貞操逆転世界の悪徳皇子になった俺、ひたすら魔石を食べて強くなり、破滅フラグを回避します 作:ナロウ・ケイ
月日が経って、遂に俺は16歳になった。
帝都の貴族たちからは、『どうして魔物が跋扈して、蛮族があちこちに住まう未開の森に、人口一万人超の超巨大都市を作り上げることなんかやってしまったんですか? (意訳)』⋯⋯というお気持ち表明の手紙がたくさん届いたが、出来てしまったものは仕方がない。嬉しいことなのだから素直に喜べばいいのに。
なお増税の話は丁重にお断りした。人口が一万人を超えたからって、いきなり大規模都市並みの重税をかけようとしてきたのだ。さすがに横暴が過ぎる。全部無視でいい。軍でも何でも派出できるものなら派出しやがれ、という話である。
領地の発展は目覚ましかった。
魔物討滅による安定した食料供給。
河川の大規模工事による水利の整備・水力の利用・水運の発展。
大量に獲得された魔物素材による加工製造業の発足。
森で採れる茸類・山菜類・薬草類を中心とした、新たな食文化の発展。
まだまだ年齢別人口分布が歪で、急激な人口増による住居問題、文化衝突問題、教育問題など多数の問題を抱えているものの、領地経営の先行きは概ね良好だった。
(まあ、水車を作ることができて、回転エネルギーが得られるようになって、木材加工と研磨加工の速度が大幅に底上げされたのが大きいよな。原始的な回転切削機・回転研磨機みたいなものだし)
技術発展は目覚ましい。
密集しすぎた木を間伐して、得られた間伐材を木材資源として活用。住宅用建材、家具、農具などに転用される間伐材たちは、この森の住民の生活を劇的に便利にさせた。
そもそも、『無駄に密集した木々を間伐で間引きしたほうが森林全体が元気になる』という考え方そのものが、一部の氏族には新鮮だったらしい。流石に黒アールヴのような長命種たちは間伐の効果を経験則的に知っていたが、獣人族たちのほとんどはそうした知識を持たなかった。細々した氏族間が複雑な対立関係を持っていたせいである。
これも皆、俺みたいな圧倒的な権力を持つ支配者が君臨することで、知識の平滑化と水平展開が生まれたことの恩恵だった。
早い話、たった数年とは思えないほどの発展が起こっていた。
(まあ、元々この地域の人たちは彼女たちなりに工夫して生きてきたんだ。知恵がない訳じゃない。生活が便利になる手助けをしてあげれば、自発的に生活を改善させるだろうさ)
水利が良くなり、温水が潤沢に使えるようになったおかげで、公衆衛生が飛躍的に改善された。
細々した氏族間の対立がなくなり、薬草類の知識が水平展開されたことで、医療関係の知識が大幅に進歩した。
魔物素材を大量に得られたことで、油、膠、毛皮などを輸出できるようになった。
今や、このジャヴァリ地方は、立派に他領地と交易できるほどの一大勢力にのし上がったのだった。
分かりやすく言えば、あらゆる
とはいえこのままでは、実質上ただの植民地。木材資源や鉱石資源を輸出するだけ輸出して、鉄製品やら嗜好品を買うだけで精一杯になってしまう。資源を買い叩かれるだけの立場ではまだまだ弱い。
つまり次なる一手が必要な訳で。
(……そろそろ世界樹【原罪の樹:色欲】を攻略するときが来たかもしれないな)
◇◇◇
「若、ついに我々もお力になれるときが来ました!」
元気に俺に挨拶をしてきたのは、探索者学園時代の
ただでさえ治安悪い連中(元暗殺者、元邪教徒、元密偵、元野盗、元蛮族、等)を従えているのに、また治安の悪くなりそうな連中がやってきた。
いやまあ、一年にも満たない
時間軸的には妥当である。たとえ最短で卒業しても、じゃあ実家に帰って身支度に何ヶ月、こんな僻地まで移動に何ヶ月、みたいな世界なのだ。
「⋯⋯よう、若。ウリーザと一緒に来てやったぜ」
「はっはっは! ワヤの姉御と若が一緒にいるんじゃあ、来なきゃ女がすたるからねえ!」
この辺りでは珍しい
「何というか、立派な都市だな」
