聖王女の妹は信仰者【本編完結】   作:お稲荷猫

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出現③

 モモンは自身の魔道具によって薄暗い洞窟の中を照らすと、その光を元に先へと進んでいく。道中のゴブリンはナーベが音も出さずに瞬時に暗殺していく事で、大きな騒ぎを起こさずに奥地へと進んでいった。

 

 

「数は十五体ほどでしょうか……。中央にいるのはホブゴブリンですね」

 

 

 リリアが遠視の魔法を使い、大きな広間に集まっているゴブリンを見つけるとモモンに伝える。

 

 

「先ほどからお二人に任せっぱなしなのは申し訳ないので、ここは私が…」

 

 

「分かりました。私は一度、洞窟の外に出ます。一応、ナーベをサポートのため置いていきますね。ナーベ」

 

 

 ナーベは「はっ」と言うと、リリアに続いてゴブリンを倒しに向かう。

 ナーベラルがアインズから与えられた指示は、リアの戦闘スタイルについて調べるということだ。ユグドラシルにないような魔法やスキルなどを発見すれば、直ちに報告するようにとも命令を受けている。

 

 

「ここで魔法を使います。一応周囲の警戒をお願いします」

 

 

 リリアはそう言うと、小声で魔法の詠唱を始める。

 

 

集団標的(マス・ターゲティング)睡眠(スリープ)

 

 

 魔法によってゴブリン達はすぐに眠りはじめ、リリア達は眠っているゴブリンを一体ずつ確実に殺していく。殺すたびにリリアは小声で祈りを捧げながら、苦しまないように一撃で急所を突いていく。

 

 

「なぜ祈りを捧げるのですか」

 

 

 ナーベがリリアに尋ねる。神官として祈りを捧げていると言えばそうなのだが、敵でもあり亜人、今回の依頼でいえば魔物である者に対し祈りを捧げながら殺していく様子は滑稽に思えたからだ。

 

 

「亜人と言えど、社会を持ち家族がいるはずですから。命を奪うという行為に罪があるのは当然です。ですから、罪を懺悔するという意味を込めて祈りをしているんです」

 

 

 ナーベは「そう」と言うと、そのまま足元に寝ているゴブリンに剣を突き立てた。その後も小規模なゴブリンの群れに出会っては、睡眠(スリープ)によって眠らせながら倒し、隅々まで探索し終えると特にめぼしい物もなかったことから、遺体を外へ運び出し火葬する。

 

 

「これで一つ目の依頼は終わりですね。次の依頼は確かオーガのはずなのですが……」

 

 

 リリアはそう言いながら、外で待っていると言ったモモンの方を見る。足元にはオーガからはぎ取ったと思われる耳が大量においてあったからだ。

 

 

「私一人で終わらせてきました。オーガは大したことない相手なので、時間がもったいないと思いまして」

 

 

 リリアはモモン本人の戦闘スタイルを確認したかったが、こうなってしまった以上は次の依頼に行くしかないと、少し残念に思いながらも礼を言うと、巣の内部にまいてきた油に火をつける。これでゴブリンの巣も完全に使えなくなるだろう。

 依頼を終えたため、オーガの討伐証明の素材を持ちながら、移動のために乗って来た馬車へと戻る。

 

 

「すると、最後のアンデッドの間引きですね。数の指定はないので、倒した分だけ報酬がもらえますが……」

 

 

「時間もありますし、少し長めに続けてもよさそうですね」

 

 

 リリアは「そうですね」と言うと、二人から素材を受け取り馬車の中へと積み込んでいく。そして、三人が乗り込むと、馬車は次の目的地であるカッツェ平野へと走り出した。

 

 

「リアさんは確か聖騎士でしたよね。聖騎士であればアンデッドとの戦いは慣れたものでしょうか」

 

 

「正直なところ、聖王国では亜人との戦いがほとんどなのでアンデッドとの戦いに慣れているかと聞かれれば怪しいですね……。ですが、それなりに場数はこなしてきたと思ってます」

 

 

(聖騎士はあくまで役職的な意味合いが強いってことか……。ユグドラシルの時のようにアンデッド討伐専門ギルド見たいな組織という訳でもないんだろうな)

