いつか帰る場所   作:シャケナベイベー

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今回は一気にすっ飛ばしてニカドリー戦です


ニカドリーを称えよ!!

 ──走る、走る、走る。

 

 脇目も振らずただ彼らは走る。クレムノスの奥で今も孤軍奮闘しているモーディスの下へと。

 

 ニカドリーの居場所が割れ、突入したファイノン、モーディス、星の三人。しかし奮闘の末に天罰の鋒がケファレの神体へと向けられ──モーディスが独りニカドリーと死闘を繰り広げる中でファイノンと星は帰ってきた。

 

 そしてニカドリーの弱点を探るためオロニクスの力を借りようとヤヌサポリスに赴き、その先で星が『記憶』の星神『浮黎』の一瞥を受け、『ミュリオン』なる珍獣を手にするなど色々あったが、結果として浮黎の造物(かもしれない)ミュリオンの力で星とキャストリスは過去のクレムノスへ。

 残ったファイノン、丹恒、アクト、アストラスの四人はこうしてモーディスに助力するために走っているわけである。

 

「まだかファイノン!」

「もうすぐだ!」

 

 弓に矢を番えた天罰の狩人を瞬きの間に斬り捨てながらアストラスがうんざりしたように聞くとファイノンもまた巨大な天罰の先兵を斬り伏せながら答える。

 

「着いた、ここだ!」

 

 巨大な扉を蹴破り、中に飛び込む。

 その瞬間、凄まじいまでに凝縮された戦意と殺意、そして『紛争』の闘気がなだれ込んでくる。

 

「ッ、相変わらず濃いな……!!」

「立ち止まってばかりでもいられまい。急ぐぞ……アクト、丹恒。動けるか?」

「問題無い」

 

 丹恒の返答に頷いたアストラスがファイノンを引っ張って疾走する。それを追ってアクトたちも走り、次第にドゴン、という重い音がよく響くようになる。

 

 そして通路を抜けた先でニカドリーの槍先を受け止めるモーディスの姿があった。身体には幾重もの傷が刻まれ、まさに疲労困憊といった様子。

 

「まずいっ…!」

「ふんっ!!」

 

 そしてそれを見て走り出そうとするファイノンより先にアクトが自身の剣を勢い良くニカドリーに向けてぶん投げる。

 

 突如として飛来した己の命を刈り取るための武器にニカドリーがわずかに気を取られる。そしてその一瞬の隙を見逃すほど、モーディスは愚かではない。

 

勢い良く、お前ホントに傷だらけ?と言いたくなるほどの速度で振り抜かれた拳はダンプカーを想起させる威力で以てニカドリーの白い甲冑を粉砕し、その巨体を仰け反らせ後退させた。

 

 その隙に四人は一人と一神の間に割って入る。そしてアクトはせっせと自分の武器を回収した。

 

「お前たち……」

「やあ。色々あって相棒とキャストリスさんがニカドリーの弱点を探りに行ってくれてるからその間僕たちはニカドリーの足止めだ」

「そうか」

 

 実に簡潔な説明だがモーディスにとってはそれだけで十分だったらしい。軽くクラッキングして再度かつての戦神を鋭く見据える。

 

「あの二人、相当仲が良いんだな」

「戦友と言う奴だ。波長が合うんだろう」

「話し合いはそこまでにしておけ。来るぞ」

 

 丹恒の言葉通り、体勢を崩していたニカドリーが槍を構えて己と相対する戦士達を注意深く見定めている。

 

 この身は既に狂気に蝕まれ。しかし戦士としての本能までを捨て去った訳ではない。

 故に分かるのだ。ここにいる誰もが戦士として優れており、一筋縄ではいかないと。

 ならば。であるのならば!!!

 

 

 

 

 

 ──戦士としてそれに応えるまでッッッ!!!

 

 

 

 

 

 

 ニカドリーが咆哮を上げる。獣じみたそれに五人は構え、即座に突っ込む。

 

 ニカドリーが跳躍しその槍を振り下ろす。轟と風切り音を立てながら迫るそれにファイノンとアストラスが剣を構えて二人がかりで押し止める。

 

 ギチギチと火花を散らしながら拮抗する三様の武器。そして眼下の二人に槍先を突き立てんとせめぎ合いを続けるニカドリー目掛けて左右から丹恒とモーディスが壁を蹴って挟み込むようにして迫る。

 

「ふっ…!」

「ぬんっ!!」

 

 神速とも言うべき槍の一突きと剛腕による一撃。未だ空中にその身を浮かせているニカドリーに回避する術はない──

 

