち、寂しくなっちゃったぜ」

 

 久しぶりに授業に参加した帰り道、制服を着崩した上級生たちがぞろぞろと俺の側に群がってきていた。不良のお姉さんたちに声をかけられるなんて、心当たりは一つしかない。近くに侍っていたロナの警戒が強くなったのを感じつつ、俺は鷹揚に応えた。

 

「寂しかったなんて光栄だね……じゃあ、勝負するかい?」

「あ?」

 

 言っておくがまだ俺は十三歳。成長途中である。背は結構伸びたほうだが、それでも俺より背が高いお姉さんたちだってそれなりにいる。こうも威圧的にガンを飛ばされると少し怖い。

 だが俺とて面子というものがある。

 

「俺と腕相撲で勝負しようよ」

「は? 舐めてんのかこいつ」

「え? 年下の男の子と手ぇ繋ぐのにびびってんの? もしかして処女? しょうもねー」

「──あ?」

 

 ちょっと煽ったら簡単に話が進んだ。処女煽りに弱すぎる。男女比的に処女率が高くて当然なのに、何でこいつらはそんなに気にするのだろうか。

 本当にこいつらは煽り耐性がなさすぎる。

 

 

 

 

 

 …………。

 ……。

 

 

 

 

 

「え? お姉さんたち、腕相撲で腰をへこへこさせてんの? みっともなさすぎじゃない?」

「っ……、っ、くそがぁ……っ!」

 

 勝負はあっさり終わった。誰一人俺に勝てなかったのだ。複数人が立て続けに俺と腕相撲して、誰一人。特筆すべきことはない。

 涙目で睨みつけてくる不良娘たちの耳元で、俺は小声で囁き続けた。

 

「よわよわ女、我慢が下手くそ、即イキ雑魚処女、媚び媚び腰へこイキリ雌」

「──くそがぁっ!」

 

 彼女らの顔が煮上がったように真っ赤になった。だがそれだけだった。

 これだけ罵倒されてなお、彼女たちは机に突っ伏したまま立ち上がろうとしない。もとい、起き上がれない。生まれたての子鹿のように膝が笑っているのがその証拠である。下腹部の魔力をちょっと滅茶苦茶に掻き混ぜた程度でこの有り様である。ロナと比べると口程にもなかった。

 

「言っとくが、身体強化魔術は使ったか? 身体全身に魔力を巡らせて、相手からの妨害魔術を弾いたり、筋力を底上げしたりするのは、身体強化魔術の基礎中の基礎だろ? 探索者学校の魔術基礎で学ぶ初歩的な話じゃないか」

「……うるせぇ」

 

 俺が指摘すると、不良娘はばつが悪そうに顔を顰めた。

 魔力による身体強化は基礎的な技術である。それは間違いない。

 一方で基礎とは奥が深く、達人でさえもそれを極めることが難しい領域の事でもある。基礎を侮ることなかれ。万事に於いて、全身に魔力を張り巡らせて循環させることは役に立つ。

 俺がそう説くと、不良娘たちは、何か感じるものがあったのか、むっつりと黙ったまま聞き入っていた。

 

「別に学校の授業が怠いならそれでいい。手を抜きたくば手を抜けばいい。だがその結果、強くなる技術を疎かにして、年下の異性に打ち負かされて、何が《勇猛の獅子》だ」

「……っ」

「面子がどうのこうの騒いで、自分から勝負をけしかけておいて、蓋を開けてみたら自分の努力不足で負けました、なんてお粗末過ぎるんだよ。強くなりたいなら、頭数だけ揃えるんじゃなくて鍛錬しなよ」

「……ふっ、ぅっ」

 

 泣いちゃった。どうやらぐうの音もでなかったらしい。

 一応補足しておくと、彼女たちも身体強化ぐらいは使っていた。普通の探索者程度の技術はあったと思う。俺が圧倒的魔力で全部滅茶苦茶にしただけで、彼女たちも普通に戦えば普通に強いのだろう。今まで三万個以上の魔石※を喰ってきた俺が相手でさえなければ、こんなことにはなっていなかったに違いない。

 それに、年上の娘たちとは言えども所詮は十代の若者。責め過ぎるのも酷である。

 

「お姉さんたちも、呪い除けのタリスマンを自作するとか、魔力活性の調薬を飲んでから挑むとか、そういうことをしていいよ。丁度そういう探索に役立つ授業はさ、魔道具Ⅰとか調薬Ⅰとかでやってるし」

「……」

「それに授業を頑張ったらご褒美あげるって話、あれまだ生きてるからさ」

「……」

 

 涙目の不良娘たちの頭をわしゃわしゃと撫でつつ、俺は優しく耳打ちした。俺は別に不良娘どもを虐めたい訳では無いのだ。

 

「魔石をくれるなら個人授業や特訓に付き合ってもいいよ。屑魔石とか質の低い魔石でもいいからさ」

「……」

 

 敵対するなら手厳しく、改心するなら友好的に。

 別に俺も悪魔ではない。俺に面を貸せなんて横暴な絡み方をするような奴に、考え方と態度を改めてもらいたいだけなのだ。

 

「じゃあね」

 

 頭を撫でるのをやめると、ぁ、と小さい声が聞こえた。俺は無視をして踵を返した。

 

(そう、不良たちを早めに手懐けておかないとな。邪教徒たちの暗躍を先回りして潰すためにも、手駒はたくさん必要だからな)

 

 そのためにも、まだ戦わなくてはならない奴らがいる。こんな木っ端の不良娘たちを少しずつ撃退しても何にもならない。否、もしかしたら長い目で見たら効果はあるのかもしれないが──本丸を崩さない限りは話が進まないのも事実。

 不良娘たちの幹部三人衆。いずれ彼女らとの衝突は訪れることだった。

 

 




※魔石30000個は、8年×365日×10個(8年間の一日あたり平均魔石摂取量を少なめに平滑化)から算出しています。
※ロナは【3000回】近く魔石浄化のアレをやらされていることになります。
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