いつか帰る場所   作:シャケナベイベー

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プロローグは終わり。ここからは開拓の時間だ


出会いと再会

「救難信号が出てのはこの辺りか……にしてもホントになんもない星だよな……」

 

 見渡す限り一面の荒野。まぁ無人の星ともなれば当然かと納得する。しかしだからといって原生生物に危険が無いなんてことは無いのだから警戒は必須だろう。

 慎重に荒野を歩いていく。文明も何も無いこの星で救難信号が発せられたのなら漂着者とかが発したものと考えるべきだろう。

 

 そしてしばらく荒野を歩いていると、遠くの方から何かがぶつかり合うような音が聞こえた。微かな咆哮と打撃音、そして風切りの音……。

 

「原生生物同士の戦闘にしてはあまりに場違いだな……となると人が戦ってるのか!」

 

 その音がする方へ駆け出す。助けを必要としているだろう彼らの元へ一直線に。

 走る度に戦闘の音が大きくなっていく。そして辿り着いた先で俺が見たのは、三人の男女がこの星の原生生物に囲まれている姿だった。

 

 

 

 

 

 

「うぅ、列車が故障したからこの星に停まって姫子達が列車を直すまでの間に探索してたらこんなことになるなんて……ウチらツイてないよ……」

「泣き言を言ってる場合か。少なくともここを切り抜けないことにはどうにもならない」

「なら、纏めて蹴散らそう」

 

 弓を構えたピンク髪の少女──三月なのかの呟きを槍を構える青年──丹恒が制し、意気揚々とバットを振るう灰色の髪の少女──星がふんす、と気合を入れて原生生物達を見渡した。

 

「まぁでも、仕方ないね! こうなった以上ウチらは手加減しないよー!」

「はぁ……さっきまでの態度はどこにいった……」

 

 拳を天に掲げて晴れやかな笑みを浮かべるなのかを丹恒が呆れたように見つめる。そんないつものやり取りを傍で聞いていた星はといえば、いの一番に原生生物の群れへと突っ込んでいった。

 

「ちょっと、星!?」

「相変わらず破天荒な奴だ…!」

 

 驚愕する二人を尻目に星はバットを振って原生生物をしばいていく。それを見た二人も仕方ないなと言いたげな顔をしながらそれぞれ原生生物を倒していった。

 

 

 

 それから数十分。着々と原生生物を倒していく三人だが、その顔に疲労の色が出始めた。

 

「もう〜…! 流石に多くない!?」

「どうやらこの辺り一帯の奴らがここに集結しているようだ」

「むぅ…結構厄介」

 

 倒しても倒しても中々減らない生物の群れ。流石に三人ともが撤退を選択しようとしたその時……

 

 

 

「よーしよし、ちょっと失礼するぞ少年たち」

 

 

 

 そんな勇ましくも優しげな声が彼らの頭上から聞こえた。

 次の瞬間、一筋の流星が原生生物目掛けて落下し、巨大な爆発を引き起こした。

 

「うわっ!? なになに!?」

 

 衝撃になのかが叫ぶ。爆発によって起こった砂塵が吹き飛ぶと、そこには纏めて薙ぎ払われた原生生物の群れと、自身の武器だろう剣を消してこちらに向き直る一部が白に染まった黒髪に月のような金色の瞳を携えた若い男が居た。

 

「ふぅ……こんなもんかな。それで、君たち大丈夫だったか? 見るからに襲われてたそうだし助けに入ったんだが」

「あ、うん! ありがとう!」

「助かった。俺達もあの数には手こずっていたからな」

「ありがとう」

 

 三人のそれぞれの返しに「なら良かった」と男は微笑む。そして目の前の星達に目を通し、その中で丹恒だけがこちらを警戒していることに気付いた。

 

「そう警戒するな……俺はアクト。この星で救難信号が発せられているのを受信して立ち寄った一介の旅人さ」

「救難信号って……」

「パムが送っていたものだろう。この辺りの宙域を通る舟などはあまり無いと言っていたが……どうやらそうでもなかったらしい」

 

 男──アクトと名乗った彼の言葉になのかと丹恒がひっそりと呟く。

 

「自己紹介がまだだったな。俺は丹恒、こっちのピンク髪の少女は三月なのか、もう一人は星だ」

「ウチらは星穹列車に乗って旅をしてるナナシビトなんだ! よろしくね!」

「……星穹列車?」

 

 なのかの言う星穹列車のワードにアクトが僅かに目を見開く。そして彼の視線が星に向けられた。

 

「? どうしたの?」

「………いや、何でもない。なるほど、君達が噂の星穹列車の乗員って訳か」

「あ、ウチらだけじゃなくて他にもいるんだよ! 会わせてあげよっか?」

「それは有り難いけど……そっちの君は良いかな?」

 

