いつか帰る場所   作:シャケナベイベー

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話がとっ散らかったかも


崩壊の力

ラウンジに戻ると、そこにはヴェルトさん以外にもこちらの姫子さん、星、なのか、丹恒と不思議な生物が一匹集まって何やら話していた。

 もしかしてお邪魔だったかと扉を開いたところで立ち往生しているとこちらを向いた彼らが手招きしてくる。

 

「お邪魔でした?」

「そんな事ないわ。今ちょうどアンタについて話してたの」

 

 そう言って姫子さんが俺に微笑みかける。その笑みにかつての姫子先生を思い出して思わず涙腺が緩みそうになる。

 それをなんとか抑えて俺は彼らの顔を見た。

 

「ヴェルトから聞いたわ。アンタはヴェルトと同じところの出身なんですってね」

「そうです。俺自身も帰る方法を探してるところなんですよ」

 

 姫子さんの言葉にそう返す。すると当のヴェルトさんが新たに口を開いた。

 

「それなら話は早い。どうだアクト、君も星穹列車の乗員にならないか?」

「俺が?」

「もし帰る方法が見つかったとき、離れ離れだったら色々と不便だ。しかし一緒に行動していればその手間も省けるだろう」

「うむ! オレは賛成だぞ! 列車の乗員が増えるのはオレとしても嬉しいことじゃ!」

 

 不思議な生物──車掌のパムというらしい──の許可も降りた事で彼らは皆俺が列車に乗ることに反対することはなかった。

 

「はは、なら今後ともよろしく───」

 

 その時、列車の外から凄まじい爆発音が響いた。列車が揺れ、全員が体勢を崩す。

 俺は近くに居た星の腕を掴んでこちらに引っ張った。

 

「うわ、アクトって大胆だね」

「茶化すな……それより」

「どうやらそう簡単に発車は出来そうにないわね」

 

 俺たちの視線の先──星穹列車の周りを原生生物の群れが囲んでいた。

 

「さっき叩きのめしたのを根に持ったのか……或いは他の理由からか」

「どちらにせよ放っておくことは出来ないな」

 

 俺は列車組に視線を向ける。彼らは一斉に頷くと一人一人列車から降りていく。そして俺もパムに断りを入れて列車から地面へと降り立った。

 

「とりあえずこいつらを一掃しないことには話が進まらないな」

「大丈夫!ウチら強いんだし、今回は前と違って姫子もヨウおじちゃんもいるんだから楽勝だよ!」

「うん、バットの錆にするよ」

「あらあら。皆威勢が良いわね」

 

 丹恒、なのか、星、姫子さんがそれぞれの武器を構えてモンスター達を見据える。俺も剣を構えて軽く振り、隣に立つ杖を持ったヴェルトさんを見た。

 

「そういやヴェルトさんってもう律者じゃないなら、今どんな感じで戦ってるんですか?」

「あぁ。この杖は擬似的に複製した『エデンの星』でな。これで全盛期ほどでないにせよある程度重力は操れる」

「『神の鍵』を再現って……随分なことしてますよね」

 

 まぁ無駄口はその辺にして……さっさと片付けるとしよう。

 やがて焦れたようにモンスター達が吠えてこちらに向かってくる。俺達もそれぞれの武器を構えて迫りくる波に抗った。

 

 

 

 

「ふっ!せい!」

「やぁっ!」

「はぁ!」

 

 まず第一陣。丹恒がその鋭い槍捌きでモンスター達を的確に倒していき、なのかが氷の矢で動きを鈍らせたところを倒しきれていない撃ち漏らしを星のバットが粉砕していく。

 

「さぁ──逃がさないわ!」

 

 そして第二陣。姫子がウェポンコンテナを変形させたドローンによる攻撃でモンスター達の体躯を引き裂いていく。さらにその隙を縫うようにヴェルトが杖を地面にコツンと突いた。

 

「跪け」

 

 重力の圧が襲い掛かりモンスターを押し潰す。そして動きが止まった群れに向かってアクトが駆けていく。

 

「少し痛いぞ」

 

 そんな軽い言葉とは裏腹にその剣の刀身に()()()()()()()を纏わせ、それを一つの斬撃として放つ。

 放たれたそれはヴェルトによって縫い止められていたモンスター達の身体をいとも容易く引き裂いていき、その斬撃はやがて地平線へと消えていった。

 

「どうだ見たか!ウチらの実力!」

「油断するな三月、まだ来るぞ」

「大きいのが来たみたい」

 

 星の言葉通り、群れの中に一際目立つ奴がいる。恐らくここら一帯のボスだろう。つまりあれさえ何とかできればこっちの勝利となるわけだ。

 

「なら、急いで何とかしましょう」

「俺のブラックホールはここでは適さないな……姫子、レールガンはどうだ?」

「列車が近くにあるし、相応に威力を調整するのにも時間が必要よ」

 

 姫子さんとヴェルトさんが言葉を交わす。確かに俺たちのすぐ後ろには列車があるし、なるべく巻き込まれないようにしたいが、かと言ってあの大型を殲滅戦術以外で倒すとなるとそれなりに時間が掛かってめんどくさい。

 ここにいる全員でタコ殴りにすれば楽勝なのだが、その為には周りの雑魚を一掃する必要がある。

 

「とりあえず周りを処理しつつあの大型を削るって方針で行きましょう。周りのモンスターは一体一体はそこまで強くないですし」

「手間だがそれが最善か」

「決まりだな。やるぞ」

 

