機動戦士ガンダム Stellar Bless 改訂版を作成中 作:木星市民
「俺が地球に?」
「あぁ、南極講和会議の際に日本行政区及びドイツ行政区からの使者が私に接触し、物資提供を頼まれた」
本邸に呼ばれたカイルは会議以外で久しぶりに会う父親、ヴィクターから日本及びドイツから物資提供の打診があったことを告げ、更にカイルに地球へと向かえと言ってきた。
「父上。連邦政府からでは無く、行政区長からの打診では越権行為では? 更にジオンの地球降下作戦により、現在の地球は極度の混乱状態です」
「表向きはシュミットコーポレーションの従業員に対する支援物資提供だ。それらを行政が買い取るという形になる。
我々の艦艇にはミノフスキークラフトが導入され、単独での大気圏離脱も可能だ。護衛に第一艦隊及びオケアノスを出す。お前が作った
「……分かりました」
自身のプライドを刺激されたカイルはヴィクターの指示を受諾した。
「連邦やジオンには殴って来たら殴り返すと伝えてある。よろしく頼んだ」
「かしこまりました。では」
カイルが部屋を出ようとすると待てと呼び止められ、振り返るとヴィクターの表情は先程の長としての厳しい顔では無く、父親としての柔らかく優しいものであった。
「私とサクラのような出会いがカイルにもあることを願っている」
「まだ15歳ですよ。恋愛は当分先です」
カイルの両親であるヴィクターとサクラはヴィクターが研修で訪れた日本で出会い、いろいろな障害を乗り越えて結婚していた。サイド9の劇団が2人を題材にした劇をやるほどである。
カイルは一礼すると部屋を出た。予感めいた胸の騒めき共に、長い廊下を歩き始めた。
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「あれ、連邦とジオンはうちに手を出せないんでは?」
「それは違うよ」
第一艦隊とオケアノスの主要メンバーを集め、輸送作戦のブリーディングを行っていた。
「南極条約で決まったのは
「サイド9防衛軍……なるほど」
木星=シュミット家が一般常識であり、木星船団公社もシュミットコーポレーションの傘下企業である。
南極講和会議の初期ではシュミットコーポレーション全体を保護の対象にしようとしていた。しかし、先のジオン軍のサイド9襲撃があり、条約が遵守されるか怪しい為、ヘリウム運搬を行っている木星船団公社のみを保護の対象する旨をヴィクターが会議に提案し、了承された。
「今回は月面都市ルナ・ノヴァに集積されている物資をキールに運搬し、復興を支援。その後、ルナ・ノヴァで物資を回収し、舞鶴にて同様に物資提供及び復興支援を行う。
輸送艦で物資運搬を行うと時間とリスクが増大する為、オケアノスを使う。オケアノスのメンバーは初航海と場合によっては初戦闘になる可能性もある為、何かあれば艦隊旗艦のシュテルンに報告してくれ」
「了解であります!」
5年前から建造を開始した惑星強襲制圧型戦艦オケアノス。ジュピトリスをモデルにしているが艦隊運用及びMS運用に特化しており、艦艇の修理からMSの開発製造を行う一種の移動基地である。
AIや自立型のモビルワーカーも装備している為、運用人数の削減や船体のコンパクト化に成功している。しかし、それでも全長1200m、全幅400m、全高300mの巨大戦艦である。
ミノフスキー博士の協力で試作型ミノフスキードライブの開発に成功しており、オケアノスに採用された。
「出発は3日後、明朝。必ず明日か明後日のどちらかで休日を設けること。では、解散!」
会議室から次々と退出する中、シュテルン艦長エリック・ワンダーソン少将とオケアノス艦長アンディ・ミラー中佐がカイルと共に残っていた。
「急な地球行きですな」
「ですね。オケアノスを地球に送るのはいらぬ疑いを両政府に与えることになると思いますが」
