聖王女の妹は信仰者【本編完結】   作:お稲荷猫

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れべりんぐ②

 それからと言う物のほぼ毎日のように『れべりんぐ』が行われ、半年もすれば一人で送り出されるようになった。その頃にはギガント・バジリスクが一匹だけであれば確実に倒せるほどの『れべる』を得る事ができたのだが、最初の間は苦労することが多かった。

 一年もすると、それまで順調であった『れべりんぐ』による『れべる』の上昇を体感できることも減るようになった。ツアーが言うには、魔獣の強さを上回ったことで効率が落ちたのだという。そのため、これまでよりも多くの魔獣を倒さなければ『れべる』が上昇しなくなり、ある意味で限界に到達しつつあるという状況だ。

 

 

「補助のアクセサリーをつけているとはいえ、ここまで成長が早いのは予想外だったね」

 

 

 ツアーはリリアを台座に呼び出し、これからの方針を訂正する必要があることを伝える。これまでと同じことを繰り返したとしても、目標にたどり着く前に寿命が来てしまうだろうと。

 

 

「しかし、あの強さ以上の魔獣となるとこの世界でも限られた数しかいないのではないですか?それならば、数を倒すという点でも続けた方が……」

 

 

「魔獣だって無限にいるわけではないんだ。あまりに多くを殺しすぎると、別の魔獣が勢力を増し、森のバランスを壊してしまう。それは森を利用する冒険者にも影響してしまうからね」

 

 

 これまでもかなり多くの魔獣と出会い、倒してきたがツアーは日毎に五十体以上の魔獣を倒させることは無かった。これは一日に狩っても良い魔獣の最大値であり、これを超える数を狩り始めると、生態系に影響が出ることを知ってたからだ。

 

 

「彼が狩りをしすぎた結果、東の山岳地帯にいた魔獣は全滅してしまったからね。おかげで王国との交易路が安全なんだけど」

 

 

「……。それでは、どうしますか?」

 

 

 ツアーは自身の見聞した物の記憶をさかのぼり、妙案がないかと考える。そこへペタぺタと肉球を鳴らしながら、アイルがやってきた。

 

 

「二人ともお困りのようですニャ」

 

 

「珍しいね。君がここまでくるなんて」

 

 

 普段、アイルは台所や廊下にいるところしか見たことがないリリアは意外そうな表情をする。アイルの服装がいつものメイド服ではなく、トンガリ帽子をかぶった魔導士の様な服装をしていたことも、意外そうに思った一つの要因だ。

 

 

怪物召喚(サモン・モンスター)死者召喚(サモン・アンデッド)を使って人工的に強い敵を生み出せばいいのニャ。主様の時も最後にはそうやってレベルを上げていたニャ」

 

 

 アイルはそう言うと手に持つ木の杖を掲げ、その場に魔狼(ヴァルグ)を召喚する。それを見たリリアは、いつも相手にしている魔狼(ヴァルグ)よりも倍近く大きいことから、かなりの強さであることを肌身で感じた。

 

 

怪物召喚(サモン・モンスター)死者召喚(サモン・アンデッド)で召喚される魔獣は術者であるニャーのレベルに影響を受けるニャ。だから、効率がいいんだニャ!」

 

 

 ツアーは何かを思い出したように「そういうことだったのか」と言う。昔から思っていた疑問が解決したかのようなすっきりとした様子だ。そして、リリアの方を見ると、アイルの力を借りて『れべりんぐ』を続けるように告げる。

 

 

「場所はあまり目立たないほうがいいだろうから、建物内の訓練所を使うと言い。第十位階の魔法でも使わない限りは壊れることは無いだろうから。これからの『れべりんぐ』はアイルの方が詳しそうだし、案内はアイルに任せるよ」

 

 

 アイルは「分かりましたニャ!」と言うと、リリアの手を引いて「こっちニャ」と案内する。移動の最中にリリアは疑問に思っていたことを訪ねようとしたが、真相に迫るような質問をしていいものかとためらう。

 

 

「ニャーとツアー様は古い友達ニャ。正確には主様がツアー様にニャーを託したのニャ」

 

 

「…!どうして聞きたいことが分かったんですか?」

 

 

「ニャーは相手の考えていることを読むことができるニャ。もちろん、対策されていたら覗けないけどニャ。リリア様にはこれから様々な抵抗手段についても勉強してもらうニャ!」

 

 

 これまでの話を聞く限りでは、リリアを成長させる方法に関してはツアーよりもはるかに知識を持っているようだ。その知識をどこから得たのかは分からないが、ツアーが任せるといえるほどアイルの情報には信用がある。

 

 

「それからずっと思っていたことニャんだけど、リリア様は正直に言って魔力系魔法の才能はよくないニャ。信仰系魔法を伸ばした方がずっといいニャ!」

 

 

「私これでも結構自信があったんですが……」

 

 

「普通の人から見れば十分ニャ。だけど、最適な構成にするためには信仰系魔法を強化していく方向に変更すべきニャ。神聖属性を追加して魔法を唱えれば信仰力が消費されるから、信仰系魔法も魔力系魔法も強化できてお得ニャ!」

 

 

 アイルはそう言うと、何もない空間に発生した謎のホールに手を入れ、本を取り出しリリアに渡す。題名も書かれていない、緑の表紙をしたただの本だ。

 

 

「それを読めば神聖属性を付与するスキルが入手できるニャ。使用すると消滅しちゃうんニャけど、ニャーは何冊かもってるから上げるニャ」

 

 

 唐突に渡された本が予想外にすごい物なのではないかと、リリアは使用をためらってしまう。スキルは本来、ある程度の実力を持った者やその種族によって手に入れることができる限定的なものであるというのが知っている知識であり、それを『読むだけで付与する本』と言うこと自体理解しがたいのだ。

