貞操逆転世界の悪徳皇子になった俺、ひたすら魔石を食べて強くなり、破滅フラグを回避します   作:ナロウ・ケイ

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※この話は、後で学園編のどこかに挿入する予定です。



幕間:本編の息抜き
閑話:貞操逆転世界の悪徳皇子と、次なる英傑たち(過去話)


 ある日の午後、探索者学校の構内にある迷宮【天まで届く時計塔】にて。

 中層の階層守護者(ボス)との戦闘に挑んだ英傑四人たちは、よく見かける恒例の展開を繰り広げていた。

 

 

 

 

 

「──(ポーション)! 飲まずにはいられません!」

 

 英傑パーティの唯一の回復役。

 解呪と解毒もお手の物。野営時の魔除け結界作成まで出来る、そんな【聖人】の弱点、それは薬酒(ポーション)をやたらめったら消費することである。

 魔力消費が激しいため、しょっちゅう薬酒(ポーション)のお世話になるため、すぐに中毒症状になる役職である。

 

 ポーション中毒になった人間は、一時的な幻覚症状に襲われる。具体的には、装備を勝手に脱ぐ、勝手に寝る、仲間に抱きつく(仲間が行動不能)などの行動を取る。

 修道院育ちの箱入り娘、アナスタシアは、頑張りすぎて薬酒(ポーション)がぶ飲みをしすぎるがあまり、しょっちゅうトラブルを引き起こすのだった。

 今回の奇行は、装備脱ぎ+抱き着き行動だった。

 

「あっ♥ ちょ、やめ、あっ♥」

 

 英傑パーティの回避盾にして物理火力役。

 剣聖(イオリ)は、追い詰められるほど集中力が増して一撃必殺の剣術が研ぎ澄まされる天恵持ちである。集中力に呼応する力、気力──魔力と同じ概念だが、より東洋系の呪術体系である気功等の技術に長けている。

 中心となる考え方は、仙術。外界からの『気』を取り込み、『経絡』を刺激し続けながら、『循環』を外部に留め続けて漏らさないようにする。具体的には、呼吸我慢、絶頂我慢、おしっこ我慢──なのだが、惣賀の一族たるイオリは三つを同時に行いながら、成功率は八割弱と極めて高い。つまり二割失敗することもあるが、それはもう仕方がないと割り切る他ない。

 おっぱいクソデカ酒乱聖女にお腹から抱きつかれてしまったイオリは、わき腹をくすぐられ、全部ド派手に失敗してしまった。全部。惣賀衆のくのいち若頭にあるまじき大失態だが、今日は失敗の日だった。

 

「ひーん、ですわー! 蜂の群れって、盾で殴っても殴っても効果が薄いですわー!?」

 

 英傑パーティの物理盾。

 皆の頼れる盾役(タンク)の脳筋令嬢、英雄(エイル)は、大量に装備品を消費する特殊天恵【英雄】に就いている。明らかに身体の持たないような大ダメージを受けても、装備品がその負傷を肩代わりする──という特殊な能力を持っている。

 そして、両手に持っているクソデカ頑丈盾が一番頑丈なので、それが最後に崩壊する。壊れるのは大抵、着用している装備が最初だった。いわゆる大破。女騎士家系の彼女が、家宝の鎧を受け継いでいない最大の理由がそれである。

 戦いが激化して、ついに英雄(エイル)は全裸盾になった(何故か髪紐や靴は破けない)。

 とにかく英雄(エイル)は、負傷に関する危機感が薄い。なぜなら装備がダメージを肩代わりしてくれるためである。そのため、触手に捕らわれたり、大型魔獣に捕食されたり、とにかく猪突猛進に突っ込んでは、相手に捕まって、しばしば屈辱的な姿(くっころポーズ)を取らされたりもする。

 今回の英雄(エイル)は、人の顔ぐらいの大きさを誇る巨大蜂の集団に襲われて装備を失っていた。

 

「あーあ⋯⋯今日はダメな日だな……」

 

 聖人(アナスタシア)剣聖(イオリ)が使い物にならなくなって、英雄(エイル)の処理能力が飽和して。

 既に劣勢にある状況を鑑みて、賢者(キルケ)が諦め半ばにぼやいた。【賢者】も魔力消費が非常に激しいため、大抵ポーション中毒になる天恵である。だが、賢者(キルケ)が崩壊すると本当にこのパーティが崩壊しかねないため、彼女は、魔力消費をほどほどに抑えながら、戦局を俯瞰して捉えて、頭脳役として的確な指示を続けてきた。

 

 今回の魔物『惑える女王蜂』は、想定以上に手強かった。迷宮『天まで届く時計塔』の中層域を根城にするこの女王蜂は、一筋縄ではいかないらしい。中途半端な魔術攻撃も物理攻撃も、大量の兵隊蜂たちに阻まれて女王蜂まで届かない。さりとて大型魔術を放とうとすると、物量が押し寄せてきて時間を与えてくれない。致命的な一撃は放ってこないが、こちらも決定打を放てない、そんな消耗戦になっていた。となると当然、物量に大きな優位性のある女王蜂の方に利がある。

