貞操逆転世界の悪徳皇子になった俺、ひたすら魔石を食べて強くなり、破滅フラグを回避します   作:ナロウ・ケイ

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貞操逆転世界の悪徳皇子と、狂瀾怒濤の新天地⑦:周囲への挨拶回り

 Q:森林地域の領地で、川を開拓して、挙句の果てに海上保険の整備をしようとするのは何故なの? 馬鹿なの? 

 A:海上保険の制度をあえて陸地で考案検討することで間諜や密偵の目を逃れることを初期目的とし、また保険商材を海上保険に限らず幅広く実証実験することで帝国内の横展開を円滑に行う目的があるため。

(本音):原作では、将来アンシュが保険の概念を考案して成功するので、それを前倒しただけ。どうせ成功する。

 

 

 

 

 

 ……………………。

 …………。

 

 

 

 

 

 川の整備を急激な早さで推し進める傍ら、俺とロナは周辺の村落に挨拶周りに向かっていた。

 正確には、俺は荷運びの休憩ついでに近くの村落に足を運んでいるという形になるが、大した差はない。

 一部の人々は『なんと、殿下直々に!』と畏まって態度を改めていたが、何と言うことはない。俺は人より何倍もの重荷を持ち運べるので、労働効率的にはこの方がいい。大量の魔力を持ち備えているので、魔術を使って、埋まった巨岩を掘り出したり破砕したりすることもできる。ふんぞり返ることだけが皇子の仕事ではないのだ。

 

 だから、どこぞの氏族の長老とかに『若いというのに殊勝である。それも帝国の王の血筋を引いてなおこの謙虚さか。我々のような小さな部族にも自ら足を踏み入れて挨拶しに参られた、その心意気にどうか饗応したい』と大げさに喜ばれた時は、何とも面はゆい気持ちになった。

 

 今までこの地を治めてきた者たちの粗略さが窺い知れる。否、統治がそもそも機能してなかったともいえる。どこぞのよく分からない義勇軍の何某が、まあこんなよく分からない僻地に細かい統治を敷いていたとは思えない。法制度も機能していないし、当然と言えば当然。

 

 とりあえず挨拶回りでは『川を整備して、付近の魔物を粗方駆逐しています』ということで喜んでもらい、挨拶ついでに、労働支援、調薬品類の交易などいくつか簡単な約束を取り付けて、どんどん次に次に進んでいった。

 

 何がいいかというと、《影の巨人(バロール)》を労働力として駆り出せるところである。

 例えば、トロールやキュクロプスに悩まされているんです、という声があれば、それよりデカい《影の巨人(バロール)》で倒す。凶悪な小鬼魔(ゴブリン)がそばに住み着いていると聞けば、その付近を踏みつぶす。

 小競り合いしている集落とか、普人族と関わりなど持ちたくないと強固な態度の集落もあったが、まあ、顔立ちのいい俺が上手い事いって絆すか、圧倒的巨体の《影の巨人(バロール)》を見せるか、周辺に棲む害獣やら魔物やらを狩るかすれば、大抵は態度を軟化させてくれた。

 

『そなたが伝承の⋯⋯《巨人従える麗しの君》では⋯⋯?』

『御冗談を、私はただの子供ですよ』

 

 流石に伝承の人物扱いされたときは、思わず笑ってしまったが。

 

 ──閑話休題。

 挨拶回りといっても、常に快く受け入れてくれるわけではなかった。中には敵対的な集落もあって、身柄を拘束されそうになったこともあったほどである。

 もちろん俺のほうが膂力もあって、しかも影の巨人を従えているので、大事には至らなかった。大事には至らなかったが、後先考えないやつもいるものである。常に理性的に対話できる氏族が相手とは限らない。俺を人質にすれば色々要求できる、という程度の浅はかな考えしか持っていない奴もいる。

 

 だがそれはそれで結構。挨拶回りの目的の一部には"味方に引き込めない奴の炙り出し"というものも含まれている。各々の村落の実情視察、今後の河川工事候補エリアの安全状況の確認、魔物の出没率の観測、大まかな地勢図の作成、そこに並行して、『新たにこの地を治める偉い人が来たのだ』という住民への意識づけをさせる目的、それぞれの氏族との関係性の構築がある。恭順しないものはしないでいい。俺は制圧者や支配者(dominator)ではない。俺の役割はあくまで、どこの連中と手を組めば大きい事業計画を円滑に進められそうか目算を立てることにある。

 宮廷政治のしょうもない足の引っ張り合いを思えば、こんなのは児戯と言ってよい。敵意や下心を剥き出しにしてぶつかってくるなら可愛いものだ。

 

 ちなみに、ロナの出身である【黒き森の氏族】は、このジャヴァリ森林地域の力関係でも相当上位に位置していたらしく、彼女の案内が非常に役立ったことは言うまでもない。

 高貴なる血筋である彼女を従えているということで反感を買いながらも、丁重な対応で溜飲を下げてもらい、厚い庇護の下で重用していることに一定の理解を示してもらう──という分かりやすいやり方。力関係を一目瞭然にする、古来からの手法である。

 

 ルーク皇子という、新たな指導者を受け入れてもらうために。

 赴任早々、挨拶回りをしたという実績は、きっと後々に、周囲の助力を借りる必要がある場面になって、効果をもたらしてくれるはずだと思われた。

 

(まあ、ロナも久しぶりに家族や友人と顔合わせできて喜んでくれたしな。挨拶回りの影の目的はこれで達成できたわけだ)

 

 彼女の故郷の地に腰を落ち着けながら、俺はぼんやり物思いに耽っていた。

 我ながら部下に甘すぎるかもしれない。だが俺は、ロナのためであればと、少しだけ日程調整に余裕を持たせてロナが羽を伸ばせるようにこっそりと取り計らっていた。

 この時代、戦争奴隷として人質に取られた高貴な身分の者が、大手を振って故郷に帰ることができるなんて中々ないことであった。異郷の地で幽閉されたり、外交道具として使われたり、王侯貴族に見初められて結婚したり、末路は様々あるが、故郷に無事に帰れる事例は少ない。

 色々と功労者であるロナのためであれば、これぐらいのことは、上司として取り計らってあげたいもの。目くじら立てるような話ではない。挨拶回りという名目で、彼女が故郷に立ち寄ることぐらい、全然問題はなかった。

 

『かっこつけー』

『ねー』

 

 耳元でくすくすと小さな精霊たちが笑っている。昔から、精霊の声が時々聞こえる体質だったが、魔力量が増えたおかげか前よりも声を聞く機会が増えた気がする。この辺一帯の空気中の魔力濃度が高いというのも関係しているかもしれない。

 

(お前たち()()()()()()も反対しなかったからね。悪い予兆があるなら教えてくれるはずだから、問題ないって思ったのさ)

 

 そばの精霊を一匹捕まえ指先でくすぐってやる。きゃあきゃあと笑い声。

 どうやら俺は、まだまだ精霊に愛されているらしい。精霊たちは、宿主の魔力食い虫でもあるが、幸運をもたらしてくれる守護霊のような存在でもあるので、とても心強かった。特に、何が起きるか分からない異郷の地にあっては、彼女たちの協力は不可欠であった。

 

 

 

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