オンパロス最新章クリアして思ったことは……
これロマンチックな物語か???
「んっ……ぐ、ゲホゲホ……!っ、ここは……?」
全身の激しい痛みと喉元からせり上がる血の塊を吐き出して辺りを見回す。石造りの神殿のような建物があり、その側で車両が地面に墜落している。
「ゲホゲホ……クソ、頭がくらくらする……星と丹恒は何処だ」
痛む身体に鞭を打って立ち上がり辺りを見回す。立ち昇る黒煙と炎に顔を顰めていると少し行った所に見知った影が倒れているのが見えた。
「星!丹恒!」
駆け寄り星を助け起こす。幸いにも酷い怪我は負わなかったようでアクトの声で直ぐに目を覚ました。
「うっ……アクト……?ここは……」
「気が付いたか。恐らくオンパロスだろう。一応着陸は出来たらしい。丹恒もほら。そこにいる」
アクトが視線を移した先には廃墟の壁に凭れて気を失っている丹恒がいた。そちらに寄り星が丹恒の身体を揺すろうとするのを慌てて止める。
「待て待て。気を失ってる相手にそれをやったら状態がより酷くなる。幸いにも呼吸はしてるから生きてる証拠だ」
「じゃあ人工呼吸だね!」
「なんでそうなるんだよ」
とんでもないことを宣う星に頭を痛めながらなんとか宥める。ああ、丹恒早く起きてこいつを止めてくれないものか……
「うっ……何を騒いでるんだ……?」
「あ、起きた」
そうこうしている内に丹恒も目を覚まして立ち上がる。目立った外傷は特になさそうだ。三人共大きな怪我もなく。奇跡と言って良いだろう。
とりあえずの生存確認を終えた三人は辺りを探索しながらオンパロスの手掛かりになりそうなものを探すことにした。
「随分と歴史的な建造物だな……オンパロスには文明があると考えて良さそうだ」
「……なんかギリシャ神話味あるなぁ……」
「何か言ったか?」
「いや何も」
そして一行が建物の外側に出ると星がある一点を見つめていた。
「あっ」
「どうした?」
「今そこに何かいた」
「敵かもしれない。警戒を怠らず、物音を立てるな」
丹恒の言葉通り、静かに音を立てず歩いて扉へと向かう。
そして門に近付くとそれがひとりでに開いた。
「開いた……?」
「自動ドアってことか、便利だな」
そのまま外に出る。そこは酷い有様で柱が倒れていたり道が崩れていたりと散々だ。
その時、視界の端が桃色の光を捉える。なんだとそちらに目を向けた刹那、世界が『変わった』。
「……何?」
「朝になった……?いや、建物も修復されている。これは……」
「過去か」
状況を分析する丹恒の言葉を継いで今見えている光景に当たりをつける。少し先の倒れた石柱があった場所は通れるようになっており、その向こうには子供の影も見える。
とはいえ原理不明の現象であるため慎重に歩を進め、子供たちに声を掛けようとしたところでまた世界が切り替わった。
「まただ。一体何なんだ?」
「ねぇ二人とも。あそこ……」
「桃色の……生命体?」
「見た感じ無機生命体って感じはしないな」
「二人にも見えるの?」
「ああ、幻覚ではない」
会話しながら歩みを進める三人。その間にも世界は過去になり、また現在になった頃には三人の前にある扉が開いた。
「分からないことだらけだな」
「それにさっきの生物もいない。アイツは何だったんだ……二人にはアイツの姿がはっきり見えたか?」
「黒幕っぽかった!」
「この星のマスコットじゃないか?ゆるキャラ的な」
「星はともかくお前もおかしくならないでくれアクト……俺一人だけだと捌ききれない」
「なんかごめん」
「ねぇ私はともかくっておかしくない?ねぇ?」
額を抑える丹恒に謝るアクトとそんな二人に詰め寄る星。実にカオスな光景だ。
「ともかく、あのような生物はどのアーカイブにも記録されていない。オンパロスは完全な『未知』だから不思議ではないが……ヤリーロⅥでさえ、列車が到着する前にはその歴史や地形をある程度把握できていたが、オンパロスについてはブラックスワンからの情報だけが全てだ」
「じゃあ次はどうする?現地の人を探す?」
「いや、ここは慎重になるべきだろう。言語の問題はさておき、先程の襲撃……列車を貫いたあの槍の一撃を考えればこの星の技術力はかなりのものだと推定できる。誰も足を踏み入れたことのない隔絶した世界が、まさかあれほどの技術力の武器を作れるとは……」
