貞操逆転世界の悪徳皇子になった俺、ひたすら魔石を食べて強くなり、破滅フラグを回避します 作:ナロウ・ケイ
「っ、……っ」
最近気づいたことがある。一日に魔石浄化できる量よりも河川工事や魔物掃討などで採取される魔石の量のほうが多くなってきたのだ。
ロナで一日に二十個ちょっと浄化するのが精一杯。《
なので、川の上流の滝壺を工事したり、魔物の巣を発見したりすると一気に処理が追いつかなくなる。
では、自分一人で魔力を撹拌して体内で純化させて魔石を洗うことをやればいいのでは──と思わなくもないが、残念ながらそれはできない。男女に陰陽があるように、男性の持つ魔力と女性の持つ魔力には質の違いがある。少量ならともかく、純化された魔力を大量に得るには自分一人で完結できないのだ。流石に成人向け世界設定構築が過ぎると思うが、致し方がない。
(魔力量だけで言えば、ワヤもロナをやや上回るぐらいには保有しているんだけどな……)
「ふっ、……ぅ」
魔力は本人の保持量だけではない。そもそも量だけなら俺がどっぼどぼに補填できる。
重要なのは、魔力を身体に留めておける許容限界とか、体内でぐるぐる攪拌して練り上げるのを溢さずに我慢できる忍耐力とか、攪拌操作を頑なに拒否せずに素直に受け入れてくれる柔軟さとか、魔石を浸して洗うため適切な量に絞って魔力を放出する集中力とかが肝要になってくる。
なので、いくら俺の魔力を大量につぎ込んでも、自分の限界を超えるとすぐにいっぱいいっぱいになったり、体内で攪拌すると脊髄反射的にすぐ魔力を放出したり、攪拌中にすぐにあっさり噴き溢したり、純化した魔力をゆるやかに絞って出すのが下手くそで何度も思いっきり噴出させたり──というワヤでは、ロナと雲泥の差が出る。
長年の間、俺の相棒を勤め上げてきたロナは、自分の保持量の二倍三倍でもかなり頑張って堪えてくれるし、多少雑にかき混ぜても受け入れてくれるし、攪拌中に噴き溢してしまう魔力量も(元々の量が多いため結構見た目派手にやらかすが)割合で言えば他の娘たちより遥かに抑えられているし、魔石を洗う際に純化された魔力放出量を絞るのも(こちらもしょっちゅうド派手に噴き溢すが)全体の割合で見ればかなり抑制が効いている。
あまり数値化に意味はないと思うが、凡人の十倍ぐらい魔力をつぎ込んで、凡人の七倍ぐらい処理をこなして(つまり差し引きで凡人の三倍派手にやらかしているが)、凡人の三倍以上早く復活する、という超人ぶりであった。
酷使しすぎていないかが心配だが、後遺症が残ったりするような作業ではないし、ロナ本人の体調も考慮して休みの日を入れたりしている。ほぼ毎日の日課になっているのは、俺の都合を極力かなえてくれようと彼女が頑張っているからであり、そうなってくると俺の方が気を遣う。せめて美味しいものを食べてもらおうと、俺とほぼ一緒の料理を食べてもらったり、住環境にも細心の注意を払っているのだが──。
「ふっ……ふーっ」
(この前、魔石が溜まっているって話をしたら、一日二回でも頑張りますとか食い気味で来られちゃったんだよな)
魔力は筋肉疲労とは違うので、時間を空けていたら周囲の魔力を吸収して回復する。それに魔石浄化にしても枯渇するほどの魔力を一気に放出したりはしない。なので、確かに一日二回でもできると言えばできるのかもしれない。
精神疲労さえ度外視すれば、の話だが。
はっきり言うと、俺は悩んでいた。
ありがたい提案なのだが、それに甘えるのはいかがなものだろうか。
正直な話、我ながらえっちなことをしている自覚はある。
純化された魔力を練り上げる際の反応が妙に艶めかしいせいで、流石は成人向け世界設定だなと薄々思っている。
だがこれでも俺は突き抜けてないというか、実は穏やかな折衷案を取っているのだ。本当は「直接丹田に魔力注入(つまり性行為)」する方が効率が良いのだが、それは流石に一線を越えているというか、あまりにも無体すぎる。
そういう行為は恋愛関係にある異性と行うべきなのだ。
何というか、今でも相当際どいと思う。ロナだけ毎日、更に一日二回に増やします、となったら、果たして自制できるか心配になる。
話を戻して。
「あっ……ああっ」
