貞操逆転世界の悪徳皇子になった俺、ひたすら魔石を食べて強くなり、破滅フラグを回避します 作:ナロウ・ケイ
唐突だが、ここで原作【ナイツ オブ カルマ】に存在する『媚薬』について説明する。
ガラナ、マカ、黒コショウ、
この世界において、貴族が子孫を残すのは重要な責務であった。それゆえに媚薬についても真剣に効用の検討が続けられた。魔女術を始めとした薬学研究の文献は、この世界に多数存在する。
そして、酒と媚薬は相性がいい。
アルコールを摂取した人体は、毛細血管が開き、血液の流れる量が増加する。媚薬をそこに混ぜてしまったら、全身を巡るのが非常に速くなってしまう。ただでさえアルコールの摂取で気分が高揚して陽気になっているところに、そんな媚薬が入ってしまったらとんでもない。
無論、薬理作用によっては危険であるため、例えば降圧剤のように血圧を下げる作用の薬や、経口抗凝固剤のように血液の凝固を妨げる薬などは、酒類との同時摂取を禁忌とされている。
薬学教本に載っているような主だった媚薬は、そういった酒類との同時服用を検証して、危険なものを取り除いている。
逆に言えば、この長い歴史を紐解くと、
「ふーっ……♥ ふーっ……♥」
「おや、顔が赤いけど大丈夫かな。お嬢さんにはちょっとこのお酒は早かったみたいだね」
八杯目。
小さなショットグラスに注がれた、薬草の匂いの強い
飲んでいるのは東方からもたらされたとされる、漢方系の強いお酒である。
その名も【
この強烈な酒は、相手に飲ませることに成功すると、ほぼ確実にお楽しみイベントを発生させることができるという非常に便利な道具であり、R-18系イベントスチルを収集しようとする紳士たちが大変お世話になったアイテムである。
当然、八杯も飲む阿呆は想定されていない。
俺よりも背が高い、気の強そうな綺麗系のお姉さんが、半分涙目で内股になって震えているのは、そう言った深い理由があった。
「くっ……くそぉ……っ♥ 幹部のアタシが、こんなガキに、負ける訳にはっ……♥」
媚薬が効いているかどうかの判別は簡単で、語尾に「♥」が付いていたら媚薬が効いている証拠。ゲームの世界なら台詞の表記を見れば簡単に分かるのだが、残念ながらここは現実世界。声の甘えや媚びで判断するしかない。そして、
(小さい頃から解毒の魔術の練習を毎日やってきてよかったな。ここにきて成果が出ている)
俺は九杯目をするりと飲みながら、悦に浸っていた。
どうやらアルコール類も毒扱いとして判定されるようで、代謝活性による分解促進が非常に効果的であった。今なら、俺の汗や呼気から強いアルコール成分が検出されるであろう。勿論、予め【
「ふーっ……♥ ふーっ……♥」
この漢方酒は、ただでさえ非常に強いお酒である。
普通の人は一杯飲むぐらいで精一杯で、ショットグラスとはいえ何度も飲み干すようなものではない。五杯も飲めば凡人の処理できる酒量をとうに超える。
かくいう俺も九杯飲んだが、少々やり過ぎたかもしれない。常識的な酒豪の域を超えている。正直媚薬成分の方は打ち消しきれてないので、身体が火照ってきているのだが、それにしても強すぎるだろう。
「お水飲む?」
「い……、いらねぇ……く、そぉ……♥」
九杯目をちろり、ちろり、と舐めるように少しずつ口に含むリディル。
俺はもう十杯目に手を出して口に含んでいた。それにしてもこの酒は、どことなく薬臭いがコクがあって旨い酒である。炭酸で割るとクラフトコーラっぽくなって美味しいと思う。
暇なので耳元で「負けろ、早く負けろ、みっともないぞ、言い訳せずに無様に負けろ」と囁いて煽っておく。相手のリディルの腰元がびくついているのが分かった。
「ふーっ……♥ ふーっ……♥」
(媚薬効果のある強いお酒を選んで正解だったな、戦意を折るのは早そうだ。それに、そもそもこの食堂で一番強いお酒はこの
本当に恐れ入るばかりだが、【ナイツ オブ カルマ】開発陣はいい趣味をしている。媚薬効果のあるお酒がたくさん世間に流通しているという設定も驚きだが、まあ、それはそれである。
あと俺が媚薬酒を飲むということで、
などと悦に浸っていた俺は、ふと閃いた。
どうせならこの際、もう少し配下を増やしてもいいかもしれない。戦って倒したら配下を増やせる、という脳筋シナリオの《勇猛の獅子》寮だが、今の状況を利用すれば、わざわざ怪我のリスクを負ってまで戦わなくても安全に配下を増やせそうな気がする。あと十人ぐらい酒飲み勝負に引きずり込むぐらいなら大丈夫だろう。
「なあ皆! リディルに加勢したいやつ、いる? 纏めて俺が相手するけど」
「!?」
「何人も束になってやってくるとちょっと俺が不利だから……そうだな、代表を四〜五人選んでくれよ。……賭けは継続してくれていい。俺が勝つと思ったら青のチップを、俺が負けると思ったら赤のチップを買ってくれ」
俺は声を張り上げて観衆に呼びかけた。返答はない。ざわめきと当惑と期待感が膨らんでいるのが俺にも伝わってくる。
急な提案で戸惑っているみたいだが、私も私もと飛び込みたがっている声がちらほら聞こえてくる。かかった、と俺は思った。餌に食いついてくるやつは絶対にいると思っていた。
上手く行った。これで更に賭けは活発化し、儲けの額が大きくなるだろう。
「ま……まだ、アタシは……負けてなんかぁ……♥」
顔を赤らめてふらついた状態のリディルも、俺にかぶりつくようにして息も絶え絶えで気炎を吐いた。だが覇気はない。虚勢だけで張り合っているようなものだ。現に、下腹部を指で突いたら「ッ♥」と腰をはねさせてへたりこんでしまった。
「この中に、リディルがやられてるのに日和ってるやついる? いねぇよなあ!?」
「や、やられてなんかぁ……♥」
まだ酒に手を伸ばそうとするリディルの手を握って制止する。大丈夫だとは思うが、飲み過ぎたら俺が解毒する必要がある。
「私が相手になる!」「アタイもだ!」「生意気言ってんじゃねえぞ!」
威勢のいい声が飛び込む。
意を決したのかぞろぞろと参加者が名乗りを上げて前に出てきた。こうなるのは火を見るよりも明らかだった。
「分かった、じゃあカウンターに並んでグラスを受け取ってくれ。一杯ずついこうじゃないか……」
夜は長い。まだまだ戦いは続きそうである。酒精は片っ端から分解できているので全然効いてないが、俺の周りの小精霊たちが“はわー”“ほえー”と酔っているのが聞こえてくる。とはいえ俺も無制限に飲めるわけではない。どこかで限界がくるはずなのだ。
そうは言うものの、俺は不思議と負ける気はしなかった。竜人族さえも俺に歯が立たないと実証できた。つまり今の俺のやり方は間違っていない。ロナから白い目を向けられているような気がしたが、俺は何も気にせずにグラスに手を伸ばした。
※この世界では13歳から成人として認められています。
※この描写は未成年の飲酒を推奨するものではありません。