貞操逆転世界の悪徳皇子になった俺、ひたすら魔石を食べて強くなり、破滅フラグを回避します 作:ナロウ・ケイ
帝国
当然《勇猛の獅子》寮の生徒たちからは一目置かれるようになり、廊下を歩いていても「おはようございます、若!」と挨拶されるようになった。
正直、若頭になんかなるつもりはなかった。なかったのだが、そういう決まりなので仕方がない。
「若、お勤めご苦労様です!」
「若、今日の上納です! 薬草学のレポートです。お納めください!」
「若、必修科目の
……等。
こんなに持て囃されては少々面はゆいのだが、結果が出ているなら問題ない。
学校に来たなら勉強しろ、というのは当たり前の話である。
俺が入学して以来、《勇猛の獅子》寮はみるみるよくなっていった。
下らないいじめは徹底的に根絶し、首謀者はもれなく俺の再教育対象になった。勉強なんてくだらない、という倦んだ雰囲気は一変した。とにかく若の命令であれば従え、と襟元を正すように言いつけたのだ。
(とはいえ、依然として反発も大きいけどな)
もちろん反対する声も多く上がった。
勉強など所詮は貴族の戯れ、
中には俺に嫌がらせの矛先を向けようと、食べ物に下剤を盛ろうとしたり、ゴミを投げつけようとする奴も現れた。
番長であるワヤもこれには苦い顔をしていた。悪いやつはどこまでいっても悪いことをするのだ。
当然、天誅の対象である。
縄で縛り上げてから
俺に魔力で抵抗できる奴なんか見たこともない。
(若は教官や他寮に媚びを売っているだけの軟弱もの……ねえ。よく分からんが、突っ張る気持ちだけは一丁前にある癖に、学業に手を抜くのは甘ったれだよな)
彼らの気持ちも分からないではない。
元より、すっかり貴族学校然としてしまったこの帝国探索者学校は、貴族派閥のようなものが脈々と出来てしまっている。弱い派閥の貴族や、貴族派閥に入っていない庶民の子たちは、いじめの対象になってしまう。
そういったものたちから身を守るため、帝国
とはいえ、発足の経緯はそんな義侠心からでも、実態はただの子供同士のいがみ合いだ。それに、不良のたむろする風潮が続いてしまったせいなのか、組織の体質としてあまり良くない方向に傾いている。上回生からのしごきや体罰が黙認される風潮も、大貴族の子供であればこそむしろいくらでも汚く罵っていいという風潮も、どれもこれも良くない。
結局、お嬢様お坊ちゃまの貴族派閥に反目するがあまり、不良然とした振る舞いを是認してきたのが事の全て。
意地を張る行動が積み重なって、こういう訳の分からないことになっているのだ。
彼らには悪いが、将来のことを考えても、少しずつ襟を正していく必要がある。くだらない意地で将来を棒に振るようなことはあってはいけない。
ちょっとしたお節介という奴だ。
俺は自己本位な性格だが、こういうお節介を焼くことも嫌いではない。
(まあでも、迷宮攻略を手伝ってくれる奴らがたくさん増えて、俺としては大助かりなんだけどな)
一方、若頭になって嬉しいこともあった。子分が増えたのだ。
授業の空き時間で、俺と一緒に魔物狩りに出かけてくれる人が増えたり、魔物を狩るための罠を代わりに点検してくれたり、荷物を運んでくれたり、魔石を上納してくれるようになったり。
要するに、人数を活かした大規模な魔物狩りが出来るようになったのだ。
こうなると迷宮探索は早く進む。
低難易度の迷宮に限れば、攻略は段違いに速くなった。
例えば、迷宮の一つ【旧図書館】は、攻略が劇的に進んだ迷宮の一つである。
低階層~中階層までの範囲は既に
特に俺は、幻想生物の出現場所と時刻とパターンを知っているので、どんな罠が有効かという情報を色々と知っている。《勇猛の獅子》寮の皆に手伝ってもらって、たくさん網罠を編んでもらって、図書館生物をさくさく倒して、紙片を回収して……といういい循環が出来上がっていた。
これがもし、俺とロナだけで【旧図書館】の攻略を進めることになっていたとしたら、かなり苦労したに違いない。運よく四人の英雄たちの力を借りられたとしても、かなり時間がかかっただろう。
それもこれも、幹部を一人倒して実力を認められたおかげである。