「私のバットや丹恒の龍化妙法、アクトの業魔だっけ?それと比べても?」
「そう簡単に優劣はつけれないだろうな」
「アクトの言う通りだ。楽観的な考えはせず、先に進もう」
そして三人はさらに先に進み、また扉を潜るとその目に飛び込んできたのは荘厳な建物だった。
「見て、立派な城門……」
「確かに立派だ。それに相当古い……この星の歴史的な建物なのかもしれないな」
「築数百年……いやもっとあるか?神殿か何かだろう」
「アクトってこういうのに詳しいの?」
「それなりにな。養父やケビ……一時行動を共にしてたとこのトップとあちこち回ったことがあって詳しくなったんだ」
やがて三人は神殿がよく見える場所にまでやってくるとあちこちに目を走らせた。
「どうやらこの辺りには人が住んでいないようだ。あの生物もいない。だが……」
「どうした?」
「見ろ」
丹恒の目線の先。そこには球体状の何かを抱えた巨大な影のようなものが見える。列車から見えた奴だな、とアクトは思い出した。
「この周囲には巨大な建造物が数多くある。それに共通の信仰もあるようだ。距離が離れすぎていてよく見えないのが残念だ……星、三月の代わりに写真を撮るなら今が良いだろう」
「分かった」
丹恒に促されて星がなのかのカメラを取り出し、被写体をあの光る球体に決めて写真を一枚。
撮れた写真をアクトと丹恒が覗き込んで『ピンボケしてないし良いんじゃないか?』『ああ。よく撮れている……星の事だから変な写真にするのではと警戒していたんだが』と口々に言った。
なんだかムカついた星はそのまま前方に聳える立派な城門の写真も撮った。
「……ん?」
その時、背後で何か動く気配を察知した丹恒が素早く振り返る。しかしそこには先ほども見た石像があるだけ──
「ねえ、あの石像ってさっきまでそこに無かったよね?」
「明らか動いてるな」
「呼吸をしていない……無機生命体なのか?」
そして彼らの身体が動き出す。石が砕け、正しい在り方へとその姿を変えていく。
それを見た三人はそれぞれの得物を取り出し構える。
「気を付けろ、来るぞ!」
丹恒の言葉通り、謎の生命体の一体が放った光の矢が迫るがアクトが直ぐ様叩き落とし、一歩踏み込んで距離を無くすと大剣を横薙ぎに振るってその身体を砕き、嬉々として敵陣に突っ込む。
「一体一体はそこまで強くないな!」
「さあ、バットの錆にしてあげる!」
「まったく……ふっ!」
星のバットが、丹恒の槍が、アクトの大剣が敵を容赦なく蹴散らしていく。しかしいくら倒してもその数は減る様子を見せない。
「数が多い……切り抜けるにはどうすれば……」
「ん?」
その時、頭上に気配を感じたアクトは上に目線を向ける。するとそこから何かが勢い良く振ってきて敵陣に激突した。
「なんだ……?」
「……ん?」
煙が晴れ、あらわになった人影……剣を謎の生命体に突き立てていた白髪の青年がアクト達の方を向くと凄まじい速度で彼らに迫ってきた。
「危ない!」
「ちっ…!」
「面白い物を持っているね?」
その接近にいち早く気付いた丹恒とアクトがそれぞれ得物を振るうがいつの間にやら青年の手に収まっていた星のバットによって丹恒の槍は真っ二つにされ、アクトの剣は折られる事こそ無かったが上手く逸らされた。
そして三人と少し離れた所に立った青年はそれぞれの顔を見回し、アクトの顔を見て驚いたような顔をしたものの直ぐに「誤解しないで。これは此処にいる全員の安全の為なんだ」と口にした。
「全員の安全の為?」
「神殿では武器を持つこと自体が挑発行為だ。そしてここの兵士たちは『紛争』のタイタンの配下として、外敵を容赦なく駆逐する。もし君たちが武器を振り続けるなら自分達が獲物になるだけでなく、罪のない人達にもその矛先が向くことになる」
青年の目が少し遠くで蹲る人々に留まる。どうやら自分達のせいで一般人に危害が加わるところだったらしいと理解した丹恒は己の認識能力の甘さを自省しつつ、目の前の青年を見た。
「それならわざわざこんな手を使わなくとも言葉で説明されれば分かる」
