機動戦士ガンダム Stellar Bless 改訂版を作成中 作:木星市民
月面都市ルナ・ノヴァ。月の裏側に建設された民間による初の月面都市であり、西暦での月旅行先は決まって、ルナ・ノヴァであった。
シュミット家においても、宇宙開発の始まりの地である。現在は木星で採取された資源の貯蔵及び輸送艦の宇宙港を擁した巨大な輸送拠点である。
「カイル様、ご隠居様からメッセージが来ております」
「ありがとう」
オケアノスの通信士から転送されたメッセージを確認するとカイルは首を傾げた。
「カリンポンに行け、話は通してあるか。確かインドだったよな。期限を決められてないし、日本の支援が始まってから行けばいいね」
カインは通信士に分かりましたと伝えてくれと返事を頼むと艦橋から搬入されるコンテナを眺めていた。
「カイル様、時間はありますのでルナ・ノヴァを探検されたどうですか?」
「うーん。そんな気分じゃないし、月を散歩してくるよ」
「はぁ」
カイルはアンディ中佐の提案を断り、格納庫へと向かった。整備員に声をかけ、グラウⅢを起動した。
「ちょっと出かけてくる」
「お気をつけて」
管制官にまるで近くのコンビニに行くような感じで出撃を告げると、隔壁は開き、カイルは宇宙へと射出された。
「やっぱり、宇宙は良いね。特にMSに乗っている時が1番、最高だ!」
カイルの気分は高揚し、フルスロットルでオケアノスの周りを飛び回っていた。
「凄いですね。あんな急加速急旋回とかして、カイル様は無事なんでしょうか」
「普通のパイロットだと失神してると思うな。あっ何処かに行った」
アンディ中佐は管制官にカイルのバイタルシグナルを常に確認することを伝えるとコーヒーを飲み、軍帽を被り直した。
離れて行くカイルの姿は正しく黒い流星であった。
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「そろそろ、スミス海か。確かあの曲があったはず」
ディスプレイから動画配信サイトを選び、曲を探していた。ロバート・ウィリアムズ・スミス作曲、海の男たちの歌。
スピーカーから流れてくるメロディーに合わせ、月面の灰色の地表が一面に広がる中、MSは音もなく高速でその上を飛行していた。星々の輝きが薄い大気を通して微かに瞬く。
カイルはコックピットで計器を見つめ、操縦桿をしっかりと握っていた。月面からわずか数メートルの距離を保ちながら、機体は流星のごとく進んでいく。
スペースノイドとして生まれ育った彼にとって、無重力空間や高速移動は本能に刻まれた感覚だった。
月のクレーターが次々と迫ってくるが、カイルは冷静に操縦し、MSは鋭くそれらをかわしていく。地表を滑るように進むその動きは、まるで風のように滑らかだった。
地表からのわずかな反射光が機体の装甲を照らし、まるで光の矢が夜空を駆け抜けるように見えた。カイルはこのスリルを楽しみながら、無限の宇宙への畏敬の念を抱かずにはいられなかった。
「……?」
流れていた曲にノイズが入り、すぐに通信が途切れた。曲の代わりにスピーカーからはミノフスキー粒子の濃度上昇を告げるアラームが鳴り響いた。
カイルは後方から感じ取った狂気に反応し、スラスターを吹かして間一髪で砲撃をかわした。しかし、前方からはすでに敵機が接近してくる。ビームサーベルを抜き放ち、迎撃の準備をする。
「感情がない…?」
接近してくるMSからは、機械そのものの冷たさが伝わってくる。
「まるで黒い三連星だな」
巧みな連携を見せる3機は、カイルを包囲しようとしている。唯一感情を感じられる敵機は後方から正確にレールガンを狙い撃ち、カイルを追い詰めてくる。
「ニュータイプの力だけが俺の力ではないッ!」
カイルは肩部シールドを展開し、ビームカノンを発射。コクピットを貫き、敵機は爆散する。しかし、残りの機体は素早く反応し、攻撃を仕掛けてくる。彼は積み上げた経験を頼りに動きを予測し、ビームサーベルで敵機を両断した。
残り2機。
「推進剤も残り少ない。このままではジリ貧だ……」
カイルは神から罰を受けているように感じていた。エースパイロット級の敵を4人同時に相手している状況に、彼は思いを巡らせる。
趣味で技術開発を行い、史実に存在しなかった兵器や遙か先で開発されるはずのミノフスキードライブを生み出してしまった。
死ぬはずだった人物を生かし、歴史も多少なりとも影響を与えている。
「……神罰か? なら、何故俺はこの世界に産まれた? 俺はガンダムは好きだったが、あの世界でMSを作り上げることに人生を捧げ、俺は彼女と日々を望んていた。
だが、この世界でも大切な人たちが出来た。たがら、こんな場所で死ぬわけには行かないッ!!」
カイルは視界と思考がクリアになり、ペダルを踏み込んだ。敵機から降り注ぐ砲弾やビームを紙一重で避けていく。
「貴様は何を笑っているんだッ!!!」
すれ違いざまに1機を切り落とし、その爆発に紛れ、レールガンを放っているMSに近づく。そこで感じられる感情は、愉悦だった。
カイルは最後の1機と対峙し、互いに激しいビームの応酬を繰り広げた。周囲の空間は閃光と破片で満たされ、緊張感が極限に達する。
「ここで決着をつける…!」
しかし、突然、強力な砲撃が放たれた。閃光が走り、カイルと敵機の間に爆発が起きた。
「くっ…!」
衝撃波に押され、カイルは機体を必死に制御する。敵機も同様に後退を余儀なくされ、両者は一瞬の静寂の中で相手を見据えた。
「撤退したか…」
敵機は一瞬の躊躇を見せた後、現れた母艦の方へ向かって撤退を開始する。カイルも推進剤の残量を確認し、撤退を決意する。
「追撃は危険だな…」
カイルはミノフスキー粒子濃度が下がり、通信が可能なエリアに入るとオケアノスに迎えを頼んだ。30分後にはコメット級が現れ、回収された。
「頼みがある、アナハイム・エレクトロニクスのAI開発部門を内偵してくれ」
「了解しました」
オケアノスに戻ったカイルはルナ・ノヴァにあるシュミット家の諜報部門にアナハイムの内偵を支持した。
敵機はガンキャノンとガンダムの中間のようなボディにビームライフルやビームサーベル、レールガンを装備した連邦系のMS。更には感情を読み取れない機体と出来る機体。敵母艦も見知らぬ艦種であった。
カイルは戦闘で得た情報や前世の記憶、アナハイムなら高度なAIやMSの開発が可能であるから、謎のMS部隊はAIに制御されたアナハイム独自の部隊であると推測した。
「だが、何故ジオンの戦闘データをアナハイムが持っている? 俺がスミス海に来ることを知っていた? あのレールガンの機体を俺は知っている」
多くの謎が残る中、第一艦隊は物資の積込みが終わり、ルナ・ノヴァを出発し、地球へと舵を切った。
ティルバンナマライ→カリンポンに変更