秘密結社 鷹の爪〜崩壊世界の征服〜   作:黄緑亀

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今週も張り切って世界征服!

今日、10月20日は、老化マシーンで出てきた墓石に刻まれたフィリップの命日です
総統はなんとかフィリップの運命を変えようとしていましたが、映画「総統は2度死ぬ」にて、フィリップはフェンダーミラーの新兵器によって殺されました。
それ以降、彼は幽霊です。ホントです。


9.裏切りは銀色の微笑み

「ねえ吉田くぅ〜ん。もうすぐME社だけど、潜入準備は出来てるの?」

 

そう語るのは、真っ白な髪で、吉田くんと同じ小さな体の大人で女性、テレサ・アポカリプスだ。キアナ達の学園長でありながら、姫子の先生でもある強者だ。子供だと思い、脅して金を要求してくるDXファイターを一瞬で返り討ちにできるほどに。普段は姫子に指揮を任せ、作戦に参加する事は無いのだが、戦乙女が合計3人も攫われてしまっている緊急事態なため、彼女も作戦メンバーに加わったのだ。

 そして今の言葉通り、今回は吉田くんを始めとする鷹の爪団の5人も作戦に参加している。今回は崩壊と戦う訳ではなく、ブローニャを操った奴らが基地にしているME社に潜入して攫われた戦乙女を救出するという任務なため、何とか同行する許可が降りた。

 

「任せとけって、島根の男は強いんだ」

「危なくなったら、すぐに逃げて、あたくし達と合流しなさい」

 

「芽衣先輩!ブローニャ!絶対助けるから!」

「…待っとれ!ウェンディくん!」

 

「…盛り上がってる所悪いけど、ME社の警備は厳重で、まだ侵入のルートすら決まって無いのよ。今から周辺を探索して…」

「大丈夫ですよ姫子さん。僕にいい考えがあるんです」

 

 そう言って吉田くんはカツラを被って女装して、正面入り口の警備ロボットに近づいて話しかける。

 

「ジャンクロード!」

「忘れたの?ゾフィーよ。ああ、こんなにも七三分けが似合って…」

 

「…現在、ME社は関係者以外立ち入り禁止となっております」

 

「そんな水臭いこと言わないで!ねえ聞いて!私まだ、あの歌を歌っているの!あなたの為に歌った、あの歌を!ワン!ツー!スリスリフォー!

そんな所引っ張っちゃダメだ〜♪ そんな所引っ張っちゃダメだ〜♪」

 

「…ゾフィーさん、お入り下さい…」

「ありがとうジャンクロード!」

 

「ええーっ吉田くんのアレが通用したーっ!?」

 

隠れていた事を忘れて、総統が思わず叫んでしまう。それによってゾフィー以外も此処にいるのがバレてしまうのだが、総統がやらかすなんて慣れた事。すぐさま吉田がフォローする。

 

「ねえ、今回は私のファンも来ているの。全員入っていいかしら…。沢山の人と歌って飲んで、あの時の酒場の再現といきましょう…」

 

「…了解。ドアオープン、エレベーターのロック解除」

 

それによって、吉田と警備ロボットを先頭に、戦乙女と鷹の爪団がビルに入って進んでいく。

しかし、こんな簡単に警備が騙せるものなのか。

 

「ねえ姫子、これ絶対罠でしょ」

「吉田くんの事が心配なの?確かに罠の可能性は高いわね」

「吉田くんの事は色んな意味で心配だよ」

「…まあ、罠だとしても心配ご無用!あたくしがいるからね!吉田くんは…ビルに入れただけ良しとしましょう」

 

「ねえジャンクロード、今回私を此処に読んでくれたブローニャさん、芽衣さん、ウェンディさんの3人は何処にいるの?」

「…彼女らは3階の実験室にいるでしょう。ウェンディさんだけは最上階ですね…今ドアを開けます…まずはここを通って下さい」

 

その後も吉田くんが警備ロボットを言いくるめて、何とか騒ぎを起こさずに実験室の前まで辿り着き、やがて実験室への扉が開かれた。しかしそこで、何かを感じ取ったキアナが足を止める。

 

「待って!気のせいかもしれないけど、私達が通って来た入り口が閉められた!」

「罠だったようね…退路が…」

 

『…キアナはいつも馬鹿だと聞いてたけど、肝心な時は賢いじゃない』

「その声!ブローニャちゃんを操ってる人!」

『ふふふ…軽率にもこんな罠に嵌まるとは…』

 

「えー、それ本気で言ってる?」

『…は?』

 

「私は罠だって気づいてたよ。吉田くんは?」

「いやー……罠じゃなかったらどうしようって思ってましたよ!僕ずっと女装して、最終的には歌わないといけないのかって焦ってましたからね!」

「あたくしも同意見よ…こんなのに騙されるような奴らに生徒達が攫われたとなると、怒りよりも先に心配が来てしまうもの。

…なんか普段から、窓に泊まってるカナブンやカメムシにも騙されて、毎週昆虫ゼリーを大量に買ってそうで…」

「いやどんな騙され方なんだよ!」

 

『五月蝿い!お前達の芝居に付き合ってやったと言うのに……!』

『余裕でいられるのも今のうちだぞっ…!』

 

通信の声が怒気を含んだものとなる。

元々威厳のある女性の声に怒りが加わり、普通の人間ならばその雰囲気に萎縮したり、警戒を見せるようなものだったが、鷹の爪団のペースに引き込まれたこの会話中にそれを言っても、吉田くんはコントのツッコミ程度にしか感じない。

 

「まあまあ落ち着けよ。昆虫ゼリーってのは、人間が食べても美味いんだぜ。俺達もお金がなかった時は、森の中に子供達が設置してる昆虫ゼリーをカブトムシと奪い合って…」

 

