機動戦士ガンダム Stellar Bless 改訂版を作成中   作:木星市民

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少しセンシティブな内容があります。



24話 呪い

「どうするの、カイル?」

 

「精鋭による強襲攻撃だね。タイミングは連邦軍のア・バオア・クー攻略中。合わせて、ソロモン艦隊のサイド3への陽動」

 

「ソロモン艦隊が作戦を承認するかだね」

 

サイド9に帰還したカイルは手に入れた情報をレオンに共有し、対策を練っていた。先の戦闘でソロモン守備艦隊は1割の被害が出ており、急ピッチでの修復が行われていた。

 

ソロモン守備艦隊に故郷であるサイド3への攻撃や仇討ち以外の戦闘に参加させるのは酷であるというのが、2人の結論であった。

 

「月面でも戦闘があって、無事にジオン軍を退けたよ。しかし、AIで制御される兵器というのは厄介だね。うちも火器管制装置に使ってるけど、あれは駄目だ。戦争や殺戮に対しての嫌悪感が無くなって、簡単に引鉄を引けるようになる」

 

「AIに感情を持たせるようになって、人のサポートが出来るなら良いけど、戦争をするなら生身でやらないと平和の大切さや人を殺す辛さも学ばない」

 

「変わったね、カイル。前は作るだけ作って、どんなことに使われようとも気にしていなかったのに」

 

 

「圧倒的な武力も持つことで守れる平和や見てないフリをすることで守れる平穏もあるけど、それを奪う原因を作ったなら、責任を取らないといけないって考えただけ」

 

カイルにとってはMSや艦船の開発というのは夢であり、唯一の趣味であった。時間も資金も気にしせずに趣味だけに没頭できる環境があるならば、誰しもが何も気にせずに続けるだろう。

 

しかし、カイルの(趣味)は多くの人間や歴史に大きな影響を与えてしまった、最悪な形で。前世では、開発した兵器を使うかは政府が決めることであり、開発はするけれども、実際の戦闘に使われることは無かった。

 

この世界では、作り出した兵器(MS)で人の命を奪い、守れなかった。更にはシャアやエリカ博士の多くの人生を変えてしまった。もう既に傍観者ではいられない。

 

「出来ることは全てやる。せめて、手が届く人たちを守りたい。たとえ、他の人間の命を奪っても……」

 

レオンは弟の心情の変化を嬉しい反面、心配もしていた。多くの開発は既にカイルの手を離れ、今は軍務に集中している。生体AIの一件以来、彼の笑顔は減り、眉間に皺を寄せることが増えた。更に時折、見せる笑顔は複雑なものであった。

 

「どうか、カイルの進む道に星の加護があらんことを」

 

