貞操逆転世界の悪徳皇子になった俺、ひたすら魔石を食べて強くなり、破滅フラグを回避します 作:ナロウ・ケイ
成人向け戦略RPG【ナイツ オブ カルマ】の学園編は、色んなユニットと友好関係を結びながら、自分の伸ばしたい
決められた期間の間、決められた回数の選択肢をこなして極限まで能力値を高める育成シミュレーション──いわゆるサクセスパート。最初に所属する寮毎に異なるシナリオを進めながら、全然違うミニゲーム、全然違うギミック、全然違うイベントをこなして、卒業までに優秀無比なユニットを作り上げるのだ。
舎弟たちをどんどん従えて、勢力図をどんどん塗り替えて特殊称号を獲得し、大量の舎弟たちによる情熱タッグで大量経験点を獲得する《勇猛の獅子》編。
師範から与えられる
プロデューサー兼アイドルの立場で、
ドーピング精進料理の錬金レシピをたくさん集めてたくさん食べて、特殊体質や加護を獲得し、錬金・食戟バトルの勝利を目指す《正義の双蛇》編。
そのいずれにおいても、複数の育成パターンが存在し、【
そして、四人の英傑たちは──。
「うおおおおおおおお、裏ボス・裏生徒会の風紀委員長、撃破ですわぁあああああ!」
「……試練:おしっこ我慢ド根性一〇〇〇枚競技かるた、三回目の挑戦でクリアでござる!」
「お、オレ、アイドルの登竜門、
「あららー!? 深夜酒の捗る贅沢おつまみばっかり作ってたのに、一体私、これからどうなっちゃうのでしょう……!?」
無二の友人である、ルーク皇子の残した手記の下で、順当にそれぞれの役割を果たしつつあった。
助言は端的であった。例えば『この学園で【英雄の盾】【剣聖の宝刀】【賢者の書】【聖者の杖】を探せ』等の指示が記載されていたが、その保管場所から入手方法まで事細かに情報が網羅されていた。四人にとって知らない情報ばかりではあったものの、そのいずれもが己の成長に有益であり、そして的確であった。
それは、『足りないものを補うにはどうすればよいか』という分析ではなかったが、『もし圧倒的に強くなるならばこういったやり方がある』という情報をごまんと揃えてある、いわば指南書のようなものだった。
「体重移動、動体視力、空間把握……盾術の奥は深いですわね! まだまだやってやりますわよー!」
「……え? 拙者、今度は激辛大食い競争しなきゃいけないでござるか……? キッツ……♡」
「無理だよぉ……オレみてーなクソブス……こんなフリフリの恰好したら死んじゃう……」
「ううう……神よ……どうか、酒カス終わりメシのレシピを……痛風まっしぐらつまみのレシピを……私めに授けてください……ううう」
直面する課題のやる気に、ばらつきはあったものの。
四人それぞれ、強くなることへの渇望はある。性格は違えど、四人は選ばれし英傑。理由は違えど、戦う理由がある。
──この後全員、与えられた課題を今度は入れ替えで全部達成しなくてはならないという地獄が待ち受けているのだが、そのような些事は、四人とも知る由もないことであった。
◇◇◇
「そうか、エイルもイオリもキルケもアナスタシアも、皆元気そうでよかった。また返事の手紙を書かなきゃな」
手紙を懐にしまいながら、俺は少しばかり懐かしさに耽っていた。あいつら今頃ひどい目にあってるんだろうなあ、と考えていると、自然と口元が緩んでいた。効率重視の俺が考えた特訓メニューをこなしているのだから、きっと再会する頃には、目を見張る大成長を遂げているであろう。
翻って、今の俺はというと。
(そろそろ魔物狩りとか、人手の調達とかを頑張らなきゃいけなくなってきたよなあ)
内政の悩みは尽きないもの。今の俺は、非常に単純な『人手不足』の壁に突き当たっていた。
ただ同然でこき使える労働力(俺に襲い掛かってきたどこぞの賊とか、労役提供を申し出てくれた氏族とか)はそれなりの数あったものの、じゃあ一日に百人単位
業務の進捗管理は、高度な仕事になってくる。文字の読み書きや計算ができるだけでも貴重なのに、更に、この作業工程にはどれだけの時間がかかる……等を正確に見積もれる有識者は格別貴重になってくる。ラネール・カマソッソの二人のような《花園》出身のものは、各地に密偵として潜り込むために高度な教育を施されているが、それにしても限界はあるというもので、川の整備や水車の普及活動で既に手一杯となっている。
ここに更に、「鉄の農具を普及したい」とか新しい仕事を振ったら破綻することは目に見えている。
(……絶対に欲しいんだけどな、鉄の農具。狩猟民族みたいなことをやっているジャヴァリ・ランドの連中だって、今後の人口増加を見越したら農業が絶対に必要になるんだ)
