機動戦士ガンダム Stellar Bless 改訂版を作成中   作:木星市民

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センシティブな表現があります。


11話 地球へ ④

「現在、ドイツ行政区付近まで前線が後退していると連邦から通達があった。また、我々も連邦とジオンに物資輸送の為に北欧付近に降下することを通達しているが、戦闘中に何が起きるかは分からない。

 

その為、大気圏突入後、上空50kmにて第二種戦闘配置。キールに到着するまで継続する。以上」

 

「「「了解!!」」」

 

大気圏突入前の全体ブリーフィングが終わり、2時間後の降下準備にクルーは慌ただしく動き始めた。第二艦隊が既に大気圏突入と大気圏内飛行を問題なく運用した為、問題が起きれば、クルーの実力不足である。

 

ベテランが多く、加えてシュミット軍の艦艇を作り上げたカイルが乗艦していることも合わさって、第一艦隊のクルー達は気合いが入っていた。

 

「少将」

 

「どうされましたか?」

 

「MS用の大気圏突入オプションを持って来てるから、装備して試していい?」

 

「寝言は寝てから言って下さい」

 

クルーは意気込んでいるが当の本人であるカイルは試作品のテストがしたく、エリック少将にお願いするが呆れた顔で窘められていた。

 

「地球は青かった……」

 

「カイル様、初めての地球で気分が上がっているのは理解出来ますが、もう少し落ち着いて下さい」

 

時間は降下予定時間間近となっており、カイルはエリックの横のシートに座らされていた。また、オケアノスに居たら試作品のテストを強行しそうという両艦長の配慮でシュテルンに移動していた。

 

「オケアノス、大気圏突入しました」

 

「予定通り、シュテルンも突入する!」

 

シュテルンの艦橋には緊張が漂っていた。北欧を目指し、宇宙から地球への大気圏突入が始まろうとしている。

 

カイルはスクリーンに映る地球を見据えた。青く輝く惑星が徐々に近づいてくる。

 

「大気圏突入まであと1分」

 

オペレーターの報告が響く。艦内のクルーたちは、それぞれの持ち場で計器をチェックし、突入に備えていた。

 

「耐熱ジェル、展開開始。突入角度を確認」

 

エリック少将は冷静に指示を出す。戦艦は大気圏に突入し、外装が燃え上がるように輝き始めた。揺れが激しくなる中、艦橋のスクリーンには大気との摩擦で生じる赤い光が映し出される。

 

「突入、安定しています」

 

クルーの報告に、エリック少将は小さくうなずいた。やがて、揺れが収まり、雲の切れ間から地球の大地が見えてきた。北欧の大地はまだ雪に覆われ、冷たい空気が漂っている。

 

「降下速度、正常。艦隊、周囲異常無し」

 

シュテルンは速度を落としながら降下を続ける。やがて、上空30km付近でミノフスキー・クラフトを起動し、第一艦隊は停止した。

 

「現在地、知らせ」

 

「デンマーク、ワッデン海国立公園です」

 

「反対側に出たな。近くの連邦軍基地に回線を開き、到着したことを通達」

 

第一艦隊は連邦からの返答を待っていると流星が次々と艦隊の遙か先を通り過ぎって行った。

 

「ジオンの降下部隊だね」

 

「はい。我々のレーダー範囲外に居たようですね」

 

流星を拡大してみた結果、卵型の人口物であり、ジオン軍のHLVであった。ジオンの艦艇と宇宙で出会って無かった、カイルたちはレーダーの範囲外に居たと結論付け、流星を見送った。

 

「方向的にポーランドあたりかな」

 

「ですかね。連邦から連絡がありました、艦隊を動かします」

 

「了解、少将」

 

「目標キール軍港」

 

通信士から指示が伝えられ、一斉に回頭し、キール軍港へと移動を開始した。またまた、近くを飛行していた旅客機の乗客はSNSで空を泳ぐ鯨の群れとコメントを付けて、第一艦隊の写真を投稿した所、バズっていた。