「そうさねぇ。アタシたちゃあ碌に家も建ってない場所を、野営しながら開拓するもんかと思ってたんだけどねえ」
二人がそう思うのも無理はない。
威張れた話ではないが、適当にやっていたら大きく栄えただけだ。
今までのジャヴァリ森林地域は、野盗やら強い魔物やらが出没するような碌に整備されてない道を通って、どんどん進んだら野営地みたいな開拓拠点があって、その奥に進んだらよく分からない蛮族たちがそれぞれの少数部族として独自の社会を築き上げている、という構図だった。
それが大きく変わった。どこぞの皇子が川を整備した影響で、水辺付近の人々の居住分布が整理された。外壁や堀を作ってないのでヨーロッパ風の城下町とは異なるものの、俺の居住地を中心に多くの人たちが集まって暮らす賑やかな場所になった。
より正確に言うと、河川の上流から下流に向けて扇状に生活区画が整備されているような都市構造になっている。上流側と下流側にそれぞれ一つずつ俺の邸宅がある。行政の中心は上流側、下流側はただの別荘で何か人々に演説したり催事を行ったりする場所みたいな扱いだ。昔は街を移動するのも一日がかりだったが、無理やり渡し船やリザード馬車を導入して移動の高速化を図った。
果たして分類が都市扱いになるのかは不明だが、俺の領地は栄えている。木々の間に太い紐を張って板を乗せて⋯⋯と、ヨーロッパ風都市であれば二階建て、三階建てに相当するような家造りをジャヴァリの森の民はやっていた訳で。
この領地の人口増に伴って、二階に街、三階に街、たまに地下に街、みたいに縦に縦に居住の広がりが生まれたのだ。
「ていうか若、火事が起こったら大惨事じゃないか?」
「ああ、そうだな。壁や床に泥を塗って耐火しているけど、それだけだとまだ不十分だからな」
リディルの問いに俺はあっさりと答えた。
「だからそのときは、巨人か水晶人形か俺か部下が、木を引っこ抜く」
「木を引っこ抜く」
「延焼しないようにぶっ壊す」
「ぶっ壊す」
思った以上に腕力の解決だったのか、呆れたような鸚鵡返しだった。だが火事対策には、これが一番確実なのだ。引っこ抜いた木は木材資源として再活用できる。民からは英雄として尊敬される。良いことづくめなのだ。
「若は相変わらず若だねえ」
からかうようなウリーザの言葉に、俺は微妙な表情で応えた。
効率を求めたらこうなるのだ。あえて効率を落す理由はないので、慣れてもらうしかないだろう。
◇◇◇
思い返すと、この頃の自分に言ってやりたいことはいっぱいあった。
地下教団【魂の在処】の連中がこの領地に紛れ込んでいるぞ、とか。
いないと思っていた
四人の英傑もついに、精霊の声を聞くことが出来る、
だが、それらすべてを知っているはずの精霊たちは何も教えてくれない。彼女らはけらけらと楽しそうに笑うのみ。
過去を見通して、不確定な未来を見通して。
渦巻いて発散する情報の海を揺蕩う、不確定で曖昧な彼女らは、ただ、面白いね、面白そうだね、としか喋らなかった。
■翻訳者(作者)より補足:
ちょっと難解になってきたので、一旦簡単に情報を纏めます。
・邪教団とされる、地下教団【魂の在処】は、ルーク皇子との対話を望んでいます。
ルーク皇子が味方なのか敵なのか分かっていませんが、多分理解者になってくれると信じ込んでいます。
・原作主人公であるオーベルは、何らかの理由で、世界樹【原罪の木】を滅ぼそうとしています。
ルーク皇子が味方なのか敵なのか分かっていませんが、多分理解者になってくれると信じ込んでいます。
・精霊たちは、ルーク皇子のことを面白いと思っています。
味方とか敵という概念さえ持ち合わせていませんが、地下教団【魂の在処】も、オーベルも、ルーク皇子も、みんな大好きです。
・ルーク皇子は、原作主人公オーベルの存在に気付いていません。
実はスケールのクソでかい観点で焦っており、『大陸戦争を防ぐには』とか『魔物大災禍を防ぐには』とかで頭を悩ませています。原作通りの史実にさせないために腐心しています。