貞操逆転世界の悪徳皇子になった俺、ひたすら魔石を食べて強くなり、破滅フラグを回避します 作:ナロウ・ケイ
従者である黒アールヴのロナから「頭が溶けそうになる」と言われるような、毎日の魔石浄化を繰り返しつつ。
読み書き、歴史、作法、それらの勉強を家庭教師から教わりつつ。
秘密の魔術研鑽を続けて、早くも数ヶ月が経った。
(魔石の毒は、未だに慣れないな……。くそ、頭が偉く痛いし、寒気が止まらない。鼻血も出るし、喉は妙にいがらっぽい)
魔石を食べ続けている影響なのか、俺の体調は全然優れなかった。
やはり、魔石の毒素の作用だろうか。ロナの手を借りながら魔石浄化を行っているものの、毒素は多少残留する。その影響は無視できなかった。
治癒魔術だけでは追っつかない。
もはや藁にも縋る思いでロナに無理を言って、薬草を煎じた茶を作ってもらって、それを飲んだりもしてみた。
聞くところによるとこれは、黒アールヴの伝統の飲みものらしいが、本当に効果があるのかは分からない。
心なしか喉の痛みだけは多少落ち着いた気がするが、その程度だった。
(でも、俺はこれをやめるわけにはいかない。魔力を鍛えなくちゃいけないんだ)
それでもなお、俺は魔石を食し続けていた。
理由は単純明快。
魔力容量を広げるため。
今の俺は、魔物を倒したりすることが出来ない。
つまり魔石を食べることが、魔力容量を広げる唯一の方法になる。
魔力を鍛えている理由も簡単だった。原作の展開が過酷すぎるのだ。いざ本編が始まったら、多分、帝国の混乱に巻き込まれてあっさり死ぬ。原作通りの展開を辿ったら死ぬ。原作通りの展開を辿らなかった場合も、市民革命が起こって、皇族は処刑される可能性が高い。つまり死ぬ。
政治的立ち回りだけで回避できればいいのだが、大疫病とか、魔物襲来とか、邪教徒とか、そういう政治力だけではどうにもならない不確定要素がまだまだ待ち構えているので、できる限り魔力を蓄えておきたいのだ。
魔力があれば肉体は丈夫になる。健康第一。当たり前のことだ。
「ルーク殿下……」
「ロナか。大丈夫、大丈夫だよ。安心して。本当に命に別状はないから」
うなされすぎて、少しやつれ気味になった俺に対して、ロナは心配そうに声をかけてきた。丁度いい、と俺は思った。気分転換がしたかったのだ。
「そうだ。もしよかったら稽古しようよ。身体を動かしたら気が紛れるだろう? 確かロナは【黒き森の氏族】の狩人だったんだろう? 近接格闘の技術に少しばかり心得があると聞いているけど」
「……。どうかゆっくり休養を取ってご自愛なさいませ、ルーク殿下。今の殿下には休息が必要です」
「駄目だ」
「殿下」
なおも諌めようとするロナに対して、俺は無理矢理に命令した。いついかなる時も主人の身の心配とは、まさに侍女の鑑である。
だが俺には、この程度の疲れであれば
「駄目だよロナ。ほら短剣を持って。古アールヴ流の近接格闘術──魔力を身に纏って身体強化する戦闘術を、私に教えてくれ」
「あっ……」
無理矢理、木彫りの短めの模造剣をロナに持たせつつ、俺も軽く身構えた。
戦闘準備はばっちりである。
足は多少ふらつくが、今立っているのは芝生なので、転んでもそんなに痛くはない。
「どうした? それとも私に
「……っ」
ロナの面持ちに少し陰が見えた。
頬が紅潮している。
恐らくは屈辱の怒りか、もしくは恥ずかしさか。
無理もない。彼女とて、まだまだうら若き少女である。見たところ彼女はまだ十四歳程度。アールヴなので人間とは身体の成長の早さが異なるものの(確か数十年は生きていると聞いた)、未成年であることに違いはない。多感な頃にこんな仕打ちが続いては腹が立つだろう。
「すまない、煽るようなことを言って悪かった。でも(俺みたいな)生意気なやつには躾が必要だろう? こういうやり方のほうが、ロナも乗り気になるんじゃないか?」
「……っ、ぅ、し、躾……」
ほら生意気な五歳児を躾けるつもりで、と発破をかける。
ちゃんと伝わったかは分からない。
「……分かりました。その、殿下……お手柔らかに、お願いします」
「?」
お手柔らかにと頼むのは、教えを請う立場の俺の言葉だと思うのだが。
とりあえず「手心は加えないよ」と答えると、ロナは泣きそうな顔で顔を赤らめていた。
何か食い違いがあるような気がするが、あまり気にしないことにした。
ロナ視点では「(躾の)手心は加えないよ」と言ってるように聞こえています。