 

「オケアノスは流石に接舷出来なかったね」

 

「1000m級の艦を接舷するなど想定していないでしょう」

 

シュテルンを初めとしたシュテルン級3隻、コメット級6隻はキール軍港に入港し、オケアノス、コメット級6隻、アストラ級2隻はキール上空で待機することなった。

 

現在、カイルたちはドイツ行政区が手配した車両で会談が行われるキール市役所に向かっていた。

 

「なんで俺が会談に参加しないといけないんだ。持ってきた物資は支部に渡して、支部の判断でドイツに売る予定だっだでしょ。

 

俺が表に出たらおかしくなるやん。父上が許可を出してるらしいけど連邦にどう説明するつもりだよ。もう嫌」

 

「まぁ確かに。カイル様が言われることも分かりますが、カイル様の立場があやふやなのもいけませんね。

 

第一艦隊に同行が許可されているのはシュミットファクトリーからの派遣されたMSのテストパイロットというのが表向きの理由ですね。

 

軍人であれば、私もお助け出来ます。しかし、今の状態ですと厳しいのが現実です」

 

「へい。帰ったら考えるよ」

 

愚痴をエリック少将は正論でズバズバと切り捨ていき、拗ねたカイルは鞄から最中を取り出し、食べ始めてしまった。

 

「到着しました」

 

「ありがとう」

 

車を降りるとレッドカーペットが引かれていて、横には住民たちがドイツ国旗とシュミット家の家紋が描かれた旗を振っており、その先に行政区長と役人が笑顔でカイルたちを待っていた。

 

カイルとエリック少将は予想外の歓迎にぎこちない笑顔を浮かべ 、手を振る。漸く区長の前に到着すると握手を交わし、いつの間にかに準備されたお立ち台に登り、区長は演説を始めてしまった。

 

約15分、現在のドイツの状況やシュミット家の歴史などを語り、歓声に満足したのか、お立ち台から降りると列に加わった。

 

「では、この度、危険を承知でサイド9防衛軍第一艦隊を率いて、我々に救いの手を差し伸べて下さった、カイル・シュミット様にお言葉を頂戴したいと思います!」

 

急に名を呼ばれて、鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしまったカイルは横に立っているエリック少将に助けを求めようと顔を動かす前に(けつ)を叩かれ、前に出てしまった。そして、大人しくお立ち台へと登った。

 

「初めまして、私はカイル・シュミットです。我が祖先の祖国が窮地と聞き、私たちも出来ることをしたいと思い、駆けつけたしだいです。皆さんが今回、受けた被害をおも……」

 

カイルにナイフを刺されたような嫌な感覚が突き刺ささり、口を止めってしまい、気配を探そうとした所で少年が前に転がり込んできた。

 

「お前ら、スペースノイドのせいで!!」

 

少年の手には拳銃が握られ、銃口はカイルに向けられていた。呆気に取られてしまったカイルはすぐに意識を切り替え、銃が発する乾いた重い音を聞きながら、後ろに飛んだ。

 

すぐに左肩に激痛が走り、カイルは痛みに顔を歪めてしまうが上手く着地することが出来ずに尻もちをついてしまった。

 

「ッッッッ!?」

 

「取り抑えろ! 出来ないなら射殺も許可する!」

 

「殺すなッ!」

 

痛みの中、カイルは肩を抑えながら生け捕りにするように大声で指示を出し、駆けつけた護衛から応急処置されていた。しかし、痛みに耐えきれず、カイルは気を失ってしまった。

 

「カイル様! カイル様!」

 

「区長、物資の受け渡しは全てが解決してからだ。我々は場合によってはドイツ行政区の武力制圧も辞さない」

 

市役所一帯は昼間にも関わらず、暗くなった。民衆が不思議に思い、見上げると巨大な(ふね)が空を支配していた。

 

