8話にしてやっと鷹の爪らしい事が出来た…
ーーあの実験以降、ずっと頭の中に響く声、全身の痛みと動かない下半身。
自分が一生抱え続けるデザイアジェムという爆弾。それらに怯えて、耐えて、ずっと
大人達のモルモットにされてきた。
もう、耐えられなかった。
急激に上昇する崩壊エネルギーと共に、少女は負の感情を爆発させた。
暴風、嵐と破壊を巻き起こす第4律者、“風の律者”が誕生した。
風の律者は現在、広範囲に破壊をもたらすために空中にいた。そしてーー
ーー力を封じられ、過度な逆エビ反り状態にされていた。
「痛い痛い痛い痛い!関節が無理な方向に曲がってるー!!」
風の律者はしばらく叫んだ後、地面に落とされる。
「はあ…はぁ…そうか…私…暴走しちゃって……」
「相手は律者じゃ菩薩峠くん!念の為あと3回くらいやっとこう!」
「…パパ」
「痛い痛い痛い痛ーーーい!!待って!もう戻ったから!意識戻ってるから!もう律者じゃないから!私はウェンディだから!!」
「…やめる?」
「ウェンディの名前を出してくるか…何て卑怯な奴じゃ風の律者!!
騙されてはいかんぞ菩薩峠くん!」
「…わかった」
「絶対助けるからなー!ウェンディくーん!」
「痛だだだだだだ!痛だい“!』
「ああああ!痛い!!助けて!ぐあぁぁぁぁぁぁぁ!………折れるぅ…」
「…もうわざとやってるだろ……………」
グキィッ!
「あ”っ………折れ“だ……」
「効いてるぞー!その調子じゃ菩薩峠くーん!」
* * *
その後しばらく菩薩峠くんの超能力を風の律者に使い、完全に無力化出来たところでキアナ達が到着した。
「意識が戻ったんですね!ウェンディ!」
「はあ…はあ……うん……戻っ…た…よ……」
「信じてたよ!ウェンディ!自分の意志で崩壊に勝てるって!」
「ウェンディくん、君をハイペリオンに連れて帰る」
「でも私は車いすだし……(骨を折られて)動きにくいし…きっと足手まといに…」
「なんだそんな事を気にしとるのか。歩けないくらい何だというんじゃ…
…よっ…と」
総統は倒れていたウェンディを持ち上げ、背中に乗せて、ハイペリオンとの合流地点まで歩き出す。会話を交えて歩く光景は、まるで娘をおんぶする父親のようだった
「あの…重くないですか…?」
「平気じゃな。昔はよくこうやって息子を…いや、今でも吉田くんをおんぶしているんじゃ。慣れとるよ」
「…君を見ていると、昔の菩薩峠くんを思い出す」
「菩薩峠くん?あの子を?」
「菩薩峠くんも君と同じでのう、沢山苦しんでいた。実験の道具にされたり、悪いやつに意識を乗っ取られた事がある…」
「ええっ!?でも」
「そうじゃ、今では自分を取り戻している。最終的には打ち勝ったんじゃ。でもそれは1人で出来た事じゃない。仲間と共に頑張った結果じゃ」
「わしは信じている…!ウェンディくんが崩壊に打ち勝てると…!
君も菩薩峠くんと同じで、仲間がいるじゃろ。君の苦しみを分かってくれて、崩壊に勝てると信じてくれた仲間が…!わしらはずっと信じているぞ」
「……………私…艦長と、みんなを信じる……!
艦長が私を信じてくれるなら、私も自分を信じてみたい!」
ウェンディは菩薩峠くんに視線を移す。目があった菩薩峠くんは、
「…お姉ちゃん」と呟いた
「ありがとう…艦長。私…ここまで人に良くされたの初めてかも…」
「ふん、大人として当然のことをしたまでじゃよ!」
「さあ帰りましょう。ブローニャも、ウェンディを全力でサポートしますよ。私もモルモットだったことがありますし…
……艦長と同じ事を言いますが、ブローニャにも、貴方に姿が重なる友達がいます」
「ありがとう、ブローニャお姉ちゃん」
こうして何とも平和的にデザイアジェムは回収され、ウェンディという
新たなお友達も手に入れた鷹の爪団だった……
ーー通信機から、謎の女性の声が聞こえてきた。
『ブローニャ、親愛なる我が娘よ。いますぐ第四律者を回収しなさい。』
『天命の手に渡らせる訳にはいかないわ!』
「何じゃ?ブローニャくんのお母さんか?第4律者は既にわしらが…」
突然、ブローニャが総統に向けて砲撃してきた
「ブローニャ ボンバー!」
「またこの流れーっ!?」
ドゴォーーーーン!
