貞操逆転世界の悪徳皇子になった俺、ひたすら魔石を食べて強くなり、破滅フラグを回避します   作:ナロウ・ケイ

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貞操逆転世界の悪徳皇子と、狂瀾怒濤の新天地③

 地獄への片道切符と呼ばれた地域があった。

 名をジャヴァリ森林地域。まだ未開拓の森であり、帝国も積極的にその地を支配しようとはしてこなかった。

 有用な資源が取れる割には開拓が進んでいないこの場所は、様々な危険をはらんでいた。

 

 ──各地に立ち込める、薄い毒霧。

 ──肉食の獰猛な魚が住まう、危険な川。

 ──獰猛で小賢しい小鬼(ゴブリン)たちの群れ。

 

 碌な街道も舗装されておらず、低湿地もそのまま放置されており、いうなればジャヴァリ森林地域は『見捨てられた』土地となっていた。

 

(帝国は膨張主義的だ。魔物の大発生や疫病流行があったにも関わらず、遠征と入植を繰り返し、未だに領土欲を隠そうともしない。そんな帝国でもなお、ジャヴァリ森林地域には手をこまねいている)

 

 東方の未開拓地。修道院による開墾作業が幾たびも中断されている、曰く付きの地域。

 この地は【黒き森の氏族】を始めとする、蛮族──帝国貴族らは蛮族と呼んでいるが、要するに少数民族らの縄張りとなっていた。

 

 森林は資源の宝庫である。

 木材はもちろんのこと、薬草も食料も調達できる他、鉱脈が眠っている可能性もある。ジャヴァリ森林地域もその例に漏れず、希少な樹木や特殊な薬草が生育している。

 ここに、森の管理人を自称する精人族(エルフ)たちをはじめ、竜人族(ドラゴニアン)やら獣人族(セリアンスロープ)などの()()()()が多数生息しているため、帝国にとっては『気持ちの悪い場所』『原住民を追い出して制圧したい場所』と認識されている。

 

 そういった事情があるため、普通であればジャヴァリ遠征軍が組織され、入植活動が行われてもおかしくないのだが、いろんな理由から頓挫している。

 西方の星教国、北方の商業王国、南方の君主国。

 その三勢力を睨みながら、ジャヴァリ森林地域に軍事力を割き続けるのは困難だったのだ。全ては優先順位の問題である。要するに、抵抗の激しい【黒き森の氏族】などの少数民族たちを完膚なきまでに支配するぐらいであれば、どこかほどほどの所で落としどころを付けて、もっと簡単な場所の開拓や他三方の勢力の牽制に軍事力を回したい──と帝国貴族たちは考えたのだ。

 

(はっきり言って貧乏くじのように見えるだろうな。ろくに経済発展してないのに、ちょっとしくじったら内乱や疫病で潰れるからな)

 

 そんな曰く付きの場所に、皇族が赴任することになった。誰から見てもただの左遷だろう。

 ジャヴァリ森林地域は名を変え、『帝国直轄地域 ジャヴァリ領』となった。その領主として俺が派遣される。領主になるといっても独立領主ではなく、公的にはあくまで帝国のもの扱い。継承権末席の皇子の政治力では、精々こんなものであろう。開拓を頑張っても、利権ごと全部、帝国が掌握するのだから旨味がない。勿論やりようはあるかも知れないが、それなら他の土地の開拓を頑張るのが普通である。

 

 まあ、()()()()()()()()のだが。

 

「ぅぅ……殿下ぁ……私は……殿下ぁ……」

 

 ぼろぼろに泣いて使い物にならないロナを傍目に、俺は急いで準備を進めていた。

 きっと、故郷のそばに戻って来ることが出来て嬉しいのだろう。あるいは、仕える主人が危険な僻地に飛ばされることを悲しんでいるのか。一応政治的な話をすると、こうやって皇族が直々に赴任することによって、ジャヴァリ森林地域、もとい黒き森(シュヴァルツヴァルト)は『見捨てられていない』という主張(メッセージ)にもなる。政治的判断が全く入っていないわけではないのだ。

 

