貞操逆転世界の悪徳皇子になった俺、ひたすら魔石を食べて強くなり、破滅フラグを回避します 作:ナロウ・ケイ
「……おぉ、おぉ……動乱の御子が、大陸に歪みを齎す者が、生まれ変わってやってきおったか……宿星の導きは奇っ怪なり、奇っ怪なりや……」
とある受付嬢が、水晶で読み取った魔力紋を石版に登録しようとしたところ、長年眠りに就いていた探索者ギルド総本部の大長老(樹人族)が目を覚ましたとか覚まさなかったとか。
その長老が、とある歴史上の人物にあまりにも近い反応で戸惑いの声を上げたとか上げなかったとか。
真相は不明であるが、とにかく探索者ギルドは、蜂の巣を突いたような大騒ぎになった。
「あの青年はどこに!?」
「審査の手続きを早く進めないと!」
「伝書鳩の妨害をした人物は誰!?」
てんやわんやに慌てる人々の思惑とは裏腹に。
話題の渦中にある、その皇子と侍女たちはというと。
未登録の迷宮に勝手に向かって、魔物たちを好き勝手に狩っていたのだった。
◇◇◇
「探索者は、未登録の迷宮を発見したら速やかにそれを報告する義務があるんだが……まだ俺たちは探索者じゃないからなぁ」
「ここは危険な迷宮なんでしょうか?」
「そこまで危険ではないよ」
飛び跳ねる
飛び跳ねる蛙の群れ。
暗い洞窟の中で、あちこちを飛び回る魔物たちが数に任せて襲ってくる……という思想設計の迷宮。剣士系や格闘家系の一対一でしか戦えない戦闘職のものにとっては大変やりづらく、逆に、多数を範囲攻撃で巻き込める魔法系の戦闘職にとってはやりやすい、要約するとそんな迷宮である。
つまり、
「カエルの魔物の素材は、毒腺、皮膚、目玉、肉。バッタの魔物の素材は、肝、翅、脚、か」
魔物を狩っているというよりも、もはや野宿しているだけの生活。
蜘蛛の巣に引っかかっている魔物を捌いて素材へと解体したり、周辺の薬草類や食用茸を収集したり、魔物の解体で手に入った魔石を例のやり方で浄化したり。
飲用水と携帯食料が尽きるまでは、延々と続けられる迷宮内野営暮らしに、不思議と不満の声は出なかった*1。
「魔物を狩りすぎたら、迷宮核を刺激してしまうせいで、突然変異種の出現を促してしまうらしいな」
「わざとやってますよね、殿下」
「さあね。……関係ないけど、カエルの魔物の皮膚と胃袋は、魔法の鞄にぴったりの素材らしいね」
確かに途中、《闇を食む皇帝飛蝗》だとか《全てを吸い込む蛙》だとか、かなり危険な個体に遭遇することもあった。
だが、四人が危ない場面に陥ることはなかった。危険な個体はそもそも【
「親父はもっとうまく盗む」
「それって何かの決め台詞でしょうか……?」
三人の侍女たちは目を見合わせたが、台詞の真意は何も分からなかったという。
「ちなみに、魔物を狩りすぎて、迷宮核のほうが根負けすることはあるのでしょうか?」
「理論上はない。空間の歪みが解消されることはあるのかという質問と同義だからね。歪みの根本原因がなくならない限りは迷宮は果てない。ただ、外的要因によって迷宮核が力を失ったら、魔物が出てこなくなることもある。いわゆる迷宮が
魔物の素材は、どんどんうず高く積み重なっていた。持ち帰るときに困るのではないかというほどに。
確かに嵩張るという意味ではかなり難儀するかもしれない。蛙の魔物と飛蝗の魔物を短期間で大量に狩りすぎている。このままでは、馬車用の荷車を一つ作らないといけない可能性が高い。
だが質量という観点では、特に誰も困っていなさそうであった。
この殿下の膂力なら、十分持ち帰れる程度の重量に過ぎないからである。
「湧き水の魔術で水自体は確保できるから、問題は食料だな。残り少なくなるまでは粘りたい」
「そんなことを言って、もう一ヶ月近く迷宮に潜っていますからね、殿下」
第一の腹心であるロナが釘を刺したものの、当のルーク殿下は方針を改める様子もない。もう少し粘れるな、みたいなことを平然とつぶやいていた。とんでもない皇子である。
「それぐらい時間が経っていたら、流石に探索者登録の事務手続きも完了しているだろうしな」
「そういうものでしょうか」
「俺が使った印璽は皇室の印璽だからな。帝都の皇室に真偽を問い合わせる伝書鳩を送って、その返事を受け取って、近隣の貴族を公証人として招集した審議を行って……みたいな動きを取るなら、審査に最大一ヶ月はかかると見たほうがいい*3」
「案外あっさり終わっているかもしれませんよ」
「まあ、受付嬢があの反応だと、あんまり期待は出来ないんじゃないか?」
ルークとロナの会話は、どことなく呑気なものだった。
ちなみにこの四人、もっと呑気なことに、例の
注釈を書いてて思ったこと
「暫定Eランク探索者じゃなくても、迷宮内でドスケベマッサージをしていいはずがないのでは?」