貞操逆転世界の悪徳皇子になった俺、ひたすら魔石を食べて強くなり、破滅フラグを回避します 作:ナロウ・ケイ
あくる日、夢に関する文献を図書館で探していると、突如声をかけられた。
「おい、ルーク、てめーはやり過ぎたんだ」
「?」
《勇猛の獅子》の不良娘どもである。よもや勝負でも申し込まれるのでは、と疑念がよぎるも、様子が少々おかしい。
ただ事ではない雰囲気に、ロナが「どうされましたか」と一歩前に出た。図書館で事を構えるのは少々まずい。文献がたくさんある場所で戦闘するのは気が引ける。
相手の出方が分からないので、俺は不良娘どもの発言を待った。
「……てめーを連れてこいとお達しがあった。知ってるだろうが、うちには三人の幹部がいるんだ」
「なるほど。連れてこい、ねえ」
それを聞いて俺は、
原作通りの展開である。
解説すると、学園編の《勇猛の獅子》寮では、下っ端たちと戦闘を繰り返すと、舎弟ポイントという値が溜まっていき勢力ゲージが上昇する。簡単に言えば、叩きのめした下っ端たちがどんどん手下になって勢力が広がっていく……という、不良漫画にありがちな展開であった。現実問題として、不良と不良が喧嘩してすぐ仲直りするはずがないと思うのだが、この世界ではその辺はきっぱりしているのか、『強い奴に付き従う』みたいな価値観がまかり通っている。
そして、勢力ゲージが一定以上に蓄積すると、幹部三人衆と戦うことができる。この分かりやすい脳筋シナリオ、まさに《勇猛の獅子》寮というべきか。
想定通りの展開だったので、俺は安堵した。
「……
「! おい、リディルの姉御とウリーザの姉御のことを馬鹿にするんじゃねえぞ」
思わず口にしてしまった言葉を咎められた。確かに
この二人はまだ説得の余地があると見ていい。もちろん戦って倒してしまっても一向に構わないのだが──。
幹部三人衆の中で、一人見逃してはいけない奴がいる。
「てめー、自分の立場分かってんのか? リディルの姉御とウリーザの姉御だけじゃねえ、ハーレクインの姉御にも目を付けられてるんだぞ?」
「心配してくれているのか?」
「……いや、その、そうじゃねえけどよ」
尋ねると少ししどろもどろな言葉が返ってきた。心配してくれていたのだろう。素直じゃない子である。別にそこは正直に答えてもいいのに、恥ずかしかったのだろうか。
とはいえ、放置できない問題ではある。せっかく夢に関する魔術文献を解読していたところなのに、邪魔が入るようでは仕方がない。
この本は迷宮内でゆっくり読むしかなさそうである。
「……
《勇猛の獅子》寮を陰から支配する不良グループ、帝国
その会頭を務める女番長ワヤと、それを支える幹部三人。
岩腕族のウリーザ。
そして、道化師のハーレクイン。
彼女たちと敵対するのは、もう少し根回しや地盤固めや下仕込みが終わってからにしたかったのだが。
「なんでみんな、そんなに俺に執心してるんだろうな」
「……おい、お前、ちょっとは自分がどう見られているか興味を持てよ」
不良の先輩の言葉を適度に聞き流しつつ、俺は図書館を後にした。
心当たりはないわけではない。確かに面子を潰していると憤慨する輩もいるであろう。
入学して一度も挨拶に来なかった新入生が、不良集団相手に偉そうな口を利いて、さらに下っ端たちを返り討ちにし続けている……というのは、まあ、相手の立場に立って考えると面白くない話だと思う。しかも俺は身分を隠しているので、ただの田舎貴族だと思われているわけで。
単なる田舎者が、年長相手に失礼を働いている──というように考える奴もいるのだ。いてもおかしくない。
ちょっと目を付けられすぎている気がしなくもないが。
(ひょっとすると、上級生たちにモテてる……ってことはないか、ないな、流石に。ないよな。田舎者丸出しの生意気な年下の男よりは、身なりが良くて上品で大人な男の方がモテる気がするし)
俺を集団で囲って
物を隠されたり、水をぶっかけられたり、そんないじめみたいな目に遭うんじゃないかと腹を括っていたのだが、そんな気配は微塵もなかった。
寮室じゃなくて迷宮内に住んでいるから物を隠したりできないというのも多分あると思うが、何というか、敵対している感じがあまりしない。
(夢の研究もさっさと進めたいんだけどな、まあ仕方ないよな)
幹部三人衆との戦いは近い。となれば、下仕込みを急ぐ必要がある。
手筈は整っているのだが、魔石の調達はもうひと頑張りしないとまずい──。
◇◇◇
「ほー? 坊やァ、
「正気も正気さ。俺は勝てない勝負はしない主義なんでね」
その日の晩。《勇猛の獅子》の学生食堂には、多数の観衆が押しかけて集まっていた。
新入生の少年と、
話題性抜群の勝負。噂は一瞬にしてあちこちに広まった。
平たく言えば、生意気な少年が酔いつぶれる醜態を見届けたいということで、色んな奴らの好奇心をそそってしまったらしい。中央に立つ俺とリディルに、様々な視線が降り注いでいた。
(【
爆発する歓声の中、どちらが勝つか、胴元が声を張り上げて観客をあおっている。
赤色と青色のどちらのチップを買うだけでいい。分かりやすい仕組みだ。
俺はロナに軍資金をたっぷりと渡しておいた。勿論、俺が勝つ方に全賭けである。現在の払い戻し倍率は、俺が約5倍弱、相手が約1.2倍ぐらいであろうか。この状況なら一発当てれば大儲けできる。
もちろん学内において賭博行為は禁止されている。だが、お祭り事で人に
実は原作でも、《勇猛の獅子》寮の裏賭博でチップを稼いでレアアイテムと交換できるようになっている。ミニゲーム要素というやつだ。いつもならテキサスホールデムポーカーやチンチロ等を遊ぶことができるのだが、今回はあえて酒飲み勝負にした。
何故ならば。
(酒飲み勝負なら、俺が勝つって予想できるやつは少ないだろうし、俺が勝った時の見返りが大きいからな)
幹部三人衆の一人、リディルとの一騎打ち。
この勝負において俺は、既に布石を打ち終わっていた。
※リディルは原作【ナイツ オブ カルマ】で味方になるネームドユニットではありません。
※性欲は強いです。