 丹恒の一声と共に一斉に駆け出す。作戦通り、周りのモンスターの数を減らしつつ隙を見てボスに攻撃を加えていくが向こうも黙ってみているわけもなく反撃してくる。

 それでも休むことなく戦い続け、ついに星のバットによる渾身の一撃によってボスモンスターも完全に沈黙した。

 

「ふぅ……やっと終わったか」

「お疲れアクト!アンタって凄いんだね、ウチあんな力見たことないよ!」

 

 一息ついた俺になのかが詰め寄ってくる。あんな力とは恐らく『崩壊エネルギー』のことだろう、間違いなく。皆も気になるのか俺に視線が集中する……特にヴェルトさんからの視線が強い。

 

「………とりあえずこの星から離れないか?宇宙に上がって話そう」

 

 

 

 

 

「こほん……あー、さてと。皆が気になっているのは俺が扱ってる不思議なエネルギーについて、で良いんだよな?」

「あぁ。ヴェルトさんは何か知っているみたいだが俺達はその力を良く知らない。詳しく話してくれると助かる」

 

 丹恒の指摘にどこから説明したものかと考え、ある程度掻い摘んだ説明で行こうと思い付き口を開く。

 

「そうだな。皆が気にしてるこれは崩壊エネルギーといって、俺とヴェルトさんがいた世界にある摩訶不思議なエネルギーのことだ」

「崩壊エネルギー……なんか名前だけ聞くとヤバそう」

「実際ヤバい。耐性の無い人間にとっては有害で運悪く取り込んでしまったら命は無い」

 

 その説明になのかは口を押さえ、丹恒と姫子さんは僅かに顔を強張らせた。

 

「それは……残酷な話ね」

「全くです。けれど耐性のある人間もまた、その崩壊エネルギーから生まれた人類の脅威と戦うことになった。どちらも命の危険があることに代わりはないんです」

「じゃあ、アクトはその力を使っても大丈夫なの?」

「俺の場合は少し特殊なんだ……そもそもこの崩壊エネルギーに耐性があるのは女性の方が耐性の割合が強い。男性にもあるにはあるんだが女性と比べると雲泥の差と言っていい。その中でも俺は男でありながら崩壊エネルギーに対する強い耐性を持っていた例外になるわけだ」

 

 そこまで話して俺はチラリとヴェルトさんを見る。彼は相変わらず俺を強い目で見ていた。どうやらまだ納得できていない部分があるようだ……と、そのヴェルトさんが一歩前に出て口を開いた。

 

「アクトの言う通り、崩壊エネルギーは基本的に人類にとって有害だ。たとえ強い耐性を持っていても長くそれに浸かれば毒になる……だからこそ聞こうアクト。君は今どこまで侵食が進んでいる?」

「…………」

 

 嘘は許さないと言わんばかりの眼差しでヴェルトさんは俺を見てくる。それに苦笑しながらも大人しく真実を告げることにした。

 

「あー……安心してくださいヴェルトさん。ヴェルトさんの懸念は最もですけど、その心配はいらないんです」

「……どういう事だ?」

「実はその、俺はとある星神から一瞥を貰ってまして……それによる影響なのか、身体に流れ込んだ虚数エネルギーと崩壊エネルギーが混ざって奇跡的に侵食が綺麗さっぱり失くなってるんです」

 

 列車組が一様に目を見開く。そしてまず口を開いたのは姫子さんだった。

 

「その、聞いても良いかしら。アンタに一瞥を与えた星神って……」

「『終焉』のテルミヌス。其の一瞥を食らいました」

 

 傍迷惑ですよねーと笑えば呆気にとられた様子で彼らは俺を見ていた。やがてヴェルトさんが苦々しい顔のまま俺に問うてくる。

 

「再三になるが……本当に身体のどこにも異常はないんだな?」

「ご安心を。嘘だったらキアナの手作り料理を十皿は食べます」

「それ、ご褒美じゃないの……?」

 

 俺の自信満々の答えになのかが突っ込むが……甘いな。彼女は知らないのだ、キアナの料理がどれだけのものなのか。

 あいつと来たら誰かに監督してもらえば出来るのだがそれ以外だとてんで駄目だ。唯一マトモに作れるのはカスラナ家直伝のピザトーストだけ……あぁ、初めてキアナに手作りのハンバーグを作ってもらって純粋に嬉しかった俺の前に出されたあの蠢く悍ましい命ときたら……思い出すだけで身の毛がよだつ。

 

「とにかく、俺の話はこんなところです」

「そう。分かったわ、それなら改めてこれからよろしく頼むわねアクト」

「俺からもだ。また世話を焼くことになるな」

「これからよろしくアクト!一緒に楽しい『開拓』の旅をしようね!」

「俺からもよろしく頼む」

「よろしくアクト……よかったら今度、一緒にゴミ箱を探そう」

「ゴミ箱………?ま、まぁ、こちらこそよろしくな」

 

 口々に挨拶する列車組の面々。なんか星の言葉に不思議な単語があった気がするが気のせいだろう。彼らへと挨拶を済ませたそして俺はすぐそばにいる小さな車掌へと体を向けた。

 

「パムもこれからよろしくな」

「ウム!列車の乗員が増えてオレはとても嬉しいぞ!」

 

 パムの歓迎に頬を緩ませ、俺はこれから始まる新たな旅に思いを馳せた───

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういや、あの星には俺の乗ってきた宇宙船があったっけ」

「宇宙船……?それなら列車からそれらしい奴を見かけたがモンスター達に粉々にされておったぞ」

 

 

「……………は?」

 

 旅には苦難も付き物だ。

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