貞操逆転世界の悪徳皇子になった俺、ひたすら魔石を食べて強くなり、破滅フラグを回避します   作:ナロウ・ケイ

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貞操逆転世界の悪徳皇子と、狂瀾怒濤の新天地⑧:堤防・水車・絶叫部屋

 

 ──馬鹿が沢山石を積み上げました、というぐらいに規模の大きな、馬鹿の堤防が出来上がった。

 

 石の隙間から大量に水が漏れるし、焼いた粘土が追いつかないし、熟練の石工がいないので強度にも疑問があるし、わざわざ堰にする意味はあるのかという話ではあるのだが、灌漑用水や上水道用水、工業用水などの利水面から考えると、堤防があった方が当然いい。

 正直、火山灰を材料としたローマンコンクリートやモルタルを使えたら理想的ではあるのだが、このジャヴァリ森林地域において火山灰資源(凝灰岩など)はそれほど潤沢なものではない。もっともっと山側に行って採掘を進めたら供給の目途は立つが、今のところは、野面積みで十分である。

 

 大した勾配や高さを作れず幅が広くなりがちな野面積みでも、建築速度の観点では圧倒的。影の巨人と水晶人形(クリスタルゴーレム)のおかげで気が付いたらどんどん広がっている、という状態であった。

 

「……殿下、こんな穴だらけの堤防でよいのでしょうか。石工の登用であれば、私が《花園》の伝手を借りることもできますが」

「いいよいいよ。俺がやりたいのは、最終的にはアーマー・レビー工法ってやつでね。あとから被せものすりゃいいんだよ」

「? なるほど……?」

 

蜘蛛(ラネール)》の疑問も尤もだが、俺はとにかく早さを求めていた。

 現在未整備の川を、とりあえずざっくり上流まで整備する、というところまでやりきってから次を考えても問題はない。現に川の流量は増えた。

 伴って、井堰をあちこちに作ったので、日用の取り水には苦労しなくなった。川沿いの集落の住民たちから大いに感謝されたのは言うまでもない。

 

『……昔は、上流下流で、水路を勝手に変えようとする連中といがみ合っておりましてな』

『若様が来られる前までは、血で血を洗うような醜い戦いをしておったのです』

 

 川の水の恩恵は非常に大きい。弱小集落たちにおいては、川の傍流に追いやられているらしかった。この森林の力関係の版図はそのようになっている。

 そのため、傍流側の集落では、上流の集落がどれくらい水を引いたかを見張るような、徹底した相互監視まで敷いてあったと伝え聞いた。河の流量が豊富なうちはいいが、日照りで雨が少なくなったとき、死活問題になってくるのだ。

 だが俺がやってきて、そういった問題をあっという間に整備してしまったので、いがみ合う集落たちの因縁も勝手に解決してしまったようであった。これにて一件落着。非力な弱小集落から厚く慕われる若様の出来上がり、と相成ったわけで。

 

『いきなりやって来て、あれこれと居丈高に口を出す若様に腹を立てる者もおりましたが、まあ、これで誰も逆らいますまい』

『若様や。この老婆めが、ひとつ加護を授けましょう。この首飾りは(まじな)いを施してます。我々のような貧しいものにはこれが精一杯です、受け取ってくださらんか』

 

 等、熱烈な歓迎が俺を待ち構えていた。

 もっと遠大な計画を立てていた俺からすると、こんな初歩的なところで感謝をされても気が引けるばかりであった。

 主流を整備して運河にして、上流から下流まで物資を運搬できるようにして、さらに水車を作って動力を確保する……というのが計画の基幹なのだが、まだ整備しか手を付けられていない。その整備に至っても、速度重視で途中というのが正直なところなのだが。

 この調子では、水車の普及の段階でまたひと悶着起きても不思議ではない。またもや、【黒き森の氏族】の血筋たるロナの威光を借りなくてはならないかもしれない。

 

「獣の肉、果物、茸、薬草、毛皮の服、織物、骨飾り、弓と槍、後は奴隷ね……。たくさん貢ぎ物が来るのはいいことだが、保存する倉が追いつかないな」

「それだけの大事業をなさっているのです、殿下」

「そういうものかな。ほとんどロナのお陰だと思うけど」

「御戯れを」

 

 妙に上機嫌なロナと共に、俺は帝都向かいの報告書を作成していた。

 

 小規模な水車をいくつか試験導入し、木の実をすり潰す製粉作業や、木の皮等をすり潰して繊維にする作業を自動化する、という計画。

 水晶人形(クリスタルゴーレム)に質の悪い鉱石をたらふく食べさせて、純化・精錬された鉱石をたくさん集める計画。

 冬季の薪の消費量を減らすため、集落の全家屋を泥で塗り固め、気密性と保温性を向上させる計画。

 同様に、薪の消費量を減らすため、銅鏡やガラスで集光する『太陽炉』を作って、鉄板を熱してパンを焼いたり、温水を作ったりする計画。

 

 まだまだ交易による利益を得られる段階にはなく、本当に基礎的な部分にしか手をつけられていないものの、内政計画の滑り出しはまずまず順調であった。

 

「そういえば……《蜘蛛(ラネール)》と《蝙蝠(カマソッソ)》が捕まえた、怪しい密偵たちはどうなっている?」

「洞窟地下の()()()()に閉じ込めております」

「口を割りそうか?」

「何人かは」

 

 ロナの報告は淡々としていた。

 絶叫部屋とは、絶叫するビーバーをたくさん集めた喧しい部屋のことである。あいつらときたら一生叫んでいるので、ずっと喧しくて眠る暇もないぐらいなのだ。縛った罪人をここに何日か放置しておくだけで、大抵の連中は音を上げる。

 毛皮と肉を得る以外の、思わぬ有効活用手段。実際、ビーバーのおかげで精神的に参って、寝返った密偵も何人か出てきたところであった。

 

「てっきり帝都から派遣された密偵かと思ったが、邪教徒関係の連中も混じっているらしいな」

「何か目を付けられるような覚えはありますでしょうか、殿下」

「ないな」

 

 困った話である。後ろめたいことなんて何もないのだが。確かに、いくつか邪教団の計画を潰して派手に罪を擦り付けたが、その程度に過ぎない。

 

「頑固な連中にも早く口を割ってほしいものだな。最悪、()()()()()()しかなくなってしまう」

「……」

 

 ロナが渋い表情をした。

 正直、別にそれぐらいやってもいい。やってもいいのだが、我が儘を言うと、ここ数日ほど異常に忙しいので、時間を割きたくないところである。ロナ達と魔石浄化する時間を最優先で確保するために、無用な稼働は極力圧縮したいのが本音であった。

 

「……全く、人の恨みは買いたくないものだな」

「……そうですね」

 

 よく分からない奴に恨まれるのは迷惑というもの。俺は暇ではないのだ。

 

 

 

 ──ちなみに、これはどうでもいい話だが、絶叫部屋のおかげでこの地域一帯の犯罪率が劇的に減ったのではないか、という噂がまことしやかに囁かれていた。そんなに効果覿面とは思ってもいなかった。馬鹿と鋏は使いよう、とはよく言ったもの。ふざけて作った地下独房が大活躍するとは、全く予想外もいいところであった。

 

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