ウェンディを庇った総統はブローニャのボンバーをもろに食らってしまう。その衝撃でウェンディと、隣にいた菩薩峠くんも吹っ飛ばされる。
ムーンライトスローンの時と同じく、全身の装甲が黒くなったブローニャが冷たい目でウェンディを見つめる。
「ブローニャお姉ちゃん…何で私を狙ったの…?
まさか……さっきのは全部嘘だったの……?」
ウェンディの髪が光り出す。律者の力が戻ろうとしている
「違うわ!あの通信…ブローニャちゃんは操られているのよ!」
芽衣の説得によって、ウェンディは落ち着きを取り戻す。しかし…
『全機構、ステルス解除!』
「うわあーっ!」
またあの女性の声と共に、今まで隠れていたであろうロボットが姿を表し、一斉にウェンディに向けて砲撃して彼女を気絶させた。
『新しい戦術機甲……なかなかのものではないか。律者の隙を作ったあなたたちに感謝するよ』
『…………おっと、忘れるところだった。ここに律者がもう一人いることを。我が娘よ!第3律者を捕獲しなさい!』
「はい、お母様」
ブローニャは芽衣を気絶させて束縛する
「そんな!芽衣先輩!」
「雷電芽衣の捕獲完了…残り1名…」
ブローニャはキアナに重砲を向ける。そこに、ボンバーの直撃から回復した総統がキアナを庇って立ち塞がる
「やめるんじゃー!ブローニャくん!」
『お前は…ハイペリオンの艦長…そして鷹の爪団の総統だったな』
「何故それを知っている!」
『ブローニャは私の組織、“ネゲントロピ”ーのスパイなのよ』
『貴方の仲間の吉田とかいう人が、ブローニャに大事な情報をペラペラと喋ってくれたそうよ』
「ぐぬぬ、吉田くんの素直さを利用しおって…!」
『鷹の爪団…団員は6人。崩壊と戦うカメムシの養殖業者だそうね』
「何を教えたんじゃ吉田くーん!というか団員は5人じゃー!
ええっ何で1人増えてるのー!?怖いんですけど!」
「…お母様、それは去年の話ですよ。今年は鰻を養殖してるんです」
「去年もやっとらーん!あと今年もやってないよそんな事!」
『…どうやら偽の情報を教えられていたようね』
「吉田くんはそんな事考えてないと思う!」
こんな状況でも吉田くんに振り回される3人の会話を、ブローニャの通信に入った妙な音が中断する。
「…周囲に天命部隊を確認…。接近中です」
『チッ……狙いは時間稼ぎか………命拾いしたわね』
『全軍!帰航せよ!』
「待てー!みんなを返せー!」
絶望するキアナ、叫ぶ総統、気絶する菩薩峠くんをその場に残して機構部隊とブローニャは、何処かに消えていった…
* * *
芽衣とウェンディは、ネゲントロピーに攫われてしまった。後から姫子達が駆けつけたが、キアナと総統と菩薩峠しか救出出来なかった。悔いながら学園に戻ったキアナは、芽衣救出の作戦を練り始めたーー
ーーそして戦乙女の知らぬ所で鷹の爪団も、秘密の作戦をスタートさせる
「泣くなよ総統、菩薩峠。救出には全員で行くっつってんだろオラッ」
「ウェンディを攫ったアイツの次の行動5000パターンを、全て計算済みだ。きっと上手くいくさ。お前らボンバー食らったんだろ?今日はもう休んどけっ。
あー俺は吉田とテレビ見るよ。こっちでも蒸発大陸やってるみたいでさ」
「おいフィリップ、ちょっと“テレビのリモコン”貸してくれねえか…」
ーーTo be continuedーー
律者ウェンディくらいなら、菩薩峠くんで何とかなると思う。
ボンバーはどうしようもない
「菩薩峠くんも君と同じでのう、沢山苦しんでいた。実験の道具にされたり、悪いやつに意識を乗っ取られた事がある…」
「ええっ!?でも」
「そうじゃ、今では自分を取り戻している。最終的には打ち勝ったんじゃ。でもそれは1人で出来た事じゃない。仲間と共に頑張った結果じゃ」
※「DXファイターは仲間じゃない」とか「殆ど偶然だろ」とか思っても言わないで