機動戦士ガンダム Stellar Bless 改訂版を作成中   作:木星市民

25 / 28
22話 復讐の道

「ごめん、もう1回言って」

 

「はい。昨日、ジオン公国御前会議にてギレン総帥がデキン公王、ドズル・ザビ中将を国家反逆罪で幽閉致しました。

 

また、シン・マツナガ大尉がゼナ・サビ様、ミネバ・ラオ・ザビ様、ソロモン守備艦隊を率いて、サイド9へ亡命を希望しています。

 

既に艦隊はサイド9の領宙に侵入しており、パトロール中であった第三艦隊及びレオン様が対応されております」

 

特務隊の定期訓練が終わり、艦橋に行くとエリオット少佐からデキン公王とドズル中将の幽閉とソロモン守備艦隊がサイド9へ亡命を希望していると知らされた。

 

「報告ではソロモン守備隊の半数、更には既にギレン親衛隊と戦闘したらしく負傷者、損傷艦多数とのことです」

 

「まじで、ジオンが割れたかぁ。まぁいい、先ずは訓練は中止して、帰還しよう」

 

「かしこまりました」

 

アウワバウの宇宙港に戻るとシュミット家の本邸があるリヴァンティス・コロニーの周辺に無数の艦隊が停泊しており、その周りをグラウやオービタルが飛び廻っている。

 

「ドズル中将は(まつりごと)には疎く、人情味に溢れていて、人望に厚い将軍。確実にドズル中将の救出を考えているよな、いっそ……」

 

カイルの独り言はヴィクターからの出頭命令を知らせる通知音でかき消された。他の艦艇も訓練を中止し、帰還しているようで港が渋滞していた。

 

「エリオット艦長、グラウでリヴァンティスへ向かうよ」

 

「了解しました。特務隊に指示があれば、連絡致します」

 

「アウル00、カイル・シュミット。出撃する!」

 

漆黒の宇宙を背景に、グラウが発艦準備を整える。カタパルトから勢いよく射出され、機体は一瞬の加速で星々の間を駆け抜ける。ソロモン守備艦隊の巨大な艦影が周囲に浮かび、その中を巧みにすり抜ける。

 

コロニーが近づくにつれ、緻密な計器操作が要求される。宇宙港の誘導灯が点滅し、カイルはコックピット内で緊張感を漂わせながら操縦桿を握りしめる。コロニーのシルエットが徐々に大きくなり、宇宙港のゲートが開かれる。

 

MSは微細なスラスター調整を繰り返しながら、慎重に進路を合わせる。宇宙の静寂を破ることなく、滑らかに宇宙港のデッキに着艦。機体が静かに振動し、彼は安堵の笑みを浮かべる。

 

「宇宙港への着艦は緊張する」

 

「カイル大佐、出口に車が来ますのでパイロットスーツのままでお待ち下さい」

 

「了解! ……そういえば、服を持って来るの忘れてた」

 

カイルはパイロットスーツのまま、休憩室で待っていると軍服を持ったフランが現れ、着替えるように急かせてきた。

 

「急いでー!」

 

「なんで!?」

 

「皆、カイルを待ってる!!」

 

嫌なことを聞いてしまったカイルは顔を露骨に歪ませてしまった。自分の到着を待っているということは十中八九で戦闘関連の面倒くさいことが予測できた。

 

「ほら、早く乗る」

 

「イエスマム」

 

本邸の前では、ソロモン守備艦隊の突然の出現により、騒然とした雰囲気が漂う。マスコミの記者たちが一斉にカメラとマイクを構え、最前列を確保しようと必死に押し寄せる。フラッシュが絶え間なく焚かれ、喧騒の中で各局のレポーターが声を張り上げている。

 

一方、警察も現場の混乱を抑えようと奮闘している。警官たちは冷静に指示を出し、規制線を張り巡らせようとするが、マスコミの勢いに押されて混乱が続く。双方の押し合いが激しくなり、一触即発の緊張感が高まる。

 

その様子を遠巻きに見守る市民たちは、艦隊の動向に警戒しながらも、目の前の騒動に視線を奪われている。

 

「カイル大佐、一言お願いします!」

 

「私も訓練中に知らせを聞いて、出頭した次第です。また、正式な情報は広報部の発表をお待ち下さい」

 