「【蜘蛛(ラネール)】、【蝙蝠(カマソッソ)】」

「はっ」

「こちらに」

 

 短い返事と共に足元に侍る二人。元隠密というだけあって機敏な動きである。

 新しい領地に赴任することになっても、きっとこの二人は活躍してくれるに違いなかった。

 

「お前たち二人に命じていた人材登用の件についてだが、経過はどうだ?」

「概ね良好です。殿下の指示通り、それぞれ渡りはついております。感触としては様々でしたが、雇用条件次第かと。一部を除いて、新天地に赴任する抵抗自体はそれほどありませんでした」

「ふむ」

「詳細はこちらに」

 

 報告も上々である。端的にまとめられた報告資料に目を通しながら、俺は頬を緩めた。

 学園へ留学している間、彼女ら二人には任務を与えていた。簡単に言えば、有用な人材の登用である。原作【ナイツ・オブ・カルマ】を知っている俺には分かるが、まあ、有能な人物を今のうちに好条件でかき集めておけばこの先はほぼ安泰、という話だった。

 

 帝都を騒がせる義賊、【怪傑少女】リコッタ。

 後にヒュドラウリス商会の会頭になる少女、【金の天秤】アンシュ・ヒュドラウリス。

 北海に名を轟かせる海賊女王、【雷霆】メアリー。

 星霊教会の重役の一人、【歴史を学ぶもの】エレオノーラ司教。

 

 いずれも原作【ナイツ・オブ・カルマ】の重要人物であり、代えの利かない特殊能力持ちである。この四人に加え、他にも複数名に声をかけることで、俺はこれからの領地経営を円滑に運ぼうとしていた。

 そもそも既に、手元には【狩人】ロナ、【蜘蛛】ラネール、【蝙蝠】カマソッソ、そして【影使い】ワヤの四人がいるのだ。使役魔獣である結晶人形(クリスタルゴーレム)を含めると、四人+四人+一匹で九名。鬼に金棒とはこのことである。

 欲を言えばここに、四人の英傑たち(英雄エイラ、剣聖イオリ、賢者キルケ、聖者アナスタシア)も連れて行きたかったのだが、それは出来すぎというものであろう。現段階ではこれで十分以上である。

 今回の赴任、周囲の人間がどれほど心配しているのかは分からないが、俺からすれば心配事はほとんど無いも同然であった。

 

「なるほど、ジャヴァリ領のような危険な場所にも臆さず、ついてきてくれるか。喜ばしいことだ」

「面会なさいますか?」

「そうだな。挨拶は必要だろう」

「承知しました、手配します」

 

 ……とまあ、人材の話ばかりをしているものの、それ以外の準備は全然整っていない。元より急な話なので、幾ばくか準備不足になるのは仕方がないだろう。

 新天地の開拓と領地経営に向けて、やることは山積みである。

 

蜘蛛(ラネール)】と【蝙蝠(カマソッソ)】が手伝ってくれているものの、色々と強引な話になっている。だがそれでも関係各位に頭を下げて、協力を取り付けて、できる限りの下準備を済ませるに越したことはない。

 勿論、ゆっくり準備を済ませてもいいのだが、早ければ早いほど()()()()()

 

 

 

「何せ、俺は()()()()()()()()()()()()()からな」

 

 

 

 当然である。

 世界樹の場所を知っていたら世界樹の傍に行くに決まっている。精霊たちに愛されていないと足を踏み入れることが出来ないとはいえ、今の俺であれば恐らくその地にたどり着くことができる。

 全ては、そのためのジャヴァリ領の開拓なのだ。

 

 

 




 世界樹についてはどこかで深く掘り下げたいと思います。
 他にも、邪教徒の目的や、原作【ナイツ・オブ・カルマ】の物語、そのあたりについてもどこかでいずれ場を設けて説明を行うつもりです。
 今は世界樹というものがあるんだなあ、とだけ考えていただいたらOKです。

 Q:ロナは何故泣いたの?
 A:帝国貴族たちの気分次第で、いつ故郷が焼かれてもおかしくない状況下だったが、ルーク殿下が直轄領にする提案を帝国議会で通したことで、その可能性が大きく削がれたから。
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