機動戦士ガンダム Stellar Bless 改訂版を作成中   作:木星市民

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21話 束の間の平穏

「久しぶりのサイド9ー」

 

「カイル様! 椿はカレー屋さんに行きたいです!」

 

「椿さん、カイル君はお疲れです。行きたいなら、私と子供たちと行きましょうね?」

 

サイド9に帰ってきたカイルであったが、屋敷に新たな同居人が増えていた。同居人は椿であり、普段はカイルの身の回りの世話をしているが、カイルが休みになると彼を街に連れ出そうとする。

 

しかし、連れ出そうとする度にエリカ博士が子供を連れて、現れては椿を回収し、街に繰り出していた。そのおかげでカイルはプライベートな時間を確保することが出来ていた。

 

「椿の手料理は上手いから嬉しいけど、干渉はめんどくさいよぉー 兄様、何故弟を見捨てて、引越ししたのですかぁ」

 

レオンは椿と入れ替わるタイミングでシュミット家の本邸へと引越しをしていた。カイルと椿の関係性を深めるようにレオンが気を利かせていた。

 

「赤いガンダムはデータの抽出が完了して、解体済み。グラウⅢの量産体制も問題無し。各種試験機もテスト良好」

 

カイルは自分の手を離れた各研究の報告書を確認していた。MSの生産ラインはグラウⅢに変更され、シュミット軍の主力MSも機種転換した。

 

大まかな操作性は分からない為、グラウⅡは教習用や船団護衛の部隊に払い下げられる予定である。

 

「サイコミュの試験機も出来てるのか。テストパイロットはリナとレイ……あの2人、MSまで使えるのか」

 

リナとレイはジュリアン大尉の訓練を耐え抜き、ナイトフォールへ着任した。現在は出撃も無く、研究所と屋敷の往復生活の為、2人はMS操縦訓練を受けた後に試作機のテストパイロットを務めていた。

 

「天鶴の改修は8割か。爺様の最後の作品」

 

戦域制圧型戦艦【天鶴】全長500m、全幅180m、全高120m。単艦による戦域制圧という思想の元に生み出された大型戦艦。

大小様々な砲門が装備されており、その総数96門。イージスシステムとAIを組み合わせた戦術AIプロメテウスなど佐藤重工業の技術を結集し造られた、佐藤昭二の最高傑作である。

 

西日本にある秘密ドックで建造されたが、佐藤重工業の合併を決めた昭二は椿に天鶴の所有権を讓渡し、嫁入り道具としてカイルの下に送った。

 

「動力といい、スペースといい、どこまで知っていたんだ?」

 

そのままの発動機では天鶴のフルスペックは引き出せない。その為、シュミットファクトリー製軍用大型ミノフスキー・イヨネスコ型熱核反応炉を4基を搭載し、更にはミノフスキークラフトシステムを追加した。

 

機密情報である軍用発動機やミノフスキークラフトシステムを拡張工事無しで取り付けることが出来ていた。その為、設計段階(・・・・)で載せ換えを前提としていたことは予測できた。

 

「そういえば、シャアはガルマの件で除籍中だったよな。地球に降りる機会も無いから会えないけど」

 

地球で生きているであろう金髪の友人を思い浮かべながら最中を食べる。そして、カイルが見つめているモニターにはR(ルーン)計画と映し出されており、グラウシリーズの機体情報や戦闘記録があった。

 

更にその先のページには3機のMSが記載されていた。

 