 アクトの目が丹恒に向く。彼が自身を警戒していることは知っているし、そんな不確定要素とともに行動することを彼は許すだろうかと懸念しての問いだった。

 

「構わない……それに、たとえお前が不審な動きをしようものなら俺達が止めるまでだからな」

「なるほど。流石は勇敢なナナシビトだ」

 

 鋭い眼光でアクトを見つめながら言い放った丹恒に彼は満足そうに頷いた。

 そしてなのかの先導に従い、アクトを含めた四人は星穹列車の下へと向かって歩き出した。

 

 

 

 

 

「あ、見えた! あれがウチらが乗ってる星穹列車だよ!」

 

 なのかが指差す先──やはり一面の荒野しかないそこに『星穹列車』は停まっていた。

 

「あれがかの『アキヴィリ(開拓の星神)』が使っていたとされる列車か……噂には聞いていたがこうして実物を目にするとはな」

 

 アクトは列車を見上げ、その姿に感動しているようだ。そんな彼の隣に星が立ち、誇らしげに腕を組んだ。

 

「これが私達の開拓の旅を支えてる列車だよ。どう?」

「あぁ、実に素晴らしいな」

 

 そんな星の姿に微笑ましさを感じながらアクトは静かに頷く──とその時、列車の搭乗口が開いて中から一人の女性が降りてきた。

 

「三人共戻ってきたのね。お帰りなさい」

「あ、()()ー! ちょっと聞いて、星ってばまた無茶したんだよ!」

「なの。それは心外だよ、私は自分に出来ることしかしない主義」

「だからと言って一人で突っ込んでいくやつがいるか。肝を冷やしたぞ」

 

 降りてきた女性──星穹列車のナビゲーターこと姫子になのか、丹恒、星の三人が寄って口々に話し掛ける。

 そんな三人を微笑ましそうに眺めていた姫子はこちらを見るアクトの目線に気が付いた。

 

「あら。メーターで見てたけど、その人がアンタ達の窮地を救ってくれた恩人さんかしら?」

「そうだよ! アクトって言ってすっごく強かったんだから! アクト、彼女は姫子って言って星穹列車の──アクト?」

 

 元気ハツラツと言った様子で姫子にアクトを紹介したなのかはアクトにも姫子を紹介しようとして、その目が驚きやら何やらで見開かれているのを見て言葉を切った。

 

「あ………ぇ………?」

「えっと、どうしたのかしら?」

「すごく驚いてる。姫子、アクトと知り合い?」

「いいえ、初対面のはずだけど……」

 

 

「………姫、子…先生………?」

 

 

 やがてワナワナと唇を震わせて呟かれた言葉に四人は目を見開く。なのか、丹恒、星は呼ばれた姫子を見るが当の姫子本人も困惑した表情を浮かべるだけだった。

 

「ごめんなさい。その、アンタと私は何処かで会っていたかしら」

「ぁ………い、いや! 申し訳ない、その……あまりにも知り合いと似ていたものだからつい……」

 

 やがて気を持ち直したアクトが慌てて謝罪の言葉を口にする。その目は諦観、失意、申し訳無さがごっちゃになって彼の心を映していた。

 

「……まぁでも、宇宙は広いし、私と似た顔を持つ人が居たっておかしくはないはずよ」

「うん。黄泉もそう言ってた。だから落ち込まないでアクト」

「そ、そうだな、迷惑をかけて申し訳ない姫子さん………姫子先生は確かに死んだんだ。同一人物なんてあり得ない、か

 

 アクトが何か呟いた気がしたが、四人はそれを聞き取ることはできなかった。

 

 そうして少しの間、アクトを除いた四人が現状報告をし合っていると、その場に新たな人物が顔を出した。

 

「皆帰ってたのか。お帰り」

「あ、()()()()()()()だ!」

「戻りましたヴェルトさん」

「ただいまヨウおじちゃん」

「遅かったわねヴェルト。新しい客人が来てるわよ」

 

 姫子の声にその男──ヴェルト・ヨウがアクトの方を見る。そのアクトはと言えば、先程の姫子の例もあってこの人も自身の知るヴェルト・ヨウとは別人だろうと、その態度を表に出さず挨拶することにした。

 

「初めましてヴェルトさん。俺は───」

「………アクト? アクト・アステルか? キアナ達と同級生の」

 

 自己紹介をしようとしたアクトを遮り、ヴェルトがいち早くその名前を口に出す。これには列車組も驚いた顔になり、当のアクトも予想外と言った反応を見せたが───

 

 

 

 

 

「──いやアンタは本物かよ」

 

 驚きの言葉より早く、そんな言葉が口をついて出たのは仕方のないことだろう。

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