 

 

「こちらからも一つお聞きしてよろしいでしょうか?」

 

 

「えぇ、もちろん。答えられる範囲ならですが」

 

 

「それじゃ……。ナーベさんは何の種族なんですか?」

 

 

 モモンは少し警戒した様子で「どうしてその質問を?」と逆に尋ねる。

 

 

「話にくいことであれば構いません。昨日、ナーベさんを拘束する際に使った魔法が効かなかったものですから……。決してギルドに報告しようとかそう言う思惑があるわけではないですよ」

 

 

「少々込み入った事情があるので、お話しすることはできません。他の質問であれば答えられるのですが」

 

 

 リリアは「そうですか…」と言うと、それ以上質問をすることは無く、馬車はカッツェ平野へとたどり着いた。ここの付近に来るといつも負の瘴気に満ちている感覚に襲われるが、前に来た時よりも一層強くなっているような雰囲気を感じる。

 

 

「リアさん。どうかしましたか?」

 

 

「いえ…、以前来た時よりも負の感覚が強いように感じたので……。もしかしたら、上位のアンデッドが湧いているかもしれません」

 

 

「それは探知系の魔法ですか?」

 

 

「いえ、私の直感に近い物です。職業病とでもいうんでしょうかね」

 

 

 モモンは「そうですか」と言うと、剣を抜き戦う準備を整えて、アンデッドを探し始める。だが、探し始めて間もなく、間引きされる対象は自らこちらへと向かってきた。

 

 

「あれは……。死の騎士(デス・ナイト)でしょうか?」

 

 

「いえ、あれは死の戦士(デス・ウォリアー)ですね。両手に剣を持っているので。数は三体しかいないようです」

 

 

 これはアインズが事前に仕込んでおいたものであり、この世界では死の騎士(デス・ナイト)でさえ一国を滅ぼしうる存在であり、相手できるものはほんの一握りであるため、実力を測るのにはちょうど良い相手だったからだ。もし、リアが死んだとしても相手が悪かったとして組合に報告することもできる。

 

 

「三人で一体ずつ…は無謀ですね。一人一体で何とかこの場を乗り切りましょうか」

 

 

「随分と落ち着いていますね。以前にも戦った経験があるんですか?」

 

 

 モモンの質問にリリアは少し焦りを感じた。普通の冒険者であれば確実に慌てる場面であるはずだが、見慣れた相手であるためそう言った演技をとりつくろうことさえ忘れていたからだ。何とかその場を収めるため、リリアは「え、えぇ、まぁ」と返事を濁しながら、強化魔法の詠唱を始める。

 

 

「私が一番右のやつを。残りはナーベとリアさんで対応を」

 

 

「では私は真ん中を」

 

 

 リリアはその流れから一番左の死の戦士(デス・ウォリアー)を相手することになり、「分かりました」と言うと、距離を空けて剣を構える。ある意味、これはモモン達の実力を見るいい機会であると感じながら。

 戦闘が始まると、さすがはアダマンタイト級と言うべきか、死の戦士(デス・ウォリアー)の攻撃を難なく受け止め、そのまま一撃を与えている。しかし、どこか手加減をしながら戦っているような違和感を感じる。ナーベの方も慣れた手つきで敵の攻撃を避けては一撃を入れているが、死の戦士(デス・ウォリアー)に致命傷を与えるほどの攻撃を行ってはいない。

 

 

(報告書の内容を見るからにはもう少し実力があると思っていたが……)

 

 

 リリアはそう思いながら、目の前の死の戦士(デス・ウォリアー)の攻撃をかわすと、雷槍(サンダースピア)を敵の顔に向けて放ち、動きを止める。

 

 

(昨日ほどの魔法であれば、あのような攻撃をせずとも倒せるほどの実力があるはずだが……。やはり能力を隠しているのか?)

