とある辺境の惑星。ひっそりと、だが確かに文明の火を灯していたそこは、今や『反物質レギオン』によって火の海と化していた。
そんな火の海の中を一人の男が駆ける。黒いコートを着て右手に己の得物たる剣を手にした彼──アクトは迫りくる『反物質レギオン』の軍隊を目につき次第斬り捨てていく。
「数が多いなオイ……!」
迫りくるヴォイドレンジャーやバリオンの群れを吹き飛ばし焼き払いながら思わずと言ったように俺は呟いた。
倒しても倒しても湧き出てくる反物質レギオン共…さながらゴキブリみたいにしぶとく迫ってくるそいつらを薙ぎ倒しながら俺は空を見上げる。
この星で残っているのは俺を除いて一部の戦える人たちだ。その他の人は舟でこの星から避難してもらっている。そして最後の一隻が飛び去ったのを確認すると剣を突き刺して迫りくる『壊滅』の尖兵に向けて吼えた。
「さぁ来い『壊滅』の手下共!そう簡単に俺を壊せると思うなよ!!」
その言葉と共に、不思議なエネルギーを迸らせる剣を勢い良く振るった。
「ハァイ、お久しぶりねアクト」
「げっ……」
反物質レギオンが現れてからシステム時間にして約十二時間後。この星に降り立った尖兵を全て全滅させた俺は地面に横たわっていたのだが、突如として声を掛けられ、その人物を見た瞬間に心底面倒くさそうに顔を歪ませた。
「あら、そんなに嫌そうな顔をしないで頂戴?」
「そりゃ銀河のお尋ね者に出くわせば嫌な顔の一つでもするだろ……ましてやそれが『カンパニー』から懸賞金108億も掛けられてる人物とあっちゃ尚更だ。なぁ『カフカ』?」
そう言い返せば目の前の女性──悪名高き『星核ハンター』の実質No.2を務めるカフカは少し眉を下げて困ったように笑った。
「確かに貴方が警戒するのは尤もだわ……でも、私だってなんの理由もなしに貴方に会いに来たわけじゃないの」
「へえ?」
「エリオの『脚本』よ」
その言葉で何故カフカがここに来たのかを理解して大きくため息を吐いた。
「
「同じ『運命』を歩む者としてのシンパシーじゃないかしら?彼の考えは私にも分からないわ。残念だけど」
「あーめんどくせぇ……」
其の一瞥を受けただけではエリオは俺に興味を示さないだろう。どうせアイツの気を引いたのは俺の経歴が理由なんだろうし。
体を起こして立ち上がり、カフカと向き合ってから口を開く。
「……で?その『脚本』がなんだ?俺に関することなのか?」
「あら、聞く気になってくれたのね。そうね……エリオの『脚本』によれば、貴方はこれから先『星穹列車で再会し、新たな旅に出るだろう』との事らしいわ」
「星穹列車…?あー、そういや一年ほど前からそんなのが話題になってるな」
この世界にやって来て約十年近く。銀河をさすらう中で様々な物事に触れる機会が数多くあった。その中でも一年前から何かと注目を集めている『星穹列車』とやらについては俺も把握していた。誰が乗っているのかは俺も知らないが。
「それで、その星穹列車で俺が再会して新しい旅に出るって?」
「そうよ」
「なんだそれ」
もうちょっと具体的に教えてほしいがどうせ言ったところで聞き入れては貰えないだろう。
「……まぁ、この広大な宇宙だ。いつ会えるかなんて分かんないが新しい旅に出られるなら歓迎はしとくよ」
「それは良かった。そうそう、一つお願いがあるのだけど……『聞いて』」
その一言で頭の中がまるで靄がかかったように不明瞭になる。
「ッ!『言霊』か…!」
「ごめんなさいね。でもこれだけは聞いてほしいから……星穹列車に『星』という名前の女の子がいるのだけど、彼女の助けになってほしいの」
伝えたいことは終わったのか頭の中の靄が消えていく。大きく息を吸い、気持ちを落ち着かせた。
「普通に言えば良いだろうが。『言霊』まで使いやがって」
「聞いてくれるか不安だったもの。こうすれば確実でしょう?」
「悪趣味な奴だよお前は……」
カフカの遠慮の無さにため息を吐きつつ、仕方ないなとその頼みを聞き入れてやることにした。
「良かった。それなら安心だわ」
「嘘つけよ。元からそうする気だったくせに」
「ふふ、何のことかしら」
「白々しい奴め……」
ジト目を向ければカフカにはどこ吹く風と言ったように流される。
今更どうこう言っても変わらないと知っている俺は横たわっていた体を起こして立ち上がり、カフカに背を向ける。
「あら、もう行くの?」
「元々ここにいたのは暫くの休息と、予想外だった『反物質レギオン』の対処をしていたからだしな。終わったんなら旅立つさ」
「そう……なら、列車の皆さんによろしく言っておいてね」
「お前の名前出したら疑われるだろうし嫌だ」
コツコツと硬いコンクリートの上を歩く。俺の背からクスクスとカフカの笑い声が聞こえていた。
そして俺はまた星を飛び出して真っ暗な宇宙を彷徨う旅に出る。その中で、この十年余りの記憶を振り返ってみる。
あの時──崩壊エネルギーを暴発させて死んだはずの俺は何故か仙舟『羅浮』へと流れ着いて、そこであの『オットー・アポカリプス』にそっくりな顔の男、『羅刹』に助けられた。
そして彼の治療によって傷を癒した俺は羅刹から話を聞いて、ここが太陽系ではない事──そもそも別の世界の可能性が高いとすら言われた──を知って軽く絶望したが、何とか元の世界に帰るための手掛かりを見つけるために旅を始めたという訳だ。
「キアナ、芽衣、ブローニャ……皆怒ってるよなぁ」
なにせ別れ方が別れ方だ。半殺しにされても文句は言えない。しかも十年だ、そろそろ三十路近い俺としては体の動きも鈍くなってきている気がする──あぁ、十代の頃の若々しさを返してほしい。
「皆はケビンに勝てたかな……いや、勝つか皆なら。どんな逆境も跳ね返してきたのがキアナ達だしな」
親友達の顔を脳裏に思い浮かべると自然と顔が綻ぶ。そして次なる目的地をどうしようかとホログラム画面を眺めていると、右端に小さい赤が点滅しているのが見えた。
「救難信号…?場所は……ここか。しゃーない、行ってみるか」
画面を操作して航路を設定。宇宙船を飛ばす。罠の可能性も拭いきれないがその時はその時だろう、今はとりあえず困っているかもしれない誰かを助けることが先だ。
「吉と出るか凶と出るか……だな」
そうして辿り着いた先で俺は思いもよらなかった出会いをすることになる。
アクト
スタレ世界に飛ばされた。十年近くスタレ世界を旅したからかこの世界についての知識も増えた。旅をする中で3rd世界に戻る方法を探しているが一向に手掛かりは掴めない。それどころかとある星神の一瞥を受けた。
故郷に戻ったら半殺しに遭うんだろうなぁとか考えてる。お前はまず月に行け。