マスコミを押し退け、案内された会議室にはヴィクターと始めとしたシュミット陣営とシン・マツナガとミネバを抱いているゼナを含めたドズル派は向かい合って、話をしていた。

 

「我々サイド9は皆さんの亡命を受け入れますが、ドズル中将の仇討ちする為、この戦争に参戦する事は難しいです。ご理解下さい」

 

「我々の受け入れ、まことにありがとうございます。しかし、棟梁たるドズル閣下の仇を取れずに生き恥は晒したくないのです。補充さえして頂けたら、ソロモン守備隊のみで出撃します」

 

「ドズル中将、亡くなったの?」

 

「はい。御前会議で国家反逆罪に問われた際、お二人ともそのまま処刑されたそうです。報道ではデキン公王と共に幽閉されていることになっていますが」

 

一応、シュミット側に座ると会議を紛糾している。横に座っている事務官に確認するとドズルとデキンは既に処刑されており、ソロモン守備艦隊は負傷者や損傷艦を置いていき、仇討ちに向かおうとしていた。

 

「カイル大佐、貴官の意見はあるか?」

 

「本官としては仇討ちには反対です。ゼナ様や未来あるミネバ様の支える方々を無駄に失う訳にはいきません」

 

「仇討ちを無駄だと言うかッ!!!」

 

「仇討ちはして貰っても大丈夫です。しかし、ソロモン守備艦隊のみで行うのは反対致します。連邦軍の宇宙での作戦行動も始まりますし、ジオンからゼナ様やミネバ、艦艇、MSの引渡し要求があるはずです。それを断れば、無事に開戦です。

 

そうすれば、皆さんはシュミット軍として参戦することができ、我々も大手を振って支援することが出来ます。釈迦に説法かも知れませんが、敵の被害は最大限、味方の被害は最小限です」

 

カイルが発言を終えると、その口元に怪しく不気味な笑みが浮かぶ。会議室の空気が一瞬で変わり、仲間たちは彼の意図を測りかねて一瞬静まり返る。

 

しかし、彼の実力を知る者たちはすぐに気を取り直し、会議の進行に集中しようと努める。それでも、カイルの言葉と笑みが心に残り、彼の考えの深さについて密かに考え続ける。

 

「カイル大佐。亡命して間もない方々に参戦してもらうのは、どうかと思うぞ」

 

「父上、ドズル中将は誉れ高き武人でありました。その配下たるドズル親衛隊の方々を前線に出さず、シュミットだけで仇討ちをしても皆さんは納得されないでしょう」

 

「カイル大佐の言う通りです、ヴィクター様」

 

会議が続く中、ヴィクターが慎重に言葉を選びながら、ソロモン守備艦隊の指揮について話し始める。緊張が走る中、彼の視線がカイルに向けられる。

 

「分かりました。ソロモン守備艦隊の皆さんはカイル大佐の特務隊と行動して下さい」

 

「感謝致します!」

 

ヴィクターが艦隊の指揮をカイルに任せると告げた瞬間、カイルは一瞬困惑の表情を浮かべる。彼はすぐにそれが押し付けられたものであると察し、内心で苦笑する。

 

シュミット軍とソロモン守備艦隊では艦隊の運用思想や規格が異なるため、運用に問題が生じる可能がある。しかし、特務艦隊はナイトフォール1隻しか所属してない。どちらかというとナイトフォールがお目付け役として、ソロモン守備艦隊に組み込まれる。

 

「会議後に打ち合わせをしたらいい。エリオット少佐も呼び寄せる」

 

「任務、了解しました」

 

力無く呟いたカイルの言葉にシン・マツナガは綺麗な敬礼と獰猛な笑みで返した。そして、会議は終わり、エリオット少佐も到着した。

 

「改めてまして、シン・マツナガです。この度は我々の意志を尊重して頂き、ありがとうございます」

 

「カイル・シュミット特務大佐です。いえいえ、お気になさらないで下さい。ソロモン守備艦隊の戦力を把握していないので、教えて頂いてもよろしいですか?」

 

「かしこまりました。ムサイ級13隻、チベ級7隻、グワジン級2隻、リック・ドム332機、ザクⅡ221機、ゲルググ2機です」

 

「………えっ? MSはどうやって、運んだんですか?」

 

「露天駐機や艦船に掴まって、ここまで来ました」

 

「なるほど、パワープレイですね」

 