 

 

 モモンも同様にリリアの能力を確かめようとしており、互いにそう言った状況であったため、どちらも最後の一撃を加えずに戦いを長引かせていた。

 しかし、どちらも時間をかけすぎていては怪しまれると感じ、ある程度の所でナーベが自身が相手をしていた死の戦士(デス・ウォリアー)を片付けると、モモンと共にもう一体を倒し、最後に三人で残った死の戦士(デス・ウォリアー)を倒す。

 

 

「お二人のおかげで何とか勝てました。ありがとうございます」

 

 

「いえ、リアさんの実力もすごいと思いますよ」

 

 

 互いにお世辞を返しながら、そこら辺をうろついていたスケルトンやゾンビを倒し終えると、日も間も落ち始めていたことから間引きの依頼はここで終了することにした。

 帰りの馬車の中でモモンはリアの方を見て、自身が疑問に思っていたことを聞き始めた。

 

 

「リアさん。どうしてオリハルコンのままでいるんですか?先ほどの実力を見れば、アダマンタイト級でもおかしくはないと思うのですが」

 

 

「私はソロなので、アダマンタイト級になるには条件を満たせていないんです。それに私も事情があるので……」

 

 

「ですが、死の戦士(デス・ウォーリア)を一対一で相手できる冒険者なんてほとんどいませんよ。それこそ『実力を隠しているんじゃないか』なんて疑ってしまうほどに」

 

 

 リリアは「大袈裟ですよ」と返し、平静を装いながらモモンに逆に尋ねる。

 

 

「それこそ、モモンさんやナーベさんも余裕で死の戦士(デス・ウォーリア)の攻撃をさばききっていたではないですか。とどめを刺さずにいたのは何か目的が?」

 

 

「いや、私達が相手していた個体がかなり強いものだったんですよ。そうだなナーベ」

 

 

 ナーベは「はい、モモンさん」とその意見を肯定する。リリアは「じゃあ私の個体が弱かったんですよ」と兜の中で笑みを浮かべながら話す。

 

 

「うまく回る口だな……。この人g…」

 

 

「あぁ!そうだ!組合への報告が終わったら共に食事などはいかがですか」

 

 

 ナーベが何かを言った気がしたものの、モモンの大きな声でそれは打ち消された。リリアは今日の夜は定例会議が行われることから、時間がないため食事は断る。すると、ナーベの視線が更にきつくなったように感じた。おそらく、食事を断ったことが気にくわなかったのだろう。

 エ・ランテルに戻ってくると、組合へ報告を完了し報酬を受け取る。それなりの額になったため、上の応接室を借り報酬の分担をしようとする。

 

 

「今回の依頼はほとんどお二人のおかげですから、報酬は全部もらっていただいて構いませんよ」

 

 

「いや、リアさんも依頼に参加していた以上、貰っていただかなければ困ります」

 

 

 リアは何度もいらない旨を伝えたが、モモンとしても全額をもらったことが何かしらのルートでもれれば、名声に傷がつきかねないと考え譲らない。リリアはそれではと言うと、今日の報酬から馬車の代金のみを受け取る。リリアがこれ以上はこちらも譲れないことを伝えると、モモンは「分かりました…。今後も機会があれば」と言い、その場で挨拶をして臨時チームは解散した。

 

 

 

「という訳で、漆黒の二人組は確実に死の戦士(デス・ウォーリア)を一撃で倒すことができるほどの実力を持っています。縁を持つこともできましたし、これで良しとしましょう。正体もおそらくバレてはいません」

 

 

「リリア様。確実に相手から見れば不審者と言うか、もはや実力は半分バレていると考えてもいいのではないでしょうか?」

 

 

「そうね……。漆黒の方々と穏便に分かれることができただけ良しするべきなのだろうだけれど……」

 

 

「バレてはいないのではないでしょうか?向こうも話に納得していたようではないですか」

 

 

「姉様。話を聞く限りモモンはかなり疑い深い性格のようです。今後も交流を続けていれば、そのうちリアと言う者の正体がリリア様であることがバレてもおかしくはないでしょう」

 

 

 リリアもその意見には同意し、今後は接触を図ることはほぼないだろうとケラルトに告げる。ケラルトもその考えには同意しつつ、カルカも共に安堵したようだ。そして、リリアの話題を置いて、ケラルトが今日の議題を話始める。

 

 

「最近、聖王国内で奇妙な事件が起きています。どうやら、行方不明となる者の数が増えているようなのです」

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