機動戦士ガンダム Stellar Bless 改訂版を作成中 作:木星市民
「そう、エリカ博士は研究者を続けるのね」
「うん。色々と紹介したけど、真っ先に脳波関係の研究部門をピックアップして、第6研究所の脳波通信開発部を選んだよ。一応、軍事部門になるって説明したんだけど、大丈夫って言われた。俺的には有難いんだけどね。博士は優秀だし」
カイルとレオンはナイトフォールのブリーフィングルームで書類を捌いていた。カイルが正式に特務艦隊司令になったことで、物資支援の責任者にレオンが任命された。サイド9でエリカ博士を降ろし、諸々の指示を出して、翌日にはナイトフォールでルナ・ノヴァに帰って来てた。
「そういえば、エリカ博士を何処かで見たことあるんだけど、兄様は知らない?」
「うーん。私は直接見たことは無かったよ」
「そうか。他人の空似かな〜」
頭を傾げるカイルを横目で見ながら、気づかれないように少し笑う。カイルが幼少の頃、シュミットファクトリーに貸し出した特許で一儲けした。その資金で奨学金制度を作り、それを利用して、彼女がカレッジまで卒業したことをレオンは把握していた。
「サイド2の復興は始まってるの?」
「まだまだだね。コロニー公社が原材料の高騰を理由に大分、値段を上げてるみたい。うちでも出来るけど、異業種の業界を荒らすのは気が引けるし、敵はアナハイムだけで十分」
シュミット家は過去に経済を握るべく、各業界に喧嘩を売り、敗北した。同時の当主は自殺し、長男次男は不可解な事故死を遂げていた。そして、残された三男と分家が力を合わせ、立て直した。
資源開発、重工業、ITがシェアを保つことが部門であり、現在でもシュミット家の稼ぎ頭として活躍している。この時の経験から業界を奪いに行く時はシェアを確実に奪える時のみ。
「そういえば、特務艦って増やすの? 一応、俺艦隊司令官だからさ」
「叔父さんが言うには拡大予定だけど、クルーの育成が間に合わないから当分、ナイトフォール1隻だね」
「なるほど。叔父様は戦乱が長引くことに懐疑的だったけど、備えることにしたんだね」
カイルたちの叔父はサイド9の軍務大臣を務めている。MS開発や戦乱が長引くことに懐疑的であり、第三艦隊以降の軍拡は消極的であった。
「そういえば、前に会った時は早く大臣をカイルに譲りたいって、ボヤいてたよ」
「後30年は頑張って欲しい」
順当にいけば、レオンが当主兼シュミットコーポレーション社長。カイルは軍務大臣兼シュミットファクトリー社長になることが決まっていた。
家族の絆は繁栄の証。この言葉はシュミット家の家訓であり、西暦から受け継がれている。そして、黒髪の兄弟は家訓を体現しており、シュミット再起の旗印であった。
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「お久しぶりです、エリック少将」
「エリオット少佐か。まぁ座れ」
シュテルンの艦長室でワンダーソン親子が久しぶりに再会していたが、あまりにも家族には見えない会話の固さであった。
「ウィスキーは飲めたな」
「はい」
エリック少将はウィスキーをグラスに注ぎ、エリオットに差し出す。今度は棚から将棋盤と駒を取り出し、テーブルに置く。
「良い酒だろ?」
「小官には酒の味は分かりません」
駒を並べると2人の前には王と玉の駒が残り、互いに王へと手を伸ばし、目を合わせる。
「俺は上官だぞ?」
「前回は私が勝ちましたけど?」
約3分程度、譲らなかったがエリオット少佐が舌打ちをして、王を譲った。振り駒の結果、エリック少将の先手が決まり、更にエリオット少佐は舌打ちをした。
「少将は飽きもせず、穴熊ですか」
「防御こそ最大の攻撃だ少佐」
その後は会話は無く、パチパチと駒を指す音が2人の間を響いている。予定調和のように即座に指されていく。
「ふむ、珍しいな」
「私も変わらないといけませんからね」
次第に長考が増え、2人は口数を増やしていく。
「少将にとって、カイル大佐は護るべき王将。しかし、小官の場合は飛車です」
「では、玉将は少佐か?」
「いいえ、サイド9です。私は精々桂馬です」