ソロモン守備艦隊の搭載限界数は182機である。しかし、今回はその約3倍にあたる555機をサイド9まで連れてきていた。ギレン親衛隊との戦闘で失われた戦力を考えるとドズルは慕われていたことを容易に想像することが出来た。

 

「何故、サイド9を頼られたのですか? 地球を挟んで反対にあり、道中に危険もあったはずです」

 

「ドズル閣下のご意思です。連邦との講和に協力すると決めた際に閣下が亡くなった場合、シュミット家を助力を求めよと私に残されていました。

 

シャア大佐の報告でレオン殿やカイル大佐の人柄はある程度は理解しておりました。ゼナ様やミネバ様がいらっしゃいましたので、連邦に下るより遺言通りにサイド9へ参ったしだいです」

 

「……シャアさんですか。今はキシリア少将の突撃機動軍でしたね、戦場で見かけたら真っ先に堕とさないとですね! そういえば、アナベル・ガトー大尉はどちらに?」

 

「ヤツは我が忠義は反逆者に捧げた訳では無く、ジオンに捧げたのだと言い、ジオンに残りました。更にはギレン親衛隊と共に我々を追撃しまして、多くの同胞を沈められました」

 

「なるほど。 アナベル・ガトー大尉だけは俺が落とそうと思っていたので良かったです!」

 

カイルは、アナベル・ガトーを落とせる機会が自分に回ってきたことを知り、思わず満面の笑みを浮かべてしまった。その表情は普段の冷静さを忘れたかのような狂気(喜び)に満ちていた。

 

彼の心には、復讐(目標)が達成できる機会への期待が溢れていたのだ。周囲の視線を気にすることもなく、彼はその瞬間を心から楽しんでいた。

 

ジオン軍と連邦軍の行動を予測し、カイルは次の一手を考え始める。彼の美しい笑顔は、仲間たちにとってもシン・マツナガ達にも死神の笑みにしか見えなかった。

 

「そうだ、ソロモン守備艦隊の識別用に塗装した方が良いですね。船体の色が赤と緑かぁ、青色の線を引きましょう」

 

適当に決まったがこの青色の線(ブルーライン)が一年戦争後に設立されたシュミット軍第四艦隊の通称【ブルーライン】となった。乗員の大半がサイド9以外の出身者で構成されており、MSなどはジオン系統を使用することが多かった。

 

「では、最速で補給修理を終わらせて、準備をしましょうか。艦隊はアフウバウとノイバウを移動させて、その前に工作艦を出すか。確か、オケアノスも改修工事が終わってから頼んでみよう。物資関係はフラン義理姉さんに、服関連はユリアさんにお願いしよう」

 

「……カイル大佐、解散してもよろしいでしょうか?」

 

「あっごめんごめん。大丈夫だよ」

 

ジオン公国からのミネバ・ラオ・ザビ及び反逆者シン・マツナガを始めとしたソロモン守備艦隊の引渡しを要請されたが、サイド9はこれを拒否した。

 

宇宙世紀0079年12月7日。ジオン公国はミネバ・ラオ・ザビ公女誘拐事件の主犯として、サイド9に宣戦布告を行った。

 

こうして、シュミット家は一年戦争に参戦することになるが、奇しくもカイルの15歳の誕生日であった。

 




ジオン公国宣戦布告

我がジオン公国は、尊厳ある公国の名において、以下の事実を厳粛に述べる。

先日、我が国の未来を担うべき公族、ミネバ・ラオ・ザビが、貴国の手によって誘拐された。これは、国家の主権を侵害し、国際法に反する行為であり、我が国民の安全と尊厳に対する重大な挑戦である。

ミネバ・ラオ・ザビの誘拐は、我々にとって許されざる暴挙であり、何らかの理由で正当化されるものではない。この行為は、我が国の名誉と未来を脅かすものであり、我々はこの状況を放置することはできない。

よって、我がジオン公国は、貴国に対し、以下の措置を取ることを決定した。

1. ミネバ・ラオ・ザビの即時解放を要求する。
2. 誘拐に関与した者の責任を追及すること。
3. 我が国の名誉を回復するための誠意ある対話を求めること。

これらの要求が満たされない場合、我がジオン公国は、貴国に対し戦争を宣言するものである。この決定は、我が国民とその未来を守るために必要な措置であることを、ここに明言する。

ジオン公国政府
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。