『何で私が昆虫ゼリーを買ってる事になってるの!』

『……もういいわ。まあ早く実験室に来なさい……でも、来る途中で命を落としてがっかりさせないことね』

 

「戦術機甲…!」

「どうしたのジャンクロード!」

 

謎の女性がそう言った時、どこからか大量にネゲントロピーの機甲が現れ、一斉に襲いかかってきた。今まで吉田くんを案内していたロボットも同時に襲って来る。

戦乙女は一斉に武器を構え、戦闘に備える。

 

「オラオラッ!」

 

しかし機甲を攻撃したのは戦乙女ではなく、鷹の爪団だった。

 

「ここは俺たちに任せやがれ、オラッ」

「君たちは先に行くんじゃー!」

 

 これまたどこからか取り出した素粒子ビームライフルを撃ちまくるレオナルド博士。基地にあった刀を振るっている総統。双銃で戦う吉田くん、フィリップ、菩薩峠。

 ここの戦闘を引き受けるつもりらしいが、総統や吉田くんができる攻撃といえば、後ろから石を投げたり、ネットに悪口を書き込んだりする程度。いつも戦乙女の背中に隠れていた彼らが無謀にも、大量の戦術機甲と戦っている。

 

「ダメだよ!艦長!」

 

キアナは叫ぶ。これ以上仲間を失いたくない。

 

「うるせーな。早く行けよ!

早く行かねえと、あいつら実験の材料にされちまうんじゃねーか?あいつら律者なんだし。まあ、俺達律者とか、芽衣に何があったのかとか、何も知らねえが、友達を助ける為に、俺達だって全力なんだよ!」

「実験室に急げ!キアナ!!」

 

「吉田くん……」

 

迷うキアナの肩に、姫子が手を置いた。

 

「行きましょうキアナ。彼らは大丈夫よ。そんな気がするの……」

 

「あんなに賑やかな人達が、こんな所であっさり死ぬわけないわ。」

 

とテレサも続く。

 

「分かった!先に行かせてもらうよ!

吉田くん!芽衣先輩達を絶対助けるから!みんなで学園に帰ろうね!」

 

そう言って、キアナ、姫子、テレサの3人は吉田くんに背を向け、実験室に向かって走り出した。

 

「任せろー!この戦いが終わったら、一緒に冷やし中華でも食おうぜー!」

「うん、約束だよ!」

 

まだ声が聞こえるうちに、2人は約束を交わす。

まるで悲劇の前準備のようなやりとりだが、とてもそんな雰囲気には見えなかった。キアナはウェンディのように、艦長を信じていた。いつでもどこでも賑やかで、5分程のギャグアニメのキャラみたいで。彼らと一緒だと、笑って、ツッコんで、力が抜けて、何だか気が楽になる。彼らなら、彼らと一緒なら、どんな悲劇もぶっ壊して、皆んなで笑って……

 

「うわあーっ!総統ー!フィリップがーーー!!」

「ななななな何じゃってーーーーーー!?」

 

………やっぱ心配だな……

 

 

 

 

 

 

…実験室に入ると、そこには拘束された芽衣がいた。そしてそれを守る様に、キアナ達に立ちはだかるブローニャ。

 

「芽衣先輩を返してもらうよ!」

『ふん…お前達は律者の価値を全く解っていない。奴らの自然を操る力の源さえ解明すれば、人類の科学技術は飛躍的に進歩する事になる。

ブローニャ、奴らを仕留めなさい!』

 

「………幼いころから両親を失くしたブローニャにとっては、”カカリア”はお母様そのものです」

「カカリア?それがあの声の主の名前なのね」

 

「ブローニャは、優しくしてくれた芽衣姉様を傷つけたくない……………

だから、ブローニャは戦いません!

キアナ、今すぐ芽衣姉様を連れて脱出してください!

ブローニャは…すでに自分のバイオチップを破壊しましたから……」

 

『ふざけないで!バイオチップは貴方の脳内に直接埋め込んであるのよ!

死ぬつもりなの!?』

 

「ブローニャは、自分の命よりも芽衣姉様の方が大切です。

芽衣姉様を傷つける命令にはもう従いません!」

「…キアナ…芽衣姉様を……頼みます………」

 

そう言い残し、ブローニャは目を閉じ、倒れた。

 

「ブローニャーーー!」

 

 

 

解放された芽衣が、キアナの叫びで目を覚ます。

 

「…キアナちゃんの為に戦うのが、こんなにも辛い事だなんて………って、ええっ!?…何でブローニャちゃんが倒れてるの!?…まさか…私が夜中過ぎに甘いものを与えたからなの!?」

 

「どんな夢を見てたのよ」

「ブローニャはね、芽衣先輩を守る為に深手を負って今は意識を失っている…」

 

「どんな先進科学でも、人の心を勝手に操る事は出来ないみたいね。早くここを離れましょう。ブローニャはまだ死んではいないわ」

「本当なの!?姫子!」

「ええ、早く終わらせて、学園でブローニャを治療するわよ」

 

新たに芽衣が加わり、戦乙女達はウェンディの救出に急いだ……

 

 

 

 

…そしてブローニャを操ろうとした声の主、カカリアもまた、自分の作戦を急いでいた……。

「まあいいわ。第四律者がまだいるし、実験を早めましょう……

さあウェンディ…今から貴方を解剖するけど、遺言くらいは録音してあげるわよ……」

 

ーーTo be continuedーー






総統は2度死ぬでは、バジェットゲージや告白タイム、大家さんの初登場が衝撃でしたけど
一番の衝撃はメインキャラの1人が死んだことですよね
そして死人がリモコンのボタンひとつで幽霊と生者を切り替え可能になるのも衝撃です。
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