機動戦士ガンダム Stellar Bless 改訂版を作成中   作:木星市民

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6話 サイド9宙域戦 ②

「現在の状況は?」

 

「こちらの損耗率は1割未満。ジオンは1割を超えた所です。誰かさんが正面から敵陣に切り込んでくれたおかげで敵の指揮系統が混乱し、優位に進めることが出来ました。

 

敵陣から信号弾が放たれた後に後退し、今は主砲射程の限界位置で陣形を整えているようです」

 

「……誰だろう」

 

機体の整備を任せ、現状把握の為に艦橋へ上がるとホットサンドを食べていた少将が呆れたようにカイルへ報告した。

 

「カイル様もどうぞ」

 

「ありがとう」

 

クルーからホットサンドを手渡されると、その温かさが手に心地よく伝わってきた。挽肉とチーズが溢れ出しそうなサンドを慎重に持ち上げる。

 

ピザソースの香りが鼻をくすぐり、思わず微笑んだ。ひと口かぶりつくと、サクサクのパンと濃厚な具材が絶妙に絡み合い、口いっぱいに広がる。彼はその瞬間、小さな幸福と生き残ったことを実感した。

 

「相変わらず、美味しそうに食べますね」

 

「数少ない特技だね。第二、第三艦隊の様子は?」

 

「先程、通信がありまして、少数だったようですが会敵し、殲滅したと。また、チべ級が轟沈した際の爆発の規模が大きく、核兵器に類似する物を積んでいたのでは無いかと報告が上がっております」

 

「なるほど。こちらも気をつけないと」

 

史実でも核兵器などのNBC兵器による無差別の殺戮が行われ、億規模の犠牲者を出した。

 

「別働隊が殲滅され、任務継続か撤退か悩んでいるのか」

 

「かも知れませんね。そういえば、喋り方が普段と違いますな」

 

「戦闘中だからね、意識の切り替えくらい出来るさ」

 

少将と軽く雑談した後、仮眠を取るためにカイルは敵はまた来るという予感と共に与えられた自室へと向かった。

 

「15歳になったばかりの少年に活躍されては軍人として、大人として、立つ瀬がない。さて、気合いを入れて行くぞ、野郎共!!」

 

「「「おう!!」」」

 

本来なら守るべき人物が共に戦場に立ち、一番槍として敵陣に切り込んでいく。その姿は歴史上に存在した英雄そのものであり、自然とシュミット軍はカイルの下で結束を強め、戦場を駆けていく。