指しながら更に会話を続ける。
「金将、銀将は第一、二、三艦隊。歩はナイトフォールのMS隊。それ以外はありません。特に飛車と対等に並び立つ重要な角行が無く、我が艦隊は不完全です」
「カイル様を飛車と言うが既に龍王ではないのか?」
「いいえ、大佐はまだ成長します。あの方の底は見えていません」
盤面は終盤を迎えていた。
「エリオット、カイル様に何をさせる気だ?」
「王が望むままに」
エリオット少佐の龍王は王将を捉えていたが、玉将は詰んでいた。
「
「そうだな。しかし、カイル様を犠牲にするつもりなら、俺は貴様の首を取る」
置いていた帽子を被り直し、エリオット少佐は笑いながら立ち上がった。
「親父は頭が硬すぎる。俺も親父と同じ穴の狢だ。安心してくれ」
「シュミット家を継ぐのはレオン様で全員が納得し、動いている。そして、お前が最近、若い連中を集めて会合していることは把握しているぞ」
「カイル様が棟梁になることを望まないことは俺らも理解しているよ」
残っていた氷で薄まったウィスキーを飲み干し、エリオット少佐は不味そうな顔をしながら、少将に愚痴る。
「親父が帰って来ないって、母さんが俺に連絡するからもうちょい家に帰りなよ。後、ウィスキー嫌いだから次はビールを用意してくれ」
「お前が餓鬼だからウィスキーの味が分からないだけだ。母さんについては前向きに検討する」
肩を竦めながら大きなため息を吐き、エリオット少佐は艦長室を後にした。そして、エリック少将もグラスに残っていたウィスキーにコーラを混ぜ、チビチビと飲む。
「俺たちが金将などでは無いぞ。お前ら若者こそが王将を支える金将、銀将だ」
とドアに向かって呟き、苦い顔をしながらハイコークを飲み干した。不器用で職務に忠実な似た親子。しかし、微妙な距離感であるが、そこには確かに家族の絆があった。
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「旗艦シュテルンから通信。これより降下地点まで移動を開始する。全艦第2種戦闘配置」
「了解した。第2種戦闘配置」
宇宙世紀0079年8月2日。第一艦隊はルナ・ノヴァを進発し、降下地点を目指した。この期間に搭載機であるグラウⅡはバックパックの換装機能を付与したグラウⅡ改に改修され、ナイトフォールのグラウⅢも先行量産型に変更された。
また、艦船自体も重力下での作業を想定した改修が行われており、第一艦隊は万全を期していた。
「カイル大佐はこの戦争をどう思われていますか?」
「起こるして起きた戦争じゃない? 地球とコロニーの関係性は宗主国と植民地だし、昔みたいに植民地側が無知ならもう少し支配体制は続くはずだったけど、コロニーにはある程度、有識者が居たからね。
アメリカの独立戦争に似てるのかな? まぁ、開戦から8ヶ月が経ってしまったから、ジオンの勝ち目も薄い」
カイルは艦長席の横にある補助席でエリオット少佐の質問に歴史を例に挙げて、答える。
「そうですか。シュミット家がジオンのように独立運動を行えば、地球政府も認めるのでは?」
「えっ、無理無理。確かに兄様も俺も敵対者には厳しいけど、根は平和主義だよ? しかも、サイド9は独立性が非常に高いし、実際にシュミット王国って言っても間違いないね。
兄様の息子がそうしたいって言うなら手伝うかも知れないけど、メリットが無いよねー、正直」
平和主義とカイルが言った瞬間、艦橋に居たクルーが仕事を放棄して、一斉に振り向いた。宙賊討伐や亡命事件などの戦闘に積極的に参加し、MS同士の闘いには必ず居るカイルはシュミット軍の中で戦闘狂という共通認識であった。
「さて、俺も待機所に向かいます」
「よろしくお願いします」
第一艦隊は何事も無く降下地点に到着し、日本海へに向けて、降下した。そして、運命の日は近づいている。
父親としての見栄とかありますよね、私は独身デスが……
グラウⅡはザク2改、グラウはグスタフ・カールをモデルにしております… カッコイイですよね、2機とも。
もし、よろしければ、お気に入りやしおり、評価、感想をして頂けると私が物凄く喜んで続きを書きまくります笑