本当に《勇猛の獅子》寮の連中は分かりやすくていい。
「若! せっかくなので私にも盃を分けてください!」
「あー……いや、あの日の飲み比べは盃分けってわけじゃないんだけど」
「!?」
……とまあ、妙な迫り方をする子分が増えたのはちょっと困ったが。
◇◇◇
「なあルーク坊や。あんたも肝が据わってんな。岩腕族であるこのウリーザ様に魔石採掘競争で勝負たぁ、どういう度胸をしてるんだい」
「よろしく頼むよ、ウリーザ。どうぞお手柔らかに」
幹部との闘いは一人だけでは終わらない。番長のワヤを除くと、幹部は三人衆とされている。
竜人族のリディルの他に残り二人、岩腕族のウリーザと、道化のハーレクインが待ち構えているのだ。
その中の一人、ウリーザは非常に分かりやすい女傑であった。
要は脳筋なのだ。
「本当に地下鍾乳洞でいいのかい? あそこには何度か潜ったことがあるが、アタシたちにちょっと有利過ぎないかね? 負けても言い訳するんじゃないよ」
「構わないよ」
軽く屈伸運動をしながら、俺はあっさりと答えた。自信満々の俺と対照的に、むしろ彼女の方が気遣わしげな様子である。ウリーザの人となりがよく分かる。よく言えば正々堂々、悪く言えば狡いことが出来ない性格なのだ。
学園敷地にある地下鍾乳洞。
複雑に迷宮化したその場所は、地質調査にうってつけである他、地脈から染み出る魔力の影響で魔石の産出が盛んであり、鉱石学科の管理の元で日々調査が行われている。
そして、今回はその地下鍾乳洞での採掘勝負を行おうとしていた。
原作通りの展開であれば、本来ウリーザとは相撲勝負をすることになっているのだが、それでは勿体なさすぎるので、学園側とも掛け合って採掘勝負ということにさせてもらっている。何が勿体ないのかというと、この迷宮は
「じゃあ……約束通り、どっちがより大きな結晶を持ってこれるか勝負だね」
「その言葉、忘れたら駄目だからな」
今回の採掘勝負は団体戦。
勝敗は簡単で、一日かけて採掘勝負を行い、どちらがより大きな結晶を持って帰れるかで勝敗が決まる。
こちらは六名。俺とロナに、四人の英雄たちを加えた盤石の体制である。
向こうは八名。岩腕族のウリーザを筆頭に、力自慢の連中が揃った強力な相手である。敵に不足なしとはこのことだ。
人数の差があることもあって、俺たちが勝てると予想する者たちは少ない様子であった。というより、一年生だらけの即席
実際のところ、魔石が良く採れる採掘スポットを知っているのは向こうの方である。こういう勝負は経験がものをいうので、俺たちが一朝一夕でどうにかできる話ではない。
「なぁルーク坊や、今回は賭けはしないのかい? リディルとの一騎打ちではえらく盛り上がったそうじゃないか」
「してもいいけど、俺が勝つよ?」
俺は軽口を返した。正直なところ、既に称号を獲得し終えた後なので、賭けを開く意味はあまりない。
お金稼ぎにはなるかもしれないが、正直、そんなに金策に困っていないのが実情である。確かに最近、竜の髭などの高価な素材を購入することが続いているが、それぐらいの資金の余力ならある。
──あるのだが。
「じゃあ、俺の方が大きい結晶を持って帰ると思う人は青色のチップを、ウリーザの方が大きい結晶を持って帰ると思う人は赤いチップを買ってくれ。……賭けに負けた奴のチップ代で、ぱーっと打ち上げでも開こうじゃないか」
俺の提案を受けて、わっと歓声が上がった。途端に「絶対に勝てよ!」「お前ら負けたら承知しねーぞ!」と野次が盛んになった。賭け事になるや否やこれである。本当に《勇猛の獅子》寮の皆は、気持ちがいいほど阿呆ばかりであった。
子分の不良娘どもに胴元の仕事を任せつつ、俺は軽く全身のストレッチを始めた。
今からやるのは、いわばANY%のRTAみたいなものだ。この世界にグリッチ行為は存在しないが、それに似た行為はいくらでも存在するのだ。
2024/11/17:
いつの間にか、オリジナル累計300位に入ってました!
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