貞操逆転世界の悪徳皇子になった俺、ひたすら魔石を食べて強くなり、破滅フラグを回避します 作:ナロウ・ケイ
星教団とは異なる教義を持つ、決して相容れぬ信仰のものたち。
人知の及ばぬ精霊たちを『寄生虫』扱いし、そして聖なる世界樹を
──それが地下教団【魂の在処】。
名前を禁じられた今は、邪教、とのみ扱われる存在である。
「ククク……どうやら【道化師】ハーレクインがやられたようだな……」
「まさか、学園に在籍している英雄たちに負けるとはな……」
「奴は四天王の中でもそれなりの剛のもの、認められし存在、というより強い」
澱んだ空気の中、地下でひっそりとした会合が開かれた。
さながら一つの祭事が如く。皆が皆、
「どうするのだ?」
「どうするかな?」
「どうしような?」
四天王の一角たる【道化師】ハーレクインを欠いた彼らは、早速、窮地に立っていた。
教祖の少女は、精霊に身体の大半を寄生され、まるで孵化する直前のような、大いなるマユとなっている。今はもう、数日に一度しか目覚められないほどに衰弱している。
そのため実質上、ここにいる四天王たちが教団を切り盛りしているのだった。
そんな折に突如やってきた、有力幹部の計画失敗の知らせ。あまりにも大きな誤算であった。
「我々の資金調達経路が、なぜこんなに短期間で複数も炙り出されたのだ」
「忌まわしきはあの皇子かな。奴さえいなければ、密造酒と聖遺物の贋作造りで資金調達できたものを……」
「我々が必死の思いでかき集めた資金を、玩具を取り上げるがごとく持ち去ろうとは……外道めが」
ここ数年は、教団にとって非常に苦しい時代だった。何故かは知らないが、帝都を中心に、教団の資金洗浄先や教団関係者の潜伏場所がどんどん明るみになって摘発され続けたのだ。
極めて腕の立つ諜報員(おそらくは《花園》あたり)でも飼いならして、帝都の暗部を少しずつ掃除しているのだろう──と教団は判断した。旗振り役はおそらく皇子。
あの皇子は何故かは知らないが、邪教徒に異様に詳しかった。こちらが必死に集めた教団運営資金を、正義の名のもとに一方的に差し押さえする横暴さ。血も涙もないとはこのことである。
他にも、教団の息のかかった侍女たちが、次々と皇子に目を付けられて
消息不明になったもの、連絡がつかなくなったかと思いきや田舎に隠遁していたもの、修道院に身を隠すようになったもの──その悉くは、皇子に接近しようとして、皇子に返り討ちにされたものたちだった。
暗殺も度々試みられたが、全て失敗した。毒物はほとんど効かず、刺客を送り込んでも、大抵返り討ちに遭う始末だった。並大抵の熟練探索者よりも腕が立つ皇子。そんな人物相手となると、小細工を弄した暗殺は通用しない。さりとて、派手な動きは警戒される。皇室の人間を屠るのだからどうしても大がかりで入念な準備が必要になるのだが、国家転覆と謗られても言い訳できないような仕事である以上、大掛かりに動くことはできないという二律背反が付きまとう。
結果、皇子はのうのうと生き延びた。探索者学校に留学して、その後、領地経営を任せられるに至るまで。
皮肉なことに、皇子が
結局、あの皇子相手には、微塵も歯が立たなかったのだ。
勉学と自己鍛錬にばかり精を出して、人脈作りや派閥活動をほとんどしない、なのに主要な権力者に一目置かれている、蝙蝠とも狂人とも思えるような振る舞いのあの皇子に。
特定の派閥に肩入れしない癖に、突然気が狂ったかのように古い利権に強烈な鉈を振るい、新法案と監査報告の物量で行政府に火をつけ、混乱の渦中で『私は皇子、貴方は大貴族、手を結びましょう』とばかりの頭越しの会談で大枠を整理する、我が儘が服を着たようなあの皇子に。
もう皇子を暗殺するしかない──とばかりに追い詰められた旧家の腐敗貴族に、実際に手を出させて、それを確固たる証拠として次々に廃嫡に追い込む、悪魔のようなあの皇子に。
政治工作も、暗殺工作も、何も効かなかったのである。
「あの皇子のせいで、原罪の木の解放が全くと言っていいほど進んでおらぬ」
「探索者学校にある原罪の木にしても、ハーレクインが討たれ、更には何者かに火をつけられてしまった」
「世界の在り方を正すための我々の計画が、大幅に狂い、遠ざかってしまった」
黒き預言の書にある【原罪の木】計画。
それが、まるで一つも成功していない。
──四人の英傑、宿業の騎士たちの誕生の阻止。
──原罪の木の段階的解放。
──高度に迷宮化された国家の樹立。
ほとんど破綻しかかっているこの計画を、教団の幹部たちは、苦々しい思いで見守っていた。
「我々の敵は皇子だけにあらず。例の赤髪の少年の動向はどうなった?」
「依然不明だ。奴は、我が教団の《魔王遺骸物》を破壊し、教団地下の原罪の木を焼き払った罪がある」
「奴め、確実に【転生者】であろうな。奴自身も【原罪の果実】に口をつけて、【生命の不文律】を逸脱した存在であろうというのに」
教団は、確実に追い詰められていた。
原罪を背負う守護者。宿業の騎士。ナイツオブカルマ。かの者が、教団の狙いを邪魔しているのは間違いなかった。
一人は確実に、宿業の騎士であろうことが分かっている。赤髪の少年は、そうとしか説明できない。
だがもう一人は、果たして何なのか一体分からない。何を考えているのかさっぱり分からない、気狂い皇子。仮に宿業の騎士であるならば、何故、探索者学校にある【原罪の木】を見つけておきながら、それを一度は
「ククク……げに恐ろしきはあの皇子か」
教団の幹部たちは、皇子に軒並み戦慄を抱いている。
理由は単純明快である。皇子から定期的に手紙が届くからである。
──教団の本拠地を握られている。
――教団の使う暗号文も何故か看破されている。
──しかも、教祖の少女サルヴァの名前も知られている。
だというのに何も要求してこない。
そればかりか、日に日に悪化する教祖サルヴァの体調を慮って、貴族でもないと手に入らないような貴重な軟膏薬やら調合薬を送り付けてくる始末。
何を考えているのか全く持って読めないのだ。怖すぎる。皇子に対して暗殺者を何遍も送りつけた恨み言も、帝都に聖遺物の贋作を流通させた恨み言も、これっぽちもない。ただ丁寧な、体調を窺うだけの手紙。
「……どうすればいいのだ?」
地下教団【魂の在処】は、得体の知れない相手に恐怖していた。
いっそのこと、帝国の計画は全て諦めてしまうべきかと考えてしまうほどに。
事の真相は、誰も知ることはなく、また、常人の理解の及ぶような形では推移していなかった。
答え①:
原作【ナイツ オブ カルマ】では、不治の病に侵されている教団の少女のために薬を届けるイベントがあり、イベントを遂行すると
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■称号:廉施者
条件:孤独な少女サルヴァに薬を欠かさず届ける
効果:
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・自然回復+15%ボーナス
・幸運+10%ボーナス
・《特攻:教団関係者》
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という希少な称号が手に入るため。