轟音と共に降りてくる巨大な艦、更には艦の周りを飛び回る見たことが無い戦闘機の群れ。民衆がパニックに陥るのには十分であった。

 

エリック少将はオケアノスから派遣されたVTOL機にカイルを乗せ、襲撃した少年の下へ向かう。

 

「貴様がどういうつもりであの方を撃ったは知らない。しかし、よく覚えとけ。貴様のせいで無関係の人々が巻き込まれ、死ぬ可能性があることを」

 

冷酷な目で少年を見下し、淡々と今後起きるかも知れないことを告げ、シュテルンに連行するように指示を出し、エリック少将もVTOL機に乗って、帰還した。

 

シュミット軍はキール軍港基地の連邦司令官にカイルが襲撃されたことを報告し、場合によってはドイツ行政区を武力制圧する旨を伝え、全艦艇の艦上にMSを配置した。

 

司令官から報告を受けた連邦政府は、サイド9が敵に回る可能性が出てきたと頭を悩ましていた。

 

「流石に避けきれなかったわ」

 

「ご無事で何よりです」

 

4時間後、カイルは目を覚ました。避けたおかげもあってか、全治2ヶ月で済んだ。

 

「今の状況は?」

 

「全てが解決するまでは物資を搬入しないことと場合によっては、ドイツ行政区エリアを武力で制圧すると行政区長とキール軍港の司令官に伝えております。

 

また、緊急時の為、MS隊を全艦艇の艦上にて、24時間体制で配置。襲撃者についてはシュテルンの独房にて、監禁しております」

 

「良かったー! 起きたら、キール港制圧済みですとか言われたらどうしょうかと思ってた」

 

カイルは大袈裟にエリック少将に言うが、実際に第一艦隊の戦力を考慮すれば、キール軍港だけてはなく、ドイツ行政区を廃墟に出来る。

 

「で、俺を撃った理由は?」

 

「裏が取れてる情報ですと、出身はオデッサ。キールに最近、避難してきたようです。また、現在はアースノイド至上主義のトゥルーアースという組織に属しています。

 

襲撃理由については、逆恨みです。ジオン軍があの者の村を襲撃した際に母親と姉を目の前で強姦し、殺害。その後、ジオン軍が連邦軍と戦闘に入り、隙を見て、脱出したとこと。

 

トゥルーアースは我々がコロニー落としやジオンを止めるだけの力を持ちながら、助けようともしない悪魔だと避難民や子供に教育しています。

 

神の代わりに悪魔に制裁を下したと言っております」

 

「俺らがスペースノイドでコロニー落としを止めれたかもって所はあってるけど、態々関わりの無い人間の為に命は張らないでしょ。それこそ、神では無いんだから」

 

報告を聞いたカイルの目は何も感情を浮かべていなかった。哀れみも悲しみも嘲笑も怒りも無く、ただただ機械のように口を開いていた。

 

「正直、めんどくさいな。確かドイツ支部にいるうちの従業員って家族合わせて、1300人くらいだったよね。俺がさ、父上たちと交渉するから、サイド9かルナ・ノヴァに引っ越してもらおうよ。オケアノスなら、収容できるし」

 

「襲撃者とトゥルーアースはどうされますか?」

 

「行政区が確認後に問題が無ければ、あれは自白剤を使って、証言の裏取り。トゥルーアースとか言う現実が見えてない(ゴミ)は掃除しようか」

 

「了解しました」

 

何故、カイルが同じ一族から恐れられているかは天才的な頭脳や卓越したMSの操作技術では無い。この敵と見なしたものは相手の立場、性別、年齢など関係無く、ゴミをゴミ箱に捨てるように当たり前の動作の如く、消し去る。この冷酷さである。

 

「今日、地球に来て1日目なのに散々だ」

 

カイルは差し入れされた最中を食べながら、ため息をつき。ベッドに潜り込んだ。めんどくさいことを忘れるように。




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