「なっ!?」

 

 訳が無い。

 笑止、この身は『紛争』。故に戦手は人の子の何百倍も上。暗黒の潮に冒されようとそれは変わらぬこと。

 

 槍を手放し、直ぐ様支えを失ったニカドリーの体は地面に落下し二人の一撃を寸でのところで回避する。そして手放した槍を手に取り、背後から迫るアクトの一撃をも逸らして見せた。

 

「───ふはッ…!」

 

 思わず、と言ったようにアクトの口から笑みがこぼれる。

 複数人を相手取りながらも一人一人の攻撃を的確に捌き対処してみせた。それでこそ神、それでこそ『紛争』。

 

 別に、アクトは戦闘狂というわけではない、と本人は自負している。確かに戦うことは好きではあるがそれはある種競い合いの様なものである故にこういった命の奪い合いの中で『楽しむ』という感情を抱くのはあまり理解できないことだ。

 

 ──ならなぜ笑みを漏らしたのかと言えば、それはきっと分からないけれど。

 

 

 

 瞬間、銀閃が光る。

 

 

 

 アクトの一撃を防いで出来た隙を縫うようにアストラスとファイノンが剣を横薙ぎに振るう。それはやはり超反応を見せたニカドリーに躱されこそしたが浅い切り傷を残すに足る。

 

 そして五人はそれぞれニカドリーを囲むような配置を取って次の行動に備える。

 

「さすが『紛争』。一筋縄ではいかないな」

「当たり前だ。これで倒されていてはタイタンの名折れだろうな」

 

 口端を吊り上げるアストラスにモーディスが返す。

 ニカドリーが地を砕き疾走する。それと同時に丹恒が雲吟の術を使って水を呼び出しニカドリーの巨体を押し止める。

 

「いいぞ!」

 

 それを見たファイノンが叫び、アクトと共に飛びかかる。

 突き出される槍を躱し、二人同時に剣を突き立てる。そしてそれに合わせるようにモーディスの拳、アストラスの剣、丹恒の槍がニカドリーの甲冑を砕いた。

 

「っ、まだ!」

『───!!』

 

 ニカドリーが天高く槍を掲げ、地面から奔流が噴き出しその場の全員を呑み込んだ。

 辛うじて攻撃の起こりを察知したアクトが飛び退いて半身が焼かれるだけで済んだのは幸いと言えるだろう。

 

「攻撃は通っているが大したダメージにはなってないか…」

「理性がトんでいるのも影響しているのかもしれない。ああいう手合いはいくら叩いても動き続けるからな」

 

 迫りくる攻撃を右に左に避けながらアクトと丹恒は互いの見解を口にする。

 

 

 

 

 そうやって戦い続けて暫く。特にニカドリーと戦っていた時間の長いモーディスは疲労困憊だ。何度も死んでは蘇ってを繰り返したことも影響しているのだろう。

 

 そんな時、ファイノンが何かに気付いたように顔を上げた。

 

「……聞こえるか?」

「なんだ」

 

 ニカドリーを殴りつけながら返したモーディスに、ファイノンは満面の笑みを浮かべながら言った。

 

「───二人が来た!」

 

 ニカドリーが跳躍し、その槍をアクトに突き立てようとする。

 しかしその一撃は突如として飛び出してきた影が防いだ。

 

「ぬぅっ…!!私を倒せ…!!」

 

 過去と現在が混ざる。光の中から星とキャストリスが現れファイノンたちの横に並んだ。

 そしてニカドリーの一撃を防いだ男の目が星たちに向く。槍が押し込まれ、その男は光となって消えた。

 

「───私に戦士として相応しい最期を!!」

 

 その粒子を浴びたニカドリーの力が先程と比べて爆発的に上昇する。背後に巨大な黄金の紋が現れる。凄まじいまでの力の奔流が吹き荒れ、アクトたちは飛ばされないよう身体を支える。

 これが意味するものをアクトたちは悟った。

 

 

 

 

 其は偉大なる戦神。

 

 其はオンパロスの守護者。

 

 其は天罰の矛。

 

 崇めよ、称えよ、畏れよ。

 

 そして高らかに彼の者の名を叫べ。

 

 

 

 

 彼の者こそ十二の星座のうち『紛争』を司るタイタン。高潔なる武人、ニカドリーであると!!




・アクト
ニカドリーの闘気に充てられて気分が高揚してた人。極限の命のやり取りなのでちょっとだけ笑みが溢れた。

ちなみにミュリオンの事は桃色の空飛ぶウサギだと思ってる
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