機動戦士ガンダム Stellar Bless 改訂版を作成中 作:木星市民
5話 サイド9宙域戦 ①
「ご隠居様だけでご当主一家が居ないのはおかしくないか?」
「当主たちだけじゃない、軍部やファクトリーの面子も居ない。もしや、ジオン公国に備えているのか……」
宇宙世紀0079.1.1のシュミット一族の新年会に集まった者たちはカイルたちが居ないことに気づき、何かが起きていると勘づいている者も居た。
「諸君、新年おめでとう。気づいている者……」
シュミット家の本邸でご隠居様と呼ばれているカイルの祖父が現状の話を始めた頃、カイルはシュテルンの中に居た。
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「案外、士気が高いね」
「正月から元気があることは喜ばしいですな。まぁ、今回の演習に参加した者は臨時ボーナスを支給してますからなぁ。金の魔力は怖い」
「金にガメツイのは良いことだよ。開拓団の末裔ならこれくらいないと」
シュテルン級3隻、コメット級12隻、アストラ級2隻まで戦力を拡大した第一艦隊はサイド3側のサイド9領域限界で演習を行っていた。
また、同規模の第二、第三艦隊も別エリアで演習を開始している旨の連絡が来ていた。
「そういえば、昇進おめでとう。少将」
「今更ですね、カイル様。ありがとうございます」
大佐は宙賊の討伐とミノフスキー博士の亡命の功績が認められ、少将に昇進していた。しかし、カイルの対応は変わらない。
「ジオンは来ますかね?」
「来たら殺るだけだよ。来なかったら、僕が怒られるだけ」
今回の全艦隊での演習は、カイルが当主である父親に直談判し、実現させた。期間は1月1日から5日。全艦隊及び補給船を動員している為、ジオンが来なければ、カイルはかなり危うい立場になる。
「航行中のジュピトリスからジオンの艦隊がこちらに向かって来てると入電あり!!」
「ジュピトリスの現在地からなら約2日後、1月3日か。少将、本部と第二、第三艦隊に連絡よろしくー
後、皆に今日は飯を豪華にして、酒も出してあげて」
「かしこまりました、カイル様」
カイルはサイド9への報告などを少将に頼むと艦橋を出て、格納庫へと向かった。
「シャアや黒い三連星は来ないよねぇ。あるとしたら、シーマ様か。あの人、好きだから戦いたくないなぁ」
今回、戦うであろう敵を考えつつ、通路を滑っていく。
「コロニー落としは防げるとは思わない。兄様たちに相談はしたけど、サイド2の反応は薄い。恨むなら自分たちの危機感の無さを恨んで欲しい」
会議でジオンが使うだろう戦略をレオンたちに伝え、他のサイド政府に注意喚起を行っていたが、どこも対岸の火事を見ているような反応であり、カイルはコロニー落としの防止を諦めた。
確かにコロニー落としは市民を巻き込んだ無差別攻撃であり、許すことが出来ない戦略であるが、自分や仲間の家族を犠牲にしてまで、防ごうとはカイルは考えなかった。
「カイル様、お疲れ様です!」
「お疲れ様、調子はどう?」
「最高であります!」
シュミット軍のMSパイロットは予備役をいれて250名。カイルを除いたテストパイロット9人が教官となり、月月火水木金金の鬼のような訓練を行い、精鋭を作り出した。
余談であるが訓練中に大破などを出して、カイルすらもドン引きさせていた。
「さて、今回も生き残ろうな。グラウⅡ」
ミノフスキー博士の協力もあり、ビームライフルの実用化に成功した。更にシャアとの戦闘データのおかげでOSは格段に精度が増し、グラウの性能は上昇した。
「さて、演習に参加しようかな」