望み過ぎかもしれないが、本音でもある。
鉄の鍬、斧、有輪鋤、などの鉄の農具が行きわたれば、それだけで農業の効率は飛躍的に向上する。
ところがこの時代は、木製の農具が主流であり、丈夫にするため焼きを入れて使ったりしていた程だった。酷い話である。もっと都市部に近い農村であったり、交易が盛んな場所であれば鉄の農具も流通していたが、こんな辺鄙な場所にそんなものはないわけだ。貧しい集落なんかは、鉄製の鎌がないから石製の刃で麦を刈り取っている、という有様で、報告を聞いたときは呆れ笑いが出てしまった。
製鉄技術自体は既にあるはずなので、この辺は何とかして調達するほかない。
辺境義勇団の駐屯地に戻って、行商人やら旅芸人やらに拝み倒して、割高でもいいからとにかく持ってこいと言う他なかった。
「なあ、ロナ。この地に農業ってどれぐらい根付くと思う?」
「……どうでしょうね。私の出身だった【黒き森の氏族】は裕福だったので、茸の栽培や、毒消しの栽培等はやっていましたが……」
「作物を育てる、という概念は、一応なくはないのか? 農地を耕して雑草を抜いて、とかは難しいかも知れないが」
「……そうですね、殿下。畑と共に生きた経験はないので、弊害は出るかと。子供が悪戯して畑を荒らしたり、収穫できない段階で誰かが勝手に食べたり、そう言った問題が考えられます」
「教育の課題だなあ」
森林や原野の開拓と一言でくくっても、その実作業は多岐にわたる。土地の開墾はもちろん、畑の耕作、家畜の飼育、機織り等の農業のやり方の平準化と農作業者の教育、そして種子の管理や収穫物の管理など、思いつくだけでもこんなにある。
足かけ三年、長くもあるが短くもあるこの期間で、どれだけ農業の基礎を整えられるか。
「よし分かった。冒険者ギルドの傭兵派出のお金を半分打ち切って、俺たちで魔物を狩ろう。余ったお金で、よその村から経験豊富な農民を引っこ抜いて、農作業の監督官として招聘するんだ。農業指導はそれだけ優先度が高いと見た」
「……辺境義勇団の予算配分に口出しをするのですか? こちらに移られてまだ数か月も経っておりませんが」
「嫌われたらその時さ。言うことを聞かせる方法はいくらでもあるからね」
今でこそ、食糧問題は表面化していない。肉食魚を狩り、害獣を狩り、各地から貢ぎ物を得て、当座は凌げている。
しかし将来的にはどうあっても避けられない、重大な問題でもある。狩猟中心だと、食料の安定供給の目途が立たないのだ。茸、薬草、果実、木の実の練粉の焼き菓子、という品揃えで越冬できるかは怪しい。蛇、蛙、幼虫なども食えるとは聞くが、それも本質的には狩猟と変わらない。
となると、辺境義勇団の予算編成に口出しをして、農業普及優先で計画しなおすのが真っ当な手段である。
こういう時こそ権力の使いどころ。というより、正しい領地経営が今からようやく始まると言ってもいい。予算編成に手を付けずにいきなり大規模公共事業から手を付けてしまうあたり、俺の横着さが出てしまった。できちゃうので仕方がない。巨人も
辺境義勇団の連中も吃驚するだろう。予算編成にうるさく口出ししてこないお飾りの領主さまかと思ったら、急に予算変更を言い出すわけだから。反発は予想に難くない。絶対に起きる。
「逆らってくれた方が、やりやすいんだけどね。こっちもそれなりの手段を取れるし」
「……」
俺はあくまで都合の良さを問うただけなのだが。
「……私は《花園》ではありませんよ。あの子たちは、殿下のそのお言葉で上手いこと帳尻を合わせますけど」
「これを機に、ロナがあの子たちに相談してみてよ。君には俺の右腕になってもらいたいからね。こういう人の使い方も覚えてほしいんだ」
俺の仕事が楽になれば、もっとできることが増える。俺がいなくても回るような形になるのが一番の理想。信じてもらえないだろうが、俺は本来は怠け者なのだ。一番の補佐であるロナが一人である程度の実務を回せるようになれば、俺は晴れて自由になれる。魔物狩りに勤しんで
というよりも、こんなに勤勉な皇子は希少なのではないだろうか。俺ぐらい実務を回している皇族なんて中々見ない。もちろん、しょうもない
「……人の使い方を覚えなきゃいけないのは、俺の方かもなあ」
「十分酷使なさってますよ」
「あはは、言うねえ」
独り言じみた俺のぼやきは、しっかりとロナに聞きとがめられていた。それは綺麗な月の夜のことだった。
そろそろ世界樹の話(原罪の実)とか、原作主人公のオーベル君の話とか、リコッタ等の新キャラの話とか、邪教団の話とか、掘り下げなきゃいけないことがプロット上にいっぱいあるので、少しずつ進めていきます。