秘密結社 鷹の爪〜崩壊世界の征服〜   作:黄緑亀

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今週も張り切って世界征服!

ビットワールドの時間に合わせて投稿したかった

タイトルは初代鷹の爪3話、菩薩峠くん登場 から取りました


7.ウェンディくん登場

 ムーンライトスローンの騒動が終わり、学園に無事に戻った鷹の爪団。

ブローニャの暴走は、ムーンライトスローンのエンジンエネルギーが脳内のバイオチップに影響を及ぼしたとされた。

脳内にチップと聞いて総統と吉田くんは驚き、怖がっていたが、博士の

 

「脳内のチップなんてそんなに怖いもんじゃねーよ。そういう手術もあるしな。お前らの頭にもチップを40個くらい埋めてやろうか」

 

という発言によって落ち着きを取り戻した。

 

 そして、学園では試験が始まる。姫子やキアナは学園に戻り、試験の準備や対策に取り掛かっている。

 フィリップは引き続き情報収集。

レオナルド博士は艦長の仕事をこなしながら、怪人製造や戦艦の改造に取り掛かっている。可愛い見た目のおかげで他の博士、可愛い物好きが多い戦乙女ともすぐに仲良くなり、今ではすっかりこの部隊や基地のマスコットだ。

そして吉田くん達は………ヒマだった。

 

「総統ー!さっきグラウンドの方でエッチなメイドさんが戦乙女試験を見てたんです!

凄いんですよ!胸のとことかもうほぼ下着で!おっぱいバンドですよ!

お、おか、お、お母さーん!」

 

興奮した吉田くんは身近な女性の名前を叫ぶ癖がある。

 

「吉田くん、エッチなメイドなんて美少女ゲームの中だけの存在じゃ。

それはきっと突然変異したセミの見間違いじゃよ」

「一緒に観に行きましょうよ総統!」

「どうせセミなんだからもう死んでるかもしれん。わしは何処にもいかんぞ!夕方まで昼寝するぞ!」

 

「わかりましたよ総統。じゃあ菩薩峠、一緒にゲームセンター行こうぜ。」

 

ーーこうして吉田くんと総統は、学園の試験期間は遊んでるだけだった。

試験中の異変や、吉田くんが目撃したエッチなメイドの正体など何も知らないまま…

 

 

*   *   *

 

ーーやがて試験は終わり、戦乙女の任務が再開される。

ムーンライトスローンの謎のメッセージを元に、「4つの鍵」を探す任務がスタートした。

 

 スパムメールと言われたあのメッセージだが、「4つの鍵」というものは、14年前に出現した疑似律者の体内にあったジェムのことで、

崩壊エネルギーがヤバい!何ならニュージーランドの崩壊は多分それが原因だぜ。

「…こんな感じか?フィリップ」

「はい…大体そんな感じです」

 

「っていうか律者って何だよ」

「詳しくは分かりませんが…、崩壊で誕生する、崩壊獣やゾンビとは別格の化け物…らしいです…」

「へー、レアキャラって訳か」

「ちょっと違う気が…」

 

 現在、ハイペリオン号は、「渇望の嵐」ことデザイアジェムを回収するためにニュージーランドに来ていた。戦乙女に向けた姫子の説明を吉田くんは自分なりにまとめて、この世界のことを誰よりも調べているフィリップに確認してもらう。

 

 鷹の爪団は現在、艦内にいた。

少女が命懸けで戦っているというのに、大人の自分が艦内で座っているだけなんて嫌だと言う総統を、

戦闘能力を持たず、崩壊エネルギーの耐性も無いのに大規模な崩壊が発生した場所に出す訳にはいかないと、姫子が引き留めたからだ。

崩壊エネルギーは博士から貰った崩壊止めクリームを塗ったから大丈夫だと姫子に伝えたが、

「そんな紫外線感覚で崩壊エネルギーが防げるか!」

と言われて、信じてもらえず。

操縦は博士に全部任せていて、仕事が無いため彼らは、

艦内から下を見下ろしたり、現地の戦乙女から送られる映像データを見ながら雑談するしかやることがなかった…

こうして不毛な時間が過ぎていき、やがて現地の戦乙女から通信が入る。

『目標地点に着いたよー!』

『ジェムの影響か、崩壊獣が多いですね…』

『全員、合流出来ました』

 

「マジかよ早いな!、おい女子アナ!、デザイアジェムを見せろよ」

『キアナだよ!デザイアジェムなんだけど、それっぽいものは見つからないよ。ジェムって名前だし、宝石みたいな感じだと思うんだけど…』

「何だよ石探しもできねーのかよ。じゃあ石じゃなくても、なんか怪しい物とかないのかよ」

 

『えー、そういえば、近くに凄く変な髪の染め方してる女の子がいるよ』

「おい明らかに怪しいだろそいつ!」

『いや、デザイアジェムは人じゃないし、車椅子に乗ってたから、逃げ遅れた一般人かも…』

「馬鹿もーん!そいつがデザイアジェムだー!!」

『絶対違ーう!』

 

「吉田くんが正しいわ。彼女こそがデザイアジェムよ」

 

『ええっ!?』

「マジかよ!?」

 

 姫子が言ったことに、キアナと鷹の爪団は驚きと困惑の声を出す。

吉田くんは少女の正体を見破っていた訳ではなく、ただキアナをからかって遊んでいただけだった。そしてそれを知らない姫子もまた吉田くんに困惑していた。

 

「(何で吉田くんまで驚いてるの…?)説明するわ」

 

 

*   *    *

 