 

~~~~~~

 

「第一戦闘配置! 第一戦闘配置!」

 

「待って、お尻拭かせてッ!」

 

英雄と言われた少年は情けなくトイレで叫んでいた。

 

「なんちゅうタイミングだよ、最悪だ」

 

ドアを勢い良く開き、格納庫へと急ぐが嫌な予感が強まっていく。

 

「遅れた、すまない!」

 

「爆睡決め込んでるかと思いましたよ!」

 

グラウの近くに居る整備員から遅れたことを笑われながら、OSを立ち上げていく。目の前で次々と他のMSが出撃していく中、通信が入った。

 

「カイル様。敵MSが編隊を組んで、重装甲なザクを護衛していると報告が上がってきております。また、帰還したオービタルの情報により、重装甲ザクが装備しているバズーカに放射能標識があったと」

 

「分かった。優先的に処理する」

 

「お願いします。星々の加護があらんことを」

 

少将は淡々とザクが核兵器を装備していることを告げ、通信を切った。

 

「プロト01、出る!」

 

グラウがカタパルトから射出され、視界が一瞬で広がり、広大な宇宙へと飛び込んだ。無数の星々が瞬き、静寂の中に微かな機械音だけが響く。

 

「シャアにも出来たんだ、俺にも出来るはず」

 

カイルは自分に言い聞かせるように呟き、シュテルンの前で機体を静止させた。目を閉じ、一瞬、意識を集中させる。

 

自分の存在が液体のように溶け出し、広大な宇宙という容器に満たされていく感覚を味わう。

 

無限の広がりを感じながら、カイルは周囲の一部となり、次第に全てと繋がっていく。

 

「……ッ!」

 

カイルは宇宙の一部となった感覚の中で、周囲を静かに探った。その時、他とは異なる気配を感じ取った。

 

敵機から放たれる殺意と怯え、そして迷いが混じり合い、鋭く心に突き刺さる。まるで獣が追い詰められ、どこか決断を躊躇しているような危うい覚悟を持った存在だ。

 

カイルはその異様な気配を見逃さず、その位置を捉え、流星となり、駆け抜けた。

 

「引き金を引くことを躊躇するなら、戦場に来るんじゃない!」

 

カイルはビームライフルを構え、一瞬の隙を突いて護衛機を正確に撃ち抜いた。ビームが閃光を放ち、機体は爆発音と共に宇宙に散った。

 

次の瞬間、100mmマシンガンに切り替え、弾幕を張って次々と敵を蹂躙していく。護衛の陣形が崩れる中、対象の機体が逃げようとするのを見逃さなかった。

 

カイルは素早くビームサーベルを抜き、敵の進路を封じるように迫る。対象機は迷いと恐怖に駆られ、必死に後退を試みるが、カイルの圧倒的な攻撃力に追い詰められていく。彼は冷静に、しかし容赦なくその機体を撃墜した。

 

「次ッ!」

 

誘爆したバズーカから漏れ出す核の光を背にして、飛び出して行く。全ては故郷を、仲間を護る為に。

 

「ヴァイザー! バズーカの射程から最終防衛ラインを算出しろ!」

 

【かしこまりました】

 

グラウに搭載されている戦闘用AIヴァイザーは戦闘ログからバズーカの射程を推測し、モニターに最終防衛ラインを表示した。

 

護衛に付いているMSは手練が多く、カイルの予想より撃墜に時間がかかっている為、焦りを隠せなくなっていた。

 

「後3つ!」

 

カイルは残りの敵を排除しようとしたが、前回、カイルを釘付けにしたザクが立ちはだかった。

 

鋭い動きでカイルの攻撃をかわし、巧妙に間合いを詰めてくる。互いに銃弾が交差し、火花が散る激しい戦闘が繰り広げられた。

 

集中力を高め、敵エースの動きを読みながら、ビームライフルで牽制しつつ、100mmマシンガンで隙を狙う。

 

しかし、激しい戦闘の中でマシンガンが弾切れになった。即座にそのマシンガンを敵エースに向かって投げつけ、わずかな隙を作り出した。

 

相手の一瞬のひるみを見逃さず、カイルは素早く戦術を切り替え、接近戦に持ち込む。ヒートホークの一撃をかわし、カイルは反転し 護衛されていたザクに狙いを定め、トリガーを引いた。

 

この間、2秒。最後の一撃が決まり、ザクⅡC型は核爆発の中で宇宙に消えた。

 

敵エースから機体を通して、悔しさと満足感が伝わって来た。その瞬間、警告アラームが鳴り響く。

 

「クソがッ」

 

残っていたザクⅡC型が最終防衛ラインに到達間近になっていた。更に敵エースパイロットに誘導され、迎撃も間に合わない距離であった。

 

しかし、諦めることは出来ない。スロットルを押し込み、ビームライフルを乱射する。

 

「あぁ…」

 

無情にも最終防衛ラインは超え、ザクから核が放たれた。

 

(カイル様とシュミット家に星々の加護があらんことを!)

 

カイルは何処から意識()が聞こえた。顔を上げ、モニターを見ると船体から火花が散っているコメット級が回避行動中の艦隊から離脱し、放たれた核へと突撃した。

 

そして、コメット級は放たれた2つの核をその船体で受け止め、消滅した。

 

「……カイル様」

 

「あのコメット級は?」

 

核攻撃に失敗したジオン公国軍は戦場から敗走し、第一艦隊も追撃は行わず、帰還した。

 

「コメット級4番艦ホープ。初戦で中破となり、艦長を含めた最低限の人数以外は退艦し、後方待機していました。核搭載機が近づいていることを知ると艦隊前方に進出し、最後はこちらの制止を振り切りました」

 

「そうか」

「最後の通信は、カイル様とシュミット家に星々の加護があらんことを、とありました」

 

泣くことは出来ない。下唇を強く噛み締め、拳からは血が滴り落ちていく。ゲームやアニメのように敵だけが死に、味方は無傷などは現実では有り得ない。

 

カイルは帰還後、今回の防衛戦で戦死した将兵の遺族に手紙を出し、謝罪と感謝を伝えた。更に遺族の生活や負傷兵の補助を拡充するように訴え、それが認められた。

 

軍人やマスコミから聖人と持て囃されるようになったが、カイルは苦い顔をして、否定する。

 

「俺はただの愚か者だ」

 

こうして、サイド9宙域で起きた戦闘は幕を閉じた。しかし、一年戦争と呼ばれた戦いは始まったばかりである。

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