部屋を去っていく、小さな弟の背中にレオンは、()の加護を願っていた。

 

~~~~~~~~

 

「お疲れ様です。マツナガ大尉、コンスコン大佐」

 

「カイル大佐、お疲れ様です」

 

ソロモン守備艦隊は暫定であるが、特務隊所属第二艦隊となった。マツナガ大尉と始めとした大抵の軍人の階級はジオンの階級のままであったが、指揮権の問題で将官は佐官となっていた。だが、給与や福利厚生は将官と同等の契約であった。

 

「近日中に連邦のソロモン及びア・バオア・クー攻略作戦が発動される予定です」

 

「なんとも言えない気持ちですなぁ」

 

「シュミット軍は第一、二艦隊を派遣し、連邦と共闘します。我々、特務隊はジオンのアキレス腱であるサイド8、クローン製造工場およびMS工廠への強襲を行います」

 

カイルは2人に作戦の概要を話していたが、やはりサイド8への強襲については不服そうな表情を作っていた。

 

「ソロモンの皆さんがサイド8よりギレンやキシリアの首を狙いたいのも重々承知しています。一旦、モニターをご覧下さい」

 

モニターには、各サイドやア・バオア・クーの位置と、特務艦隊の進行方向が赤い矢印で表示されていた。

 

「ムンゾ付近までは全艦隊で進撃して、敵を陽動。交戦後、第一艦隊は殿を務め、第二艦隊は撤退するフリをします。コンスコン大佐率いる第二艦隊はそのまま連邦が攻略している要塞へ移動。第一艦隊は敵中を突破し、サイド8を強襲します」

 

「それは第一艦隊の被害が甚大となってしまうのでは?」

 

「タイミングが悪ければ、突破することが出来ずに包囲されて、全滅するでしょう。その為、シャア大佐やシーマ中佐、ゲール中佐を第一艦隊に編入し、生存率を高めます。

 

また、第二艦隊にも拠点攻撃型コメットⅡ級4隻を配備します。このコメットⅡは前部砲塔を大形レールガンに換装しており、実弾およびプラズマ弾を使用できます」

 

「何故、そのコメットⅡを配備されるのですか?」

 

第二艦隊からシャアたちを引き抜き、代わりにコメットⅡを配置することにコンスコン大佐が疑問を呈した。既に戦場の主力は艦船からMSへと代わっている。それを実行したのはコンスコンたちが所属していたジオン軍である。

 

「コメットⅡを配備するのは対モビルスーツでは無く、要塞への攻撃手段です。レールガンの弾種の1つで実弾型対要塞メガ粒子炸裂弾、通称AFME弾があります。

 

原理としては炸裂弾と一緒ですが、爆薬の他にビーム兵器に使われているエネルギーCAPを内蔵しております。簡単に効果を言うと着弾したら、爆発とビームのダブルアタックってことです。詳しい説明が知りたい場合は軍サーバーのファイルか開発に聞けば、嬉々として教えてくれますよ」

 

「な、なるほど。確かにソロモンやア・バオア・クーを攻めるなら必要な艦ですね」

 

「威力的には核兵器に多少劣るくらいです。けど、軍艦やMS、コロニーに対しては高威力過ぎて、用途が限定的なのが問題なんですよね。後製造コストが高い……

 

話が逸れました。コメットⅡにもMSは搭載しているので、数的には問題ないかと思います。自由にお使い下さい」

 

カイルの説明を聞いていたコンスコン大佐とマツナガ大尉はシュミット軍がもし、AFME弾を使用するならば、ジオン軍相手であると考えてしまっていた。核兵器より劣るというがその威力を想像すると恐怖で顔を引き攣らせていた。

 

「出港時間はまだ決まっていないので、申し訳ありませんが乗員は半舷上陸で基地内での休暇をお願いします。質問が無ければ、解散しましょう」

 

コンスコン大佐とマツナガ大尉から質問が無かった為、解散となった。そのまま、カイルはその足で軍令部に向かい、事務作業を終わらせた。

 

カイルは屋敷に帰る途中、常備している最中が切れていたことを思い出し、和菓子屋に寄った。

 

「支払いは電子マネーでお願いします」

 

「電子マネーですね、こちらにかざして下さい。はい、ありがとうございます。あの……カイル大佐ですよね?」

 

「うん? はい、そうですか?」

 

最中の会計が終わると店員に声をかけられた。

 

「弟がカイル大佐に憧れていて、MSパイロットになるって言ってるんですが、やっぱり軍学校に行った方が良いんですかね?」

 

「何歳ですか?」

 

「8歳です」

 

「うーん、ハイスクールまでは一般校に行った方が良いです。それから命令とはいえ、故郷を守る為に人を殺す覚悟があるならミリタリーカレッジに進んだら良いと思いますね」

 

「……そうですよね、ありがとうございます!」

 

手を軽く振ると店を出た。

 

「俺に憧れてるのかぁ。出来れば、殺し合いに関わらない人生を送ってほしいね。今は動員もしていないけど、将来的には動員するかもしれない。それまでは、平和な日常を楽しんでほしい」

 

店員の弟が平和な日常をおくることを願っているが、カイル自身も15歳であり、通常なら守られる側である。だが、故郷を守る為に戦うという軍人の責任は年齢に関係なく、カイルの小さな背中に重くのしかかっている。

 

「ア・バオア・クーやサイド8が落ちたら、流石にジオンも降伏するよな。してくれないと辛いなぁ」

 

買ったばかりの最中を食べながら、愚痴を零してしまった。クローン兵や生体AIなどの不確定な要素にカイルは不安を抱き、疲弊していた。

 

その不安を掻き消すようにカイルは次々と最中を口に運んでしまい、屋敷に着く頃には半数が無くなってしまった。

 

~~~~~~

 

「カイル様、食欲がありませんか?」

 

「ごめん、おやつを食べ過ぎた」

 

「あらまぁ、お可愛いですね」

 

夕食をいつもより時間をかけて、食べていたカイルは椿に体調を心配されてしまった。カイルが素直に最中を食べ過ぎたことを伝えると椿は上品に笑った。

 

「今日はどうしたの?」

 

「何がです?」

 

「エリカ博士、泊まっていくんでしょ?」

 

「はい、今日は2人で女子会です!」

 

「仲良くなってるなら、良かったよ」

 

食事の前にエリカ博士と顔を合わせた際にカイルは屋敷に泊まることを聞いていた。椿とエリカ博士は顔を合わせる度に口喧嘩していることもあって、カイルは少し心配していた。

 

「風呂に入って、そのまま寝るね。ご飯、美味しかった。ありがとう」

 

「いえいえ、ゆっくり休まれて下さい!」

 

