貞操逆転世界の悪徳皇子になった俺、ひたすら魔石を食べて強くなり、破滅フラグを回避します   作:ナロウ・ケイ

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貞操逆転世界の悪徳皇子と、新たなる英傑たち②

 

 …………。

 ……。

 

 

 

 成人向け戦略RPG【ナイツ オブ カルマ】における序幕(プロローグ)、【天恵の儀】。

 それは、この世界への導入を円滑に進めるための序盤イベントでもある。

 

 精霊石に導かれた主人公が【英雄】【剣聖】【聖人】【賢者】から天恵を一つ選ぶ。

 そうすると、選ばれなかった残りの天恵たちが他の子どもたちに宿る。

 

 かくして、四人が一堂に揃う。

 一人は【英雄】の子供。

 一人は【剣聖】の子供。

 一人は【聖人】の子供。

 一人は【賢者】の子供。

 

 主人公を含めた彼等四人は周囲に大いに祝福される。

 まるで吟遊詩人の語る、英雄譚の中の勇士たちのようだと。

 

 だがしかし、祝福は長くは続かなかった。

 

 祭典の途中で精霊石が割れるという異常事態が発生したのだ。

 いかにも何かが起きそうな凶兆。場は一転して不安に包まれる。

 

「一度に四つも、偉大なる天恵(アイコニック)が与えられたせいだ! 精霊石が限界を迎えたのだ! 彼等が悪い!」

 

 と一人の少年が四人を糾弾した。それがルーク皇子である。

 あまりの出来事に騒然とする教会関係者。

 

 天恵が与えられると思ってやってきた残りの子供たちも、怒りをあらわにして四人に抗議する。

 

 これでは自分たちは天恵を授かれないじゃないか、と。

 精霊石を割るなんて、どうしてくれるんだ、と。

 

 先ほどと一転して、急に悪者になった四人は狼狽える。

 

 そこに突如やってくる魔物の影。

 何故かは分からぬが、魔物の召喚陣が教会の【鐘の塔】に描かれており、それが起動したのだ。

 

 大聖堂の中は、更なる混乱に叩き落された。

 子供たちは泣き叫んだ。聖職者たちも狼狽えを隠せなかった。

 狂乱はいよいよ誰にも鎮められなくなった。

 

 そんな最中──。

 

「僕達が戦う!」

 

 主人公が叫び、そして前線に躍り出る。

 大聖堂に飾られた古びた鎧から装備品をもぎ取ると、彼等は颯爽と魔物たちを倒していき、本丸である【鐘の塔】までたどり着くと、魔物の召喚陣を破壊するのだった──。

 

 主人公たちは拍手喝采で迎え入れられて、改めて皆と和解する。

 天恵を与えられなかった子どもたちも、改めて天恵を受け直せるようにすると司教が約束をして、その場は何とか収拾がつく。

 

 端々に、やや陰謀めいたものを匂わせながらも、かくして序章は終わるのだった。

 

 

 

 …………。

 ……。

 

 

 

 以上が、成人向け戦略RPG【ナイツ オブ カルマ】の序章のあらましである。

 この序章は、いわゆるチュートリアル形式となっており、魔物との戦闘を通じてシステム操作などに慣れていくというもの。

 

(まさか、司祭の一人が邪教徒だなんて、普通分からないよな)

 

 精霊石が割れたのは、主人公たち四人が悪いのではなく、全て邪教徒が悪いのだが──。

 そんなことは後になってからでないと分からない。

 

 さりとて今、俺が未来の知識を使って「こいつが犯人です」とやったところで何にもならない。

 歴史に干渉するのは()ではない。

 

(どの道、限界を迎えた精霊石が割れてしまうのはほぼ確定した事実なのだから、主人公たちが悪者扱いされるのも避けられない)

 

 長い年月、精霊石は務めを果たしてきた。もう限界が近かったのだ。

 どうせ割れるのだから、主人公たちにはこのまま、魔物を狩ってもらった方がいい。

 汚名を雪ぐ機会を与えてあげないと、可哀そうである。

 

 

 

 さて、それはそれである。

 今の俺は、精霊たちの囁きを完全にねじ伏せて、自分の天恵を自ら選び取ろうとしていた。

 

 ──あ、だ、だめ、錬金術師、錬金術師! 

 ──こら、こら、こら、こら! 

 

(だめだ、俺は【農夫】と【鉱夫】と【船漕士】と【運搬人】を選ぶ)

 

 精霊たちが焦っているのが分かるが、俺はそんなのどうでもよかった。錬金術師も悪くないのだが、俺はもっと効率を極めようと思っていた。

 

 内訳で言うと、

 農夫:農地にて農作業に従事するものであり、この時代では農奴とも呼ばれる。

 鉱夫:鉱山にて採掘作業をするものであり、この時代では鉱山奴隷とも呼ばれる。

 船漕士:沿岸にて船漕ぎをするものであり、この時代では主に漕刑囚(ガレリアン)(船を漕ぐ犯罪奴隷)が多く担った。

 運搬人:都市部にて荷物を運ぶ仕事をするもの。

 

 ……と、まあ言ってしまえばどれも下級職である。

 しかも四つのうち三つは市民権を持たない賎民がやらされる仕事であり、二つは罪人が強制労働で課されるような仕事であった。

 

 だが、この【天恵】(ジョブクラス)の組み合わせには意味があった。

 特に【運搬人】が何よりも強い。ぶっ壊れと言っても過言ではない。そして【農夫】と【鉱夫】と【船漕士】も、それぞれ汎用性の高い技能を持っている。

 

(やり込み要素を極めようと思ったら、まずはこれらの職種(ジョブクラス)を制覇するのが定石なんだ)

 

 どんな天恵(ジョブクラス)であっても、必ず便利な技能がある。

 そして十分に技能を取り終わったら、後で別の天恵(ジョブクラス)()()()()()()()()

 

 最初の天恵(ジョブクラス)で一喜一憂するなんて、あまりにも些細なことなのだ。

 

 ──あ、あ、あ、ああっ

 

 俺の意志の強さの方が上回った。精霊たちは半ば悲鳴を上げていた。

 半ば観念したように四枚の絵札が上がった。

 

 司教は絶句している。

 四枚いずれもあまりにも酷い【天恵】だったからである。

 

 これをよもや皇族に類するものに告げなくてはならないとは――と死人のような顔をしていた。

 確かにこれは、不敬罪になってもおかしくないほどの珍事。

 

 しかし、これは俺が望んだ結果でもある。

 

「……な、汝、ルーク・マギデリックには……んん、【農夫】と【鉱夫】と【船漕士】と【運搬人】の天恵が、与えられた……。そなたの、行く先に、幸あらんことを……」

 

 周囲もしんと静まり返った。

 なんて可哀想な、という空気が漂った。

 確かに、たった一人の人物に四つも天恵が与えられるなどと、前代未聞の出来事。

 

 しかし四つとも漏れなく酷い。晒し者になっているも同然である。

 いずれもが、この世界ではごくありふれている、期待外れの天恵である。

 

 この場においてはただ俺一人だけが、与えられた天恵に満足していた。

 

 

 

 

 





 ロナは心を痛めて号泣しています。

 農夫、鉱夫、船漕士、運搬人の持っている技能《スキル》については、いずれ掘り下げるつもりです。

 ※先ほど13話が間違って投稿されましたので削除しました。
  引き続き本作をお楽しみください。
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