 アイルが「早く読むニャ」と急かしたため、リリアは本を開くとページには何も書いていない。どのページも白紙であり、パラパラと最後まで流す様にめくっていくと、本は突然光の粒となって消失する。

 

 

「これでスキルは取得できたニャ。あとはさっきも言った通り、信仰系職業を鍛えて行けば、どんどん強くなれるニャ!」

 

 

 アイルはそう言いながらある扉の前で止まる。扉を開くと、中にはかなりの広さが確保され、天井には空が広がる空間へと出る。室内であるのにこのような空間がなぜ広がっているのか理解に苦しむも、アイルはどんどん進んでいくため、リリアも急いで後に続く。一年経っても、この場にあるあらゆるものに驚いてばかりだ。

 

 

「それじゃ、今日からニャーが教官ニャ!ツアーみたいな生半可なことはしないから覚悟するニャ!」

 

 

 アイルはそう言うと、魔法を唱え始め、展開された複数の魔法陣から重装備の骸骨(スケルトン)を何体も召喚して見せる。

 

 

「神聖属性の魔法でレベルを上げるならアンデットを倒すのが一番ニャ!こいつらは重装骸骨戦士(ヘビー・スケルトンウォーリアー)。程よく硬くて程よく経験値が入る中盤には最適なモンスターニャ!さっき取得したスキルを使って、こいつらを剣でも魔法でもいいから倒していくニャ!もちろん攻撃はさせるけどニャ!」

 

 

 アイルはそう言うと問答無用で重装骸骨戦士(ヘビー・スケルトンウォーリアー)の群れをリリアに向けて突撃させる。スキルの発動や話の中にあったよくわからない言葉に関して質問をする前に仕掛けてきたが、リリアは不思議とスキルをどのように使えばいいのか、体が理解しているような感覚を感じる。

 自身の感覚を信じるままに剣を構えると、剣に光が集まり、剣身が淡い光を放ち始める。その剣を重装骸骨戦士(ヘビー・スケルトンウォーリアー)に向かって振り折ろすと、重装骸骨戦士(ヘビー・スケルトンウォーリアー)は防御しようとした盾ごと真っ二つに切り裂かれる。

 

 

「付与される属性の追加攻撃力は本人の持つ信仰力に依存するニャ。要するに信仰力が高ければ高いほど大きなダメージにつながるってことニャ。まぁ、重装骸骨戦士(ヘビー・スケルトンウォーリアー)の防御力じゃ今のリリア様の攻撃は防げニャいけど」

 

 

 アイルは空中で横になりながら戦っているリリアにそう話しかける。空中で自由に姿を動かし、頭を地上に向けたりしながら観戦している様子や、これまでの状況から判断するに、アイルもツアーほどの強者と言える存在だとリリアは理解した。ツアーの様な覇気を放っていないことがその不気味さをより一層際立たせる。

 

 そんなことを考えながらも、召喚された重装骸骨戦士(ヘビー・スケルトンウォーリアー)の群れを倒し終えると、アイルが「お疲れ様ニャ」と言いながら地上に降りてくる。

 

 

「これで肩慣らしはできたはずニャ!それじゃ、本番行くニャ!」

 

 

 アイルはそう言うと、再び魔法を唱え、森で倒したであろう魔獣の死体を謎のホールから取り出すと、それを地面に置き魔法陣に吸収させる。その魔法陣から召喚されたのは、リリアにとっても因縁の深い相手である死の騎士(デス・ナイト)だった。

 

 

「さっきまでと同じ要領で戦えば何ともない相手ニャ。防御力が高い点だけ注意するニャ!」

 

 

 アイルはそう言うと。杖をリリアに向け死の騎士(デス・ナイト)を突撃させる。死の騎士(デス・ナイト)がその勢いのまま剣を振り下ろすと、リリアはそれを避け、剣を突き立てる。攻撃は盾で弾かれ、その一撃で死の騎士(デス・ナイト)は姿勢を崩す。リリアもそのまま数歩距離を開けてしまっていたが、すかさずに『流水加速』で距離を詰め、剣を振り上げると直撃し、死の騎士(デス・ナイト)は大きく後退する。そのまま、リリアは『電撃(ライトニング)』を唱えると、これまでとは違った大きな雷が落ちたかのような音と共に放たれ、直撃した死の騎士(デス・ナイト)は上半身が完全に吹き飛ぶ。

 

 

「すごい威力だニャ!これだけの追加攻撃が乗っていれば実質第四位階相当の魔法だニャ!」

 

 

 アイルが興奮気味にリリアの側へと走り寄る。この魔法に対する興奮具合や珍しそうにリリアのあちこちを肉球で触り始める仕草を以前にも……と。

 

 

(フールーダに似ている……)

 

 

 口には出さなかったが、アイルの今の様子はどことなく似ていると感じた。

 アイルは「他の魔法も試すニャ!」と言って、リリアはその後何度も死の騎士(デス・ナイト)と戦う羽目になり、結果的にはほぼ信仰力と魔法力を使い果たすまで、アイルの実験に付き合わされることになった。

 

 アイルが言うには、リリアの現在の信仰力において神聖属性を付与された魔法には、全ての魔法が通常よりも一位階程度威力が上昇している状態だという。元から聖属性や光属性などが付与されている魔法には効果が薄いということも分かったが、本来はそれほどの威力が上昇することは無いと言い、倒れるリリアを後にノートへと発見をまとめている。

 

 その後、リリア達の様子を見に来たツアーがその場に出くわし、アイルに厳しい説教をしたのは言うまでもない。

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