機動戦士ガンダム Stellar Bless 改訂版を作成中   作:木星市民

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9話 地球へ ②

「こちらジオンパトロール隊。貴艦の所属と艦名を明らかにせよ」

 

「こちらシュミット軍所属第一艦隊旗艦シュテルン。月面都市ルナ・ノヴァへ航行中」

 

「何度目の停止命令だよ! 情報共有くらいしとけ!」

 

サイド9を出港後、度重なるジオン軍の停止命令に乗員たちは苛立ちを隠せなくなり、航行計画にも支障が出ていた。

 

「良い航海を」

 

「ありがとう」

 

質問の殆どはオケアノスについてであり、全て軍機につきと言い義務的に回答していた。そのおかげもあってか、事情聴取はすぐに終わり、解放された。

 

「遅れを取り戻す、各艦第四戦速」

 

「旗艦シュテルンより全艦へ。これより第四戦速に移行する。繰り返す……」

 

艦内に重低音が響き渡る。エンジンが力強く稼働し始め、艦全体がわずかに震えた。振動が足元から伝わり、乗組員たちはその加速を肌で感じる。

 

艦橋のモニターから各艦の核熱ジェットエンジンから力強い光が溢れて、第一艦隊は加速していく。

 

~~~~~

 

「ムサイが近づいて来ます……」

 

「回線は来たか?」

 

「……今来ました」

 

ルナ・ノヴァまで残り23時間になる所で何度目か分からないムサイからの通信が来た。エリック少将も面倒くさくなり、段々と雑な対応になっていた。

 

「ご無沙汰しております、シュテルンの皆さん」

 

「これはシャア・アズナブル少佐ではありませんか。かの英雄がパトロールですか」

 

「任務後にキシリア少将からシュミットの皆様のエスコートを指示されまして、迎えに参りました」

 

モニターに映し出されたジオン軍の士官は赤い彗星ことシャア・アズナブルであった。パトロールからの報告を確認していたキシリアは徐々にシュミット側の対応が悪くなってることに気づき、帰還途中のシャアに連絡を入れ、出迎えに派遣した。

 

「カイル君が見当たりませんが、サイド9ですか?」

 

「カイル様は後方のオケアノスにいらっしゃいます。お会いしますか?」

 

「よろしければ、お願いしたい」

 

エリックはオケアノスに連絡し、カイルにシャアが来ていることと面談を希望していることを伝えた。何回か頷くとエリックは通話を切った。

 

「手が外せないので、オケアノスに来て欲しいとのことです」

 

「了解した。ザクで向かうので、誘導を願いたい」

 

通信が切れ、5分も経たないうちにムサイから赤色のザクが出撃し、後方のオケアノスへ飛び立っていた。

 

「カイル様はジオンのエースパイロットと仲が良いんですか? しかも、赤い彗星ですよ」

 

「聞いた話だとサイド9へバカンスに来ていたシャア少佐と飯を食って仲良くなったらしいぞ。色んな人を見てきたがカイル様はそこが知れない」

 

シュテルンの艦橋はエリック少将の言葉を聞いて、カイルなら有り得ると艦橋メンバーは仕事に戻った。

 

「ようこそ、オケアノスへ。シャア少佐」

 

「元気そうでなによりだよ、カイル君」

 

格納庫でシャアを出迎えたカイルは挨拶をそこそこに自室へと案内した。

 

「巨大な戦艦だ」

 

「全長1200mで軍艦の中ではこれ以上の(ふね)は無いでしょう」

 

「ほう。他の者には詳細を答えなかったにもかからわず、教えても良いのかね? ジオン軍の佐官である私に?」

 

「問題ないですね。今のオケアノスはフルスペックではありませんし、建造する為の物資や資金を考えるとジオンどころか連邦すら怪しい。

 

落とそうとしてもいいですが、対価はジオンの滅亡ですよ」

 

「君が言うと全てが本当に聞こえてくる」

 

通路を歩きながら途中、クルーラウンジで飲み物とお菓子を調達して、カイルの自室へと到着した。

 

「どうぞ、お座りください」

 

「失礼する」

 

飲み物とお菓子をテーブルに置くと早速、最中を手に取りパクパクと食べ始めた。

 