この世界において、魔力制御は極めて高度な技術とされている。にも拘らず、魔力制御について論理的に体系づけられた研究がなされている訳ではない。感覚的な部分が大きいため、魔力制御は体得するのが非常に難しい分野でもある。
強いて言えば、豊かな想像力と強い精神力がそれに結びつく傾向にあるのだが──人それぞれと言ってしまえばそれまでである。どうすれば呼吸で酸素を取り込むことができるのか、という質問に近い。普段は無意識に呼吸をしているが、胸を膨らませて大きく外気を取り入れることもやろうと思えばできる、だが何か習得のコツがあるかと言われたら言葉に悩む。そういうものなのだ。肺活量を鍛えるなら日々の有酸素運動であるし、同じように、魔力制御を鍛えるなら日々の訓練に勝るものはない。
そして、純化された魔力を精錬する行為は、魔力制御の中でも極めて高度な部類に入る。
まず精神力を鍛える必要がある。
自我と他者との境界面を、
世界への寄与への認識・解像度を、
また、純化された魔力はすぐ揮発・流出するので繋ぎ止めるのが難しい。純粋なイデアが形を求めて変質してしまうのと同じように、エネルギーそのものが留まり続けるのは極めて困難なのだ。
「────っ、あ゛っ」
何ら不純物を含まない純化された魔力は、極めて高度な魔術で稀に要求される。
例えば、失われた古代魔術の術式構造は、純化された魔力のみで発動する機構が随所に含まれている。恐らくこれを操れる適合者は、精霊と対話できるもの(ナイツ オブ カルマの資格を持つもの)か、俺かロナぐらいに限られるだろう。
そういった意味では、俺とロナは、図らずともかなり高度な魔術を操る素養を日々磨かれていることになる。これも計算のうちと言ってしまってもいいが、どちらかというと魔石浄化が主眼にあるので、棚から牡丹餅感が強い。
過程はどうあれ、俺とロナは、純粋な魔力の気配に敏感になったし、魔力の流れを感知する能力も高くなった。錬金術師でもなければ黒魔術の求道者でもないのに、魔力の純化を日夜欠かさず行ってきた甲斐があった。
純化した魔力を魔石を綺麗にするためだけに使っている、だなんて聞いたら、卒倒する人が出てくるかもしれないが。
他にも、暴れる魔力の奔流の中でも魔力を繋ぎ止める意志の強さは、より高次の禁忌魔術を扱う際に、重要な要素となってくる。
高次の禁忌魔術の中には、魔力を枯渇するまで吸い取ってきたり、意識を汚染して乗っ取ろうとするものが存在するのだ。
しかしロナを始めとする幾人かは、初歩的な精神汚染魔術や、形骸化した古い禁忌魔術であれば、あっさりと抵抗してみせた。これも日々の訓練の賜物と言えよう。
結果だけ見れば、俺との訓練を経て、ロナの呪術師としての素養はかなり培われてきた。俺ほどではないが一緒に魔石を食べているので魔力量も増えているし、魔力制御の技術も大きく伸びたし、純化された魔力も少量ながら自己精製できるようになったし、精神力もかなり鍛えられているわけで。
その気になれば、禁忌魔術を代償なしで操れるようになるかもしれない。
「~~っ、~~っ」
当の本人であるロナは、半泣きで魔力を繋ぎとめようとして、じゅぶーっ、じゅぶーっ、と結構派手に魔力を撒き散らしていたが。
頬を紅潮させながら息を弾ませている姿は、どことなく艶っぽい。
それにしても、こんなスケベ行為だけで禁術使いの境地に至ったとしたら色んな人に恨まれること間違いなしである。魔術の研鑽を舐め腐っている。
「……我慢失敗しちゃった?」
「……」
耳まで真っ赤にした我が相棒は、俯いたまま何の返事もしなかった。
こういう日もある。
いつもの半分ぐらいだったが、これでも並みの人の数倍頑張っているのだ。
「こういうのって体調とかもあるし、あんまり気にしないで。そりゃ溜まってるけど――」
「!? た、溜まってませんっ」
「――魔石は腐らないからね……って、ん?」
「…………」
見ればロナは、もう首筋まで真っ赤に茹で上がっていた。溜まっているという言葉の解釈違いで事故が起きた。
何というか、深く考えたらいけない気がする。放っておくのが情けというものだ。
(……というか、溜まっている……? いや、まさかな……)
理由は分からない。分からないと言えば分からないのだ。
この後、二人に一体何が起こるのでしょうね(すっとぼけ)
森の奥にある危険植物の蔓延る地域を攻略しようとして何かが起きます。お楽しみにお待ちください。