カイルは感謝を伝え、風呂場に向かうが、妖しい色を纏う椿の瞳に気づいていなかった。

 

~~~~~~

 

カイルは、心地よい湯に浸かり、体の疲れを癒した後、ベットの上で柔らかな光に包まれながら横になっていた。穏やかな静寂が彼を包み込み、普段の忙しさを一時忘れさせてくれる。

 

その時、静かなドアのノックが響いた。カイルは少し驚きつつも、「どうぞ」と声をかける。ドアが静かに開き、椿とエリカが顔を出した。

 

「カイル様、お邪魔いたしますわ」

 

椿は、その上品な口調で微笑みながら入ってくる。彼女の長髪は優雅に揺れ、黒いネグリジェが彼女の美しさを引き立てていた。エリカは後ろから続き、茶髪のボブヘアが明るい光に映えている。眼鏡の奥から覗く瞳は、どこか妖しげな輝きを放っていた。

 

「カイルくん、お休み中にお邪魔してごめんなさい。少しお話しできればと思って」

 

エリカがそう言いながら、カイルの隣に腰を下ろした。彼女の服からチラリと見える大きな胸が、カイルの視界にちらりと映り込み、思わず目を逸らす。椿もその隣に座り、二人の存在がカイルの心臓を高鳴らせる。

 

「今夜は、特別な夜にしませんか?」

 

椿が微笑みながら言うと、その言葉には意味深な響きがあった。カイルは、彼女の視線が自分に向けられていることに気づき、ドキリとする。二人の女性が自分の周りに集まり、無邪気な笑みを浮かべる様子に警戒(緊張)していた。

 

「もしかして、私たちのこと、気にしてくれていますか?」

 

エリカが少し挑発的に言い、カイルはその言葉に思わず息を飲む。彼女たちの妖しい雰囲気が、彼の心を掴み、逃れられない甘美な世界へと引き込んでいく。

 

 

カイルは、椿とエリカの視線が自分に集中していることを感じ、心臓が高鳴る。二人の存在が彼の周りに漂う緊張感をさらに高め、思わず身を引き締める。

 

「次の戦場は今までとは比較にならないくらい厳しいことは聞いています」

 

「その通りだね」

 

椿の声色には、どこか悲しげな響きがあった。

 

「最初こそは、昭二お爺様から言われたからここまで来ましたが、一緒に過ごしているうちに貴男を愛してしまいました。

 

普段はキリッとした表情ばかりなのに、朝は寝ぼけてふわふわして可愛いですし、食事も満面の笑みで食べてお礼も沢山言ってくれます。私の体調が良くない日は看病もしてくれました。

 

休日に子供たちと遊ぶ姿に貴男と私の未来を想像してしまうのです」

 

「…………」

 

椿の告白にカイルは何も言えなかった。食事に対する感謝や看病も彼からしたら当然のことであり、今の状況に焦りを覚えいた。

 

「カイルくん! 私はずっと前からカイルくんことが好きだったんだよ! 君は覚えてないかも知れないけど、アンビション奨学金でカイルくんとあったことがあるんだよ?」

 

「……神経接続型義肢」

 

「思い出してくれたんだ、嬉しい。私はカイルくんが選んでくれたからカレッジまでいけたし、幸せな時間を過ごせた。あの地獄からも救い出してくれた。カイルくんは私の救世主(王子様)なんだよ」

 

エリカは椿と向き合ってたカイルを自分の方に引き寄せて、抱きしめて、倒れ込んでしまった。カイルは彼女が幼少の頃に出会ったハイスクール生だったことを思い出した。

 

エリカの嬉しさと悲しさが混ざった声に、覚えてないなかったことや自分が王子様そのような綺麗な存在では無いことに申し訳なさで彼女を抱きしめ返すことは出来なかった。

 

「……2人とも俺は帰ってくるし、こういうことを今はするつもりは無いよ」

 

カイルは2人の想いをやんわりと断って、上に乗っているエリカを退かそうするがピクリとも動かず、更には椿が乗ってきた。

 

「カイル様、申し訳ありません。貴男は異名のように流星の如く、去って行きそうな不安感があるのです。

 

私たちは今のうちに、貴男の呪い(帰る場所)になります。後、日本にはこんな言葉があります。据え膳食わぬは男の恥、です」

 

「ごめんね、カイルくん。君は天井のシミを数えてたら良いから」

 

「ちょっと待ってくれ……」

 

翌日、カイルは人生で初めての遅刻をした挙句、いつの間にかに首につけられていた2つのキスマークをマルコに見つかり、盛大に茶化された。

 

「爺様、貴方が言っていた(呪い)とはこういう意味だったのか」

 

カイルは首筋に大きな絆創膏を貼りながら、愛が呪いに変わると知った。




間に合わなかった……
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