「実力がないものは下がって王女様と神官を守れ!」
騎士団長がそう叫びながら、
リリアとレメディオスも騎士団長を援護すべく、両側面から回り込み一撃を加えようとするが、それに気づいたのか騎士団長を押しのけると、腰からもう一本の剣を取り出し、二人の斬撃をいとも簡単に受け止める。
「このッ……!」
レメディオスが無理やり押し込もうとすると、
「
カルカとケラルトが放った魔法で
「レメディオス!大丈夫か!」
「この程度の攻撃で倒れるほど弱くありません!」
リリアがレメディオスを見るが、明らかにダメージが蓄積している様子が見て取れた。
リリアは神官にレメディオスに治癒魔法を使うよう指示する。
「ケラルト!神官への指示は一任する!そっちまで意識が回らない!」
「分かりました!神官達は天使を召喚し、前衛部隊を掩護しなさい!」
ケラルトの指示に従い、神官達は天使の召喚を開始するが、それを見た
人の骨と骨が当たり、肉が飛び散る嫌な音が聞こえたかと思うと、神官達がいた後方部隊は神官とその護衛に当たっていた聖騎士がまとめて倒れており、血だまりができている無残な光景が広がっていた。顔の一部がいびつにひしゃげそのまま絶命している者や、ぶつかった衝撃で手足が折れ叫び声をあげる兵士がいる。
「おのれぇぇぇぇぇええ!」
騎士団長が部下の変わり果てた姿を見て激昂し、
(冷静さを欠いた状態で挑むのは無謀だ!)
「騎士団長!とまれ!」
リリアが叫ぶも加速していた騎士団長を止めることはできず、騎士団長が放った斬撃を死の騎士《デス・ナイト》は片方の剣で受け止めると、もう片方の剣で瞬時に反撃を行い、騎士団長の頭に向かって横から斬りかかった。
次の瞬間には騎士団長がかぶっていた兜の原型が分からなくなり、中には頭であった肉塊が地面へと転がった。頭を失った体はそのまま地面へと力なく倒れる。
(まずい……。これはまずい……)
リリアは額から汗を流す。少なくとも現状において有効な戦力であった騎士団長が死に、援護に回る予定だった神官達も戦える状態ではなく、聖騎士も数人を残して戦闘不能状態。まさに絶望的だ。
(姉様を逃がすためには時間を稼がなければ……。でもどうやって……?)
目の前に立つ理不尽の塊ともいえる存在にリリアは対応策が思いつかない。今の聖王国でこいつを相手できるものはいないといってもいいだろう。レメディオスやケラルト、カルカやリリアも若くして英雄の領域に至ろうとしているが、目の前の存在を圧倒できるほど成長していない。
「レメディオス、私と二人で
リリアの指示に二人は「はい!」と言いすぐに行動にとりかかったが、その指示を聞いたカルカは「リリア!」と大声を上げる。
「あなたたちを置いて逃げるなど!そんなこと王家の者としてできません!」
「姉様は今後の聖王国において、絶対に必要となるお方です!姉様が死ねば、この国は破滅への道を歩むかもしれないのですよ!」
「それを言うならば、貴方たちもこの国にとって失ってはならない存在です!私だけでこの国をまとめていく事なんて!」
「リリア様!来ます!」
カルカとリリアの言い争いを他所に
大きく振りかぶった頭上からの一撃をリリアとレメディオスは左右に避け、レメディオスが注意をひくために斬りこむ。
「レメディオス!そのまま離れていろ!
リリアの剣先に魔法陣が展開され、そこから火球が放たれる。火球は
「すごい……。これなら……!」
「まだだ!」
レメディオスの安堵する声を否定するようにリリアが声を上げる。その視線の先では、爆発の後の煙から
「ケラルト!今の内だ!残っている者を連れて撤退しろ!無理やりでもだ!」
「いえ、リリア様、その命には従えません」
「どういうことだ!」
リリアはケラルトの方へ振り返り睨むように見るが、生き残っていた聖騎士達の姿は既になく、戦う準備を整えたカルカとケラルトの姿のみがあった。
「聖騎士には王都への報告と応援部隊の要請に向かわせました。その間、私達でこいつを食い止めることが最善の策です」
「姉様を危険にさらしてまで行うことか!」
「リリア!私がケラルトに無理を言ったのです。ここで二人を失うくらいなら死を選ぶと!」
そう言うカルカの手には短刀が握りしめられていた。
「カルカ様のお命のためにもここで戦うことにしました。それにこの四人であれば、勝算もあります」
「本当に口と頭だけはよく回るな!」
ケラルト自身も、姉であるレメディオスを残して行く事に同意はできておらず迷っていたが、カルカの強い意志によってその迷いが断ち切れた。リリアは皮肉めいたセリフを言うと、視線を
「要領は先ほどまでと同様に、前衛が注意を引き、状況を見て攻撃。後衛はそのサポートを。ただし、自身を最優先に!」
三人はそれぞれ返事を返し、すぐに配置につく。
「「
カルカとケラルトは再度天使を召喚し、少しでも手数を増やそうとする。リリアも
こちらの準備が整うとほぼ同時に
絶望の中にわずかに残るかすかな希望を掴むための戦いが始まった。