 姫子は説明し始めた。車椅子の少女の名前はウェンディ。

彼女は四人目のS級戦乙女になれると言われるほどの実力者だった事。

3年前、そんな彼女の下腿骨にデザイアジェムを埋め込んで、律者並の力を得ようとした人造律者実験の事。

そして彼女にデザイアジェムの力は制御できなかった事。

 最後に、その場で一緒に説明を聞いていたウェンディが、

「本当の事です。この足は、その実験の反動です」

と付け加えた……

事情を聞いたキアナ達は、自身と同年代かそれよりも幼い少女に不自由を強いる天命の体制を強く批判する。

 

「(その髪色は違うの…?)なんで取り出さないのよ!これのせいでウェンディちゃんが苦しんでいるのよ!」

 

「これは仕方のないことなの。

デザイアジェムは律者コアの中でも特に不安定なの。でもウェンディの体内に入っている時だけは安定しているの…

もしも取り出したジェムが暴走でもしたら、どれだけ大きな崩壊が起きてしまうか…」

 

「それじゃあウェンディちゃんをジェムの器として一生縛り付けるつもりなの?やりすぎたわ!」

「学園に戻ったら、ウェンディにあるジェムを取り出す方法を考えませんか?」

 

芽衣とブローニャも声を荒げる。

姫子、更には自分の所属する組織までに猛反対する3人。

彼女らの批判を聞いていたウェンディは、「とうに受け入れたこと」と憤るキアナ達を制する。

しかしその時、通信越しに、空気を読まない大声が聞こえて来た。

 

『うえええええええん!うう、おっ、おええええええええ!!」

『うわああああああん!!ああぞうどう”!ゲロ吐かないでぐださいよごんな“どごろ”でっ“…!…う“っ”!…うっぷ!…うおろろろろろろろ…』

 

「あのー、大丈夫ですか…?」

 

予想外の事に、先ほどキアナ達を制したウェンディの諦めたような声の調子が崩れる。

通信越しのその鳴き声の主は、大泣きしてから明らかに吐いたと思われる。大泣きすると吐く…子供かな?

 

「何してるんですか…バカ艦長…」

 

艦長だった。

『何と非道な……わしは怒っている、かつてないほど怒っているぞー!』

「いや…泣いてましたよね」

『総統は涙もろいんだよ。気にすんな』

 

変な人達だ…とウェンディは思った。こんな泣き虫が本当にあの戦乙女の艦長なのだろうか。

 

『もう大丈夫じゃウェンディくん。ハイペリオンに乗れ。実験からの3年間、ずっとそうやって苦しめるなんて、天命が許しても、誰もが幸せになれる世界征服を目指すわしらが許さんぞ!』

 

 実験からの3年間…と言ったように、ウェンディはその間、ずっと軟禁状態だった。子供を愛する総統は、実験後のウェンディの境遇や感情を感じ取り、本気の怒りを見せていた。それと同時に、仕方のないことだと言って子供の軟禁が許されてしまうこの世界…崩壊という理不尽を嘆いて本気で泣いていた。

 …鷹の爪団の団員や、彼の宿敵のヒーロー、彼のアパートの大家など総統をよく知る人物であれば、総統の怒りと悲しみを理解出来たのだろう。

しかし初対面のウェンディにとっては単純な、自分を閉じ込めた大人と同じ、自分を良く見せるための安い同情にしか思えなかった。

やがてその思いは怒りに変わっていった。しかし、今の彼女に怒りは制御できない。

 

…泣きたいのは…私の方だ。

皆を幸せにしたいなら、どうして3年前に助けてくれない。

誰もが幸せになれる世界征服とやら、その裏で、私のように不幸になる人が必ずいるんだ。

そしてお前はどうせ無視するんだ!その他大勢のために!私達がどうなろうと!

 

『…!崩壊エネルギー反応検出!みんな、ウェンディから離れなさい!』

 

「偽善者共…貴方達が憎い!」

 

「きゃあっ!」

 

ウェンディが怒りの表情を見せ、光と共に姿が変わる。やがて腰の辺りから羽のようなものを生やして車椅子から浮き、突風を起こしてキアナ達と、自分が座っていた車椅子を吹き飛ばす。

 

「アハハハ!…全て壊れろ!」

そしてウェンディは風の音と共に、遥か上空に消えていった……。

 

 

ーー鷹の爪団と姫子はハイペリオンから、その様子を見ていた。

 

「艦長…あなたは悪くないわ。デザイアジェムはウェンディの体内で安定しているとはいえ、それがずっと続くとは限らない。

デザイアジェムはすでに暴走していて、彼女は崩壊の意思に乗っ取られていたのよ」

「そうですよ総統は悪くありません!偽善者でもありません!

悪いのはいつだってウエットティッシュが1枚づつ取れない事ですよ!」

 

姫子と吉田くんが総統に声をかける。総統は悪くないし、決して偽善者などでは無いという事を吉田くんは知っている。しかし…

 

「…いや、わしが悪かった…」

「そんな事言わないで艦長!」

「泣きたいのは彼女の方だったんじゃ…!本人の気持ちを無視して一方的に涙や慰めを見せてくるジジイなど、偽善者と言われても仕方ない…!」

 

総統は静かに震えながら、涙を止めた。

 

「姫子さん、吉田くん……行ってくる。ウェンディに会って、直接…わしの思いを伝えるよ!」

 

「言いたい事は分かりますが、なんか言い方が気持ち悪いですよ総統ー!」

 

「着地は頼んだ!菩薩峠くん!」

 

そう言って総統は出撃直前の戦乙女のように覚悟を決めた顔になり、菩薩峠くんを抱えてハイペリオンから飛び降りた…

残された姫子達は呆れながらも少しの期待を持ち、まずはキアナ達と合流して貰おうと通信を入れようとした。

 

その時、天命より「ウェンディを第四律者に認定する」との連絡が入る…

 

ーーTo be continuedーー




次回
律者vs菩薩峠
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