いつか帰る場所   作:シャケナベイベー

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アポカリプスと大守護者

 ───懐かしい夢を見ていた。

 

 

 

「やぁ。君とこうして会うのは久しぶりになるのかな」

「………何の用だよオットー・アポカリプス」

 

 目の前の信用ならない笑顔を浮かべる金髪の男を見上げる。崩壊によって両親を亡くした俺を拾い養子にした人……なんの思惑があるのかなんて俺は知らないが、テレサおば……お姉様と違って信用ならないのだ。

 

「悲しいね、お父様とは呼んでくれないのかい?」

「絶対に呼ばねぇ。それに呼ぶにしても爺ちゃんとかだろ」

 

 アンタ相当な歳だろと睨みつければはははと目の前の男は笑った。いけ好かないやつだ。そしてそんな男は少し真面目な顔になって俺のそばに寄った。

 

「実はね、君に来週から学校に通ってほしいんだ」

「学校」

 

 うん、と彼は頷いた。なんだって突然……と思っていると彼が目の前に1枚の紙を差し出してくる。

 

「これが君が通うことになる学校だよ」

「聖フレイヤ学園………戦乙女の学校じゃねぇか!!」

「ははは、気に入ってくれたみたいだね」

「声荒げてんだろうがクソジジイ!!」

 

 この若作り、俺が怒ってるのすら気にも止めねぇ。どうせ子供の癇癪だとかなんとか思ってるんだろう。

 そんな風に過ごす日々を……認めたくはないが幸せだと感じていたのも事実ではあったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「………ん」

 

 眠っていたのか、ゆっくりと目を開く。星穹列車の与えられた一室……なぜか星には部屋が無いらしい。なんでだろうか……のベッドで眠っていたらしい俺は体を起こして軽くほぐす。

 

「はぁ……今になってあの頃の夢を見るなんてな」

 

 夢で見るにしてもキアナたちと過ごした日々ばかりだったのだが。あの養父……オットー・アポカリプスの夢を見るとは思いもしなかった。

 

 あのとき、オットーの誘いが無ければ俺はキアナや芽衣、ブローニャや委員長、ゼーレたちとは会うことはなかったかもしれない。テレサおばさま……もとい学園長とは家族ということもあって会うことはあったが。

 そしてあの偽の神となったオットーとの最後の会話を思い出す。

 

 

『……アクト、僕の可愛い養い子。君を拾ったことは後悔していないし僕は君を愛していた……君は僕を恨んでいるのだろうね』

『当然だ。キアナのことを『K-423』としか呼ばなかったお前を……自分の願望のために沢山の人を不幸にしたお前を許せるもんか』

 

 そう言い返せばオットーは力無く笑った。当然の報いだとそう言って。でもね、とオットーのその目が俺を覗き込んだ。

 

『君は僕と似ている……君だって彼女を救えるなら命なんて惜しくないんだろう?』

『…………』

 

 結局、俺がその問いに答えるより早くオットーは消えた。大主教が消え天命はガタガタになったもののテレサ学園長が持ち直していた。

 そして今なら俺はあの問いに答えられる、オットーの目をしっかりと見返しながら。

 

 

 ───当然だ、と。

 

 

 俺にとってはキアナが俺のくだらない命なんかよりよっぽど大切だ。芽衣が世界よりキアナを取ったように俺もそうしただろう……まぁ俺は崩壊エネルギーを世界から取り除くために自爆したわけだが。

 そう考えると俺は芽衣に及ばないだろう。アイツは迷いなくキアナを選んだが俺はどうなのだろう……俺ももしキアナを喪ったら養父のオットーのようになるのだろうか。

 

「アクトー!起きてるー?」

 

 と。扉の向こうからなのかの元気ハツラツな声が聞こえてくる。思考を中断してそちらに意識を向けた。立ち上がり、扉を開けて廊下に出るとそこにはなのかの他にも星が並んでいた。

 

「起きてるぞ、どうした?」

「実は今近くに『ヤリーロ-VI』……ウチらが旅をした星があるんだけどせっかくだからアクトも一緒に行かない?」

「ヤリーロ-VI……噂なら聞いたことあるな。極寒の吹雪に覆われた星だとか」

「そう、そして私が初めて開拓の旅に出た場所……ふふん」

「なんでアンタそんな得意げなの……?」

 

 胸を張る星になのかが突っ込む。この二人の関係は見ていると姉妹に思えて微笑ましくなる。ふと、俺は気になったことを質問することにした。

 

「丹恒はどうした?」

「あ、丹恒は今回も来られないんだって。この前のお祭りの時にヤリーロ-VIに行った時だって来られなかったのに!」

 

 プンスカ、となのかが怒る。なるほど丹恒も大変らしい。

 

「分かった。なら準備してくるから少し待っててくれ」

「うん!早く来てね!」

「アクト、ヤリーロには素晴らしいゴミ箱があるから一緒に漁ろ──」

「さぁ早く行くよー!!」

 

 何かしらを言いかけた星を引っ張ってなのかが去っていく。やはりあの二人姉妹なのでは?という疑問が浮かんだまま、俺は旅支度を始めた。

 

 

 

「アクト、ヤリーロに行くそうだな」

「ヴェルトさん……そうですよ」

「そうか……ヤリーロ-VIは極寒の吹雪が吹き荒れる場所だ。寒さ対策は怠るなよ」

 

 まるで親みたいな事を言うヴェルトさんに苦笑する。まぁこの人から見れば俺は色々と気にかけて置かなければならないのだろう。

 

「それと……ヤリーロ-VIには君も驚くだろう人物たちもいるがあまり気にしないようにな」

「?はい、分かりました」

 

 意味深な発言を残して去っていったヴェルトさんに頭の中で疑問符を浮かべつつ俺はなのかと星と合流しヤリーロ-VIに向かった。

 

 

 

 

 

 

「初めまして。私はブローニャ・ランド。星や三月から貴方の事は聞いていたの、宜しく」

 

 差し出された手を見る。そしてその手の持ち主である女性の顔をまじまじと眺める。

 長い銀髪は後ろでカールしており、その銀の瞳には炎のように強い意志が宿っている。確かにそれらは彼女が大守護者と呼ばれている理由に納得するほどで……俺にとってはそれら以外が問題だった。

 名前、顔、声……背丈以外は俺の知るブローニャ・ザイチクとほとんど変わらないのだから。

 

 俺は差し出された手を握り返し、当たり障りのない言葉を返そうとして───

 

 

 

 

「───いやウソやん」

 

 

 そんな言葉しか出てこなかった。ヴェルトさんの言っていた言葉の意味を理解した俺は、もしかしてこっちの世界のゼーレもヤリーロにいたりするのだろうかと考えながら、不思議そうな、困惑したような顔をする大守護者ブローニャを見つめていた………いやウソやん。




オットー・アポカリプス
崩壊3rdの事件ほとんどすべての元凶と言っていい男。功罪どっちもデカすぎる。
この世界では崩壊によって両親を亡くしたアクトを引き取り養子にした。そしてキアナと仲良くするアクトを見て過去の自分と『彼女』に重ね、無意識のうちに羨ましく思ったりアクトには自分を肯定してほしいとか思ってたりした。

アクトにとっては養父ではあるがやらかしたことがやらかしたことなので許すことはない……が、拾って育ててくれたことには多大な恩を感じているし彼やテレサたちとの生活はアクトにとってかけがえのない思い出になっている。
多分アクトもキアナを喪ったらオットーみたいになってた
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