話の中、刹那は、手の中にある話に出てきた赤い結晶に目をやっていた。
刹那「それで、今回は何のようですか?」
暁「サージェス上層部からの依頼で、ここの人手不足解消に派遣されたが、おそらくここに保管されているプレシャスの護衛の意味もあったんだろう」
真名「・・・暁、力が必要な時はいつでも言ってくれ」
あくまで、他者からの依頼を受け持つ真名にしては珍しく、自ら協力を申し出た。
刹那「私もです」
刹那も固い決意で、暁にそう言った。そうこうしているうちに、空は、真っ暗になっていた。暁は、二人と別れ、ネギとの待ち合わせ場所に向った。
しかし、待ち合わせには遅れてしまったらしく、ネギの姿はなかった。
暁「ん?」
暁が、考え込みかけていたそのとき、桜通りの向こうから、二人の少女・・木乃香と『宮崎のどか』が、歩いてきた。
木乃香「あ、暁兄~」
暁「木乃香、どうした?こんな夜更けに・・・宮崎?」
宮崎「こんばんは~」
暁は、のどかが、何故かタオルを巻いていることが気にかかった。
木乃香「あんな~、吸血鬼がでたんや~」
暁「なに?」
木乃香「そんで、ネギ君が、吸血鬼を追って、明日菜がネギ君を追っていってしもうてんよ~」
暁「・・・つまり、ネギが吸血鬼を見つけて追いかけていって、神楽坂が、ネギが先走り過ぎないように追っていった・・ってことか?」
木乃香「そうやで~」
暁(・・・・エヴァか・・・・まあ、アイツは女子供は殺さないと聞いていたし、大丈夫とは思うが・・・一応俺も行くか)
暁「わかった。君達は、寮に帰っていろ」
暁は、二人にそういうと、桜通りへと走って行った。
-数分後-
桜通りの近くの林を進む二つの影があった。一つは、小さい影。もう一つは、耳元が変わった形をした影だった。
?「く・・まさか、人間ごときに足蹴にされるとは・・・・」
?「マスター、涙が・・・」
やがて、月明かりで姿がはっきりとしていき、影は、エヴァと『絡繰茶々丸』であった。二人が、桜通りの吸血鬼の正体であり、先ほど目的のネギの血の吸血をやろうとして時に、割り込んできた『神楽坂明日菜』に、蹴り飛ばされ撤退してきたのである。
エヴァ「・・・・そろそろ、出てきたらどうだ?」
エヴァが、そういうと正面の木の陰から暁が出てきた。
暁「よお、相変わらずだな。エヴァ」
茶々丸「明石先生・・・」
エヴァ「ふん・・・」
茶々丸は、暁にお辞儀し、エヴァは、少しふてくされた様子で、暁を睨んだ。
暁「ネギを狙ったのは、呪いを解くためか?」
エヴァ「そうだ。あのぼーやの血を死ぬまで飲めば、私の呪いは解ける・・・」
暁「でも、殺す気は、全くないんだろ?」
エヴァ「・・・さあな。しかし、またお前に会うことになるとはな・・・」
暁「また会うって、約束しただろ?」
エヴァ「十年以上昔の約束をよく憶えていたな・・・」
-十数年前-
当時、十一歳だった暁は・・・・・
暁「う・・ううっ・・・ここどこ~?」
広大な麻帆良で・・・迷子になっていた。
暁「う・・・ふえええええええ・・・」
?『あー!男がめそめそ泣く・・・なあああああああああああ!?』
暁「!?」
すると、近くの木の上から暁の様子を見ていたらしい少女が、怒鳴りながら降りて・・・否、落ちてきた。暁は、とっさの落ちてきた少女を受け止めた・・・姫様抱っこで・・・
暁「・・・・」
少女「・・・・」
暁と少女は、しばし見つめあい・・・・・
少女「・・・!?ええいっ!早くおろせ!」
暁「う・・うん」
逆切れした少女に怒鳴られて、暁は、少女をゆっくりとおろした。少女は、少し名残惜しそうだったが、あえてそれを暁に悟らせられまいとしていた。
少女「全く、さっきから見ていたが、貴様、それでも男か!?ちょっと道に迷ったぐらいで泣くんじゃない!」
暁「う・・ううう」
少女の怒鳴り声で、暁は、また泣き出しそうになったが・・・・
少女「ええいっ!街まで、連れて行ってやるから泣くな」
少女は、暁に背を向けて歩き出そうとしたが・・・・
ぎゅ!