この後、演習にアグレッサーとして参加したカイルは防衛ラインを正面から突破し、シュテルン級1隻中破、コメット級3隻轟沈、アストラ級小破、MS8機及びオービタル22機撃墜の結果を出し、少将をドン引きさせ、パイロットたちを絶望に叩き落とした。
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U.C.0079.1.3 T07:00
「接近するジオン公国軍を撃滅せよ」
ジオン公国軍はサイド9政府の停止要求を無視し、接近を続けた。政府はジオン公国に対し、抗議文と殲滅する旨を伝え、全艦隊にジオン公国軍の攻撃許可が下った。
「ジオンも連邦も史実より艦隊数が多いな。さて、どうなることやら」
シュミット家がジオンと連邦、双方に正当な価格で資源を販売した為、史実よりも艦隊やMSの生産されていた。
「チべ級3隻とムサイ級15隻、不明艦が2隻。MSは単純計算で最低84機。うちのMSが78機。君らは鹿狩りのつもりでここに来たかも知れないが、この場所は獰猛な熊の縄張りだ」
メインハンガーの警報が鳴り響く中、整備士たちは迅速に動き回っていた。白熱するライトに照らされたMSが、静かにカタパルトに固定される。カイルはコックピット内で深呼吸し、計器を確認する。
「敵軍、ミノフスキー粒子の散布を開始。MS隊、順次発艦願います。星々の加護があらんことを」
管制官の冷静な声がヘルメット越しに響く。パイロットは軽く頷き、操作桿を握り直す。緊張感が張り詰める中、発進シグナルが切り替わった。
「プロト01、カイル出る」
瞬間、巨大な推進力がMSを前方へと押し出す。カタパルトのレールを滑るように疾走し、機体は闇夜の宇宙へと飛び出した。星々が瞬く中、グラウはその姿を現し、新たな戦場へと向かっていく。
「正体不明の艦は戦闘機の母艦か」
ジオン軍艦艇から幾つもの光跡が現れ、AIが光学画像から纏めた情報をモニターに表示されていく。
そして、チべの砲撃から両艦隊による砲撃戦が始まった。
「弾幕が薄いぞ、ジオン!!」
カイルは両軍のメガ粒子砲の隙間をフルスロットルで駆け抜け、更に近づいてきたザクと戦闘機を撃墜していく。
「これが言いたかったんだッ!」
息を吸い込み、グラウのコクピット内で叫ぶ。
「ザクとは違うのだよッ! ザクとはッ!!!」
カイルはビームライフルを巧みに操り、ザクを巧妙に誘導した。敵機の動きを読み切った瞬間、ビームサーベルを抜き放ち、一気に斬りかかった。ザクは抵抗する間もなく、火花を散らしながら撃墜される。
その直後、背後から新たな脅威が迫る。カイルは即座に反応し、機体を捻り背面撃ちを繰り出した。正確な射撃がザクの機体を直撃し、敵機は爆散して宇宙の闇に消えていった。
「この程度の戦力でッ! この程度の実力でッ! 俺の故郷を壊そうとしたのかッ! 選民思想に溺れた愚者共めッ!」
更にムサイを2隻沈め、ジオン軍を蹂躙していくが1機のザクに動きを止められてしまった。
「……やるな。誰だ?」
カイルの誘導や誘いに乗らず、堅実に攻めてくる。近づけば斬り合い、距離を取れば撃ち合う。2機の軌道は戦場という舞台で踊る演者のようであり、ムサイの乗員を魅了した。
「……限界か」
推進剤などの残量が危険水位に突入し、警告アラームが鳴り響く。カイルはスモークディスチャージャーで煙幕を展開し、戦闘エリアを離脱した。
「昂り過ぎてるなぁ。オタクの性かそれとも戦闘狂の気が戦いで開花したのか」
最近の戦闘中の昂りをカイルは帰還中に反省し、敵のエースパイロットを落とせなかったことを後悔していた。
この戦いの後、カイルは機体のカラーリングと弾幕の中を高速で駆け抜けいく姿から黒い流星と呼ばれるようになり、カイルはベッドの上で恥ずかしさで悶えるのであった。