 こうなってはもう、戦線離脱をする他ない。

 

 魔力を全部消費して、賢者(キルケ)は転移術を発動させた。緊急転移時には装備品を持っていけないので、全裸女四人組(うち一名失禁)が突然学園内に出現することになるが、もはや仕方がない。気持ちを切り替えていく必要があるだろう。

 

 

 

 

 

 迷宮『天まで届く時計塔』の中核部(中層あたり)の守護者、『惑える女王蜂』を相手に苦戦していた四人は、今宵も悲惨な姿で作戦会議に臨んでいた。頼れる親友のルーク皇子に服を買いに行ってもらっている間、全員全裸だった。

 四人ともそれぞれの学生寮に部屋はあるのだが、別々の寮で暮らすのは嫌だということで近場の宿舎を自費で借りて共同生活をしている。その宿舎は隙間風が吹いて少々肌寒かった。全裸なら尚更である。

 

「煙や炎に弱いってことはわかったんだけどな……効いている気はしねえ」

「キルケの爆炎攻撃は、兵隊蜂たちが肉壁になって防がれてしまいますわよね」

 

 賢者(キルケ)のぼやきに英雄(エイル)がため息混じりで返す。

 確かに今回、魔術火力役の賢者(キルケ)が今一つ活躍出来ていない。複数課題はあるが、話し合いの中で上がった一つである。物量が絡む戦いは、賢者(キルケ)の魔術が打開の鍵になることが多いのだが、今回はその手ごたえがなかった。

 

「昆虫が嫌いそうな匂いの香水って、もう在庫なかったでござるか?」

「一本だけあったけど飲んじゃった……」

「飲むなアホ聖女」

「ひぃん」

 

 聖人(アナスタシア)が頭をはたかれていた。

 どのみち香水一本だけじゃ何もできないのだが、まさか飲むような大馬鹿者がいるとは思わなかった。聖女(アナスタシア)は深刻なポーション中毒に罹患(りかん)しているらしい。腹を下さないのか心配だったが、どうも彼女は頑丈な胃袋を持っているらしく、平然としていた。

 ぱっと思いつくような対処法は、今のところない。あの物量の巨大蜂をどうやって捌くか、そして女王蜂をどのように倒すか、何か妙案があればいいのだが──。

 

「──女王蜂? ああ、あいつらね」

「あ、皇子」

 

 そんなこんなで議論を続けていると、待望の皇子がやってきた。

 少年期ということで身長はそれなりに育ちつつあり、手のひらの血管や、首筋や鎖骨の影が艶めかしい。涼しげな鼻筋が魅力的だった。やたらと格好いい。声も甘くて耳が溶けそうだった。

 今更になって全裸が恥ずかしくなった賢者(キルケ)は、身を小さく縮めた。他の阿呆三人は見られても何も困りませんが、みたいな態度で堂々としていたが、賢者(キルケ)はそういう類の人間ではない。

 目のやりどころに困って顔をそらした皇子は(そういう仕草が可愛くて悪戯心がくすぐられる)、女王蜂なら、と腕を組みながら意見をよこしてくれた。

 

「あの女王蜂なら、英雄(エイル)が油を被って火だるまで巣に突っ込めばいいだけの話だぞ」

「鬼かお前」

「女王蜂みたいなアリ科の昆虫はな、構造上、頸部が弱いんだ。火だるまで熱々の英雄(エイル)が、頸部をがんがん盾で殴ったらいつかへし折れる。そしたら勝ちだな」

 

 身体の横にある気門(呼吸用の穴)を蜂蜜で塞いでもいい、としれっと宣う皇子はとことん鬼だった。

 予想以上に暴力的な解決方法だった。

 だが確かに、英雄(エイル)の負担さえ度外視すれば、有望な選択のように思われた。

 

 

 

 

 

 ちなみに火だるま戦略は上手く行った。

 いくら巨大蜂の群れとはいっても、重い盾を両手に持って突貫してくる人間を押し返すことは能わない。ましてや火だるまのため、迂闊に近付いたら焼け死ぬ。そうでなくとも、羽が焼けたら地面を這いまわるしか出来ず、戦闘にあまり役立たなくなってしまう。火だるま突撃攻撃は、あらゆる意味で理にかなっていた。

 皇子の神算鬼謀ぶりというべきか、人間では普通思いつかないような常軌を逸した発想は、舌を巻くものがあった。

 

 なお余談として、熱さに耐えて火だるま突貫し、またもや全裸で帰投する羽目になった英雄(エイル)には、労いの恩賞として、皇子直々に精油揉み解し(オイルマッサージ)の御褒美があった──ということだけは、一言申し添えておく。

 





 男女逆に置き換えると、スタイル抜群な世間知らずお嬢様が「(下半身中心に)マッサージして差し上げますわ〜!」ってやるやつです。
 魔力/気の巡りを良くするために、全身の経絡を刺激します。主人公は効率厨なので多少エロかろうがエロくなかろうが気にせず揉みほぐします。
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