少女は、手に違和感を覚え見ると、暁が自分の手を握っていた。
少女「・・・何故、手を握る」
暁「一人じゃ、寂しい・・・」
そういうと、暁の手は、少女を離すまいとしっかりと握った。
少女「・・・勝手にしろ」
怒鳴ってでも離そうと思っていた少女だったが、離すどころか暁の手を握り返した。
少女(・・・全く、なんというぼーやだ・・・・。しかし、手を通して感じる温かさ・・・・こんなぬくもりサウザンドマスター以来だな・・・・)
暁は、少女と一緒に街にたどり着いた。
暁「ありがとう・・」
少女「・・フ・・フン・・・」
暁のお礼の言葉に、少女は、照れくさそうに顔を背けた。そして、暁は、街へ行こうとしたが、少女のほうを振り返った。
暁「俺は、明石暁・・・また会えるかな・・?」
暁は、少女に名を名乗り・・・・
少女「・・・・エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルだ・・・また会うかどうかは、知らんがな・・・・」
少女・エヴァは、そう返した。
その後、暁とエヴァの付き合いは、暁の中学卒業まで続いた。
そして、中学卒業と共に暁は、麻帆良を離れることとなった・・・・
そして、出発の前夜、満月が輝く中、暁は、エヴァに呼び出され、麻帆良を一望できる丘に来た。
暁「エヴァ、何のようだ?こんな所に呼び出して・・・」
暁は、エヴァに呼び出した理由を聞いた。
エヴァ「・・・お前に教えておきたいことがある・・・・・これを知ると、お前は、私を嫌いになるかもしれん・・・だが、知っておいて欲しいと思う・・・・」
暁「どういうことだ?」
エヴァは、口を開いた。すると、犬歯が、鋭く尖っているのが見えた。
暁「エヴァ?」
エヴァ「・・・私は、吸血鬼だ」
エヴァは、震えながらありのままを話した。
自分は、望まずにして吸血鬼になったこと・・・・
身を守るために数々の人間を殺したこと・・・・・
魔法のこと・・・・
サウザンドマスターにかけられた呪いのこと・・・・
そして、暁と過ごした日々が偽りなく楽しかったこと・・・・
話し終わると、エヴァは、声を押し殺して泣いていた・・。すると、暁は、エヴァの頭をなでた。
エヴァ「さと・・・る?私を嫌わないのか?」
暁「どうしてだ?たとえ吸血鬼だろうと、お前はお前・・・俺の友達、エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルだろ?」
その言葉で、エヴァが堪えていたものが、爆発した。
エヴァ「う・・・うわあああああああああああっ!!!」
エヴァは、暁の胸の中で泣いた。今まで、吸血鬼としてしか扱われてこなかったエヴァにとってただのエヴァンジェリン・A・K・マクダウェルとして接してくれたサウザンドマスターと暁は、特別な存在になっていた。
エヴァ「う・・うう・・・・」
泣いていたエヴァだったが、徐々に落ち着いてきた。
暁「落ち着いたか?」
エヴァ「・・・あ・・ああ」
エヴァは、暁から名残惜しそうに離れた。
暁「エヴァ・・・俺は決めた」
エヴァ「なにをだ?」
暁「俺は・・・冒険者になる。そして、また会いにくる」
エヴァ「・・・・・はあ?」
突然の暁の宣言に、困惑するエヴァ。
暁「お前の話を聞いてから考えていた。魔法っていうファンタジー的なものが存在すれば、魔法の力がこもった宝も存在する・・・」
エヴァ「・・まあ、確かにそうだが・・・・」
暁「その宝の中に、エヴァの呪いを解けるものもあるかもしれない。それを使えば、晴れて自由の身だろ?」
エヴァ「しかし、お前は何故、そこまで・・?」
暁「そ・・・それは・・・・・」
-現在-
エヴァ「あのあと、駆けて逃げていったが、何を言おうとしたんだ?」
すると、暁は、顔を赤くしていた。
エヴァ「どうした、暁?」
暁「・・・・・だから」
エヴァ「何?」
暁「俺の初恋の相手だったから!!」
そういうと、暁は、一目散にその場から走って逃げていった。エヴァは、茶々丸が話しかけても、一時間は固まったままだったという・・・・・。
暁が、恋愛に疎くなったのは冒険にのめり込みだしてからで、流石に子供時代のは、ぶり返すと恥ずかしいものがある場合もあり、今回の場合は、疎くなる前の恋愛感情というこでで。次回をお楽しみに。