「楽しみだなぁ」

 

~~~~~~

 

「どうした?」

 

「カイル、来てくれたんだね」

 

カイルはレオンに呼ばれて、本邸があるコロニーを来ていた。机には大量の書類が置かれており、その間からレオンが顔を覗かせたが目の下に隈があり、明らかに疲れが見えていた。

 

「ジオンのデキン公王から連邦と停戦の調停役を頼まれてね。ほら、連邦も大規模反抗作戦してるから中々予定がつかなくて、大変なんだよね」

 

「えっ、調停役? なんで?」

 

「南極条約の時に参加していたから、第三者として丁度良いみたい。まぁ、連邦から返答が無いから当分、交渉だね。

 

ジオンの継戦派の動きが気になる。特にギレン・ザビと親衛隊隊長エギーユ・デラーズ大佐にその部下、青い亡霊(ブルーファントム)アルト・ラングレー少佐。この2人の動きが活発化している」

 

「アルト・ラングレー?」

 

「あれ、カイルは知らない? 突然現れては撃墜していくから、パーソナルカラーと合わせて青い亡霊。元はシャアさんの僚機だったらしいけど、デラーズ大佐にスカウトされて、親衛隊に異動したみたいね」

 

「……なるほど」

 

アルト・ラングレー。シャアの元僚機であり、現親衛隊所属。1人や2人くらい新たなエースパイロットが生えてきてもおかしくは無い。しかし、なんともいえない感覚に襲われ、カイルは怪しんだ。

 

「そういえば、なんで俺を呼んだの?」

 

「調停の件とご飯に行こうと思ってね」

 

「行こうか」

 

既にカイルが到着してから1時間が経っていた。書類の山を抜け出したレオンは電話で外に行くと伝え、出かける準備を整えた。

 

「どこに行くの?」

 

「アウワバウにカレー屋あったでしょ? あそこの2号店」

 

「兄様、カレー好きだね」

 

少し距離があるのか、レオンは車のキーを取り出し、カイルに乗るように促す。

 

「ちょっと人を拾うから」

 

「うん」

 

車はレオンの運転で宇宙港へと向かっていった。誰が来ると聞かず、カイルは流れていく街並みを見ていた。

 

「久しぶりね、カイル!」

 

「カイルさん、こんにちは」

 

「「……」」

 

宇宙港で合流したのは、フランとユリア、ララァの3人であった。手にはハイブラ、プチブラの紙袋を持っていた。

 

「良かった、合流できたんだね」

 

「兄様、なんでララァさんが居るの?」

 

「カイルのシャア(愛しい友人)からのメッセンジャーだよ。2人に迎えをお願いしたら、一緒に買い物してたみたいだけど」

 

3人が後部座席に乗り込むと車はまた、走り出した。

 

「久しぶりです、カイルさん。落ち着かれたようで何よりです」

 

「ララァさんも健康そうで良かったです」

 

会話が途切れ、車内には心地よいBGMが静かに流れている。窓の外を眺めながら、リラックスした雰囲気が漂っている。

 

「さぁ食べようー」

 

予定通りにカレー屋に到着するとカイル一行は個室に案内された。カイルは前回、食べて気に入ったバターチキンカレーを注文した。

 

「ララァさん、伝言を聞いて良いですか?」

 

「はい。カイルさんから頼まれたことは完了したと。で、これがレオンさんに頼まれていた情報です」

 

レオンはララァから書類を渡され、中身を確認した。読み終わったのか、その書類をカイルに手渡した。

 

「さっき話した、デラーズ大佐とラングレー少佐の調査結果だよ」

 

「ありがとう……ラングレーは怪しいね。サイド8出身、前職は遺伝子工学系の会社。しかも、会社はラングレーの退職後にフェアレーターって会社が買収してるね」

 

あからさまに怪しい経歴しかないアルト・ラングレー。思考の沼に浸かっているとカレーが運ばれてきたが、肩をフランに叩かれるまで気づいていなかった。

 

食事が終わるとララァを宇宙港まで送った。フランとユリアがララァに別れの言葉を伝え、惜しんでいた。ララァはシャアの帰りを待つ為、テキサスコロニー行きのシャトルへ乗ろうとしていた。

 

「ララァさん、お元気で」

 

「……なにかあったら、シャア大佐をお願いしますね」

 

カイルを抱き締めると耳元でシャアのことを頼むと伝え、ララァは手荷物検査の人混みの中に消えていった。

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