「で、ご要件は?」

 

「特に要件はない。挨拶をしようかと君の所在を聞いたらエリック艦長が気を利かせてくれた」

 

シャアも置かれたお菓子の中からチョコバーを選び、口に運んでいた。戦争中の軍艦の中では有り得ない光景があった。

 

「シャア少佐、はっきりと言いますがジオンは負けますよ。ブリティッシュ作戦が目標地点に落ちなかった段階で泥沼化は確定です。

 

降下作戦しているようですが、ザビ家は地球の広大な大地を舐めています。持久戦に持ち込まれた段階で補給線を維持できないジオン軍は物量で連邦に押し潰されます」

 

「まるで預言者のようだな」

 

「補給線が維持することが出来ない軍は滅びます。それは歴史が証明していますよ」

 

自分が所属している国が滅びると他人から言われたら、普通の人間は激怒するであろう。しかし、怒ることも無くシャアはチョコバーを食べる手を止めず、対面に座るカイルもごくごく普通に緑茶を飲みながら、息を吐く。

 

「貴方にとっては、ザビ家が滅びた方が良いでしょうね」

 

「それはどういうことだね?」

 

「キャスバル・レム・ダイクン。貴方は何を思って、ザビ家に仕え、戦っているのですか?」

 

シャアはチョコバーをテーブルの上に起き、脚を組み直して、口を開いた。

 

「君は過去すらも見えるか?」

 

「サイド9であった時、貴方はエドワウ・マスと名乗りましたがそれは逃亡中に使っていた偽名です。

 

実はシュミット家とダイクン家とは多少の縁があるのですよ。祖父の代でありますがサイド8建設の際にシュミット家が協力し、その時にダイクン氏と知り合い、酒を酌み交わしたそうです。

 

その後は機会が無く、会うことは無かったそうですがダイクン氏が亡くなったと聞き、残されたご家族を心配したそうで諜報部に追わせてたと記録にありました。

 

記録にエドワウ・マスの名があり、カレー屋で会った時にその名を名乗って下さったので、キャスバル・レム・ダイクンと確信しました」

 

「どうする? ザビ家に私を引き渡すか?」

 

語尾を強めるシャアを軽くスルーして、カイルは新しい最中を開け、むしゃむしゃと食べ始めた。

 

「いいえ。貴方の復讐には興味がありません。俺はシャアさんに生き残って欲しいだけです。後、連邦やヘマをしてザビ家に殺されないか心配しているだけです」

 

「それを信じろと?」

 

「信じるか信じないかはあなた次第ですよ。後、何か困ったことがあれば、頼ってください」

 

カイルは何も変わらずにシャアに告げた。

 

「君は何故、私を助けようとする?」

 

「何故でしょうか? いまいち自分でも分かりませんね。サイド9のことを考えると潜在的な脅威であるシャアさんを消す方が合理的だと思います。

 

ですが、そういった判断よりも直接会って、話したシャアさんを気に入ってしまったことが原因ですかね?」

 

「何故、君が疑問形なんだ」

 

シャアも食べかけていたチョコバーを完食し、コーヒーも一気に飲み干した。

 

「長居しすぎた、艦に戻る」

 

「そうですか。格納庫まで一緒に行きます」

 

2人に会話は無く、コツンコツンと足音が通路に響いていた。

 

「そういえば、シャアさんにお願いがありました」

 

格納庫でザクに乗ろうとしていたシャアを呼び止め、耳打ちをした。仮面のせいで表情は分からないがシャアのオーラから訝しんでいるのは、簡単に分かった。

 

「私は君の部下では無いぞ……まぁ友の頼みだ、動いてみよう」

 

「ありがとうございます。赤色の友人さん」

 

2人は敬礼を交わし、カイルは隔壁が閉まるまでシャアを見送り、自室へと戻った。

 

「友か。友達が出来たの初めてかも」

 

廊下には先程の重苦しい足音では無く、軽く跳ねるようなリズムの足音が響いていた。

 

第一艦隊はシャアのエスコートのおかげで予定通りに月面都市ルナ・ノヴァに到着した。




カイルは友達を手に入れた
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