2人は疑問をカイルに投げかける。カイルは読んでいた資料をテーブルに置き、目線を上げて口を開いた。
「支援自体は問題ないとは考えてる。確かにオケアノスを使うことでリスク軽減や物資の大量輸送が可能になる。けど、アンディ中佐が言う通り、緊張を与えることになる。
けど、父上と兄様が許可を出したということは何かしらの意味があると思うんだ。例えば、使者が佐藤の爺様だったりね」
「「あぁ、なるほど」」
カイルの母方の祖父、佐藤 昭二。根っからのアースノイド主義であり、アナハイム・エレクトロニクスの傘下企業である佐藤重工業の会長を務めている。
歴史を辿れば、結城重工業とライバル関係であり、シュミット家との因縁がある一族である。
カイルの父親であるヴィクターとは険悪な関係であり、原因はスペースノイドに
孫にあたるカイルやレオンに表面上は厳しい態度をとってはいるが、誕生日プレゼントやクリスマスプレゼント、お年玉などは2人の誕生から1回たりとも欠かせたことはない。
ツンデレおじいちゃんである。
「ジュピトリスの建造を佐藤重工業がやって、爺様が凄い自慢してから父上が1ヶ月くらい不機嫌だったことを覚えてる。しかも、日本で物資を降ろす所が舞鶴だよ? 佐藤重工業のお膝元だよ。絶対仕返しだよ」
「ご当主様は根に持つタイプですからねぇ」
「流石にそれだけの為にオケアノスを派遣しますか?」
エリック少将が苦笑いを浮かべ、納得している2人を見て、アンディ中佐が慌てて疑問を更に口にする。
「アンディ中佐、それはないよ。連邦とジオンの戦争が更に激化する予測だから最悪孤立しても第一艦隊が機能するように基地機能を備えたオケアノスを同行させるんだと思うよ」
「……そうですよね」
胸を撫で下ろすアンディ中佐を見て、カイルはついつい笑ってしまった。アンディ中佐は少し頼り甲斐は無いが土壇場の機転や乗員に慕われる性格からオケアノスの艦長に任命された。
「俺達も飯を食べて、準備に取り掛かろう」
「「了解!」」
3人は仲良く食堂に向かい、喧嘩した。限定ランチが残り2つであり、全員それを楽しみにしていた為、壮絶なジャンケン大会が開催された。その結果、エリック少将とアンディ中佐が限定ランチを手に入れた。
しかし、食堂に居た多くの部下から子供に譲らない畜生艦長と言われるようになった。
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「全システムオールグリーン、出港許可来ました」
「よし、シュテルン出港!」
第一艦隊及びオケアノスは陣形を組み、月面都市ルナ・ノヴァを目指した。
「そういえば、カイル様はオケアノスに居るんですね。やっぱり、新造艦が良いのかなぁ。それともランチを譲らない艦長がいる船には居たくないのかぁ」
「カイル様はMS関連でオケアノスに行ってるだけだ!」
エリック少将はこの3日間でカイルにランチを譲らなかったことをネタにして、弄られ続けている。
「プロトタイプ・グラウⅢ。俺に力を貸してくれ」
オケアノスのMS格納庫に鎮座する黒と金で塗装されたグラウⅡとは違う機体。それはグラウⅡの発展強化されたグラウⅢ。そのテスト機を1機、カイル用に持ち込んだ。
グラウⅡに比べ、バックパックが大型化し、シルエットからも重厚感が出ていた。特出すべき変更点は両肩部に接続されたビームカノン内蔵型稼働シールドである。
ギャプランのバインダーとフルアーマーガンダム(TB)のサイドアームを参考にした攻防一体の装備である。
「新型核融合炉のおかげで稼働時間も損なわれず、武装も実弾兵器を減らし、ビーム系に移行したから継戦能力も向上。我ながら良い機体だ。
ミノフスキー博士を引き入れて、正解だったな。長生きして貰いたい限りだ」
グラウⅢのコクピット内でシステムの調整をしつつ、前世の故郷である地球に思いを馳せていた。
運命の出会いは近い。
超巨大戦艦は浪漫ですよね〜
スイカバーされたくない