「そうかもね。けど君達は武器が無くても戦えそうだし、そうなったら危ないのは僕のほうかもしれないだろ?」
「だからこういった手段を講じたと?」
「ああ。さて、ここに来た目的を話してくれないか?天上から舞い降りたお客さん達?」
青年の目が僅かに鋭さを帯びる。さてどう対処しようかとアクトが目の前の青年の容姿を気にしながら考えを纏めていると……
「ファイちゃん──!またやんちゃちてる!一人で突っ走って、勝手なことちて!」
舌っ足らずな声が聞こえ、全員の目がそちらに向く。やってきたのは赤髪の幼い少女と
「アクトそっくり!」
「……こういうこともあるだろう」
(……もう驚かんぞ)
驚きの声を発する星と丹恒と違い、アクトはある程度慣れが出来ていた。
いやケビンそっくりなあの青年と言い自分そっくりな青年と言いこの星は知己のバーゲンセールか何かなのかと言いたくなるがそれをグッと堪えた。
そんなアクトを他所にやってきた二人は白髪の青年に詰め寄って何事か話している。
「ああっ、大変!人様の武器まで壊ちちゃって!ちょっと、これが初めて会った人へのマナーなの!?」
「ほら言ったろトリビー先輩?コイツこういうところで人の話聞かないんだよ」
「もう、アスちゃんそっくり!師匠だからってこんなところまで似なくて良いのに……」
「なあなんで唐突に俺のこと刺した?」
「アスちゃん静かに!「酷くない?」……ファイちゃん、何か言うことは?」
「一番、穏便な問題を方法で解決しようと思って」
「穏便じゃない!──三人とも、肩の力を抜いてね。私達は同じ人間なんだからいがみ合う必要は無いよ!」
トリビーと呼ばれていた赤髪の幼い少女がアクト達の方を向き、そしてアクトの顔を見て驚愕した。
「わ、アスちゃんそっくり!フェルちゃんの権能だったりしないかちら?」
「無い無い。セファの『詭術』だったらもう少し上手くやるよ……彼は本当に俺に似ているだけだ」
「う〜ん、そっか……あ、ごめんね。ファイちゃんは、天上からやってきたのが悪い人なんじゃないかって警戒してたの。でも「あたちたち」には三人とも悪意が無いように見える。あ、まずは自己紹介しなくちゃ──「あたちたち」はヤヌサポリスのトリビー!こっちはファイちゃんとアスちゃん!」
「ご紹介にあずかったアスちゃんことアストラスだ。かつては女皇ケリュドラの剣、今は聖都オクヘイマの騎士をしている。それでこっちの馬鹿は俺の弟子のファイノンだ」
「馬鹿は酷くないかなぁ……」
師の容赦ない物言いにファイノンが頬を掻く。それを見たトリビーが頬を膨らませた。
「もう、今はそんなことしている場合じゃないでちょ!ほらファイちゃん、謝って!」
「トリビー先生がそう言うのなら……すまない。御三方が独特な方法で危険地帯に着陸したものだから、僕が警戒しすぎたんだ」
「いや、そちらの行動は理解できる。俺達は天外からこの世界に降り立った開拓者だからな」
「もう身分を明かしちゃって良いの?」
「既に見られている以上、隠す必要もないからな。それに本当に俺たちを襲うつもりなら、わざわざこんな無駄話をする必要もないだろう」
「……その割にはあっちの男二人はこっちを警戒してるみたいだけどな」
アクトがひっそりとそれぞれファイノンとアストラスと呼ばれた青年達へ目線を送る。会話の最中、彼らはこちらを注意深く観察していた。ただアストラスの方は僅かに口角が上がったのを見るに完全に面白がっている。恐らくこちらがどのような意図を持っているかある程度察したのだろう。だからって性格は悪いが。冗談は顔だけにしてほしい。
「……「天上」じゃなくて「天外」か」
「ええっ、そんな!予想以上に大変な事になっちゃったみたい……三人とも、出会ったのが「あたちたち」で良かったね」
「どういう意味だ?」
「僕たちに君達を害する気は無いけど、他の人ならそうもいかないってことさ……ここは危ないから場所を変えよう。ここには避難できてない人達がまだ大勢いるんだ」
「俺達は彼らを聖都オクヘイマまで護送するために来たんだ。そのついでに君達の疑問に答えられるだけ答えると約束しよう。そっちの彼とも色々話したいからな」
アストラスの目がアクトに向く。アクトは引き攣った笑みを浮かべることしか出来なかった。