貞操逆転世界の悪徳皇子になった俺、ひたすら魔石を食べて強くなり、破滅フラグを回避します 作:ナロウ・ケイ
「ククク⋯⋯やってくれたな⋯⋯あの外道皇子⋯⋯ッ」
うぞうぞと這い回る夢喰い虫──
夢の世界で強力無比なる生き物は、夢そのものを喰らう生き物。普段は天敵だが、
誤算は、さきほどから本当に洒落にならないぐらい痺れる媚薬効果である。頭が馬鹿になりゅというふざけた言い回しがあるが、今の状況はそれに近い。皇子の奸計に対する、煮えるような殺意と憎悪。それを塗り潰さんばかりの色欲の情動。
命令を維持するため、
「毒見用の植物が反応しなかった⋯⋯未知の薬⋯⋯」
手持ちの植物に一部与えても反応しなかった。色変などが見られないことから、少なくとも人体を痺れさせたりする鉱毒類でないことは確かである。生物由来のものであれば加熱で壊れるため、再度加熱して口に運んだ。念のためあらかじめ解毒用の調合薬を飲んで食事を採った。そうしたらこれである。
念のため、教祖と
「⋯⋯
「⋯⋯見張っている」
立てなくなるほどの媚薬を人に盛るな、と
「毒ではないということは、殺害ではなく、対話を求めているということだ⋯⋯」
「対話を求める相手に媚薬を盛るな⋯⋯」
「そうだな⋯⋯」
本当あの皇子は。
「⋯⋯なあ、
「⋯⋯駄目だ、
「今のうちに、
「だから駄目だ⋯⋯ッ」
確かに辛すぎて切迫しているのは事実だが。
「……あの皇子は、危険すぎる。あの赤毛の奴もだ。片時たりとも油断はならない」
「……そうか」
「……しかし、まだ連中は見つからないのか? 見張り用のぬいぐるみの目を搔い潜って行動するのは至難の業だと思うが」
◇◇◇
ぬいぐるみと目と目が合うと強制的に戦闘が始まる、と皇子は言っていた。エンカウントだとか言っていたが理由も仕組みもわからなかった。
ただ、皇子は何やら攻略方法があるとか言っていた。
その方法とは、つまり。
「箱をかぶって動いたら大丈夫って、本当ですの……?」
「実際、気づかれている気配はないでござる」
「アホらし」
「ですね」
その方法とはずばり、箱をかぶること。
念のため、
「気を付けなさいまし、前方、ぬいぐるみが二匹いますわ……全然気付かれてなさそうですけど」
「? 変わった使役ゴーレムだな。弱点の呪文が額に彫られてない。となると命令組み込み型だと思うが……自律型だとすると高度なドールマスターが使い手だろうな」
気色悪いクソデカ
これがきっと箱の効果なのだろう。今まで全く気付かなかった知識だが、魔物たちは箱にまるで興味が湧かないらしい。
「討伐でござるか?」
「いーややめとけ。倒したら異変に気付かれかねない。やり過ごせるならやり過ごすでいい」
戦闘はなるべく避けたかった。というのも、実はこの四人、服を着ていない。服装は箱。皇子の指定である。
曰く、「夢の世界には直前に装備しているものがそのまま持ち込まれるんだ。四人には
裸で杖を握りしめる
「つーか、とにかく下に潜れ、って適当な命令すぎねーか……」
地図は描いてもらったが正直記憶が怪しい。夢の世界には
というかそもそもなんで地形情報を知ってるんだよという疑問はあったものの、とにかく皇子の言葉が唯一の手掛かりである。とにかく下に潜る。地下に地下に。地下室につながっていそうな階段があれば一つずつ下っていくしかない。
こういう時、食欲旺盛な
本人は「神の導きです」とか何とか言ってたが、他の三人は微塵も信じなかった。
「今度酒の神にお布施してやるよ、お酒の香りに感謝をってな」
「だから神の導きですって……」
「うふふ、
「! ……静かに、でござる」
やいのやいのと四人で言いながら歩いていると、どこか遠くの廊下が騒がしくなった。いち早く気づいたのは
音の発生源は地下ではない。目的の方向からは少し逸れる。
廊下を進み、恐る恐る状況を確認すると、そこには光る刃がぶんぶんと唸っていた。
両手剣の作法で、独楽のように踊ってぬいぐるみや
息を吞むほどに流麗な所作。抵抗もなく敵を切り伏せる手の早さ。
動きがうまく目で追えないのは、動きの早さもあるが、歩法が独特で、体重移動がつかみにくく、次の動作が読みにくいという巧みな戦闘技術にあった。
戦いたくない──と直感した。運動音痴とはいえ、凡人と比べれば多少心得がある
目が合った。
「!?」
息もできなかった。不意打ちだった。
見透かされていると直感した。
だが、その赤毛の少女は──どこか悲しげに微笑んで、戦闘を淡々と続けていた。
「…………」
敵の数が多いのか、赤毛の少女の戦闘は止まらなかった。
四人はどうすればいいのか一瞬迷ったが、道を引き返し、先に進むことにした。
うまく言葉にできないが――あの赤毛の少女は、自分たち四人のことを知っているのだろうか。
「……気付かれましたわよね?」
「……絶対に目ぇ合ったよなあ」
箱の中で、
赤毛のオーベル(なんであの子たち、裸なんだろ……)